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第9章 第二次ノルキア帝国戦争

第96話 帝都攻略1

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「ネイトス。帝国軍が帝都のすぐ近くに集結しているようだね」
「そうですな。帝都決戦を考えてるんじゃないでしょうかね」

 帝国の南部地方の占領を完了して帝都に近づくと、敵軍の様子が前と違っていた。
 ここから見ているだけじゃ、よく分からないや。西の航空機部隊がいる所まで飛んで行って状況を聞いてみようかな。

「ティーア、帝国軍が下がっているようなんだけど」
「あっ、お帰りなさい、リビティナ様。そうなんですよ。占領したザーパットの町近くで王国軍と睨み合っていたんですけど、居なくなっちゃって」

 首都の司令部に報告して、前進するか検討してもらっている最中のようだね。
 ザーパットの町自体は王国軍が治安維持してくれて落ち着いた状態だそうだ。捕虜となった帝国兵も少数だし、反乱が起きる事もないだろう。

「それなら兵士の一部を残して前進した方がいいかな。レールガンは分解して運べるようになっているんだろう」
「あ~、それがですね。レールガンの弾丸装填部分が焼損しちゃって、あと数回ぐらいしか撃てないんですよ」

 レールの後端、加速前の弾丸が留まる部分のレールが溶けていたそうだ。応急修理はしたそうだけど、あと三回ぐらいが限度だと説明してくれる。

「里に持って帰れば修理と改良もできるんですが……すみません」
「大丈夫だよ、ティーア。この帝都で最後だからね」

 全ての部隊が合流している。この兵力なら帝都を落とすことも難しくはない。
 司令部と相談をして、全部隊を帝都に向かって前進させる事にした。その時ウィッチアからこんなことを言われた。

「あんた、皇帝を暗殺しようなんて考えない方がいいわよ。皇帝の近衛兵はすごく強いわ。あんた一人で忍び込んだら絶対怪我するからね」

 身を案じてくれているんだろうね。確かに皇帝が死んじゃえば、この戦争は終わる。でも皇帝の居る場所も分からないし、今回暗殺は無理かな。
 攻めるなら正攻法で、大兵力をもって一気に侵攻するようにとアドバイスをくれた。

 戦地に居る眷属達主要メンバーを集めて、お城とオリハルコンの鏡による通信をつないで作戦会議を始める。

「帝都に攻め込む前に、お城とその城壁を破壊しようと思う」
「リビティナ様。ならば、西部隊にあるレールガンによる攻撃が最善でしょうな」
「ねえ、ねえ、聞いたわよ。あれ、後三発ぐらいしか使えないんでしょう」
「そうなんですよ。面目ない」

 みんなで情報を共有して、作戦案を練る。

「帝都内のお城は、二重の城壁で守られている。まずはそれを破壊しよう」

 長距離からどこでも狙えるレールガンには、帝都の奥にあるお城とその城壁を狙ってもらう。レールガンが何発で使えなくなるか分からないから、突入経路の城壁から破壊してもらおう。

「最後の一発はお城本体を狙うのよね、リビティナ。でもお城って三つもあるわよ」
「そうだね……ウィッチア、どこに皇帝がいるか知っているかい」
「ワタシが謁見したのは中央のお城だったわ。でも御前会議だって言ってたのは南側のお城の中。どこに居るかは分からないわね」

 今回の戦争を引き起こした皇帝。レールガンの攻撃で死んでくれれば、それが一番いいんだけど。

「それじゃ、発射するティーアに何処を狙うか任せようかな」
「え~、リビティナ様。私は引きが弱いですから、絶対ハズレを引いちゃいますよ~」

 皇帝がお城に居るとも限らないし、損害を与えてくれるだけでも充分なんだけどね。

「それじゃあ、アタシが決めてあげるわ。う~んと、一番大きなお城はこの中央よね。ここに居ると見せかけて皇帝はこの北のお城に居るわ。アタシの目からは逃れられないわよ」

 エルフィが自信たっぷりに宣言する。まあ、三分の一の確率だし、誰が決めても同じ事だろうからね。

「よし。じゃあ北側のお城を狙ってくれるかい」
「はい、了解しました~」

 ティーアが元気いっぱいに答えてくれた。次は帝都への突入部隊だけど。

「北の部隊を陽動にして、南の城門を破壊して突入しようか」
「まあ、城門の破壊は砲撃部隊で充分可能でしょうな。そっちはルルーチアに任せるが大丈夫だよな」
「はい、任せてください」
「北の部隊の一部を南に回して、一気に攻めるのがいいでしょうな」

 ネイトスの意見にみんなも賛成する。

「帝都の前に陣取っている部隊には、爆撃機で攻撃を仕掛けるけど分散して布陣しているからね。半分ぐらいしか減らせないかな」
「それだけ倒せれば充分でしょう。あとはフィフィロもいますし、地上部隊で攻め込めば皇帝は倒せますよ」

 大体の作戦案は、こんなものかな。首都の司令部にいるアルディアがオリハルコンの鏡で話しかけてきた。

「帝都の東側は攻撃しないようにしてくださいね。帝都突入後、皇帝がキノノサト国へ逃亡する可能性があります。伏兵部隊を森に隠して監視させています。逃げてきたら確実に潰すようにしますので」

 今回は徹底して帝国の息の根を止めるつもりだ。皇帝は捕らえる必要もなく確実に抹殺する。今まで無駄な血を流させた皇帝にはその報いを受けてもらうよ。
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