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第8章 ノルキア帝国戦争

第0.6話 プロローグ4

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「五十嵐さん。町田班からの提案、聞きましたか?」

 人への応用を考えている町田班と寺西班から、俺達に提案があるからと合同会議をしてほしいと連絡してきた。

 リーダーの町田氏と寺西氏は二人とも女性で、粘り強く研究していると聞いている。だが向こうの班も苦戦しているようだな。


「町田さん。人間用の遺伝子開発、どんな感じなんだ」
「これを見てもらえますか」

 会議の冒頭、前面のモニターに映し出されたのは小さな子供のようだが、手足は細くやせ細り鋭い爪が伸びている。知能も低いらしく、地面を這いずるように歩いている。

「これは酷いな」

 何かの小説で読んだ亜人、ゴブリンを思い出させるような光景だ。

「魔素を防ぐ外殻遺伝子を移植すると、こうなってしまうんです」

 開発責任者である女性二人には、この失敗は相当ショックだったようだ。

「本来の人の遺伝子に強く影響が出てしまいます。他の哺乳類とは違うようなんです」

 今回は猿での実験だが、人の遺伝子でも影響が出る事が確認されているようだ。

「魔素ではなくて、外殻遺伝子そのものが影響を与えているようなんですよ」

 この惑星に住む原生生物から取り出した遺伝子。それにより魔素から守ることはできるが、完全に分離できるわけではない。一部はつながり生物の身体を作る設計図となる。

「俺達が成功したと言っている哺乳類も、完全な地球型にはなっていないからな。牙が大きくなったり、角が生えた狼もいた」
「世代を重ねると、極端に巨大化した生物もいましたしね」

 人間に適合する外殻遺伝子を作り出すことは相当難しいようだな。

「そこで提案なんですが、成功している爬虫類や哺乳類と人の遺伝子を掛け合わせようと思うのですが」
「キメラを造ると言う事か。それはもはや人ではないのじゃないか」

 幾多の実験の失敗で、町田さんも、寺西さんも人専用の外殻遺伝子を造る事を諦めたようだ。そこで考えたのが融合と言う事か。

「内殻には完全な人の遺伝子を埋め込み、分離した形で哺乳類の外殻遺伝子を取り込もうと思っています」

 完全に分離はできないが、内殻に影響のない程度の融合で一つの生命体を作ると言うものだな。
 実験次第ではあるが、成功する可能性はある。

「それなら俺達にも協力できる事はあるだろう。一緒に頑張っていこう」
「はい、ありがとうございます」

 これで新たな可能性が見つかればいいんだがな。


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【あとがき】
 お読みいただき、ありがとうございます。
 今回で第8章は終了となります。
 次回からは 第9章 です。お楽しみに。

 お気に入りや応援、感想など頂けるとありがたいです。
 今後ともよろしくお願いいたします。
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