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第7章 新たな種族

第54話 貿易準備2

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「リビティナ様。その方法では輸出の関税分が全く無くなりますぞ。損をするのではないですか」

 今度は貿易の事について、お城でブクイットと商業ギルドの人達と話し合いをしている。商業に関する専門的な話もあって、議論も熱を帯びる。

「今までの慣行からすると、国境検問所で商売する品全てに関税をかけております」
「しかも外国の誰とも分からない商人を全て受け入れるなど、もっての外ですぞ」

 自由に貿易をしようと提案したアイデアがことごとくダメ出しされてしまったよ。でもここで引き下がるわけにはいかない。

「でもさ~。ここの町を出る時って持ち出し禁止の品が無いか確かめるだけで、税金は取っていないだろう」
「それは同じ国内だからで……」
「そう、それだよ! 外国でも友好条約を結んでいる国なんだからさ。出る時は荷物チェックだけでいいんじゃないかな」

 やりたいのは、活発な自由貿易。麻薬とか大量の武器とかの禁輸品は、検問所でしっかりと禁止すればいい。それと国内産業に被害が及ぶ物は関税率を高くして保護する。でも他の商品は一定の関税を掛けるだけで輸入すればいいんじゃないかな。

 この世界で資源の輸出入はしていない。資源と言えば金銀銅と鉄ぐらいしか無く、各国で産出してて通貨や加工品として使ってる。だから輸出品に関税を掛けなくても問題ないはずだよ。

「今の魔国は貧しいからね。輸出品に関税を掛けずに安く売れば、共和国内で売れて儲かると思うよ」
「確かに今の魔国では、輸出できるような特産品はありませんからな。輸出に関税をかけても無駄と言うことになるか」

 両国の貨幣価値からすると、輸入品は高価で庶民には手が出ないだろうけど、作った作物などは売れる可能性がある。
 需要が高まれば、どんどん作って売ればいいさ。

「それと、登録商標は厳格にしてもらいたいんだ」

 商業ギルドに対して、自国と共和国の商標を登録してもらい、お互いに自国内で偽物を作らせないようにしてもらう。
 折角、売れた商品がコピーされちゃ、たまったもんじゃないからね。技術力は共和国が遥かに上だ、こちらの商品を守らないと。

「それにね、魔国の貨幣価値が低い時は観光で人を呼び込むのが一番だよ。宿を貸すとか、食事を出したりおみやげ物を作ったりするのは今でもできるだろう」

 人に対してのサービスなら、部屋の改装や食事の提供など少ない投資で、今の住民でもすぐに対応できるからね。

「それとさ~、ブクイット。共和国にある、道を作る魔道具を輸入してくれないかな」
「兵士から聞きましたぞ。賢者様が一瞬で道を切り開いたと。神の御業だと言っておりましたな」
「あれがあれば、魔国内の道路整備が楽になるんだよね。借金してでもいいから買ってほしいんだけど」
「そうですな。交通網の整備も急務ですからな。リビティナ様のご意向に沿えるようにいたしましょう」

 国境検問所の建設や観光スポットの設定と交通手段の確保。やらないといけない事は多いけど、将来に向かって動いている感じがするね。

 ここで議論した通商条約の締結のために、また共和国のヴェルデ女王に会いにいかないと駄目みたいだけど、街道ができて近くなった。何ならリビティナ一人が飛んで行って、書類にハンコだけもらってくる事も、あの女王ならできるんじゃないかな。

 まだ、この国はでき上がったばかりだ。新しい事を取り入れて、どんどん良くしていきたいね。



 さて、里は里でしないといけない事がある。

「どうだった、そのオリハルコンの鏡は」
「リビティナ様の言われた通り、この曲面は放物曲線になっていますな」

 妖精族古来の技法で作られたと言う鏡。鏡に映る像が歪む事から平面ではないと思っていたけど、パラボラアンテナのような曲面だったんだね。里の工場長が色々と調べてくれて、リビティナと一緒に検討を重ねていく。

「この二枚の鏡を向かい合わせにすれば、光通信ができるはずなんだけど」
「魔力で光ると言う事は、魔力を遠方に送れると言う事でしょうか」
「多分ね」

 色々と実験をしたいけど、柄の部分が魔道具になっていて中身が良く分からず、ブラックボックス状態になっている。妖精族の女王から贈ってもらった品だからと丁寧に扱っているからね。

「一枚だけ分解してみようか」
「えっ! オリハルコンの鏡を壊してしまうんですか!」

 横にいたネイトスが大きな声を上げた。ネイトス、顔が怖いよ。余程オリハルコンに執着があるようだね。

「壊すんじゃなくて、分解するだけだからね」

 本当はオリハルコン自体にも興味があるから、材質を調べるために一枚は壊そうと思っているんだけど、ネイトスに言うとすごく怒られそうだよ。
 工場長に言って、慎重に分解してもらう。

「これは何でしょうな。細いガラスの中に糸のような物が入ってますな」
「どれどれ」

 鏡の柄の部分からグラスファイバーのような極細のガラスが四本、鏡本体の上下左右四ヶ所に接続されている。
 多分これが魔力を伝える物質なんだろう。

「魔素がガラスを通過する事はできませんから、ガラスの糸の内部に魔素は無い状態ですな。このガラスに魔力だけが通って、途中では魔法が発動せんのでしょうな」

 空気中や地中、この世界のあらゆる場所に魔素は充満しているけど、ガラスだけは通過できないようだ。電球の内部、あれは一度真空にしているから、内部に魔力を送っても魔法が発動しない。その事からも魔素がガラスを通過できない事は確実だ。

「魔力を通す糸の回りをガラスで固めて、魔力だけを伝送していると言う事かな」
「これだけ細いガラスにすれば、ある程度は曲がりますからな。好きな場所に魔力を誘導できるのでしょうな」

 ガラスの中身は細い銅線である事が分かった。柄の指をかける部分は銀でできているから、魔力をこの金属に流して誘導するようだ。
 なるほど。妖精族が使っている魔道具の一端が、なんとなく分かってきた。
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