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第二章
第19話 夏バテ
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お盆も終わり九月に入ったが、まだまだ暑い日が続いている。ナルも俺も夏バテ気味だ。最近ナルの食欲がない。特段、体の調子が悪い訳でもなさそうなんだが……。
病気の可能性もあるが、健康な猫でも食欲を失くすときはあるようだ。同じ味の餌に飽きるとか、環境が変わったりすると食欲を失くすようだな。
シャウラと一緒にお盆休みを過ごしてまたすぐに居なくなったからな、そんなのも影響しているのかもしれん。
簡単にできる対処法は、餌の種類を変えてみる事だ。近くのスーパーに行って同じメーカーの味の違う缶詰を買ってみた。
「ナル。今度のはマグロ味だぞ。どうだ美味そうだろう」
今日から1パック分の2日間はこの味で試してみよう。しかしナルの食欲はあまり変わらなかった。
「今日はシラス入りのカツオ味だ。なんだか豪華だな」
だがダメだった。前にシャウラが食べていた乾燥したキャットフードを与えた時は、見向きもしなかったから缶詰じゃないとダメだろうな。少しメーカーを変えてみようか。まったく違うメーカーの猫缶を与えたが、余計に餌を食べなくなってしまった。
かといって人間の食べている物を与えるのは良くない。特に玉ねぎが入っている物は毒になる。確か犬も同じだったな。スーパーなどで売っている人間用に調理した物をそのまま与えて、毒になる成分が入っていたら大変だ。
刺身などはいいらしいが、俺の家計が大変な事になる。すると焼き魚か。ネットで調べると味付けせずしっかり焼いて骨を抜けば大丈夫そうだが少し面倒だな。
それなら鶏肉だろうか。茹でるだけで食べられるようになるらしい。早速やってみるか。
冷蔵庫にあった鶏のむね肉を切って鍋に入れて茹でる。猫舌というぐらいだから熱かったら食べないだろうな。水に晒して冷やしてから、食べやすいように身をほぐし、いつもの缶詰と同じ分量だけ小鉢に盛り付ける。
コトンと床に置いた小鉢にナルが近づき、いつもとは違う変な物があると臭いを嗅いでいる。
「おっ、これなら食べてくれるのか」
俺の作った肉が気に入ったのかガツガツと食べてくれた。栄養バランスなどを考えると、いつもこればかりを与える訳にもいかんが、たまにならこういうのもいいだろう。
暑い夏。ナルは涼しい場所を見つけるのが上手い。俺が仕事に出て部屋の空調を使っていない時は、キッチンではなく和室にいるようだ。帰って来た時に和室の方から歩いて来てお出迎えしてくれる。
どうもベランダに出るガラス扉の辺りが涼しいらしい。こちら側はいつもマンションの陰になっていて涼しいのだろう。ガラスに寄り添って寝ている時がある。
野良猫でも夏は日陰に集まり、冬は日向に集まって来るという話を聞いた事がある。そういえば最近道端で野良猫を見かけることが少なくなったように思う。この暑さを避けて日陰で涼んでいるのだろう。
だが犬は真夏でも日向を散歩しているな。冬は雪の中を駆け回っているイメージだが、あいつら大丈夫なのか? 長くペットとして飼われていて人間との暮らしの中で、野生としての本能が薄れてきているんじゃないのか。その辺りはあまり分らんが、野生動物は空調もなく生きなきゃならんのは大変な事だろうな。
そうだな、ここのところ暑いしナルにシャンプーでもしてやろうか。最近洗っていなかったし、冷たい水で体を洗えば少しは涼めるんじゃないだろうか。
バスルームに入って冷たい水をナルにかけてやるが、ナルは水に濡れるのを嫌って暴れる。最初の頃に比べれば慣れてきているが、押さえていないと狭い風呂の中を走り回ってしまう。
「ほら、顔や頭も洗わんとな」
耳の中に水が入らないように注意して顔にも水をかける。ナルは身を震わせて飛沫を辺りに飛び散らせて、お陰で俺もびしょびしょだ。
バスルームを出て毛を乾かすためにドライヤーを使うがこれも嫌がる。どうもこのファンの大きな音が嫌みたいだな。猫は音に敏感だ。掃除機の音も嫌がり、何かに追われているように狭い所や高い場所に逃げていく。
「濡れたままだと、いくらなんでも風邪を引くからな。しばらく我慢してくれ」
シャンプーをして、さっぱりしたナル。さっぱりしたと言うのも人間から見ての事だろうな。猫から見たらいい迷惑かもしれん。無理やり人間の生活に付き合わされているんだからな。
今年の夏は冷房の設定温度を高くして冷えすぎないようにしている。元から冷えすぎるのは俺も苦手だったが、部屋の温度差があるとナルが調子を崩してしまいそうで怖かった。ナルは俺がいない時やゆっくりしたい時などはキッチンで眠っている。外よりは涼しいだろうがあの部屋は暑いからな。
夏でも毛皮を纏っている猫がどう感じているかは分からないが、少しは人間側も譲歩しないと。ナルにはいつも健康にいてもらいたい。まあ、猫の我がままに人間が振り回されることがあってもいいだろう。
その後のナルの食事だが、今までの猫缶に鰹節をまぶしただけでガツガツ食べるようになった。
「カツオ味に鰹節って……そんなんでいいのかよ」
今まで色々と苦労したのがバカらしくなってくる。ナルの考えていることは良く分からんが少々の我がままなら付き合ってやるよ。これからもよろしくな。
病気の可能性もあるが、健康な猫でも食欲を失くすときはあるようだ。同じ味の餌に飽きるとか、環境が変わったりすると食欲を失くすようだな。
シャウラと一緒にお盆休みを過ごしてまたすぐに居なくなったからな、そんなのも影響しているのかもしれん。
簡単にできる対処法は、餌の種類を変えてみる事だ。近くのスーパーに行って同じメーカーの味の違う缶詰を買ってみた。
「ナル。今度のはマグロ味だぞ。どうだ美味そうだろう」
今日から1パック分の2日間はこの味で試してみよう。しかしナルの食欲はあまり変わらなかった。
「今日はシラス入りのカツオ味だ。なんだか豪華だな」
だがダメだった。前にシャウラが食べていた乾燥したキャットフードを与えた時は、見向きもしなかったから缶詰じゃないとダメだろうな。少しメーカーを変えてみようか。まったく違うメーカーの猫缶を与えたが、余計に餌を食べなくなってしまった。
かといって人間の食べている物を与えるのは良くない。特に玉ねぎが入っている物は毒になる。確か犬も同じだったな。スーパーなどで売っている人間用に調理した物をそのまま与えて、毒になる成分が入っていたら大変だ。
刺身などはいいらしいが、俺の家計が大変な事になる。すると焼き魚か。ネットで調べると味付けせずしっかり焼いて骨を抜けば大丈夫そうだが少し面倒だな。
それなら鶏肉だろうか。茹でるだけで食べられるようになるらしい。早速やってみるか。
冷蔵庫にあった鶏のむね肉を切って鍋に入れて茹でる。猫舌というぐらいだから熱かったら食べないだろうな。水に晒して冷やしてから、食べやすいように身をほぐし、いつもの缶詰と同じ分量だけ小鉢に盛り付ける。
コトンと床に置いた小鉢にナルが近づき、いつもとは違う変な物があると臭いを嗅いでいる。
「おっ、これなら食べてくれるのか」
俺の作った肉が気に入ったのかガツガツと食べてくれた。栄養バランスなどを考えると、いつもこればかりを与える訳にもいかんが、たまにならこういうのもいいだろう。
暑い夏。ナルは涼しい場所を見つけるのが上手い。俺が仕事に出て部屋の空調を使っていない時は、キッチンではなく和室にいるようだ。帰って来た時に和室の方から歩いて来てお出迎えしてくれる。
どうもベランダに出るガラス扉の辺りが涼しいらしい。こちら側はいつもマンションの陰になっていて涼しいのだろう。ガラスに寄り添って寝ている時がある。
野良猫でも夏は日陰に集まり、冬は日向に集まって来るという話を聞いた事がある。そういえば最近道端で野良猫を見かけることが少なくなったように思う。この暑さを避けて日陰で涼んでいるのだろう。
だが犬は真夏でも日向を散歩しているな。冬は雪の中を駆け回っているイメージだが、あいつら大丈夫なのか? 長くペットとして飼われていて人間との暮らしの中で、野生としての本能が薄れてきているんじゃないのか。その辺りはあまり分らんが、野生動物は空調もなく生きなきゃならんのは大変な事だろうな。
そうだな、ここのところ暑いしナルにシャンプーでもしてやろうか。最近洗っていなかったし、冷たい水で体を洗えば少しは涼めるんじゃないだろうか。
バスルームに入って冷たい水をナルにかけてやるが、ナルは水に濡れるのを嫌って暴れる。最初の頃に比べれば慣れてきているが、押さえていないと狭い風呂の中を走り回ってしまう。
「ほら、顔や頭も洗わんとな」
耳の中に水が入らないように注意して顔にも水をかける。ナルは身を震わせて飛沫を辺りに飛び散らせて、お陰で俺もびしょびしょだ。
バスルームを出て毛を乾かすためにドライヤーを使うがこれも嫌がる。どうもこのファンの大きな音が嫌みたいだな。猫は音に敏感だ。掃除機の音も嫌がり、何かに追われているように狭い所や高い場所に逃げていく。
「濡れたままだと、いくらなんでも風邪を引くからな。しばらく我慢してくれ」
シャンプーをして、さっぱりしたナル。さっぱりしたと言うのも人間から見ての事だろうな。猫から見たらいい迷惑かもしれん。無理やり人間の生活に付き合わされているんだからな。
今年の夏は冷房の設定温度を高くして冷えすぎないようにしている。元から冷えすぎるのは俺も苦手だったが、部屋の温度差があるとナルが調子を崩してしまいそうで怖かった。ナルは俺がいない時やゆっくりしたい時などはキッチンで眠っている。外よりは涼しいだろうがあの部屋は暑いからな。
夏でも毛皮を纏っている猫がどう感じているかは分からないが、少しは人間側も譲歩しないと。ナルにはいつも健康にいてもらいたい。まあ、猫の我がままに人間が振り回されることがあってもいいだろう。
その後のナルの食事だが、今までの猫缶に鰹節をまぶしただけでガツガツ食べるようになった。
「カツオ味に鰹節って……そんなんでいいのかよ」
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