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第二章
第17話 お盆休み2
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ナルが慣れてきたところで、早瀬さんの猫、シャウラと顔を合わせして猫同士の相性を見るらしい。丸六日間とはいえ、この家の中で暮らすからにはナルとも仲良くなってもらいたい。
「それじゃ、私が隣の部屋でシャウラを抱き上げますので、篠崎さんはナルちゃんを抱いたまま隣に来てくれますか」
お互いの飼い主が猫を抱いたまま座って、顔を合わせれば喧嘩にもならないだろうと言う。
隣の部屋でシャウラと顔を合わせしたが、どうもナルは警戒して逃げようとしているのか、もぞもぞと腕の中で動いている。
ナルを落ち着かせようと背中を撫でてやる。
「別に怒っている訳ではないが、相当警戒しているようだな」
「シャウラの方はそれほどでも無いようですね。遊んでもらいたそうにしてますから」
歳をとった猫ほど、他の猫が自分のテリトリー内に入るのを嫌うそうだ。仔猫同士ならすぐにでもじゃれ合うらしい。ナルとは違って、シャウラはまだ2歳ほどだから柔軟なんだろう。
「もし、ナルちゃんが嫌うようなら、シャウラをこのキャリーバッグの中に入れて飼っていただいて結構です」
早瀬さんが持ってきたキャリーバッグはハードタイプで少し大きめだ。猫のケージとして使ってほしいと言っている。
「そうだな。喧嘩されるよりはいいだろうな」
ご飯やトイレなどは、この机の下でしてもらって、ナルを近づける時はバッグに入ってもらえばいいだろう。俺が時々遊んでやれば寂しくも無いだろうしな。
早瀬さんは今日の夕方、新幹線で実家に帰るそうだ。こちらに帰って来るのは来週木曜日の夜、翌日にはシャウラを引き取りに来ると言っている。
「ねえ、ねえ。あたしは今年田舎に帰んないから、またナルちゃん見に来てもいい?」
「バカ。佐々木はもう来るんじゃねーよ」
「え~、つまんない」
まあ、早瀬さんが引き取りに来る時にまた付いて来るんだろうが、それまでは俺もゆっくりしたいんだ。佐々木の暇つぶしに付き合ってられるか。
「それじゃ、気を付けて帰るんだぞ」
「はい。シャウラの事、よろしくお願いします」
二人が帰った後、シャウラ用の餌を器に入れて、水を置いてあげる。餌は乾燥したキャットフードで、計量スプーンで測った量を与えればいいそうだ。
キッチンに引き籠っていたナルを抱き上げて、奥の和室に向かう。色んな人が来てナルも疲れただろう。部屋で一緒にいてやろ。
ナルを撫でてやっていると、ふすまが開いていく。
「ウニャ~ン」
「うおっ、こいつもふすまを開けられるのか!」
自分の力でふすまを開けてシャウラが入ってきた。ナルよりも体は小さいし、早瀬さんのワンルームマンションにはこんなふすまは無いはずだ。でも器用にふすまの端に片手を入れて横に引いて開けている。
部屋に入ってきたシャウラを見たナルがテレビ台の裏に隠れた。この分だと直接ナルと触れ合うのはまだ早いだろうな。
「仕方ない。少し遊んでやるか」
人懐っこいシャウラは俺が色んな所を撫でてやっても嫌がらない。毛の手入れも行き届いているのか、つやつやでモフモフだ。手の肉球も触らせてくれる。爪を出してみたがちゃんと切り揃えてあって、これなら爪で引っ掻いても家具などを傷をつける事もないだろう。
一通り遊んでやったら真ん中の部屋に行って、キャリーバッグの中に入って眠ったようだ。
「ナル。すまなかったな」
まだテレビ台の裏でじっとこちらを見ていたナルに声をかける。ナルはシャウラばかり構っている俺に怒っているのか、すぐには出てこなかった。
そういえば俺も弟ができた時に、弟ばかり可愛がる親を恨めしく思ったものだ。大人になってその時の事を母親に聞いたが、兄弟に対してまったく同じように接していたと言っていた。子供心としては自分への愛情が弟に向くのがたまらなく寂しかったんだろう。
「なあ、ナル。俺はお前の事を大事に思っているんだぞ。シャウラとは一週間程の短い間だけだ。仲良くしてやってくれんか」
俺がそう優しく語り掛けると、ナルはテレビ台の後ろから出てきたくれた。ナルを膝の上に乗せて頭を撫でてやる。
まだお盆休みは始まったばかりだ。出かける用事もあるが、明日からは昼間もずっとナルと一緒にいられる。
「少しぐらいは甘やかしてやるか」
その日の晩は、ナルを布団中に入れてやり一緒に寝る。また明日も一緒に遊んでやるからな。
翌朝、ナルに頬を引っ掛かれる前に起きる。
「おっ、何だ! シャウラもここで寝てたのかよ」
ナルが寝ていた反対側の布団の上、俺の顔の辺りにシャウラがいる。左右をメス猫に挟まれて、これも両手に花と言うんだろうか……とバカなことを考えながら、ナルと一緒にキッチンへと向かう。
朝の六時前。シャウラはまだ起きる時間じゃないんだろう、布団の上で幸せそうに寝ている。
ナルに餌を与えて、水を替えて、トイレの掃除をする。休みの日であってもいつもと同じ事をしていく。今日からはシャウラの分の餌も用意する。
自分の朝食を用意して和室へと行くと、シャウラも起きてきたみたいだが、まだ眠いようだな。
早瀬さんは俺よりも会社に近い所に住んでいるから、朝早くに起きる必要もない。シャウラもそれに合わせた生活リズムなんだろう。もそもそとキャリーバック近くに置いた自分の餌の方に歩いて行った。
朝のテレビを見ていたが、いつもならナルがこの部屋にやってくるんだがまだ来ないな。そうか、真ん中の部屋にシャウラがいるから来れないのか。仕方ない、俺がキッチンまで行ってやろう。
ガラス戸の向こう、戸は少し開けているがこちらに来れなくて、ウロウロしているナルを抱きかかえて和室の部屋に行く。
ナルも嬉しいのか「ニャ~」と鳴いてじゃれてくる。
もう少し慣れてくればナルも気兼ねなくこっちに来れるのだろうが、それまでは俺がナルの所にお迎えに行くようにしよう。
「それじゃ、私が隣の部屋でシャウラを抱き上げますので、篠崎さんはナルちゃんを抱いたまま隣に来てくれますか」
お互いの飼い主が猫を抱いたまま座って、顔を合わせれば喧嘩にもならないだろうと言う。
隣の部屋でシャウラと顔を合わせしたが、どうもナルは警戒して逃げようとしているのか、もぞもぞと腕の中で動いている。
ナルを落ち着かせようと背中を撫でてやる。
「別に怒っている訳ではないが、相当警戒しているようだな」
「シャウラの方はそれほどでも無いようですね。遊んでもらいたそうにしてますから」
歳をとった猫ほど、他の猫が自分のテリトリー内に入るのを嫌うそうだ。仔猫同士ならすぐにでもじゃれ合うらしい。ナルとは違って、シャウラはまだ2歳ほどだから柔軟なんだろう。
「もし、ナルちゃんが嫌うようなら、シャウラをこのキャリーバッグの中に入れて飼っていただいて結構です」
早瀬さんが持ってきたキャリーバッグはハードタイプで少し大きめだ。猫のケージとして使ってほしいと言っている。
「そうだな。喧嘩されるよりはいいだろうな」
ご飯やトイレなどは、この机の下でしてもらって、ナルを近づける時はバッグに入ってもらえばいいだろう。俺が時々遊んでやれば寂しくも無いだろうしな。
早瀬さんは今日の夕方、新幹線で実家に帰るそうだ。こちらに帰って来るのは来週木曜日の夜、翌日にはシャウラを引き取りに来ると言っている。
「ねえ、ねえ。あたしは今年田舎に帰んないから、またナルちゃん見に来てもいい?」
「バカ。佐々木はもう来るんじゃねーよ」
「え~、つまんない」
まあ、早瀬さんが引き取りに来る時にまた付いて来るんだろうが、それまでは俺もゆっくりしたいんだ。佐々木の暇つぶしに付き合ってられるか。
「それじゃ、気を付けて帰るんだぞ」
「はい。シャウラの事、よろしくお願いします」
二人が帰った後、シャウラ用の餌を器に入れて、水を置いてあげる。餌は乾燥したキャットフードで、計量スプーンで測った量を与えればいいそうだ。
キッチンに引き籠っていたナルを抱き上げて、奥の和室に向かう。色んな人が来てナルも疲れただろう。部屋で一緒にいてやろ。
ナルを撫でてやっていると、ふすまが開いていく。
「ウニャ~ン」
「うおっ、こいつもふすまを開けられるのか!」
自分の力でふすまを開けてシャウラが入ってきた。ナルよりも体は小さいし、早瀬さんのワンルームマンションにはこんなふすまは無いはずだ。でも器用にふすまの端に片手を入れて横に引いて開けている。
部屋に入ってきたシャウラを見たナルがテレビ台の裏に隠れた。この分だと直接ナルと触れ合うのはまだ早いだろうな。
「仕方ない。少し遊んでやるか」
人懐っこいシャウラは俺が色んな所を撫でてやっても嫌がらない。毛の手入れも行き届いているのか、つやつやでモフモフだ。手の肉球も触らせてくれる。爪を出してみたがちゃんと切り揃えてあって、これなら爪で引っ掻いても家具などを傷をつける事もないだろう。
一通り遊んでやったら真ん中の部屋に行って、キャリーバッグの中に入って眠ったようだ。
「ナル。すまなかったな」
まだテレビ台の裏でじっとこちらを見ていたナルに声をかける。ナルはシャウラばかり構っている俺に怒っているのか、すぐには出てこなかった。
そういえば俺も弟ができた時に、弟ばかり可愛がる親を恨めしく思ったものだ。大人になってその時の事を母親に聞いたが、兄弟に対してまったく同じように接していたと言っていた。子供心としては自分への愛情が弟に向くのがたまらなく寂しかったんだろう。
「なあ、ナル。俺はお前の事を大事に思っているんだぞ。シャウラとは一週間程の短い間だけだ。仲良くしてやってくれんか」
俺がそう優しく語り掛けると、ナルはテレビ台の後ろから出てきたくれた。ナルを膝の上に乗せて頭を撫でてやる。
まだお盆休みは始まったばかりだ。出かける用事もあるが、明日からは昼間もずっとナルと一緒にいられる。
「少しぐらいは甘やかしてやるか」
その日の晩は、ナルを布団中に入れてやり一緒に寝る。また明日も一緒に遊んでやるからな。
翌朝、ナルに頬を引っ掛かれる前に起きる。
「おっ、何だ! シャウラもここで寝てたのかよ」
ナルが寝ていた反対側の布団の上、俺の顔の辺りにシャウラがいる。左右をメス猫に挟まれて、これも両手に花と言うんだろうか……とバカなことを考えながら、ナルと一緒にキッチンへと向かう。
朝の六時前。シャウラはまだ起きる時間じゃないんだろう、布団の上で幸せそうに寝ている。
ナルに餌を与えて、水を替えて、トイレの掃除をする。休みの日であってもいつもと同じ事をしていく。今日からはシャウラの分の餌も用意する。
自分の朝食を用意して和室へと行くと、シャウラも起きてきたみたいだが、まだ眠いようだな。
早瀬さんは俺よりも会社に近い所に住んでいるから、朝早くに起きる必要もない。シャウラもそれに合わせた生活リズムなんだろう。もそもそとキャリーバック近くに置いた自分の餌の方に歩いて行った。
朝のテレビを見ていたが、いつもならナルがこの部屋にやってくるんだがまだ来ないな。そうか、真ん中の部屋にシャウラがいるから来れないのか。仕方ない、俺がキッチンまで行ってやろう。
ガラス戸の向こう、戸は少し開けているがこちらに来れなくて、ウロウロしているナルを抱きかかえて和室の部屋に行く。
ナルも嬉しいのか「ニャ~」と鳴いてじゃれてくる。
もう少し慣れてくればナルも気兼ねなくこっちに来れるのだろうが、それまでは俺がナルの所にお迎えに行くようにしよう。
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