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第一章
第8話 ナル1
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いつものキャリーケースに入れられて来た場所は、私の知らない部屋だった。
近くの人間が何か言ってケースの出入り口を開けたけど、こんなところにホイホイと出て行く訳にはいかないわ。臭いを嗅いで周りの様子を確かめる。
狭い部屋ね。周りを警戒しながらゆっくりと外に出る。すると人間がいきなり手を伸ばして触ろうとしてきた。
「いきなり、何すんのよ」
そう言って、後ろの手の届かない位置まで下がる。レディーに気安く触ろうとするなんて、私はそんな安っぽい女じゃないわよ。
しばらくしてその人間は扉の向こうに消え、部屋の隅には見慣れた私用のトイレがある。臭いを嗅いだけどいつも使っているトイレだ。その向こうには暗くて狭い場所があった。
「ここは落ち着けるわね」
ちょうど良い広さで丸まって寝るにはいい場所だわ。そこで少し落ち着いた後、他の場所も見て回る。するとさっきの人間がまた部屋にやって来た。コトンと床に置いた皿にはいつものご飯が乗ってる。
ちょうどお腹が空いていたのよね。
この人間は私の御主人様なのかしら。今まで一緒にいた御主人様はどこかしら、臭いはしないわね。
まあいいわ、ご飯がもらえて眠れる場所もある。それがあれば今のところは生きていけるわ。それにしてもここは何もない部屋ね。
「ねえ、あの高い場所は何かしら」
人間に尋ねてみたけど答えは返ってこない。
ここから飛び移って行けば登れそうね。私は手前の台から順に、あの高い場所を目指しジャンプする。ここはこの部屋で一番高い場所、平らで丸まって座れる広さもある。ここも落ち着けるわね。
下にいる人間が何かをしだした。ああ、自分の餌を作っているのね。私のご飯とは違って熱かったり冷たかったりで食べれない物も多いけど、中にはすごく美味しい物もある。よくおやつで食べさせてもらっていたわね。
人間が扉を開けて奥へと消える。なるほど、ここだけじゃなくてあの奥にも部屋があるようね。
私は下に降りて扉の前に立つと、向こう側がうっすらと見えている。どうやれば開くのかしら。
扉を押したりしたけど動かなかった。すると向こう側から人間がやってくるのが見えた。
扉が横に動いて隙間ができる。中に入るとさっきと同じぐらいの部屋、真ん中に人間が座っているけど、気にしないで辺りを調べていく。
何か上の方に白い球があるわ。なんだか気になるわね、体がムズムズしてきた。
小さく揺れる白い球。それに向かって飛び上がる。真ん中にいた人間も横になって転がりながら遊んでいるようだけど、少し邪魔よ。でもこの白い球は面白いわ。何度も飛び上がって球を手で弾く。
やっぱりこの人間は御主人様みたいね、一緒に遊んでくれたわ。一通り遊んで、元の部屋に戻って少しゆっくりしましょう。トイレの置いてある反対側の奥の寝床に行って休む。
夜中、目が覚めたけど少し寒いわね。前の御主人様は温かい物に包まれて眠っていた。新しい御主人様の所に行ってみようかしら。
「この扉、重いわね」
でも昼間、扉が横に開くのを見た。ここに爪を引っ掛ければ開くはず。よし、少し隙間ができたわ。もうちょっとね。手を入れて思いっきり横に動かす。
「私ぐらいになればこんな扉を開けるなんて簡単な事だわ」
その奥には白い紙の扉があるけど、これは簡単だわ。扉の横に手を突いて、隙間に爪をかけて横に引けばすぐに開いた。
やっぱりこの御主人様も、温かい物に包まれているわね。これはフカフカで寝やすい。私が一緒に寝てあげるわ。これなら、あなたも寂しくないでしょう。
翌朝。私は目ざめたけど、御主人様がまだ眠っている。いつもならこの時間に朝ご飯をくれるはずだわ。
「さあ、起きなさいな。もう朝よ」
そう言ったけど、まだ起きない。仕方のない御主人様ね。ほっぺを優しく叩く。
「ねえ、起きなさいってば」
何度もほっぺを叩いたけど、まだ起きない。
「もう、どうしたのよ。私はお腹が空いているのよ。起きなさいってば」
最終手段ね。爪を出してほっぺたを引っ掻く。
声を上げて御主人様が起きた。ほんと仕方のない人ね。さっさと私のご飯を用意しなさい。
紙の扉と、少し重い扉を抜けて、御主人様を最初居た場所まで連れて行く。
そうよ、ちゃんとこの時間にご飯を用意するのが、御主人としての仕事なんだからね。
まだまだなっていないところもあるけど、まあ、この人となら上手くやっていけそうな気がするわ。
近くの人間が何か言ってケースの出入り口を開けたけど、こんなところにホイホイと出て行く訳にはいかないわ。臭いを嗅いで周りの様子を確かめる。
狭い部屋ね。周りを警戒しながらゆっくりと外に出る。すると人間がいきなり手を伸ばして触ろうとしてきた。
「いきなり、何すんのよ」
そう言って、後ろの手の届かない位置まで下がる。レディーに気安く触ろうとするなんて、私はそんな安っぽい女じゃないわよ。
しばらくしてその人間は扉の向こうに消え、部屋の隅には見慣れた私用のトイレがある。臭いを嗅いだけどいつも使っているトイレだ。その向こうには暗くて狭い場所があった。
「ここは落ち着けるわね」
ちょうど良い広さで丸まって寝るにはいい場所だわ。そこで少し落ち着いた後、他の場所も見て回る。するとさっきの人間がまた部屋にやって来た。コトンと床に置いた皿にはいつものご飯が乗ってる。
ちょうどお腹が空いていたのよね。
この人間は私の御主人様なのかしら。今まで一緒にいた御主人様はどこかしら、臭いはしないわね。
まあいいわ、ご飯がもらえて眠れる場所もある。それがあれば今のところは生きていけるわ。それにしてもここは何もない部屋ね。
「ねえ、あの高い場所は何かしら」
人間に尋ねてみたけど答えは返ってこない。
ここから飛び移って行けば登れそうね。私は手前の台から順に、あの高い場所を目指しジャンプする。ここはこの部屋で一番高い場所、平らで丸まって座れる広さもある。ここも落ち着けるわね。
下にいる人間が何かをしだした。ああ、自分の餌を作っているのね。私のご飯とは違って熱かったり冷たかったりで食べれない物も多いけど、中にはすごく美味しい物もある。よくおやつで食べさせてもらっていたわね。
人間が扉を開けて奥へと消える。なるほど、ここだけじゃなくてあの奥にも部屋があるようね。
私は下に降りて扉の前に立つと、向こう側がうっすらと見えている。どうやれば開くのかしら。
扉を押したりしたけど動かなかった。すると向こう側から人間がやってくるのが見えた。
扉が横に動いて隙間ができる。中に入るとさっきと同じぐらいの部屋、真ん中に人間が座っているけど、気にしないで辺りを調べていく。
何か上の方に白い球があるわ。なんだか気になるわね、体がムズムズしてきた。
小さく揺れる白い球。それに向かって飛び上がる。真ん中にいた人間も横になって転がりながら遊んでいるようだけど、少し邪魔よ。でもこの白い球は面白いわ。何度も飛び上がって球を手で弾く。
やっぱりこの人間は御主人様みたいね、一緒に遊んでくれたわ。一通り遊んで、元の部屋に戻って少しゆっくりしましょう。トイレの置いてある反対側の奥の寝床に行って休む。
夜中、目が覚めたけど少し寒いわね。前の御主人様は温かい物に包まれて眠っていた。新しい御主人様の所に行ってみようかしら。
「この扉、重いわね」
でも昼間、扉が横に開くのを見た。ここに爪を引っ掛ければ開くはず。よし、少し隙間ができたわ。もうちょっとね。手を入れて思いっきり横に動かす。
「私ぐらいになればこんな扉を開けるなんて簡単な事だわ」
その奥には白い紙の扉があるけど、これは簡単だわ。扉の横に手を突いて、隙間に爪をかけて横に引けばすぐに開いた。
やっぱりこの御主人様も、温かい物に包まれているわね。これはフカフカで寝やすい。私が一緒に寝てあげるわ。これなら、あなたも寂しくないでしょう。
翌朝。私は目ざめたけど、御主人様がまだ眠っている。いつもならこの時間に朝ご飯をくれるはずだわ。
「さあ、起きなさいな。もう朝よ」
そう言ったけど、まだ起きない。仕方のない御主人様ね。ほっぺを優しく叩く。
「ねえ、起きなさいってば」
何度もほっぺを叩いたけど、まだ起きない。
「もう、どうしたのよ。私はお腹が空いているのよ。起きなさいってば」
最終手段ね。爪を出してほっぺたを引っ掻く。
声を上げて御主人様が起きた。ほんと仕方のない人ね。さっさと私のご飯を用意しなさい。
紙の扉と、少し重い扉を抜けて、御主人様を最初居た場所まで連れて行く。
そうよ、ちゃんとこの時間にご飯を用意するのが、御主人としての仕事なんだからね。
まだまだなっていないところもあるけど、まあ、この人となら上手くやっていけそうな気がするわ。
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