【改訂版】目指せ遥かなるスローライフ!~放り出された異世界でモフモフと生き抜く異世界暮らし~

水瀬 とろん

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第5章 人族編

第136話 模擬戦闘

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 どうやら戦車の模擬戦闘の準備ができたようだ。町近くの平原に戦車を用意してくれて、軍の関係者も立ち会い戦車の性能を確かめる。

「戦車は2輌用意した。1輌は廃棄予定だ、壊してもらって構わない」

 戦車本体はメイの部屋で見たのと同じ物のようだが、砲塔が弓型になっている旧型だな。大戦時は大型の矢を放っていたが、鋼鉄製の砲弾をこの弓で撃ち出すそうだ。
 砲塔の中間部に鋼鉄製の弓が2つ、上下に挟む形で取り付けられている。弦は鋼鉄製の強力なワイヤーで、砲塔の溝を通し電動モーターで引っ張っているそうだ。

 火薬を作る事ができないので、この形になったと説明してくれた。
 チセが魔弾銃を開発した時の事を思い出した。あの時も筒状の銃型にして、空気圧や火の魔法を使って魔弾を飛ばす事を考えたが、弓型が一番良いと結論された。ここの技術者も同じ結論になったようだな。
 それぞれの専門知識を持つ職人達が出した結論だ、これが正解なのだろう。

「ではデモンストレーションとして、戦車を走らせてみよう」

 戦車はふたり乗りで後部装甲の中に蒸気機関があり、黒い煙と白い蒸気をなびかせながら俺達の前を走り抜ける。
 装甲はしっかりしているようだが、少し重そうだ。原付よりは速いようだが、騎馬が全力で走るよりずいぶんと遅い感じだな。これが戦車の最高速度らしい。

「ユヅキさん、あの走る鉄の箱が、この国の兵器なの。足もないのにどうやって走っているのかしら」
「なんだか下の方でムカデみたいな細かな足が回ってるようね。なんだか気持ち悪いわ」
「カリン。あれはキャタピラーと言って、沼のような悪路でも走る事ができるんだぞ」
「だがあまり小回りができていないようだ。ユヅキ、あれと戦ってもいいのか」
「あの走っている方は壊さないようにしてくれ。横にある止まった戦車に魔法攻撃をするんだ」

 まずはその止まった廃棄用の戦車で、装甲の強度テストを行なう。

「カリン。あの戦車に正面から岩魔法で攻撃してくれないか」
「ええ、いいわよ。ストーン・ストライク」

 撃ち出された岩は装甲に弾かれて砕け散った。傾斜装甲というやつだな。斜めに取り付けた装甲で相手の砲弾などを逸らせて弾くものだ。

「へぇ~。なかなかやるわね」
「タティナ。炎魔法で攻撃してくれるか」

 タティナの放ったファイヤーボールも弾き返す。

「次、ハルミナ。側面からの攻撃を頼む」
「は~い」

 戦車は少し揺れたが、ハルミナの氷の塊も粉砕した。

「長官。あの車輛は現在使っている戦車と遜色ないのだな」
「はい、市長。走行系の寿命のため廃棄する物で、外部装甲は最新型と同じ物です」

 設営されたテントには長いテーブルと椅子が用意されている。この市の防衛責任者や技術者と市長などの首脳陣が集まり、模擬戦闘を注視する。

「市長。この装甲なら魔法も充分防げるんじゃないでしょうか」
「そうだな、うまく防いでいるように見えるな」

 さて、俺達のデモンストレーションもこんなものだな。本気を出させてもらおうか。

「ユヅキ、そろそろ壊してもいいかな?」
「そうだな、やってくれ」

 カリンの高速の岩魔法を上空から装甲に垂直に当たるようにぶつける。傾斜装甲であっても魔法の軌道を変えての攻撃では意味がない。装甲に大きな穴が開き、片方のキャタピラーが吹き飛ぶ。
 タティナの炎魔法も装甲全体を業火で燃え上がらせる。装甲自体は耐えられるが、中の人間は耐えられず死ぬだろう。
 ハルミナも氷の槍を後方の蒸気機関がある場所に突き刺す。熱を逃がすために装甲には隙間がある、この部分が一番弱い箇所だ。

 テントから一斉にどよめきが起こる。戦車が破壊されていく様子に軍関係者は立ち上がり、市長は驚愕の眼差しを向ける。

「こ、これが本当の魔法攻撃という物なのか!!」
「普通の魔術師ならこの程度の魔術は簡単に使いこなす。止まった戦車であれば破壊するのは簡単だ」

 次に走行する戦車を使い模擬戦闘を行う。陣地を模した土の壁を3枚作り、それを砲撃で破壊する。全て破壊されるまでに俺達が戦車の動きを止めれば、俺達の勝ちとなる。

「それぞれの有効射程の位置からスタートしよう」
「分かった、では始めてくれ」

 戦車が走り始めると、ハルミナが戦車の前に沼を作る。戦車は多少スピードが落ちたが難なく走り続け、土の壁に向けて砲弾を発射する。1枚目の土の壁が木っ端みじんに吹き飛ぶ。だが、次の砲弾を装着するまでには時間がある。

「じゃあ、土魔法で傾けてみようかしら」

 カリンが走行している戦車のキャタピラーの前に小さな坂を作る。坂に乗り上げ、片輪走行となりながらも走行する戦車。その後地響きを上げ水平状態に戻ったが、中の操縦者は相当な衝撃を受けたはずだ。

 ハルミナは戦車の前面に向け、炎、土、水で攻撃を続ける。レーダーのない戦車は前面ののぞき窓で周囲を見ている。泥が付着したり炎で前が見辛くなる。ジグザク走行しても、軌道を変えた魔法で攻撃された。

 タティナが馬に乗って戦車に近づく。死角から戦車に飛び乗り、砲塔のワイヤーを剣で切断した。これで戦車の攻撃手段が無くなり模擬戦闘は終了となる。

「これが魔術による実際の戦闘なのか。あの戦車では歯が立たないではないか……」
「これでも手加減している。ハルミナ、深い沼を作ってくれ」

 さっきの装甲テストで破壊した戦車の下に沼を作ると、戦車は砲塔を上に向けて半分が沈み込む。キャタピラーであろうがこの深さでは動くことはできなくなる。

「実際の戦場はこんなものではない。カリン、見せてやってくれ」
「メテオラ!!」

 平原いっぱいに降り注ぐ隕石の大魔術。大地がえぐれ、辺り一帯が焼き尽くされる。市の首脳陣からも驚きの声が上がる。

「今はカリンひとりでやったが、通常は複数の魔術師で同じような攻撃を行なうことになる」

 カリンなら一度に30輌程の戦車を破壊できるだろうが、実際の戦いなら魔術師が多数参戦して同じ事ができる。

「戦車が100輌あっても、優秀な魔術師がそろえば全滅も可能だ」
「なるほど。ユヅキ君が実際の戦闘を見たことはあるのかと、私に聞いてきた意味が分かったよ。この兵器だけで勝てると考えていたのが、甘い事だと痛感したよ」

 この人族の国で閉じ籠り、戦争もスタンピードも知らない人族なら仕方のない事だな。

「だがこの戦車はよくできている。戦略と戦術次第では使い物になるだろう」

 市長と軍の上層部の者達は、今回の模擬戦闘について検討するために帰って行った。

「ユヅキさんだったか、今回の事で意見が聞きたい。少し俺達と残ってくれないか」

 戦車の製造工場の責任者が声を掛けてきた。戦車の壊れ具合や、その対策などを検討するそうだ。それなら少しは力になれるかもしれないな。
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