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第4章 とある世界編
第114話 砂漠地帯2
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タティナを先頭に砂漠の道を行く。砂漠を出発した時には遠くにあった山々が近くに見えてきた。
「見晴らしがいいのは、いいんだけど、どこまで行っても同じ景色ばかりで飽きてくるわね」
森の中だと木が鬱陶しいと言っていたカリンだが、この砂漠でも文句を言っているな。確かに目標となる物が少なく、多少の上り下りはあるが変化に乏しい道だ。
するとタティナが前方で止まった。まだ昼過ぎでさっき休憩したばかりだ。
「どうかしたのか、タティナ?」
「少し様子が変だ。道の両脇に妙な窪みがある」
よく見ると道から少し離れた所に、巣穴のようなへこみがいくつも見える。
「カリン、あそこに岩魔法を撃ってくれ」
「あの道の端ね。ストーン・フォール」
カリンが魔法の岩を投げつけると、窪みから巨大なミミズのような生き物が出てきた。一抱えもある太さの胴体が10m以上穴から立ち上がり、道に覆いかぶさってきた。
「あれは、サンドウォームか!」
冒険者ギルドの魔物図鑑で見たことがあるミミズの化物だ。
馬を降りて戦闘態勢に入る。道に獲物がいないと見るや、サンドウォームは元居た穴に引っ込んでいった。
「ファイヤーボール」
カリンとタティナが巣穴目掛けて炎魔法を放り込むが、手ごたえがない。
すると道の反対側からサンドウォームが出てきて、こちらに向かって来た。
「ハルミナ、攻撃だ」
ハルミナが風の刃を飛ばして斬ろうとするが、皮膚が硬いのか跳ね返された。
その間に俺が前に出て剣を振るうが、頭を持ち上げて躱されてしまう。そのまま大口を開けて上空から俺に襲い掛かってきた。その頭にカリンの隕石魔法が命中する。
負傷したかは分からないが、サンドウォームはまた巣穴に引っ込んでいった。
「どこに行った!?」
「地中を移動しています!」
後ろから、ナミディアさんが叫ぶ。両手を地面につけて地中の振動を感じているのか。
「右、手前。出てきます!」
俺達に近い所に巣穴の窪みがある。
「あそこか!」
その窪みに向かって走り出す。サンドウォームが頭を出したと同時にカリン、タティナ、ハルミナが一斉に魔法攻撃を仕掛けた。驚いて穴に逃げ込もうとするところを剣で切り裂くが浅かったか、穴に逃げられた。
「左手の奥、さっき出てきた穴よりも向こうです」
俺達4人は高速移動を使って奥の窪みに向かうが、俺の魔力ではスピードが出ない。それを見たカリンが後方から風を送って加速してくれた。
「奴は水魔法に弱いわ」
カリンの言葉に、タティナがさらに加速し前に出る。火魔法しか操れないタティナは剣で勝負する気だ。
「出てきます!」
ハルミナが水球魔法をぶつける。
「サンダー!」
カリンは水と風の混合魔法かよ。電気ショックを受けたサンドウォームが飛び上がるように巣穴から出てきた。全長20mはあるんじゃないか。
俺とタティナで胴体に斬りつける。やはり皮膚が鉄のように硬く、タティナも苦戦している。力を込めて超音波振動を使うが避けられてしまった。シッポを巣穴に入れてまた逃げようとしている。
「リバース!!」
巣穴近くでサンドウォームの体がくの字に曲がって、地面に押し付けられる。
カリンの重力魔法か!
高速移動で巣穴近くまで迫る。背後からサンドウォームの頭が俺に襲い掛かるが、タティナが2本の剣で抑えてくれた。
巣穴近くで押さえつけられた胴体に、渾身の力で剣を切りつけ胴体を真っ二つにした。頭の部分が地面を這いずり回っているが、ハルミナの水魔法とタティナの剣で切り刻む。
「こんな魔物が潜んでいたのね」
ここで待ち伏せして街道を通る者を襲っていたんだな。周りをよく見ると、人の骨が散らばっていた。何人かの旅人が殺られたようだな。
「カリン、よくあそこで重力魔法を使ってくれた。もう少しで逃げられるところだったよ」
「まあね。私にかかればチョロいもんよ」
「ナミディアさんもよく奴の居場所が分かったな」
「ええ、水の中で振動を聞き分けるのは得意なので」
確かに水中ではソナーで相手の位置を知ると言うが、その応用のようだ。
「ハルミナも魔法の援護、ありがとうな」
「今度は、わたしが重力魔法でやっつけてあげるわ」
実際の戦闘で魔術を臨機応変に使い分けるのは難しい。カリンと実戦経験の差があるのを感じた事だろう。まあ、これもいい勉強になる。
「こいつが魔物なら心臓近くに魔石があるはずだが」
頭付近の皮膚の色が少し違う所を切り裂いてみると、熊の魔獣より大きな魔石が出てきた。魔法を使って攻撃してこなかったが、皮膚を固くする方に魔力を使っていたようだ。死んだ後の皮膚は柔らかく、ナイフで切り裂くことができる。
「こんなすごい魔物が、砂漠にいるんだな~」
「ほんとよね~。こんな水もない所でよく生きてられるわね」
そうだな、これは自然の驚異だ。ここは地球。時間が経ったとはいえ、この魔物も今の地球環境に適応して生き抜いてきた生物だ。魔法の力で自分の体を守り、生物の少ないこの地で生きるために進化してきたのだろう。
「こいつに比べたら、俺は弱い生き物だな」
俺は過去の生物だ。人類はもう何十億年も前に絶滅したのだろう。魔法の力もなく、こんな強い生物もいなかった。科学の力で対抗できたかもしれないが、結局は生き残れなかった種族だ。
「何言ってんのよ。あんたが弱くてもあたし達がいれば、こんな魔物でも倒せるんだから、気落ちしなくてもいいわよ」
そうだな。取り残された人類の俺でも、カリン達獣人やドワーフ族、タティナのようなエルフ族や海洋族と一緒に、この惑星に住んでもいいんだよな。
改めて、俺はこの世界で生きていくと決意する。
「見晴らしがいいのは、いいんだけど、どこまで行っても同じ景色ばかりで飽きてくるわね」
森の中だと木が鬱陶しいと言っていたカリンだが、この砂漠でも文句を言っているな。確かに目標となる物が少なく、多少の上り下りはあるが変化に乏しい道だ。
するとタティナが前方で止まった。まだ昼過ぎでさっき休憩したばかりだ。
「どうかしたのか、タティナ?」
「少し様子が変だ。道の両脇に妙な窪みがある」
よく見ると道から少し離れた所に、巣穴のようなへこみがいくつも見える。
「カリン、あそこに岩魔法を撃ってくれ」
「あの道の端ね。ストーン・フォール」
カリンが魔法の岩を投げつけると、窪みから巨大なミミズのような生き物が出てきた。一抱えもある太さの胴体が10m以上穴から立ち上がり、道に覆いかぶさってきた。
「あれは、サンドウォームか!」
冒険者ギルドの魔物図鑑で見たことがあるミミズの化物だ。
馬を降りて戦闘態勢に入る。道に獲物がいないと見るや、サンドウォームは元居た穴に引っ込んでいった。
「ファイヤーボール」
カリンとタティナが巣穴目掛けて炎魔法を放り込むが、手ごたえがない。
すると道の反対側からサンドウォームが出てきて、こちらに向かって来た。
「ハルミナ、攻撃だ」
ハルミナが風の刃を飛ばして斬ろうとするが、皮膚が硬いのか跳ね返された。
その間に俺が前に出て剣を振るうが、頭を持ち上げて躱されてしまう。そのまま大口を開けて上空から俺に襲い掛かってきた。その頭にカリンの隕石魔法が命中する。
負傷したかは分からないが、サンドウォームはまた巣穴に引っ込んでいった。
「どこに行った!?」
「地中を移動しています!」
後ろから、ナミディアさんが叫ぶ。両手を地面につけて地中の振動を感じているのか。
「右、手前。出てきます!」
俺達に近い所に巣穴の窪みがある。
「あそこか!」
その窪みに向かって走り出す。サンドウォームが頭を出したと同時にカリン、タティナ、ハルミナが一斉に魔法攻撃を仕掛けた。驚いて穴に逃げ込もうとするところを剣で切り裂くが浅かったか、穴に逃げられた。
「左手の奥、さっき出てきた穴よりも向こうです」
俺達4人は高速移動を使って奥の窪みに向かうが、俺の魔力ではスピードが出ない。それを見たカリンが後方から風を送って加速してくれた。
「奴は水魔法に弱いわ」
カリンの言葉に、タティナがさらに加速し前に出る。火魔法しか操れないタティナは剣で勝負する気だ。
「出てきます!」
ハルミナが水球魔法をぶつける。
「サンダー!」
カリンは水と風の混合魔法かよ。電気ショックを受けたサンドウォームが飛び上がるように巣穴から出てきた。全長20mはあるんじゃないか。
俺とタティナで胴体に斬りつける。やはり皮膚が鉄のように硬く、タティナも苦戦している。力を込めて超音波振動を使うが避けられてしまった。シッポを巣穴に入れてまた逃げようとしている。
「リバース!!」
巣穴近くでサンドウォームの体がくの字に曲がって、地面に押し付けられる。
カリンの重力魔法か!
高速移動で巣穴近くまで迫る。背後からサンドウォームの頭が俺に襲い掛かるが、タティナが2本の剣で抑えてくれた。
巣穴近くで押さえつけられた胴体に、渾身の力で剣を切りつけ胴体を真っ二つにした。頭の部分が地面を這いずり回っているが、ハルミナの水魔法とタティナの剣で切り刻む。
「こんな魔物が潜んでいたのね」
ここで待ち伏せして街道を通る者を襲っていたんだな。周りをよく見ると、人の骨が散らばっていた。何人かの旅人が殺られたようだな。
「カリン、よくあそこで重力魔法を使ってくれた。もう少しで逃げられるところだったよ」
「まあね。私にかかればチョロいもんよ」
「ナミディアさんもよく奴の居場所が分かったな」
「ええ、水の中で振動を聞き分けるのは得意なので」
確かに水中ではソナーで相手の位置を知ると言うが、その応用のようだ。
「ハルミナも魔法の援護、ありがとうな」
「今度は、わたしが重力魔法でやっつけてあげるわ」
実際の戦闘で魔術を臨機応変に使い分けるのは難しい。カリンと実戦経験の差があるのを感じた事だろう。まあ、これもいい勉強になる。
「こいつが魔物なら心臓近くに魔石があるはずだが」
頭付近の皮膚の色が少し違う所を切り裂いてみると、熊の魔獣より大きな魔石が出てきた。魔法を使って攻撃してこなかったが、皮膚を固くする方に魔力を使っていたようだ。死んだ後の皮膚は柔らかく、ナイフで切り裂くことができる。
「こんなすごい魔物が、砂漠にいるんだな~」
「ほんとよね~。こんな水もない所でよく生きてられるわね」
そうだな、これは自然の驚異だ。ここは地球。時間が経ったとはいえ、この魔物も今の地球環境に適応して生き抜いてきた生物だ。魔法の力で自分の体を守り、生物の少ないこの地で生きるために進化してきたのだろう。
「こいつに比べたら、俺は弱い生き物だな」
俺は過去の生物だ。人類はもう何十億年も前に絶滅したのだろう。魔法の力もなく、こんな強い生物もいなかった。科学の力で対抗できたかもしれないが、結局は生き残れなかった種族だ。
「何言ってんのよ。あんたが弱くてもあたし達がいれば、こんな魔物でも倒せるんだから、気落ちしなくてもいいわよ」
そうだな。取り残された人類の俺でも、カリン達獣人やドワーフ族、タティナのようなエルフ族や海洋族と一緒に、この惑星に住んでもいいんだよな。
改めて、俺はこの世界で生きていくと決意する。
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