【改訂版】目指せ遥かなるスローライフ!~放り出された異世界でモフモフと生き抜く異世界暮らし~

水瀬 とろん

文字の大きさ
252 / 352
第3章 俺のスローライフ編

第79話 チセのレンズ1

しおりを挟む
「師匠。そろそろレンズを作ろうと思うのですが」
「おおっ、やっと作れるようになったのか」
「はい、材料も揃ってきました。それと物見やぐら専用に遠見の魔道具があった方が便利ですので」

 チセはいつも単眼鏡を持ち歩いている。そういえば時々村の自警団が森を監視するときに貸していたな。

「それなら双眼鏡の方がいいな」

 やぐらに常備するなら双眼鏡を設置した方がいい。

「ソウギャウンギュウ?」

 こちらでは発音が難しいか。現物も見たことが無いだろうしな。

「遠見の魔道具を2個くっ付けた物でな、両目で見るんだ」
「これを2個ですか……遠見の魔道具の双子ちゃんですね」

 まあ、それでいいだろう。
 双眼鏡を作るとなると、全く同じ焦点距離の物を2つ作らないと駄目だ。難しくはなるが、せっかく作るなら挑戦してみてもいいだろう。

「でもまずは、肝心のレンズ作りからですね」

 レンズを作ったことのある職人は、チセの育ての親であるザハラだけだ。その際の材料の見本と、レンズ作りの道具はチセがもらい受けている。
 今まで炉がなかったし、材料がなかなか揃わなくて諦めていたのだ。

 朝からガラス炉を立ち上げて、レンズの元となるガラスを作っていく。無色透明で気泡の混じっていない均一なガラスが必要となってくる。

「ガラスの材料はこれで合っているのですが、完全に透明にするのが難しいですね」

 今までガラスの原料となる砂は村の川砂を使っているが、今回は港町の浜から持ってきた砂を使うそうだ。後はそれに混ぜる灰と白い石の粉などだが、これも吟味して良い物を使うと言っている。
 それでも、ほんの少し不純物が混じって僅かに青や緑の色がついてしまう。何度か溶かして不純物を失くして透明なガラス材に仕上げていく。

「これでどうでしょうか」

 厚めの板ガラスを作り横の断面から覗いて、60cm程のガラスを通して景色を見てみる。まだ気泡は混じっているが、色の無い透明なガラスになっているな。

「これなら大丈夫じゃないか。やっぱりチセはすごいな」

 この透明なガラスを砕いてレンズ用のガラス材とする訳だが、この世界、これほど透明なガラスを作れる職人はそういない。トリマンの職人に頼んでも、無理だと断られたからな。チセの技術には驚かされる。
 ガラス材は不純物が混じらないように、新しいルツボに入れて再度溶かす。気泡のない均一なガラスにするためには、溶かす温度が重要になってくるそうだ。

 その見極めはチセに任して、俺は炉に炭を入れたりふいごの操作などを手伝う。熱したガラスを型に流し込んで、レンズの元となる円形で厚みのあるガラス板が何枚も出来上がった。

「何とかできましたね。後はゆっくり冷やしてから明日もう一度確認しましょう」

 冷やす時間も他のガラスよりはゆっくりと冷やすようだが、今までのガラス職人としての経験で温度や時間を決めているそうだ。ガラス職人としてのチセは、既に一流の技術を身に付けているようだな。

「ありがとうな、チセ。これでレンズができるなら望遠鏡も夢じゃなくなる」
「いえいえ、あたしのためでもあるので。お義父さんの技術に迫りたいです。いずれは師匠の言うボウエン何とかも作りましょうね」

 ガラスができれば、明日からレンズ磨きを始めるのだが、チセのお義父さんが作った道具を使ってレンズの形に削っていく事になる。

「この道具の使い方は教わったのか?」
「はい、この下の台にガラス板を固定して回します。上の棒に取り付けたガラスとの間に研磨剤を入れて、このように擦り合わせながらガラスを削っていくんですよ」

 中心位置がずれないようにガラス板どうしを削る。下の台に固定したガラスが凸レンズになるようにできているな。

「これは球面レンズを作る道具だな」
「キュウメン? レンズですか」
「ああ。一般的な形で多く作られている物だから、うまくできる確率も高いな」

 レンズの曲面は放物面や性能のいい非球面もあるが、製作が難しい。手作業なら一番簡単な球面になるだろうな。

「あたしの持っている遠見の魔道具もその球面レンズなんですね」
「ああ、この道具で作られた物なら、そう言う事になるな」

 だが球面の1枚レンズだと色収差があり、周辺が歪んだり色がついてぼやけたりする。実用上問題ない程度だが、ちゃんとした物を作りたい。
 今回は凸レンズと凹レンズの2枚を組み合わせたアクロマートレンズを作るつもりだ。そのためにも基本となる球面型の凸レンズを作る技術を身に付けたい。

 レンズを磨くには、下の丸い皿のような台を水平に回転させないといけない。しかしこれを手だけで回すのは大変だな。何か道具を作るか。

「コーゲイさん。ろくろを貸してほしいんだが」
「ユヅキか。ろくろなら色んなのがある。これはあまり使ってないから持って行ってくれていいぞ」

 古いろくろだが、軸受けに油を塗るなど調整してもらった物を気前よく貸してくれた。このろくろを使って、レンズ作りの回転台を使いやすい物にする。

「師匠。この石のろくろと、レンズ用の回転台を革ベルトでつなぐんですね」
「そうだ。これで安定した回転台になるはずだ」

 ろくろの台の上には重しとなる岩を括り付けている。ろくろを回すと、それがフライホイールとなりしばらくは回り続けてくれる。

「時々は手でろくろの方を回さんといかんが、これならレンズの研磨に集中できるぞ」

 これでダメなら、水車に繋ぐことも考えたが安定して回ってくれているな。
 明日からは本格的なレンズ研磨の開始だ。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

処理中です...