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第3章 俺のスローライフ編
第77話 ふたりの赤ちゃん
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アイシャの出産の後、しばらくは幸せな気分に浸っていたが、現実はそれほど甘いものではなかった。
赤ちゃんのオシメを取り替えたり体を洗ったり、泣き出すたびにアイシャがお乳をあげるなど大変である。
頻繁に授乳もしないといけないので、ゆっくり寝ることもできないアイシャは疲れ気味だ。ふたりいるから幸せも2倍だが、その分苦労も2倍だ。
アイシャも俺もバタバタしながら赤ちゃんの世話をする。
「ユヅキさんの子供が生まれたんですって」
薬師のスティリアさんが訪ねに来てくれた。
「アキトとアキナだ。アキトがお兄ちゃんで、アキナが妹なんだ」
「まあ、可愛い赤ちゃんね。アイシャさん似かしら」
俺よりも、凛々しいアイシャに似て育ってくれたほうがいいな。髪の毛というか細い産毛なのだが、ふたりとも黒髪だ。俺の髪よりアイシャの艶やかな髪の毛になってくれた方がいい。
「スティリアさん。赤ちゃんを抱いてみるか?」
「え~、でもなんだか恐いですね。自分が抱いても大丈夫でしょうか」
俺もそうだったが、こんな小さな赤ん坊を抱くのは戸惑う。村長の奥さんに抱き方を教えてもらって、やっと抱くことができたものな。
「うわ~、フニャフニャで柔らかいですね~。カワイイ」
スティリアさんは恐々ながらも、赤ん坊を抱いて笑顔になる。
抱いている赤ちゃんを横から見ていたカリンが俺に尋ねてくる。
「でもアキナの口元はユヅキに似てて、双子なのにそっくりじゃないのね」
「そりゃ、二卵性なんだから当たり前だろう」
男の子と女の子だしオオカミ族と人族、完全に二卵性の双子だ。歳の違う兄妹が一緒に生まれてきたのと同じだからな。
「ニランセイ? またユヅキは分からない事言っているわね。まあ、ふたりとも可愛いからいいんだけど」
我が家で初めての子供だし、カリンもチセもよく赤ん坊の世話をして可愛がってくれている。
「自分もこんな赤ちゃんが欲しくなってきました」
「あんたはその前に、旦那さんを見つけないとダメでしょう」
「そうですよね~。誰かいい人いませんかね~」
いつも食事を食べに来ているタティナが、今朝は赤ちゃんのいる部屋にやって来た。
「これがアイシャの赤ちゃんか。このふたりがアイシャのお腹に入っていたとは、すごいものだな」
まあ、今は生まれたばかりよりも大きくなったが、確かに赤ちゃんがお腹の中にいるというのは女体の神秘だ。それが2人となれば尚更だ。どうりであんなにお腹が大きかったわけだ。
「タティナ、抱いてみるか?」
「いや、あたいはいい。落としてしまいそうで怖いよ」
ベットに寝ている赤ん坊に触っているだけで満足なんだろう。
「うおっ、指を掴んできたぞ」
赤ちゃんの手に指を近づけると、無意識だろうがギュッと握ってくる。
「ユ、ユヅキ。ど、どうしたらいいんだ」
指を握って離さない赤ん坊に困っているタティナは、凄腕の魔法剣士とは思えないぐらいオタオタしている。
それでも赤ちゃんを見て微笑む表情は、女性ならではの美しさだ。こんなタティナは見たことがないな。
「アイシャはまだ無理だが、魔獣が村に来たら俺も出る。その時は遠慮なく呼んでくれ」
「自警団もいるし、大概の事はあたい達で充分だが、何かあればユヅキにも頑張ってもらう。ユヅキも子供を守らないといけないのだろう」
「ああ、そうだ。俺の大事な家族だからな」
この村は魔の森に囲まれている。減ったとはいえどんな魔獣が村を襲うか分からない。
居場所は自ら守る。それは村でも町でも同じだ。城壁があってもスタンピードが起これば壊滅してしまう。この世界は常に魔獣の驚異にさらされている。戦える者が命を懸けて戦う。当たり前のことだ。
赤ん坊はアイシャの母乳で育てている。しかしいつもお乳を与え続けるのもアイシャが疲れる。なにせ昼夜関係なく与えないといけないからな。
「師匠、これが新しい哺乳瓶です」
この世界で哺乳瓶といえば、素焼きの陶器だった。お乳を入れる口が大きく開いていて、お茶を淹れる急須のような形だ。内面もざらざらしていて不衛生なように見えた。
そこでチセとコーゲイさんに相談して、新しい哺乳瓶を作ってもらった。
お乳を入れる容器はチセにガラスで作ってもらい、哺乳瓶の上部はコーゲイさんに焼き物で作ってもらう。不衛生にならないように、ルツボと同じ白いツルツルした磁器で作ってもらった。
「師匠の言っていたように、ガラス容器と上の焼き物には突起物を作って、回して取り付けるようになっています」
ガラスと磁器のつなぎ目はネジのような構造で、回すと密着するように作ってもらっている。
「この部分には苦労させられたが、上手くできたよ。完全ではないが中のお乳が漏れることはないぞ」
哺乳瓶の乳首部分は、シリコンゴムなどがないこの世界では焼き物になるのだが、ちゃんとしたノウハウはあるようだ。
「この吸い口部分は大きさを変えてある。赤ん坊に合うものを使ってくれるか」
赤ん坊の好みや成長によって大きさを変えるようだ。
「ありがとう、これで楽にお乳をあげることができるよ。中身も良く見えるし、ありがとうな、チセ」
「えへへ、お役に立てて良かったです」
これなら綺麗に洗って清潔に何度でも使える。
沢山作ってもらい村の他の赤ちゃんにも使ってもらう。哺乳瓶を斜めにしても零れないと好評だ。
村のみんなにも協力してもらい、家族全員で俺達の子供を育てていく。
赤ちゃんのオシメを取り替えたり体を洗ったり、泣き出すたびにアイシャがお乳をあげるなど大変である。
頻繁に授乳もしないといけないので、ゆっくり寝ることもできないアイシャは疲れ気味だ。ふたりいるから幸せも2倍だが、その分苦労も2倍だ。
アイシャも俺もバタバタしながら赤ちゃんの世話をする。
「ユヅキさんの子供が生まれたんですって」
薬師のスティリアさんが訪ねに来てくれた。
「アキトとアキナだ。アキトがお兄ちゃんで、アキナが妹なんだ」
「まあ、可愛い赤ちゃんね。アイシャさん似かしら」
俺よりも、凛々しいアイシャに似て育ってくれたほうがいいな。髪の毛というか細い産毛なのだが、ふたりとも黒髪だ。俺の髪よりアイシャの艶やかな髪の毛になってくれた方がいい。
「スティリアさん。赤ちゃんを抱いてみるか?」
「え~、でもなんだか恐いですね。自分が抱いても大丈夫でしょうか」
俺もそうだったが、こんな小さな赤ん坊を抱くのは戸惑う。村長の奥さんに抱き方を教えてもらって、やっと抱くことができたものな。
「うわ~、フニャフニャで柔らかいですね~。カワイイ」
スティリアさんは恐々ながらも、赤ん坊を抱いて笑顔になる。
抱いている赤ちゃんを横から見ていたカリンが俺に尋ねてくる。
「でもアキナの口元はユヅキに似てて、双子なのにそっくりじゃないのね」
「そりゃ、二卵性なんだから当たり前だろう」
男の子と女の子だしオオカミ族と人族、完全に二卵性の双子だ。歳の違う兄妹が一緒に生まれてきたのと同じだからな。
「ニランセイ? またユヅキは分からない事言っているわね。まあ、ふたりとも可愛いからいいんだけど」
我が家で初めての子供だし、カリンもチセもよく赤ん坊の世話をして可愛がってくれている。
「自分もこんな赤ちゃんが欲しくなってきました」
「あんたはその前に、旦那さんを見つけないとダメでしょう」
「そうですよね~。誰かいい人いませんかね~」
いつも食事を食べに来ているタティナが、今朝は赤ちゃんのいる部屋にやって来た。
「これがアイシャの赤ちゃんか。このふたりがアイシャのお腹に入っていたとは、すごいものだな」
まあ、今は生まれたばかりよりも大きくなったが、確かに赤ちゃんがお腹の中にいるというのは女体の神秘だ。それが2人となれば尚更だ。どうりであんなにお腹が大きかったわけだ。
「タティナ、抱いてみるか?」
「いや、あたいはいい。落としてしまいそうで怖いよ」
ベットに寝ている赤ん坊に触っているだけで満足なんだろう。
「うおっ、指を掴んできたぞ」
赤ちゃんの手に指を近づけると、無意識だろうがギュッと握ってくる。
「ユ、ユヅキ。ど、どうしたらいいんだ」
指を握って離さない赤ん坊に困っているタティナは、凄腕の魔法剣士とは思えないぐらいオタオタしている。
それでも赤ちゃんを見て微笑む表情は、女性ならではの美しさだ。こんなタティナは見たことがないな。
「アイシャはまだ無理だが、魔獣が村に来たら俺も出る。その時は遠慮なく呼んでくれ」
「自警団もいるし、大概の事はあたい達で充分だが、何かあればユヅキにも頑張ってもらう。ユヅキも子供を守らないといけないのだろう」
「ああ、そうだ。俺の大事な家族だからな」
この村は魔の森に囲まれている。減ったとはいえどんな魔獣が村を襲うか分からない。
居場所は自ら守る。それは村でも町でも同じだ。城壁があってもスタンピードが起これば壊滅してしまう。この世界は常に魔獣の驚異にさらされている。戦える者が命を懸けて戦う。当たり前のことだ。
赤ん坊はアイシャの母乳で育てている。しかしいつもお乳を与え続けるのもアイシャが疲れる。なにせ昼夜関係なく与えないといけないからな。
「師匠、これが新しい哺乳瓶です」
この世界で哺乳瓶といえば、素焼きの陶器だった。お乳を入れる口が大きく開いていて、お茶を淹れる急須のような形だ。内面もざらざらしていて不衛生なように見えた。
そこでチセとコーゲイさんに相談して、新しい哺乳瓶を作ってもらった。
お乳を入れる容器はチセにガラスで作ってもらい、哺乳瓶の上部はコーゲイさんに焼き物で作ってもらう。不衛生にならないように、ルツボと同じ白いツルツルした磁器で作ってもらった。
「師匠の言っていたように、ガラス容器と上の焼き物には突起物を作って、回して取り付けるようになっています」
ガラスと磁器のつなぎ目はネジのような構造で、回すと密着するように作ってもらっている。
「この部分には苦労させられたが、上手くできたよ。完全ではないが中のお乳が漏れることはないぞ」
哺乳瓶の乳首部分は、シリコンゴムなどがないこの世界では焼き物になるのだが、ちゃんとしたノウハウはあるようだ。
「この吸い口部分は大きさを変えてある。赤ん坊に合うものを使ってくれるか」
赤ん坊の好みや成長によって大きさを変えるようだ。
「ありがとう、これで楽にお乳をあげることができるよ。中身も良く見えるし、ありがとうな、チセ」
「えへへ、お役に立てて良かったです」
これなら綺麗に洗って清潔に何度でも使える。
沢山作ってもらい村の他の赤ちゃんにも使ってもらう。哺乳瓶を斜めにしても零れないと好評だ。
村のみんなにも協力してもらい、家族全員で俺達の子供を育てていく。
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