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第2章 シャウラ村編
第32話 家作り1
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翌日、俺達は森の奥を焼き払い、川に近い部分から土を作っていく。畑になる予定の土地に灰と土を混ぜあわせるが、これは村人がしてくれるそうだ。その後カリンが水魔法で灰を染み込ませ馴染ませる。
昨日防火帯を作った部分に、カリンが火をかけ燃やす。森が燃えている間は魔獣も近寄らないから、川の近くでは村の子供達も一緒になって手伝ってくれているようだ。
森は1日中燃え続け、真夜中になって鎮火した。
翌日も土を作る。森に近い危険な部分はカリンが魔法で。川に近い部分は村人総出でやってもらう。
「いや~、カリンさん。あんたの魔術はすごいものだな。あんな広い範囲をひとりでやるなんて」
「ほんとだよ。あたしゃ本物の魔術師さんを見るのは初めてだけど、あれが魔術というものなんだね」
「私に任せれば、あれぐらい朝飯前なんだから」
嘘つけ、もう魔力切れ寸前でフラフラじゃないか。スタンピードの巨大魔獣を倒したときみたいに大魔法をバンバン使いやがって、明日は一日寝込むな、こいつ。
「これで村と魔の森との間に緩衝帯はできたが、まだ壁となる木の杭は打っていない。今までと同じように魔獣の警戒はするようにしてくれ」
「ああ、分かった。村のみんなにも伝えておくよ」
これだけ距離が離れれば、少しは安心して暮らすことができそうだな。
「ねえ、師匠。あたし達の家はどの辺りに作るんですか」
魔の森を切り開き、次は俺達の家を造る。
「森から出て来た魔獣を早く発見したいから、この森を見渡せる少し高い場所がいいな。あの裏山に近い一段高い場所かな」
「そうね、あの場所なら村に入る前に魔獣を倒せそうね」
「村の周りに壁を作る予定だが、絶対とは言えんからな。侵入してきた魔獣は早く見つけて倒さんとな」
「師匠。物見やぐらを建ててもいいですか?」
「そうだな、森の監視用に家の近くに建てようか。木材は充分にあるしな」
昨日魔法を使いすぎたカリンは、朝から寝込んでいる。今日一日ゆっくりと休めば回復するだろう。アイシャとチセを連れて、家を建る場所の下見にいってみるか。
家の予定地は川のすぐ横で、裏山に続くなだらかな坂の途中だ。
「アイシャ。ここから弓はどの位まで狙える」
「ここは高いから、村の端の家までなら狙えるわね」
アイシャの魔道弓を試射したが、家が建ち並ぶ先まで矢は飛んでいった。チセは単眼鏡を覗いて、辺り一帯を見渡す。
「ここなら、森の奥の方も見通すことができますね」
「家の場所としては、この辺りだな。後は土を移動させて平らにできるかだが、それは明日カリンに聞いてみよう」
「この裏山の方は、どうなっているのかしら」
「魔獣の少ない林だそうだが、川を越えたこちら側に村人はあまり立ち入らないそうだ」
「少し調べておきましょうか」
裏山に続く丘陵地。西の魔の森と繋がっていた部分は焼き払われ、遠くは山の裏手で魔の森と繋がっているそうだが、山道がある人の手の入った林だ。
3人で裏の林の中に入って行くと、狼や鹿はいるようだが熊のような大きな足跡はないな。川までは谷のような急斜面になっていて、獣もあまり近づけないようだ。
「獣がいない分、薬草とかは豊富にあるわね。これなら裏山の方から魔獣が攻めてくる事もなさそうだわ」
林の奥は山肌の見える岩の崖になっていて、これ以上は進めないが魔獣も寄って来れない。今日のところはこれぐらいにして、寄合所に戻ろう。寝込んでいたカリンも起きてきたようだ。
「部屋の間取りだが、どのような部屋の配置にする?」
大体の間取りの描いた絵を広げて見せる。前の家のように2階建てはできないので、平屋で居間の奥に前よりも広い部屋を4部屋作っている。
「将来の子供の部屋はどうするの、これじゃ足りなくなるわよ」
「お風呂、もっと大きくした~い」
「ガラスを作る炉を置けませんかね」
みんなの要望を聞いていくと、家がどんどんでかくなっていく。
まあ、広い土地はあって、ただみたいなものだから建てられなくはないのだが。
「共同で使う食堂と洗い場を大きくして、部屋は6つで内2部屋を大きな部屋にしよう。子供はそこで育てればいい」
もし足りなくなっても、横に増築できるようにしておけばいいだろう。
「ガラス工房の予定地はここでいいですか」
「そうだな。家から少し離れたここに建物を建てておこう。ガラスの炉を作るまでは倉庫代わりに使えばいいか」
自前のガラス工房を造るのはチセの夢だからな。まだ時間は掛かるだろうが、希望に沿うように建物を作っておこう。やぐらを組む場所も確保しておく。
「それと大事な地下室だが、みんなが集まる食堂の下に作る。入り口はこの2ヶ所だ」
魔獣が群れで襲ってきて、家の周りの塀が壊されるような時は、この地下室に全員が避難する。村で暮らすためには絶対に必要な設備だ。
「入り口は1つでもいいんじゃないの」
「魔獣が通り過ぎた後、家も潰され入り口が塞がれる可能性がある。危機が去った後、俺達は早く外に出て、村民の救助や魔獣を討伐しないといけない。外に出るための通路は多く確保したい」
「分かったわ。じゃあ明日、その家を建てられる場所を作りましょう」
翌日、みんなで家を建てる予定の場所に行く。土地としては充分に広いのだが、勾配になっているのでカリンに魔法で平らにしてもらわないといけない。
「家の周りの塀はどうするの。村の家は石垣だけど、この高さの岩を積むのは大変じゃない」
確かに、そうだな。石垣だとお城のように高く積み上げる必要があるな。
「家の地面の高さまで、木の杭をまっすぐに打とう」
「なるほどね、この高さなら魔獣も登れないわね。裏手の土をこっち側に埋めれば平らにできるわよ」
試験的に杭を立ててみようか。俺とチセは林から木を伐り倒し、長さ10m程の丸太を縦に切って半円の杭を作る。
「カリン、これを立てて壁にしたい。ここに6本分の穴を掘ってくれ」
人の背丈の2倍はある穴を魔法で掘り、河原から持ってきた小石を底に敷いておく。
「チセ。さっきの杭をこの穴に入れてくれ」
「は~い」
前に3本、後ろに段違いに3本並べて木を立てる。穴には小石と土、それに石垣を固めるためのセメントの粉を入れて埋め戻す。後は土の水分でセメントは固まって強固になる。
「仮に杭を立ててみたが、どうだ動かないか」
「大丈夫そうよ。しっかりしているわ」
高さ6m程の木の壁。これが擁壁となり家の土台となる土を支え、家の敷地の周囲全てを取り囲む。
杭は平らな面を外側に向けているので、垂直に立てた壁のようだ。これを魔獣が登るのは無理だな。
「よし、この形で家の周りを囲もう」
増築部分も考えた家の敷地は広く、周りの杭を打つだけで4日もかかった。カリンの魔法があったからこれだけ早くできたともいえるのだが。
平原への出入り口は馬車が通れるなだらかなスロープになっている。門は大きくして、岩の重みでバランスを取った跳ねあげ式の門にするつもりだ。
「なんだか、木でできた砦のような家になりそうだな」
「そうね。物見やぐらも建てるから、砦と言えなくもないわね」
「門も大きいですし、普通の家ではないですね」
「でもこれで、魔獣を気にせずに家を建てられるじゃん。村の人も呼べるわよ」
「そうだな。早く手伝わせてくれって言っていたしな。明日から手伝ってもらおう」
外壁は出来上がったから、魔獣に襲われる心配もない。明日からの内部の作業は村人にも手伝ってもらえるな。
昨日防火帯を作った部分に、カリンが火をかけ燃やす。森が燃えている間は魔獣も近寄らないから、川の近くでは村の子供達も一緒になって手伝ってくれているようだ。
森は1日中燃え続け、真夜中になって鎮火した。
翌日も土を作る。森に近い危険な部分はカリンが魔法で。川に近い部分は村人総出でやってもらう。
「いや~、カリンさん。あんたの魔術はすごいものだな。あんな広い範囲をひとりでやるなんて」
「ほんとだよ。あたしゃ本物の魔術師さんを見るのは初めてだけど、あれが魔術というものなんだね」
「私に任せれば、あれぐらい朝飯前なんだから」
嘘つけ、もう魔力切れ寸前でフラフラじゃないか。スタンピードの巨大魔獣を倒したときみたいに大魔法をバンバン使いやがって、明日は一日寝込むな、こいつ。
「これで村と魔の森との間に緩衝帯はできたが、まだ壁となる木の杭は打っていない。今までと同じように魔獣の警戒はするようにしてくれ」
「ああ、分かった。村のみんなにも伝えておくよ」
これだけ距離が離れれば、少しは安心して暮らすことができそうだな。
「ねえ、師匠。あたし達の家はどの辺りに作るんですか」
魔の森を切り開き、次は俺達の家を造る。
「森から出て来た魔獣を早く発見したいから、この森を見渡せる少し高い場所がいいな。あの裏山に近い一段高い場所かな」
「そうね、あの場所なら村に入る前に魔獣を倒せそうね」
「村の周りに壁を作る予定だが、絶対とは言えんからな。侵入してきた魔獣は早く見つけて倒さんとな」
「師匠。物見やぐらを建ててもいいですか?」
「そうだな、森の監視用に家の近くに建てようか。木材は充分にあるしな」
昨日魔法を使いすぎたカリンは、朝から寝込んでいる。今日一日ゆっくりと休めば回復するだろう。アイシャとチセを連れて、家を建る場所の下見にいってみるか。
家の予定地は川のすぐ横で、裏山に続くなだらかな坂の途中だ。
「アイシャ。ここから弓はどの位まで狙える」
「ここは高いから、村の端の家までなら狙えるわね」
アイシャの魔道弓を試射したが、家が建ち並ぶ先まで矢は飛んでいった。チセは単眼鏡を覗いて、辺り一帯を見渡す。
「ここなら、森の奥の方も見通すことができますね」
「家の場所としては、この辺りだな。後は土を移動させて平らにできるかだが、それは明日カリンに聞いてみよう」
「この裏山の方は、どうなっているのかしら」
「魔獣の少ない林だそうだが、川を越えたこちら側に村人はあまり立ち入らないそうだ」
「少し調べておきましょうか」
裏山に続く丘陵地。西の魔の森と繋がっていた部分は焼き払われ、遠くは山の裏手で魔の森と繋がっているそうだが、山道がある人の手の入った林だ。
3人で裏の林の中に入って行くと、狼や鹿はいるようだが熊のような大きな足跡はないな。川までは谷のような急斜面になっていて、獣もあまり近づけないようだ。
「獣がいない分、薬草とかは豊富にあるわね。これなら裏山の方から魔獣が攻めてくる事もなさそうだわ」
林の奥は山肌の見える岩の崖になっていて、これ以上は進めないが魔獣も寄って来れない。今日のところはこれぐらいにして、寄合所に戻ろう。寝込んでいたカリンも起きてきたようだ。
「部屋の間取りだが、どのような部屋の配置にする?」
大体の間取りの描いた絵を広げて見せる。前の家のように2階建てはできないので、平屋で居間の奥に前よりも広い部屋を4部屋作っている。
「将来の子供の部屋はどうするの、これじゃ足りなくなるわよ」
「お風呂、もっと大きくした~い」
「ガラスを作る炉を置けませんかね」
みんなの要望を聞いていくと、家がどんどんでかくなっていく。
まあ、広い土地はあって、ただみたいなものだから建てられなくはないのだが。
「共同で使う食堂と洗い場を大きくして、部屋は6つで内2部屋を大きな部屋にしよう。子供はそこで育てればいい」
もし足りなくなっても、横に増築できるようにしておけばいいだろう。
「ガラス工房の予定地はここでいいですか」
「そうだな。家から少し離れたここに建物を建てておこう。ガラスの炉を作るまでは倉庫代わりに使えばいいか」
自前のガラス工房を造るのはチセの夢だからな。まだ時間は掛かるだろうが、希望に沿うように建物を作っておこう。やぐらを組む場所も確保しておく。
「それと大事な地下室だが、みんなが集まる食堂の下に作る。入り口はこの2ヶ所だ」
魔獣が群れで襲ってきて、家の周りの塀が壊されるような時は、この地下室に全員が避難する。村で暮らすためには絶対に必要な設備だ。
「入り口は1つでもいいんじゃないの」
「魔獣が通り過ぎた後、家も潰され入り口が塞がれる可能性がある。危機が去った後、俺達は早く外に出て、村民の救助や魔獣を討伐しないといけない。外に出るための通路は多く確保したい」
「分かったわ。じゃあ明日、その家を建てられる場所を作りましょう」
翌日、みんなで家を建てる予定の場所に行く。土地としては充分に広いのだが、勾配になっているのでカリンに魔法で平らにしてもらわないといけない。
「家の周りの塀はどうするの。村の家は石垣だけど、この高さの岩を積むのは大変じゃない」
確かに、そうだな。石垣だとお城のように高く積み上げる必要があるな。
「家の地面の高さまで、木の杭をまっすぐに打とう」
「なるほどね、この高さなら魔獣も登れないわね。裏手の土をこっち側に埋めれば平らにできるわよ」
試験的に杭を立ててみようか。俺とチセは林から木を伐り倒し、長さ10m程の丸太を縦に切って半円の杭を作る。
「カリン、これを立てて壁にしたい。ここに6本分の穴を掘ってくれ」
人の背丈の2倍はある穴を魔法で掘り、河原から持ってきた小石を底に敷いておく。
「チセ。さっきの杭をこの穴に入れてくれ」
「は~い」
前に3本、後ろに段違いに3本並べて木を立てる。穴には小石と土、それに石垣を固めるためのセメントの粉を入れて埋め戻す。後は土の水分でセメントは固まって強固になる。
「仮に杭を立ててみたが、どうだ動かないか」
「大丈夫そうよ。しっかりしているわ」
高さ6m程の木の壁。これが擁壁となり家の土台となる土を支え、家の敷地の周囲全てを取り囲む。
杭は平らな面を外側に向けているので、垂直に立てた壁のようだ。これを魔獣が登るのは無理だな。
「よし、この形で家の周りを囲もう」
増築部分も考えた家の敷地は広く、周りの杭を打つだけで4日もかかった。カリンの魔法があったからこれだけ早くできたともいえるのだが。
平原への出入り口は馬車が通れるなだらかなスロープになっている。門は大きくして、岩の重みでバランスを取った跳ねあげ式の門にするつもりだ。
「なんだか、木でできた砦のような家になりそうだな」
「そうね。物見やぐらも建てるから、砦と言えなくもないわね」
「門も大きいですし、普通の家ではないですね」
「でもこれで、魔獣を気にせずに家を建てられるじゃん。村の人も呼べるわよ」
「そうだな。早く手伝わせてくれって言っていたしな。明日から手伝ってもらおう」
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