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第4章 アルヘナ動乱

第147話 ギルド合同会議

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 数日後、職人ギルドの呼びかけで、合同の役員会議が開かれた。
 商業ギルドと冒険者ギルドは参加したが、魔術師協会は参加せず静観の構えだ。
 俺は今回、職人ギルドの役員として呼ばれ、発言も決議もできるようにしてくれている。
 職人ギルドマスターのボアンが冒頭の挨拶をする。

「本日は集まってくれてありがとう。領主からの申し出や経緯については御承知と思う。今日はその対応について話し合ってもらいたい」
「今回の件で、被害を受けるのは我々商業ギルドだ。穏便に済ますことはできないか」

 それに対しボアンが答える。

「領主が今までの方針を転換した以上、今後も同じことが繰り返される。短期的でなく将来の不利益とを比較して考えてもらいたい」
「不利益というのは、どのようなことが考えられる」

 長老格の役員が将来への懸念を口にする。

「新たに開発された技術や商品は、売れるかどうか分からん。売れた物だけが買い取られれば、ワシらは売れないリスクだけを背負う事になる」

 商業ギルドの役員も不満を述べる。

「我らも新たな販売経路や輸入品を押さえられれば、今後この町で商売をする者はいなくなってしまう。経済自体が衰退するだろうな」

 冒険者ギルドマスターのジルが発言する。

「今回の権利を売れば、魔道弓の価格が上がると聞いている。買う者が極端に減り、依頼達成率が下がるのはこちらとしても困る」

 商業ギルドマスターのシェリルさんも続く。

「私達は調査したうえで、一番利益が出る価格に設定して他の町でも商売が回っているわ。商売を知らない領主の都合で勝手に値段を変えられては、困るのはこちらも同様。それがこれから将来も続くなら、今の時点で対抗することも考えないといけないわね」
「だがその対抗手段として、貴族に対して商売をしないということで、本当に効果はあるのか?」
「それに関しては、ユヅキに説明してもらおう」

 この世界でストライキという概念はない。皆に分かるように説明しないといけない。

「領主と我々は持ちつ持たれつの関係だが、領主の力が上で一方的だ。それに対抗するには数の力で押し切るしかない」

 こういう時こそ、ギルドという組織が役に立つ。

「だが、暴力はダメだ。逆に押しつぶされる」

 このエルトナ王国で、国王が任命した貴族に直接手を出せば処罰されるのはこちらだ。暴力ではなく、我らがこの町で担っている経済を武器とする。

「法に触れないやり方で戦う。それが今回の『やるべきことをやらない』という方法だ」
「それだと今までしてきた商売がダメになる」
「一時的に止めるだけだ、貴族以外の商売は続けてもらう。関係が修復しお互いに必要な存在だと分かれば、その後の商売は続けられる」
「そんなに上手くいくのか、兵団を使って力で抑えに来るぞ」

 相手が暴力できても、やはり数の力で対抗する。

「住民の目の前で抗議を行なう。もし力で抑えようとすれば住民はどう思う。治安も悪く経済も立ち行かない町を出て行くだろうな。経済も止まり住民がいなくなれば、この町は終わりだ。そして領主も終わりだ」

 ここにいるギルドが一致協力すれば、労働人口の3分の1と経済の半分以上を支配できる。貴族が直接管理しているのは、治安を守る衛兵と兵士を率いる兵団だ。充分対抗できる人数だ。
 皆が考え込む。

「なにも領主を失脚させたいわけじゃない。お互いが必要だと分からせればいい。その時点で話し合って、双方の利害が一致するところを決めればいい」
「今回の事をギルドメンバーは納得しても、町の住民が納得しなきゃ商売を止めた俺達が非難されるんじゃないのか」
「それは説得するしかないだろう。だが話せば分かってもらえると思うがな」

 町の住民を味方につけるのが一番難しい。貴族との取引だけを止めるが、住民への影響も出てくる。住民に説明し納得してもらうしかないが、領主側について俺達を攻撃するのを阻止すればいい。我々に協力してもらわなくても、静観してもらうだけなら充分可能だ。

「領主側の対抗手段はどんな事が考えられる。税金を上げるなどに対する我々の手段はどうするか、先のことも考えんといかんのじゃないか」

 俺は、今後起きるであろう状況を説明する。前世で日本や海外のストライキの報道は見てきている。町民の反応や領主側の対応はある程度予測がつく。最終的には領主を話し合いの場に出させればいい訳だ。
 その後も議論が尽くされて、採決が始まる。

「賛成、反対の挙手を願う」

 反対は3名だけ、大多数が賛同してくれた。だが我々が集まった事や計画の情報は、いずれ領主側に流れると思っていたほうがいい。各ギルドは連携を取りつつ素早く準備を進める事になった。


 対抗するための準備が終わった後、職人ギルド長のボアンが領主からの権利買取の申し出をきっぱりと断りに行く。

「断るというなら、ギルドを解散させる。その時は権利の買取金も支払わんぞ」
「我々は商業ギルド、冒険者ギルドと共同して撤回を要求する」
「逆らうのであれば、全てのギルドは解散だ」

 完全に脅しである。全国組織の冒険者ギルドを解散させられる訳もなく、職人ギルドを潰すのが精一杯のはずだ。多分それでギルド側が折れると思っていたようだな。

「それであれば、全ギルドと共に我らは抗議行動に移る」
「抗議行動だと?」
「貴族に関する取引、依頼を全て断る」

 そう宣言しボアンは領主の館を後にした。


 ストライキ決行の日、各ギルド前に領主に対する抗議の文章と、貴族取引の停止を書いた紙を貼りだす。
 各ギルド前に座り込むギルドメンバー達に、何事かと取り囲むように住民達が集まった。その住民を前に、領主がいかに横暴で、それが死活問題であることを力説する。

「我々は領主より不当な要求をされ、ギルドを解散せよとまで言われた」

 自分達の訴えに耳を傾けてくれる者もいる。字の読めない住民に対してはデンデン貝を置いて今の状況や、我々の要求を説明する。

「よって我々は、貴族に対し何もしない抗議をする」
「何もしない? よく分からんが俺達の生活はどうなるんだ」
「貴族に対しての抗議だ。町の住民に関しては何も変わらん」

 自分達に影響がないのなら関係ないと去っていく者もいるが、今はそれでいい。俺達が領主から無理難題を言われ、抗議するために立ち上がったと知ってもらう事が大事だ。
 日頃見掛ける商店の店主も参加している。見知った者が抗議する姿に、足を止めてくれる人も多い。
 この騒ぎを聞きつけ、貴族側は何か対応してくるだろう。
 まだ戦いは始まったばかりだ。
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