128 / 240
第4章 アルヘナ動乱
第125話 黄金ランク冒険者 シルマーン
しおりを挟む
オレはシルマーン。黄金ランクの冒険者だ。
若い頃、英雄に憧れ冒険者になって20年が過ぎた。
色々な町を渡り歩き、その土地で数々の冒険をしてきた。妻や子供のためにと、この町で腰を落ち着け過ごしてきたが、功績が認められ黄金ランクへのランクアップが打診された。
黄金ランクの冒険者は貴族と同格に扱われる。貴族街に住むことができ、給金もギルド、領主、王国から出て贅沢な暮らしをしなければ充分食っていける。
貴族への憧れもあり、家族の安定を望んだオレは、黄金ランクへの昇格を二つ返事で決めた。
その後は、領主の護衛任務や未開拓地域の調査など、領主からの直接の依頼をこなす日々だ。
貴族と同格とはいえ、一代限りの下級貴族だ。ミスリルやアダマンタイトのランクになると王都で暮らし王族の依頼などをこなすのだろうが、結局貴族達の下働きになるのが関の山じゃないのか。
最近そのような思いが強くなり、気力もなくなってきた。白銀ランク時代の方が自由でやりがいがあった気がする。
そんな折、この町の近くでスタンピードが起こったと報告を受けた。
「おい、ブロックス。スタンピードが起こっているというのは本当か?」
オレの少し先輩のライオン族の男に確認に行く。
「ギルドの報告によると、どうやらそうらしいな。少し忙しくなりそうだ」
ブロックスとは、白銀時代に何度か組んで仕事をしたことがあるが、先に黄金ランクへと昇格していった。
元貴族の四男で、騎士を経て自由を求めて冒険者になり、黄金ランクへ登り詰めた槍の名手だ。
黄金ランクに上がる時に、「やれやれ、また貴族暮らしになってしまった」とぼやいていたな。
「シルマーン、領主と打ち合わせをする。ついて来てくれ」
スタンピードの対応は最優先事項となる。オレ達は領主や兵団長と会い、今後の方針を決めていく。
この町にいる3人の兵団長とオレ達は同格だが、魔獣相手ということで、兵団長や兵士がオレ達の指揮下に入る事となった。
これが人相手の戦争なら、オレ達が兵団長の指揮下に入る事になっていただろう。
「オレ達は冒険者ギルドに行って、具体的な作戦会議をしてくる。幸い今回は時間がある。兵士達の準備は任せた」
「ああ、こちらは任せろ。後で詰めの打ち合わせをしよう」
3人の兵団長達と分かれて冒険者ギルドに向かう。
オレは16年前のスタンピードにも鉄ランクとして参加しているし、4年前、隣町のスハイルで起こったスタンピードにも志願して参加した。
通常他の町への応援は出さないものだが、護衛任務ばかりの日常に飽きていたオレにはちょうど良かった。
「ブロックス、ここの冒険者の数は分かるか?」
「確か白銀が25、鉄が85くらいだったはずだ」
「オレを最前線で戦わせてくれんか」
「戦うのではなく指揮を執るんだぞ」
「分かっているさ」
黄金ランクになって変わったのは、戦術を学び戦略を立てて戦うことだ。人との戦争のための術だが、魔獣相手でも使える。少ない数を補って魔獣に打ち勝つ手段をオレ達は知っている。
白銀時代は魔獣の弱点を突き、効率よく倒す技を磨いてきたが、それだけでは押し寄せて来る魔獣の群れを倒すことはできない。
「だが、最後尾の巨大魔獣とは戦ってもいいんだろう」
「それはそうだろう。白銀でまともに戦える奴はそうそういないしな。メルフィルが間に合えば共に、俺達3人が主力で戦うことになる」
久しぶりに巨大魔獣との戦闘だが、オレの腕はまだ鈍ってはいない。充分に戦うことができる。
「それとギルドからの提案で、最前線と第2防衛線に物見やぐらを建設して、魔獣の監視を行うことになった」
ほほう。誰の提案か知らんが、情報の大切さを知っている者がいるようだな。
「おい、レドナ。冒険者ギルドへ行って、白銀連中の情報を集めておけ、編成の参考にする」
オレは側近のひとりに、冒険者達の情報を集めるように指示する。
冒険者ギルドでの作戦会議を終えて、一旦家に戻る。
「あなた、魔獣が押し寄せてきているんですって」
「ああ。だがオレが出るんだ、心配することはない」
「父上、僕も役に立てる事はありませんか」
息子はまだ10歳だ。直接戦うことはできない。
「お前は母上を守るのが仕事だ。この家にいて、しっかりと守ってくれ」
「はい、父上」
可愛い息子や妻と共に遅い夕食をとり、少し眠ることにする。
「鐘1つに起こしてくれ。急用があれば遠慮せずに起こせ」
「はい、旦那様」
準備は、できている。
いよいよ明日、魔獣との死闘が始まる。
若い頃、英雄に憧れ冒険者になって20年が過ぎた。
色々な町を渡り歩き、その土地で数々の冒険をしてきた。妻や子供のためにと、この町で腰を落ち着け過ごしてきたが、功績が認められ黄金ランクへのランクアップが打診された。
黄金ランクの冒険者は貴族と同格に扱われる。貴族街に住むことができ、給金もギルド、領主、王国から出て贅沢な暮らしをしなければ充分食っていける。
貴族への憧れもあり、家族の安定を望んだオレは、黄金ランクへの昇格を二つ返事で決めた。
その後は、領主の護衛任務や未開拓地域の調査など、領主からの直接の依頼をこなす日々だ。
貴族と同格とはいえ、一代限りの下級貴族だ。ミスリルやアダマンタイトのランクになると王都で暮らし王族の依頼などをこなすのだろうが、結局貴族達の下働きになるのが関の山じゃないのか。
最近そのような思いが強くなり、気力もなくなってきた。白銀ランク時代の方が自由でやりがいがあった気がする。
そんな折、この町の近くでスタンピードが起こったと報告を受けた。
「おい、ブロックス。スタンピードが起こっているというのは本当か?」
オレの少し先輩のライオン族の男に確認に行く。
「ギルドの報告によると、どうやらそうらしいな。少し忙しくなりそうだ」
ブロックスとは、白銀時代に何度か組んで仕事をしたことがあるが、先に黄金ランクへと昇格していった。
元貴族の四男で、騎士を経て自由を求めて冒険者になり、黄金ランクへ登り詰めた槍の名手だ。
黄金ランクに上がる時に、「やれやれ、また貴族暮らしになってしまった」とぼやいていたな。
「シルマーン、領主と打ち合わせをする。ついて来てくれ」
スタンピードの対応は最優先事項となる。オレ達は領主や兵団長と会い、今後の方針を決めていく。
この町にいる3人の兵団長とオレ達は同格だが、魔獣相手ということで、兵団長や兵士がオレ達の指揮下に入る事となった。
これが人相手の戦争なら、オレ達が兵団長の指揮下に入る事になっていただろう。
「オレ達は冒険者ギルドに行って、具体的な作戦会議をしてくる。幸い今回は時間がある。兵士達の準備は任せた」
「ああ、こちらは任せろ。後で詰めの打ち合わせをしよう」
3人の兵団長達と分かれて冒険者ギルドに向かう。
オレは16年前のスタンピードにも鉄ランクとして参加しているし、4年前、隣町のスハイルで起こったスタンピードにも志願して参加した。
通常他の町への応援は出さないものだが、護衛任務ばかりの日常に飽きていたオレにはちょうど良かった。
「ブロックス、ここの冒険者の数は分かるか?」
「確か白銀が25、鉄が85くらいだったはずだ」
「オレを最前線で戦わせてくれんか」
「戦うのではなく指揮を執るんだぞ」
「分かっているさ」
黄金ランクになって変わったのは、戦術を学び戦略を立てて戦うことだ。人との戦争のための術だが、魔獣相手でも使える。少ない数を補って魔獣に打ち勝つ手段をオレ達は知っている。
白銀時代は魔獣の弱点を突き、効率よく倒す技を磨いてきたが、それだけでは押し寄せて来る魔獣の群れを倒すことはできない。
「だが、最後尾の巨大魔獣とは戦ってもいいんだろう」
「それはそうだろう。白銀でまともに戦える奴はそうそういないしな。メルフィルが間に合えば共に、俺達3人が主力で戦うことになる」
久しぶりに巨大魔獣との戦闘だが、オレの腕はまだ鈍ってはいない。充分に戦うことができる。
「それとギルドからの提案で、最前線と第2防衛線に物見やぐらを建設して、魔獣の監視を行うことになった」
ほほう。誰の提案か知らんが、情報の大切さを知っている者がいるようだな。
「おい、レドナ。冒険者ギルドへ行って、白銀連中の情報を集めておけ、編成の参考にする」
オレは側近のひとりに、冒険者達の情報を集めるように指示する。
冒険者ギルドでの作戦会議を終えて、一旦家に戻る。
「あなた、魔獣が押し寄せてきているんですって」
「ああ。だがオレが出るんだ、心配することはない」
「父上、僕も役に立てる事はありませんか」
息子はまだ10歳だ。直接戦うことはできない。
「お前は母上を守るのが仕事だ。この家にいて、しっかりと守ってくれ」
「はい、父上」
可愛い息子や妻と共に遅い夕食をとり、少し眠ることにする。
「鐘1つに起こしてくれ。急用があれば遠慮せずに起こせ」
「はい、旦那様」
準備は、できている。
いよいよ明日、魔獣との死闘が始まる。
161
お気に入りに追加
962
あなたにおすすめの小説
クラス全員が転生して俺と彼女だけが残された件
兵藤晴佳
ファンタジー
冬休みを目前にした田舎の高校に転校してきた美少女・綾見(あやみ)沙羅(さら)は、実は異世界から転生したお姫様だった!
異世界転生アプリでクラス全員をスマホの向こうに送り込もうとするが、ただひとり、抵抗した者がいた。
平凡に、平穏に暮らしたいだけの優等生、八十島(やそしま)栄(さかえ)。
そんな栄に惚れ込んだ沙羅は、クラス全員の魂を賭けた勝負を挑んでくる。
モブを操って転生メンバーを帰還に向けて誘導してみせろというのだ。
失敗すれば、品行方正な魂の抜け殻だけが現実世界に残される。
勝負を受ける栄だったが、沙羅は他クラスの男子の注目と、女子の嫉妬の的になる。
気になる沙羅を男子の誘惑と女子の攻撃から守り抜き、クラスの仲間を連れ戻せるか、栄!
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす
鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》
社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。
このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。
クモ使いだとバカにしているようだけど、俺はクモを使わなくても強いよ?【連載版】
大野半兵衛
ファンタジー
HOTランキング10入り!(2/10 16:45時点)
やったね! (∩´∀`)∩
公爵家の四男に生まれたスピナーは天才肌の奇人変人、何よりも天邪鬼である。
そんなスピナーは【クモ使い】という加護を授けられた。誰もがマイナー加護だと言う中、スピナーは歓喜した。
マイナー加護を得たスピナーへの風当たりは良くないが、スピナーはすぐに【クモ使い】の加護を使いこなした。
ミネルバと名づけられたただのクモは、すくすくと成長して最強種のドラゴンを屠るくらい強くなった。
スピナーと第四王女との婚約話が持ち上がると、簡単には断れないと父の公爵は言う。
何度も婚約話の破談の危機があるのだが、それはスピナーの望むところだった。むしろ破談させたい。
そんなスピナーと第四王女の婚約の行方は、どうなるのだろうか。
娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します
古里@電子書籍化『王子に婚約破棄された』
ファンタジー
第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。
「愛するアデラの代わりに生贄になってくれ」愛した婚約者の皇太子の口からは思いもしなかった言葉が飛び出してクローディアは絶望の淵に叩き落された。
元々18年前クローディアの義母コニーが祖国ダレル王国に侵攻してきた蛮族を倒すために魔導爆弾の生贄になるのを、クローディアの実の母シャラがその対価に病気のクローディアに高価な薬を与えて命に代えても大切に育てるとの申し出を、信用して自ら生贄となって蛮族を消滅させていたのだ。しかし、その伯爵夫妻には実の娘アデラも生まれてクローディアは肩身の狭い思いで生活していた。唯一の救いは婚約者となった皇太子がクローディアに優しくしてくれたことだった。そんな時に隣国の大国マーマ王国が大軍をもって攻めてきて・・・・
しかし地獄に落とされていたシャラがそのような事を許す訳はなく、「おのれ、コニー!ヘボ国王!もう許さん!」怒り狂ったシャラは・・・
怒涛の逆襲が始まります!史上最強の「ざまー」が展開。
そして、第二章 幸せに暮らしていたシャラとクローディアを新たな敵が襲います。「娘の幸せを邪魔するやつは許さん❢」
シャラの怒りが爆発して国が次々と制圧されます。
下記の話の1000年前のシャラザール帝国建国記
皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952
小説家になろう カクヨムでも記載中です
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる