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第3章 ドワーフ編

第108話 白狼討伐

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 翌日、俺達は白狼の狩りに行くが、チセには家に残ってランプの研究をしてもらおう。

「チセ、今日はひとりでお留守番だ。変な人が来ても鍵開けちゃダメだぞ」
「ほんとユヅキは過保護よね。チセももう大人なんだから大丈夫よ」
「でもな、この町に来てまだ慣れてないだろうしな。今日初めてのお留守番だしな」
「大丈夫よ、ユヅキさん。ね、チセ」

 俺がオロオロしていると、アイシャにも笑われてしまった。

「はい、大丈夫ですよ。任せてください師匠。いってらっしゃい」

 元気なチセに見送られて、家を後にする。今日狩りが上手くいったら、明日は休みだしチセに一日付き合ってやるか。


 白狼は氷のブレスを吐いてくる魔獣で、冬の時期が近くなると数が多くなり最近では平原の近くまで姿を現している。
 俺達は水耐性のあるマントやローブで身を固め、白狼の巣穴に向かう。8匹が巣穴に入るのを確認しているが、12匹から15匹程いる事を想定して今日の討伐を行う。

「ひとり4、5匹を倒す勘定になるが、ひとりが集中して襲われると怪我する危険がある。3人連携できるように巣穴を囲むぞ」

 今日は俺達だけなので、アイシャには強力な魔道弓を存分に使ってもらおう。カリンには森を燃やさないように、白狼の弱点である土魔法だけで対応するように言っておく。
 最初は一本道に誘導し遠方からの攻撃で数を減らし、後は俺が囮になり殲滅する作戦だ。

「最初巣穴に放り込む魔法は、ファイヤーボールでいいんでしょう」
「ああ、その方が奥まで届くからな。丸焼きにするなよ」
「分かってるわよ。それじゃ始めるわよ」

 カリンが巣穴目掛け、小さめの火魔法を2発放り込む。その後、巣穴近くに魔法で土の壁を作りこちらに誘導する。

 慌てて巣穴から飛び出してきた白狼が、1列になって向かってきた。俺とアイシャは、白狼が魔法を撃つ前に魔道弓を連射し、カリンも俺達の後方から魔法攻撃を仕掛ける。

 体力のある白狼だが、魔道弓の総攻撃とカリンの魔法が炸裂し半数ほどは倒したか。白狼は統率を失い森の中を駆け回っている。
 よし、後はあの魔獣を1匹ずつ仕留めていけばいい。俺は少し開けた場所に飛び出し剣を構える。獰猛な白狼は、俺を狙って襲い掛かってくるはずだ。
 正面に3匹の姿が見えた。白狼は氷のブレスを吐き、それをマントで防いで剣を振りぬく。

 1匹目は真っ二つに、もう1匹は首をはねて倒す。残りの1匹の牙を躱してすれ違った瞬間、白狼はアイシャの弓で頭を撃ち抜かれていた。
 その後方から迫っていた白狼もアイシャの弓とカリンの魔法で攻撃し、取りこぼした1匹を俺が斬り伏せる。
 周囲を警戒したが、もう白狼はいないようだな。

「全部で11匹ね。思っていたより少なかったわね」
「アイシャすまんな、1匹は真っ二つにしてしまった」
「いいわよ、1匹ぐらい。それより怪我はないわよね」

 俺達は持ってきていた荷車に白狼を乗せて平原まで運ぶ。

「ユヅキ、右の肩当てに傷がついてるじゃん。爪にでも引っかけられたんじゃないの」

 俺は最近囮役が多い。装備を白いライトアーマーにして身を守っている。さっき身を躱した際に当てられたようだな。

「本当だ。だがこれぐらいなら修理に出さなくても大丈夫そうだ」
「少し手にも傷があるわよ」
「ああ、かすり傷さ。さっき光魔法で治療しておいた」

 やはり魔獣相手では、まったくの無傷という訳にもいかないか。
 アイシャ達にも胸当てやすね当てなど動きの邪魔にならない、新しい防具を付けてもらっているが、装備も充実させていかないとな。


 川で血抜きして、あとはギルドまで運ぶだけだな。そうだ、巣穴を発見してくれたチセにも実績を付けないと。途中家に戻り、チセを呼んで一緒にギルドに向かう。

「おい、おい。またユヅキとこが大量に魔獣を討伐しやがった」
「お前達だけで、根絶やしにするんじゃないか。俺達にも残しといてくれよ」

 冒険者仲間から、冗談交じりの賛辞を受けながら受付窓口に向かう。「やっぱり師匠はすごいんですね」とチセが驚いていたが、あいつらはちょっと大げさに言ってるだけだからな。チセは真に受けなくてもいいぞ。

「お疲れ様です、ユヅキ様。こちらが今回の報酬となります。実績はどのように付けますか?」
「3・3・3・1でお願いする」
「師匠すみません、あたしにまで実績を付けていただいて」
「チセの監視で白狼の巣穴が見つかったんだ。立派な仕事をしているんだから当然だ」
「そうよ、チセのおかげで適切な作戦が立てられるのよ。あんな遠くから魔獣の数が分かるなんて、すごい事なのよ」
「ありがとうございます。少しでも師匠達のお役に立てたのなら嬉しいです」


 家に帰って夕食後、ランプの事をチセに聞いてみる。

「チセ。今日一日ランプのガラス球を見ていて、何か分かったことはあったか?」
「構造は何となく分かったんですけど、動作など細かな事は分からなくて」

 魔道部品が壊れないように、保護しながらガラスに封入する構造は理解できたようだが、なぜずっと光るのかなどは不明だと言う。

 それについては俺も不思議に思っていた。
 魔道具によって使われる魔力量は様々だ。デンデン貝は、ほとんど魔力を使わないが、ランプや井戸などは魔力が使われているのを感じる。
 ドライヤーは使っている間、魔力を消費するので、魔力量の小さな子供が使うと魔力切れを起こしてしまう危険がある。とはいえ、使われている魔道部品の変換効率はすごく高いので、そうそう事故は起きないんだが。

 光のエネルギー自体はすごく小さなものだ。半日光らせても大したエネルギーを必要としない。
 それでも最初の魔力だけで、半日程度持続するランプの魔道具は驚異的だ。その謎もチセには解いてもらいたいものだ。

「チセ。同じような物は作れそうか」
「はい。ガラス球は大きくなりますが、昨日言っていた火の魔道部品は封入できると思いますよ」

 ランプは高価で分解できんが、よく似たガラス球を自分で作れるなら色々な実験ができそうだ。チセも楽しみだと言っているが、その前に問題がある。

「後は、ガラスを溶かす炉が要るんだよな」
「はい。ガラス工房を貸してくれるところがあればいいんですけど」

 それについては明日、職人ギルドと相談してみるか。あそこならガラスについても色々と教えてくれるだろうからな。

「最悪、あたしの家に戻れば炉はありますし」

 いやー、ドワーフの町までは馬車で片道6日も掛かるしな。ちょっと無理かな~。

「チセのお義父さんは町長の仕事が忙しくて、もうガラスの仕事はしてないんだろ」
「そうですね。もうあの工房は使ってないと思います。止まった炉に火を入れるのは少し時間がかかりますね」

 なんとかこの町で借りたいものだな。
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