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第3章 ドワーフ編
第107話 ランプの魔道具
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「師匠、森の奥に8匹の白狼の群れが見えます」
「よし、どっちの方向に行くか確認してくれ」
「左手奥の丘の向こうに行くみたいですね。巣穴に戻るんでしょうか」
チセには単眼鏡で、今回討伐対象の白狼の魔獣を監視してもらう。危険な事はさせないが、こんな巣穴の探索などは手伝ってもらっている。
「カリンとチセはここで待っていてくれ。アイシャ、足跡を探しに行こう」
「はい、ユヅキさん」
カリンとチセを残して、俺達は森の中に入って行く。
◇
◇
「ねえ、チセ。あんた遠くの獲物をよく見つけられるわね」
「そりゃー、師匠からもらった遠見の魔道具のお陰ですよ」
「その3本足の台も、ユヅキに作ってもらったんでしょう」
「これだと遠くの小さな魔獣もブレずに見えるんですよ」
チセは大事そうに、伸び縮みする台の上の魔道具に手を置く。
私もこの魔道具を見せてもらったけど、チセほど獣の様子や数などは分からなかったわ。特に森の中だと暗くて判別がつかない。ドワーフ族のチセは普段でも目がいいから分かるのかしら。
「でもあたしもカリンみたいに、直接討伐のお手伝いがしたいです」
私の魔法の事ね。チセは生活魔法しか使えない。でも、武器は扱えるはずだわ。
「私があげた魔道弓があるでしょう?」
「ええ。ちゃんと使えるようにはなってるんですけど、連射できないから魔獣に近づかれたら危ないって、師匠が許してくれなくて」
「ユヅキは過保護よね。チセは力持ちだし他の武器も扱えるんじゃないの?」
力だけなら誰よりも強いから、ユヅキの持っている重い剣でも振り回せそうだけど。
「前に剣とナイフの練習もしたんですけど、あたしはどうもダメみたいで……」
「そっか~。でも今のままでもチセは役立ってるんだから充分じゃないの」
「そうですね。今度また師匠と相談してみます。あっ、師匠達が帰って来ましたよ」
巣穴が見つかったようね。陽も傾いてきたし、今日はこれでお終いね。
◇
◇
「白狼の狩りは明日だが、チセひとりを家に残すことになるな」
夕食後、アイシャと明日の狩りについて相談する。最近チセも討伐を手伝いたいと言ってきているが、俺としては危ない事はしてほしくないんだよな~。
まあ、俺達の役に立ちたいと思っていることは嬉しいのだが……。
「ハダルの町に居た頃も、チセはひとりで家にいる事が多かったそうよ。その時はガラス職人としての修業をしてたって言ってたわ」
父親のハダルも反抗組織の事で忙しかっただろうしな。だがここにはガラス造りの工房も無い。いずれはレンズを作ってもらおうと思っているが、レンズ作りにはまだ材料が揃わないし、時間もかかる。
ひとりの時でも職人としての腕を磨いたり、得意なガラスで興味を持つことに取り組んでほしいんだが……。
身近にあるガラスといえば、窓にあるガラスくらいか……。そういや、小さいがランプの光る部分もガラス製だったな。
俺はランプを手にチセの部屋をノックする。
「チセ、すまんがこれを見てくれんか」
「ランプですね。でもまだ暗くないですよ、師匠」
ランプを机の上に置いて、チセにじっくりと見てもらう。
「ランプの魔道具の事は知っているよな。ここの丸いガラスの中にあるのが魔道部品だ」
「ランプの事は知ってますけど、魔道部品の事はよく知りません」
「魔道部品は専門家しか知らないからな。でもちょっと考えてみないか。この魔道部品の先端で全属性が発動して光っているんだが、一度魔力を入れるとずっと光ってるよな」
ランプはオンのスイッチに魔力を入れると半日ぐらいは光り続ける。動力となる電池のような物もない。オフのスイッチに魔力を入れると魔法がキャンセルされ光りが消える仕組みだ。
「不思議に思わないか?」
「ええ、そうですね。でもそれが魔道具という物じゃないんですか」
「ドワーフ族はいろんな物を作れるが、魔道具は作れないそうだな。このランプと同じような物を作ってみたいとは思わないか」
ドワーフ族のプライドに問いかける。
「魔道具は王都でしか製造していないから、作っているのはドワーフではなく獣人のはずだ。魔道部品は別として、ガラスの製造技術で負けているのは悔しくないか」
チセは「うん~」と唸って、ランプの先端にあるガラス球を凝視する。
「確かに小さくて真ん丸ですね。その中に魔道部品を封入するには、それなりの技術が必要です。少なくとも今のあたしでは作るのは難しいですね」
チセも興味を持ってくれたようだな。全く知らないという魔道部品についても知っておいてもらおう。俺は手元にあった、風の魔道部品をチセに見せる。
「この銀の糸に魔力を流すと先端で風の魔法が発動する。ランプは4属性を束ねた物だが原理は同じだ」
「魔道部品ってこんな薄くて、この銀の糸も切れそうで繊細な部品なんですね。これを壊さず、ガラスの中に入れるのは大変な技術を要しますよ」
初めて見る魔道部品とランプを見比べて、うん、うん唸っているが、全く無理な訳でもなさそうだ。
「この部品は風だが火の部品を使って、ランプと同じような物を作ってみないか」
「こんなに小さくはできませんが、大きな物なら作れるかもしれませんね」
魔道具は王都以外での製造や販売は禁止されているが、個人で作る実験的な物なら作る事は許されている。一番小さな火の魔道部品なら安いし、実験にはちょうどいい。ランプに似たガラス球を作る事を考えてもらおう。
「チセは明日1日家の中にいるだろ。そのランプを見て、作れるかどうか検討してくれないか」
「はい、分かりました。でも実際に作るとなると、ガラスを溶かす炉が必要になってきますよ」
「このアルヘナにも、ガラス工房はあるからな。使わせてもらえるか職人ギルドに聞いてみるよ」
職人ギルドなら、その辺りは詳しいからな。魔道部品もこの町で買うことができるし、心配しなくても大丈夫だとチセに説明する。
これでチセも、職人としての知識を得る事ができるだろう。チセには冒険者だけでなく、将来の道を数多く作っておきたい。
「よし、どっちの方向に行くか確認してくれ」
「左手奥の丘の向こうに行くみたいですね。巣穴に戻るんでしょうか」
チセには単眼鏡で、今回討伐対象の白狼の魔獣を監視してもらう。危険な事はさせないが、こんな巣穴の探索などは手伝ってもらっている。
「カリンとチセはここで待っていてくれ。アイシャ、足跡を探しに行こう」
「はい、ユヅキさん」
カリンとチセを残して、俺達は森の中に入って行く。
◇
◇
「ねえ、チセ。あんた遠くの獲物をよく見つけられるわね」
「そりゃー、師匠からもらった遠見の魔道具のお陰ですよ」
「その3本足の台も、ユヅキに作ってもらったんでしょう」
「これだと遠くの小さな魔獣もブレずに見えるんですよ」
チセは大事そうに、伸び縮みする台の上の魔道具に手を置く。
私もこの魔道具を見せてもらったけど、チセほど獣の様子や数などは分からなかったわ。特に森の中だと暗くて判別がつかない。ドワーフ族のチセは普段でも目がいいから分かるのかしら。
「でもあたしもカリンみたいに、直接討伐のお手伝いがしたいです」
私の魔法の事ね。チセは生活魔法しか使えない。でも、武器は扱えるはずだわ。
「私があげた魔道弓があるでしょう?」
「ええ。ちゃんと使えるようにはなってるんですけど、連射できないから魔獣に近づかれたら危ないって、師匠が許してくれなくて」
「ユヅキは過保護よね。チセは力持ちだし他の武器も扱えるんじゃないの?」
力だけなら誰よりも強いから、ユヅキの持っている重い剣でも振り回せそうだけど。
「前に剣とナイフの練習もしたんですけど、あたしはどうもダメみたいで……」
「そっか~。でも今のままでもチセは役立ってるんだから充分じゃないの」
「そうですね。今度また師匠と相談してみます。あっ、師匠達が帰って来ましたよ」
巣穴が見つかったようね。陽も傾いてきたし、今日はこれでお終いね。
◇
◇
「白狼の狩りは明日だが、チセひとりを家に残すことになるな」
夕食後、アイシャと明日の狩りについて相談する。最近チセも討伐を手伝いたいと言ってきているが、俺としては危ない事はしてほしくないんだよな~。
まあ、俺達の役に立ちたいと思っていることは嬉しいのだが……。
「ハダルの町に居た頃も、チセはひとりで家にいる事が多かったそうよ。その時はガラス職人としての修業をしてたって言ってたわ」
父親のハダルも反抗組織の事で忙しかっただろうしな。だがここにはガラス造りの工房も無い。いずれはレンズを作ってもらおうと思っているが、レンズ作りにはまだ材料が揃わないし、時間もかかる。
ひとりの時でも職人としての腕を磨いたり、得意なガラスで興味を持つことに取り組んでほしいんだが……。
身近にあるガラスといえば、窓にあるガラスくらいか……。そういや、小さいがランプの光る部分もガラス製だったな。
俺はランプを手にチセの部屋をノックする。
「チセ、すまんがこれを見てくれんか」
「ランプですね。でもまだ暗くないですよ、師匠」
ランプを机の上に置いて、チセにじっくりと見てもらう。
「ランプの魔道具の事は知っているよな。ここの丸いガラスの中にあるのが魔道部品だ」
「ランプの事は知ってますけど、魔道部品の事はよく知りません」
「魔道部品は専門家しか知らないからな。でもちょっと考えてみないか。この魔道部品の先端で全属性が発動して光っているんだが、一度魔力を入れるとずっと光ってるよな」
ランプはオンのスイッチに魔力を入れると半日ぐらいは光り続ける。動力となる電池のような物もない。オフのスイッチに魔力を入れると魔法がキャンセルされ光りが消える仕組みだ。
「不思議に思わないか?」
「ええ、そうですね。でもそれが魔道具という物じゃないんですか」
「ドワーフ族はいろんな物を作れるが、魔道具は作れないそうだな。このランプと同じような物を作ってみたいとは思わないか」
ドワーフ族のプライドに問いかける。
「魔道具は王都でしか製造していないから、作っているのはドワーフではなく獣人のはずだ。魔道部品は別として、ガラスの製造技術で負けているのは悔しくないか」
チセは「うん~」と唸って、ランプの先端にあるガラス球を凝視する。
「確かに小さくて真ん丸ですね。その中に魔道部品を封入するには、それなりの技術が必要です。少なくとも今のあたしでは作るのは難しいですね」
チセも興味を持ってくれたようだな。全く知らないという魔道部品についても知っておいてもらおう。俺は手元にあった、風の魔道部品をチセに見せる。
「この銀の糸に魔力を流すと先端で風の魔法が発動する。ランプは4属性を束ねた物だが原理は同じだ」
「魔道部品ってこんな薄くて、この銀の糸も切れそうで繊細な部品なんですね。これを壊さず、ガラスの中に入れるのは大変な技術を要しますよ」
初めて見る魔道部品とランプを見比べて、うん、うん唸っているが、全く無理な訳でもなさそうだ。
「この部品は風だが火の部品を使って、ランプと同じような物を作ってみないか」
「こんなに小さくはできませんが、大きな物なら作れるかもしれませんね」
魔道具は王都以外での製造や販売は禁止されているが、個人で作る実験的な物なら作る事は許されている。一番小さな火の魔道部品なら安いし、実験にはちょうどいい。ランプに似たガラス球を作る事を考えてもらおう。
「チセは明日1日家の中にいるだろ。そのランプを見て、作れるかどうか検討してくれないか」
「はい、分かりました。でも実際に作るとなると、ガラスを溶かす炉が必要になってきますよ」
「このアルヘナにも、ガラス工房はあるからな。使わせてもらえるか職人ギルドに聞いてみるよ」
職人ギルドなら、その辺りは詳しいからな。魔道部品もこの町で買うことができるし、心配しなくても大丈夫だとチセに説明する。
これでチセも、職人としての知識を得る事ができるだろう。チセには冒険者だけでなく、将来の道を数多く作っておきたい。
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