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第2章 街暮らし 冒険者編
第56話 魔道弓お披露目
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来てもらった商業ギルドのマスターや武器屋の店主達に、裏庭に集まってもらって俺が弓の扱いを説明しながら、試射を行う。
「おお~」
壁際の板に矢が刺さり、店主の人達から感嘆の声が上がる。以前試射したことのあるジルが俺の前に来て、試射させてほしいと言ってきた。
「これは前と同じ強さの弓か?」
「そうだ。中間の強さで前と変わらない」
魔道弓を手渡すと、手際よく弓をセットしてジルが矢を放つ。その威力に驚きつつも弓を丁寧に返してきた。
武器屋の店主も撃たせてほしいと前に出る。
「俺は弓を扱うのは初めてだが、俺にも撃てるか?」
「大丈夫だ」
その後、販売店のふたりが試射を行なった後、会議室に戻り感想を聞く。
「俺は以前にこの弓の試作品を撃ったが、威力が格段に増している。魔道部品のお陰という事になるな」
「弓が初めての素人の俺が同じように撃てるなら、確かに誤発射防止は必要だと感じた。安全のためのコストとして理解しよう」
普通の弓に比べ割高になるが、その価値はあると理解してくれたようだ。
「少々高くついても、これなら売れるだろうな。ぜひ私の店で販売させてほしい」
「俺の店でも売り出したいが、問題は売値だ。シェリルさん、ギルド長としてどう思うね」
「最初に高く売ってそれでも買ってくれるなら、そのまま据え置くつもりだけど少し話し合いが必要かしらね」
最初から手頃な値段で一気に普及させる考えもあるようだが、後日ギルドの幹部会で話し合うらしいな。
「市場調査はしないのか?」
「市場調査?」
「例えばこの弓を無料で一定期間貸し出し、使った人間に質問してどの程度の値段でどれほど売れるかを調査するものだ」
適正な価格を設定するなら、市場の動向を調べないといけないだろう。だがそれに対して店主達が反発する。
「無料で貸し出すだと。貸すと壊れたり傷ついて売り物にならん。大損じゃないか」
「全くの新型商品だ。店に飾っていても何に使うか分からなければ、買い手がつかんと思ってな。すまん、俺の国のやり方だ。口を出して悪かった」
売値は商業ギルドで決める事になっているからな。俺が口出しする事柄でもなかったか。
ふたりのギルド長が俺を睨んでいる。会議で余計なことをしゃべらないように注意されてたしな、後で怒られるな。
会議後、やはりふたりのギルド長に呼び出されてしまった。
「ユヅキ君。さっきの発言は何なのだ」
「そうよ、誰にどうやって無料で貸し出すの! 一定期間ってどのくらい。質問ってどんなことを聞くのよ。詳しく教えなさい」
「冒険者に貸すのか? それなら冒険者ギルドにも話をしないとな、シェリル」
「そうね、ボアン。今貸せる弓は何台あるの?」
どうも市場調査について詳しく聞きたいらしい。
「例えば矢を少なめに貸し出し、後は自分で買ってもらう事で判断もできる。この弓には専用の矢があるから、その売上げを見るのもひとつの方法だ」
無料で使ってもらい、課金するのが何人でどれくらい払うかを調べる。ゲームでよくある手法だ。
「なるほど、弓を使いたければ矢を買ってでも使い続けようとするからな。ルフトにも多めに矢を作っておくよう言っておかないとな」
その他にも俺の知っている方法を教えていくと、調査の意味合いを理解してくれたようだ。
「ユヅキさん。やっぱり、私の所に来ない?」
「おいおい、そういうのは止めてくれよ」
談笑しながら1階に降りていく。
「それじゃ何か決まったら連絡するわね、ボアン」
「こっちも対応できるようにしておくよ」
これで今日の仕事は終わりだ。俺は給料を受け取り家に帰る。
その数日後。冒険者ギルドで依頼完了を報告していると、別の受付嬢から声をかけられた。
「ユヅキ様。マスターが呼んでいますので、こちらに来ていただけますか」
ギルドマスターのジルには街道を塞いでいた大岩を斬った時、直接報奨金をもらっているから顔見知りではあるが、冒険者になってから会うのは初めてだな。
何の事だろうと、アイシャも一緒に応接室で話を聞くことになった。
「仕事帰りにすまんな。実は商業ギルドから、魔道弓という名の新型の弓を貸し出したいという相談を受けていてな」
なるほど、商業ギルドは市場調査をする事を決めたみたいだな。ジルは俺が魔道弓の開発に関わっていると聞いて声をかけてきたようだ。
「魔道弓を10人に貸し出すから、人選してくれと言われている。調査のためと聞いてはいるが、何を狙っての事なのか良く分からん。無料というのも解せん」
なるほどな。市場調査の意味を計りかねているという事か。
「魔道弓は初心者でも扱える武器だが、冒険者がどんな使い方をするか教えると思ってもらえばいい」
「こちらに何かメリットはあるのか?」
「調査の結果、初心者に売れるとなれば、手の届く価格を設定するだろう。適正な価格で販売されて普及するなら、依頼達成率も上がると思うがな」
どの客層に売るかによって普及率も変わってくるが、新たな武器が手に入れば討伐依頼もやりやすくなる。
「なるほど。確かに初級や中級者にとって遠隔攻撃の弓や魔術は技術を要するものだ。伸び悩んでいる者も多い。その者達の武器が増えるのはありがたい事だ」
「そのためにも正確な情報を商業ギルドに渡す必要がある。冒険者の比率に応じたメンバーを人選して貸し出す方がいい」
貸し出し人数は10人と言っていたな。その人選が重要になってくる。
「それなら初心者にだけ貸し出せばいいんじゃないか?」
「いや、上級者にも貸し出して不満や欠点も商業ギルドに伝えた方がいいな。上級者がどんな使い方をするかも調査するはずだ」
「なるほどな……専門の担当者を置いた方が良さそうだな。ユヅキよ、明日の午後にでもここに来て手伝ってくれんか。その分の報酬も出す」
「そう言われてもな……」
明日もアイシャと冒険者の仕事をせんといかんしな。
「ユヅキさん、いいんじゃない。その弓に関して一番知っているのはあなただし、協力してあげていいと思うわ」
「アイシャがそう言ってくれるなら」
「では頼む。すまんな、アイシャさん。あんたの旦那を明日借りるぞ」
「あっ、いえ旦那さんという訳じゃ……」
ジル、何か勘違いしているぞ。アイシャが顔を真っ赤にして俯いてしまったじゃないか。
「おお~」
壁際の板に矢が刺さり、店主の人達から感嘆の声が上がる。以前試射したことのあるジルが俺の前に来て、試射させてほしいと言ってきた。
「これは前と同じ強さの弓か?」
「そうだ。中間の強さで前と変わらない」
魔道弓を手渡すと、手際よく弓をセットしてジルが矢を放つ。その威力に驚きつつも弓を丁寧に返してきた。
武器屋の店主も撃たせてほしいと前に出る。
「俺は弓を扱うのは初めてだが、俺にも撃てるか?」
「大丈夫だ」
その後、販売店のふたりが試射を行なった後、会議室に戻り感想を聞く。
「俺は以前にこの弓の試作品を撃ったが、威力が格段に増している。魔道部品のお陰という事になるな」
「弓が初めての素人の俺が同じように撃てるなら、確かに誤発射防止は必要だと感じた。安全のためのコストとして理解しよう」
普通の弓に比べ割高になるが、その価値はあると理解してくれたようだ。
「少々高くついても、これなら売れるだろうな。ぜひ私の店で販売させてほしい」
「俺の店でも売り出したいが、問題は売値だ。シェリルさん、ギルド長としてどう思うね」
「最初に高く売ってそれでも買ってくれるなら、そのまま据え置くつもりだけど少し話し合いが必要かしらね」
最初から手頃な値段で一気に普及させる考えもあるようだが、後日ギルドの幹部会で話し合うらしいな。
「市場調査はしないのか?」
「市場調査?」
「例えばこの弓を無料で一定期間貸し出し、使った人間に質問してどの程度の値段でどれほど売れるかを調査するものだ」
適正な価格を設定するなら、市場の動向を調べないといけないだろう。だがそれに対して店主達が反発する。
「無料で貸し出すだと。貸すと壊れたり傷ついて売り物にならん。大損じゃないか」
「全くの新型商品だ。店に飾っていても何に使うか分からなければ、買い手がつかんと思ってな。すまん、俺の国のやり方だ。口を出して悪かった」
売値は商業ギルドで決める事になっているからな。俺が口出しする事柄でもなかったか。
ふたりのギルド長が俺を睨んでいる。会議で余計なことをしゃべらないように注意されてたしな、後で怒られるな。
会議後、やはりふたりのギルド長に呼び出されてしまった。
「ユヅキ君。さっきの発言は何なのだ」
「そうよ、誰にどうやって無料で貸し出すの! 一定期間ってどのくらい。質問ってどんなことを聞くのよ。詳しく教えなさい」
「冒険者に貸すのか? それなら冒険者ギルドにも話をしないとな、シェリル」
「そうね、ボアン。今貸せる弓は何台あるの?」
どうも市場調査について詳しく聞きたいらしい。
「例えば矢を少なめに貸し出し、後は自分で買ってもらう事で判断もできる。この弓には専用の矢があるから、その売上げを見るのもひとつの方法だ」
無料で使ってもらい、課金するのが何人でどれくらい払うかを調べる。ゲームでよくある手法だ。
「なるほど、弓を使いたければ矢を買ってでも使い続けようとするからな。ルフトにも多めに矢を作っておくよう言っておかないとな」
その他にも俺の知っている方法を教えていくと、調査の意味合いを理解してくれたようだ。
「ユヅキさん。やっぱり、私の所に来ない?」
「おいおい、そういうのは止めてくれよ」
談笑しながら1階に降りていく。
「それじゃ何か決まったら連絡するわね、ボアン」
「こっちも対応できるようにしておくよ」
これで今日の仕事は終わりだ。俺は給料を受け取り家に帰る。
その数日後。冒険者ギルドで依頼完了を報告していると、別の受付嬢から声をかけられた。
「ユヅキ様。マスターが呼んでいますので、こちらに来ていただけますか」
ギルドマスターのジルには街道を塞いでいた大岩を斬った時、直接報奨金をもらっているから顔見知りではあるが、冒険者になってから会うのは初めてだな。
何の事だろうと、アイシャも一緒に応接室で話を聞くことになった。
「仕事帰りにすまんな。実は商業ギルドから、魔道弓という名の新型の弓を貸し出したいという相談を受けていてな」
なるほど、商業ギルドは市場調査をする事を決めたみたいだな。ジルは俺が魔道弓の開発に関わっていると聞いて声をかけてきたようだ。
「魔道弓を10人に貸し出すから、人選してくれと言われている。調査のためと聞いてはいるが、何を狙っての事なのか良く分からん。無料というのも解せん」
なるほどな。市場調査の意味を計りかねているという事か。
「魔道弓は初心者でも扱える武器だが、冒険者がどんな使い方をするか教えると思ってもらえばいい」
「こちらに何かメリットはあるのか?」
「調査の結果、初心者に売れるとなれば、手の届く価格を設定するだろう。適正な価格で販売されて普及するなら、依頼達成率も上がると思うがな」
どの客層に売るかによって普及率も変わってくるが、新たな武器が手に入れば討伐依頼もやりやすくなる。
「なるほど。確かに初級や中級者にとって遠隔攻撃の弓や魔術は技術を要するものだ。伸び悩んでいる者も多い。その者達の武器が増えるのはありがたい事だ」
「そのためにも正確な情報を商業ギルドに渡す必要がある。冒険者の比率に応じたメンバーを人選して貸し出す方がいい」
貸し出し人数は10人と言っていたな。その人選が重要になってくる。
「それなら初心者にだけ貸し出せばいいんじゃないか?」
「いや、上級者にも貸し出して不満や欠点も商業ギルドに伝えた方がいいな。上級者がどんな使い方をするかも調査するはずだ」
「なるほどな……専門の担当者を置いた方が良さそうだな。ユヅキよ、明日の午後にでもここに来て手伝ってくれんか。その分の報酬も出す」
「そう言われてもな……」
明日もアイシャと冒険者の仕事をせんといかんしな。
「ユヅキさん、いいんじゃない。その弓に関して一番知っているのはあなただし、協力してあげていいと思うわ」
「アイシャがそう言ってくれるなら」
「では頼む。すまんな、アイシャさん。あんたの旦那を明日借りるぞ」
「あっ、いえ旦那さんという訳じゃ……」
ジル、何か勘違いしているぞ。アイシャが顔を真っ赤にして俯いてしまったじゃないか。
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