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第1章 異世界暮らし 山の家
第44話 下宿部屋2
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その日の会議も終わり、俺はギルドを後にしてカリンの店に向かった。
カリンの店の裏口を開けると、アイシャはもう戻っていて興奮気味に話してくる。
「あのねユヅキさん、家借りられたの、2階なの、それでね安かったの」
うんうん、2階の部屋が借りられたのか。言っている事あまりよく分からないぞ。少し落ち着こうな。
店の方から、カリンの父親のトマスさんがこちらに歩いてくる。
「ユヅキ君、ちょうど良かった。今から下宿屋のおばあさんの所に行くので、一緒に来てくれないか」
アイシャも一緒に下宿屋へ向かいながら、詳しい話をトマスさんから聞く。
「カリンから聞いた話だと、下宿屋のおばあさんと話をして一軒丸ごと貸してくれると言っているそうだ」
「えっ、一軒丸ごとですか」
なるほど、家を借りたのね。アイシャが興奮するのも分かるな。
「貸すにあたり、条件があるそうだ。私が保証人になる事と、あと2つ、3つ条件があるらしい。保証人になるのは構わないんだが、こういう事は我々大人が聞いた方がいいと思ってね」
「そうだな。トマスさんに来てもらうと助かるよ」
「家主のおばあさんとは昔から付き合いはあるんだが、去年に旦那さんを亡くされてな、あの家をどうするか迷っているとは聞いていたんだけどね」
町外れの外壁に近い所に、その下宿屋は建っていた。石造りで2階建ての一般的な家だ。
「おばあさん、元気にしているかい」
「ああ、トマスかい。元気とは言えないが、なんとかやってるよ」
「この家を貸してくれるということで来たんだが」
「その事かい。わたしゃ隣町に住んでいる息子の家に引っ越すんだが、おじいさんと過ごしたこの家を手放したくなくてね」
もう引っ越し先は決まっていて、引っ越す準備もできているそうだ。
「アイシャちゃんが、ここに住んでくれるなら貸そうと決めたんだよ。アイシャちゃんの亡くなったお父さんのことも良く知っているし、この子なら安心して任せられると思ってね」
そうトマスさんに話をして、後ろから入って来た俺に目を向ける。
「もうひとり同居人がいるという事だったが、その後にいる……、あんた人族じゃないか!!」
「おばあさん、この人は大丈夫だよ。この前街道で私も助けてもらったし、いい人だ」
「そうよ、おばあちゃん。この人は私の命の恩人なの。今も一緒に住んでいるのよ。優しい人よ」
俺もアピールしなければ。
「ボク わるい人族じゃないよ」
「???」
クソ! こちらでは通用しないか。
「まあ、お前さん達がそこまで言うなら信用しよう。人を見た目だけで判断するのは良くないことだからね」
なんとか信用してもらえたようだな。
「トマス。あんたが毎月隣町の私の所に家賃を持ってきてもらいたいのじゃが、良いかね」
「隣町には仕入れでよく行くから、大丈夫だよ」
「そうかい、助かるよ。2階の4部屋は自由に使ってくれて構わんが、1階のこの部屋には手を触れないでほしい。おじいさんとの思い出が詰まっとるんでな」
1階の居間になっている部屋。そのままの状態で保存し、おばあさんがこの町を訪れた時にその部屋を使いたいそうだ。
「分かった、そうしよう」
「かまどと洗い場は長年使ってヒビなどが入っておる。使うのならすまんが自分達で修理してくれ」
なるほど。綺麗に使ってはいるが、年季の入ったかまどだな。
「家の事が決まれば、わしは2、3日で引っ越すとしよう。息子達にも早く来るように言われとるんでな。町を出る時に鍵はトマスの所に預ける。その後はお前さんらに任せるよ」
「それじゃおばあさん、契約書は私が書くよ。この家一軒の家賃がひと月銀貨80枚と聞いているが、それでいいんだね」
「ああ、家を貸すだけで何もしないからのう。それに家を守ってくれるなら、それで充分じゃよ」
「アイシャ達もそれでいいかい?」
ここの1ヶ月は45日だ。ふたりが住む家を一軒借りられるなら充分に安い価格だ。
「はい、私はそれでいいです。ユヅキさんは?」
「ああ、俺もそれで結構だ。3日後に契約書のサインをしに、トマスさんの店に寄らせてもらう」
「そうしてくれ。それまでには作っておくよ」
俺達はトマスさんとここで別れて門に向かう。すぐに帰らないと夜になってしまう。
「アイシャ。俺はギルドに行く日もあるが、引っ越しはいつにする?」
「そうね。1週間後くらいまでには引っ越しましょうか。それまでには荷物をまとめておくわ」
山道に入ってからは警戒しつつ早足で家路を急ぐ。
日が落ちる前に無事家にたどり着き、夕食を摂ってその日は早く眠りについた。
翌日からは予定通り2日間狩りをする。その後俺はギルドに、アイシャは毛皮作りなど途中になっている作業を済ませる。ギルドの仕事の合間に、カリンの店で契約書のサインをし家の鍵を受け取り、アイシャと一緒に掃除や荷物をまとめたりと、忙しい日々を送る。
そして引っ越しの当日。俺の荷物は少ないが余った食料やテーブル、道具など割と大荷物になったな。この分だと3往復しないと運べないか。
「アイシャ、引っ越しの手伝いに来たわよ」
カリンがドアを開けて入ってきた。えっ、手伝いに? そういえばカリンの店に行った時デンデン貝を持って行ったな。
「カリン、ありがとう。都合がついたのね」
「今日は休みだし、兄さんも荷馬車を出すって言ってくれたの」
荷馬車もあるのか、それは助かる。俺達は荷物を荷馬車の停めている道まで運んでいく。
荷物を積んだ後、アイシャと一緒に一旦家に戻り、家の入り口と右手奥にあるトイレの入り口に岩を積み上げて閉鎖する。
中に獣が入ってこないようにするためで、冬の間家を離れる時はこうするそうだ。
この家に住んだのは短い間だったが、俺の人生を変える事ばかりだった。アイシャもしんみりした顔をしている。色んな思い出があるのだろう。
俺は一礼してアイシャの家を後にした。
---------------------
【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
今回で 第1章は終了となります。
次回からは 第2章 街暮らし 冒険者編 です。お楽しみに。
お気に入りや応援、感想など頂けるとありがたいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
カリンの店の裏口を開けると、アイシャはもう戻っていて興奮気味に話してくる。
「あのねユヅキさん、家借りられたの、2階なの、それでね安かったの」
うんうん、2階の部屋が借りられたのか。言っている事あまりよく分からないぞ。少し落ち着こうな。
店の方から、カリンの父親のトマスさんがこちらに歩いてくる。
「ユヅキ君、ちょうど良かった。今から下宿屋のおばあさんの所に行くので、一緒に来てくれないか」
アイシャも一緒に下宿屋へ向かいながら、詳しい話をトマスさんから聞く。
「カリンから聞いた話だと、下宿屋のおばあさんと話をして一軒丸ごと貸してくれると言っているそうだ」
「えっ、一軒丸ごとですか」
なるほど、家を借りたのね。アイシャが興奮するのも分かるな。
「貸すにあたり、条件があるそうだ。私が保証人になる事と、あと2つ、3つ条件があるらしい。保証人になるのは構わないんだが、こういう事は我々大人が聞いた方がいいと思ってね」
「そうだな。トマスさんに来てもらうと助かるよ」
「家主のおばあさんとは昔から付き合いはあるんだが、去年に旦那さんを亡くされてな、あの家をどうするか迷っているとは聞いていたんだけどね」
町外れの外壁に近い所に、その下宿屋は建っていた。石造りで2階建ての一般的な家だ。
「おばあさん、元気にしているかい」
「ああ、トマスかい。元気とは言えないが、なんとかやってるよ」
「この家を貸してくれるということで来たんだが」
「その事かい。わたしゃ隣町に住んでいる息子の家に引っ越すんだが、おじいさんと過ごしたこの家を手放したくなくてね」
もう引っ越し先は決まっていて、引っ越す準備もできているそうだ。
「アイシャちゃんが、ここに住んでくれるなら貸そうと決めたんだよ。アイシャちゃんの亡くなったお父さんのことも良く知っているし、この子なら安心して任せられると思ってね」
そうトマスさんに話をして、後ろから入って来た俺に目を向ける。
「もうひとり同居人がいるという事だったが、その後にいる……、あんた人族じゃないか!!」
「おばあさん、この人は大丈夫だよ。この前街道で私も助けてもらったし、いい人だ」
「そうよ、おばあちゃん。この人は私の命の恩人なの。今も一緒に住んでいるのよ。優しい人よ」
俺もアピールしなければ。
「ボク わるい人族じゃないよ」
「???」
クソ! こちらでは通用しないか。
「まあ、お前さん達がそこまで言うなら信用しよう。人を見た目だけで判断するのは良くないことだからね」
なんとか信用してもらえたようだな。
「トマス。あんたが毎月隣町の私の所に家賃を持ってきてもらいたいのじゃが、良いかね」
「隣町には仕入れでよく行くから、大丈夫だよ」
「そうかい、助かるよ。2階の4部屋は自由に使ってくれて構わんが、1階のこの部屋には手を触れないでほしい。おじいさんとの思い出が詰まっとるんでな」
1階の居間になっている部屋。そのままの状態で保存し、おばあさんがこの町を訪れた時にその部屋を使いたいそうだ。
「分かった、そうしよう」
「かまどと洗い場は長年使ってヒビなどが入っておる。使うのならすまんが自分達で修理してくれ」
なるほど。綺麗に使ってはいるが、年季の入ったかまどだな。
「家の事が決まれば、わしは2、3日で引っ越すとしよう。息子達にも早く来るように言われとるんでな。町を出る時に鍵はトマスの所に預ける。その後はお前さんらに任せるよ」
「それじゃおばあさん、契約書は私が書くよ。この家一軒の家賃がひと月銀貨80枚と聞いているが、それでいいんだね」
「ああ、家を貸すだけで何もしないからのう。それに家を守ってくれるなら、それで充分じゃよ」
「アイシャ達もそれでいいかい?」
ここの1ヶ月は45日だ。ふたりが住む家を一軒借りられるなら充分に安い価格だ。
「はい、私はそれでいいです。ユヅキさんは?」
「ああ、俺もそれで結構だ。3日後に契約書のサインをしに、トマスさんの店に寄らせてもらう」
「そうしてくれ。それまでには作っておくよ」
俺達はトマスさんとここで別れて門に向かう。すぐに帰らないと夜になってしまう。
「アイシャ。俺はギルドに行く日もあるが、引っ越しはいつにする?」
「そうね。1週間後くらいまでには引っ越しましょうか。それまでには荷物をまとめておくわ」
山道に入ってからは警戒しつつ早足で家路を急ぐ。
日が落ちる前に無事家にたどり着き、夕食を摂ってその日は早く眠りについた。
翌日からは予定通り2日間狩りをする。その後俺はギルドに、アイシャは毛皮作りなど途中になっている作業を済ませる。ギルドの仕事の合間に、カリンの店で契約書のサインをし家の鍵を受け取り、アイシャと一緒に掃除や荷物をまとめたりと、忙しい日々を送る。
そして引っ越しの当日。俺の荷物は少ないが余った食料やテーブル、道具など割と大荷物になったな。この分だと3往復しないと運べないか。
「アイシャ、引っ越しの手伝いに来たわよ」
カリンがドアを開けて入ってきた。えっ、手伝いに? そういえばカリンの店に行った時デンデン貝を持って行ったな。
「カリン、ありがとう。都合がついたのね」
「今日は休みだし、兄さんも荷馬車を出すって言ってくれたの」
荷馬車もあるのか、それは助かる。俺達は荷物を荷馬車の停めている道まで運んでいく。
荷物を積んだ後、アイシャと一緒に一旦家に戻り、家の入り口と右手奥にあるトイレの入り口に岩を積み上げて閉鎖する。
中に獣が入ってこないようにするためで、冬の間家を離れる時はこうするそうだ。
この家に住んだのは短い間だったが、俺の人生を変える事ばかりだった。アイシャもしんみりした顔をしている。色んな思い出があるのだろう。
俺は一礼してアイシャの家を後にした。
---------------------
【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
今回で 第1章は終了となります。
次回からは 第2章 街暮らし 冒険者編 です。お楽しみに。
お気に入りや応援、感想など頂けるとありがたいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
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