【改訂版】目指せ遥かなるスローライフ!~放り出された異世界でモフモフと生き抜く異世界暮らし~

水瀬 とろん

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第1章 異世界暮らし 山の家

第21話 カリン襲来 カリン2

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「カリン、今日の夕飯は私が作るわ。手伝ってくれる?」
「それはいいけど、その足で大丈夫なの?」
「ユヅキさんが作ってくれた、二本杖があるから大丈夫よ」

 寝室の隣の部屋までアイシャと一緒に行って、夕食の準備にかかる。
 外にいたユヅキも呼んで夕食を作っていくけど、アイシャがかまどに火を入れた時、

「%$$※☆☆※~!!」
「アッハッハ、なにあれ。魔法見て尻もち突いてるじゃない。おっかしい~」

 爆笑しているとユヅキが「お前もやってみろ」とばかりに指を鳴らしてこっちを見てくる。

「いや、私はね。あの~、ちょっとね~」

 なおもユヅキがこぶしを握って挑発してくる。

「私だってね、魔法くらい使えるわよ」

 指をパチン、パチン鳴らしたけど発動しない。使えるけどちょっと下手なだけなんだから!
 何度指を鳴らしてもやはり発動しなかった。

「$ⅹ※ー☆」

 私を馬鹿にするように笑われた。

「こっのお~、バカにすんじゃないわよ! 私だってやればできるんだからね~」

 ボンッ。
 爆発が起きて黒い煙が出た。

「カリン。落ち着いて、落ち着いてね」

 アイシャが手を握ってくれている。

「う、うん」

 また魔法を暴走させてしまった。魔法は使えるけど、うまくコントロールができない。酷い時には手に火傷を負ったこともある。


 食事が終わった後。あの男がアイシャの前にきて、魔力が吸われるような不思議な踊りを踊っていた。

「☆☆※○・ +&%・ %☆※X・ $※△・ X%☆・ ※XX&&%」

 何やら呪いのような呪文も唱えている。何なのかしらこの男。あんた魔物なの?

「分かった! 魔法を教えてほしいのね」

 えっ! 言ってることが分かったの?

 その後、アイシャの魔法講座が始まった。私も横に座って聞いておこう。
 魔力の説明の後、男が魔法を発現した。小さな小さな炎だったけど、あれは確かに魔法だ。

 男は驚き、アイシャは喜んでいる。初めての魔法なのに2属性目の魔法も使った。
 こんな奴に負けてられないわ。私は全属性が使えるのよ。今は下手だけど……、今はね。

「アイシャ、私にも教えて」
「うん分かったわ。あのね……」

 アイシャに教えてもらっていると、男が隣で膝を突いてうずくまっている。

「まあ、大変、魔力切れだわ。カリン、肩を貸してあげて」
「仕方ないわね。大方嬉しくて使いすぎたのね」

 小さな子供がしてしまう失敗のひとつね。ベッドに寝かせてしばらくすると、男は起き上がってきた。

「ま~、よくあることよ。気にすることないわよ」と、肩をポンポンと叩いた。


 翌朝まだ早い時間なのに外で物音がする。外に出ると、ユヅキが前後に飛びながら剣を振っている。人族の剣術なのかしら、変な動きね。
 稽古が終わったのか、こちらに近づいて来た。

「くっさい! あんた汗臭いわよ。服からもなんか臭うし。ちょっとこっちに来なさい」

 いくらなんでもこれは酷いわ。食料庫の奥の洗い場まで手を引っ張って連れて行った。

「ここで体洗って、服も洗濯しなさい」

 急にユヅキが服を脱ぎだす。

「何してんのよ。レディーの前で。この変態~」

 寝室に戻るとアイシャも起きてきたようで文句を言う。

「アイシャあいつ、すごっく臭いの。洗い場で洗うように言ってきたわ。あんた今までよく我慢できたわね」
「そういえば、少し匂ってたかな。でもあんまり嫌な臭いじゃなかったわよ」

 えっ、なんで。狼族の方が嗅覚優れてるんじゃなかった? 私がおかしいの?

 食料庫から出てきたユヅキは上半身裸だった。やっぱ変態だよ。
 朝食の時のユヅキも変な格好をしていた。裸に革のジャケットだけ着てる。洗濯しろと言ったのは私だけど、着替えくらい持ってないの?


 朝食の後、ユヅキがまた不思議な踊りを踊った。

「分かった! 薬草がいるのね」

 いや、なんで分かるのよ、アイシャ。

「カリン。眠りの薬草を採りに行ってほしんだけど、お願いできるかしら」
「その薬草なら採ったことあるから分かるけど、林をひとりで歩き回るのはちょっと無理だよ」
「ユヅキさんに護衛してもらえば大丈夫だと思うわ」
「え~、あいつに! まあ家の近くで採れるから、何かあってもすぐに帰って来れるけど」

 仕方ないか、アイシャのためだもんね。

「あんた、しっかり私の護衛しなさいよ」

 薬草を採りに林に入る。薬草は群生してるから見つけやすいし、この辺りに沢山生えている。
 ウロウロと探していると、小さなウサギが飛び出してきた。ユヅキがビックリして剣を構えているわ。本当はコイツ弱いんじゃないの?

「あっ、あった。これなら籠いっぱいに採れるわ」

 帰ろうとユヅキを呼んだ時。

「キャッ」

 ヘビに足を咬まれた。赤い縞模様のヘビだ、毒ヘビかも!

「%☆※X!」

 ユヅキが何か言ったけど、ヘビはもう逃げていた。
 私のズボンの裾をたくし上げて、ヘビに咬まれた傷口に口を付けて吸い出している。毒を吸い出しているの? 少し痛いけど何度か血を吸って吐いている。

「カリン、※☆☆※&&%」

 大きな声で名前を呼ばれたけど、何を言っているのか分からない。早くアイシャの元に帰らなきゃ。家の方角を指差す。
 私を背負って家の方に走り出す。速い! 落ちないように首にしがみついた。

 油断していたわ。ズボンは穿いて来たけど、街中で穿く丈の短い生地の薄い服だ。
 アイシャの事が気になって、そこまで気が回らなかった。どうしよう。
 ユヅキに背負われて寝室に走り込む。

「アイシャ! 毒ヘビに咬まれたの。どうしよう!」
「カリン落ち着いて! どんなヘビだった」
「赤い縞模様の小さなヘビだったわ」
「頭は赤かった?」
「いいえ。黒い色だったわ」
「良かった。それなら大丈夫よ。毒ヘビじゃないわ。カリンごめんね。私のせいで怖い思いをさせて」
「いいえ、いいのよ。私も迂闊だったわ」

 そういえば籠をギュッと握りしめていた。

「良かった。薬草はあんまり零れていないみたい。はい、アイシャ」
「うん、ありがとう。カリン」
「それにユヅキさんも、ありがとうございました」

 その後、ベッドに座ってユヅキに足の治療をしてもらった。何やら白い小さな石のような物を手渡された。少し光っていて綺麗で、宝石かなと思っていたら、

「それ、お薬なの。水と一緒に飲んで」
「えっ、そうなの。飲んでいいの? じゃー」

 ユヅキは私のために、傷口から毒を吸い出そうとしてくれた。あれは確か自分も毒を受ける危険な行為だわ。
 毒ヘビじゃないと分かってからも、貴重な薬を使って治療してくれた。
 本当はいい人かも。

「ありがとう。ユヅキ」

 小さく呟いた。
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