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第1章 異世界暮らし 山の家
第17話 カリン襲来
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翌朝、目が覚めるとアイシャはもう起きていた。俺が起きるのを待っていたみたいだな。
「アイシャ、おはよう」
「ユヅキ※☆、☆☆※○」
俺は身を起こして大きな伸びをし、朝食の準備をしようとベッドから降りると、
「ユヅキ※☆。☆※○、☆※、△※☆☆※△X」
こちらを見て、ダッコのポーズをしてくる。抱え上げると、隣の部屋の椅子に座りたいらしい。その後も、あれこれ指差して欲しいものを伝えてくる。
なるほど今日の朝食はアイシャが作ってくれるのか。
椅子に座りながら野菜の皮をむいたり、切ったりしている。
鍋に水を張り、切った野菜と干し肉を入れて俺に渡してくる。野菜スープを作るようで、これを火に掛けてほしいらしい。
かまどに行って、いつものように火打ち棒をガンガン叩いて火を熾す。
それを見ていたアイシャは、「ワ~、すごい」というようにパチパチ拍手してくれる。
こんな金属棒は珍しいのかなと思いつつ、腕の力こぶを見せて働く男をアピールする。
テーブルの上では小さな桶に小麦粉と何かの粉を混ぜ、水を加えながら捏ねていた。
座りながらでは力が入らないようなので少し手伝うが、なかなかに難しい。水と上手く混ざらないぞ。
これはパン生地のようで、アイシャに教えてもらいながら捏ねていく。
パンを鉄鍋の底で焼いて、無発酵パンの出来上がりである。パンと野菜スープを器に入れて寝室の机に置く。アイシャもベッドの方が楽だろう。
非常食のおかゆと違って野菜スープが美味しいな。天然の味というのか調味料は塩だけのはずだが、肉や野菜の旨味がよく出ている。
パンも前世のふっくらしたパンとは違うが、焼き立てでなかなかのものだ。ふたりとも笑顔でおしゃべりしながら食事をする。
食後。包帯を取り替えることを伝えるとウンと頷いて、ベッドの上で俯きに寝てポンチョの裾をたくし上げてくれた。
シッポも横に動かして邪魔にならないようにしてくれる。
包帯を外して傷口を見ていると、入り口の開く音がして人が入ってきた。
「☆※XX! &&%$##/*~~~」
振り向くとカリンがすごい形相でこちらに向かって来る。
コークスクリューの効いた右ストレートが俺のアゴにクリーンヒットした。
「グオァッ!」
一発KOである。カンカンカンと俺の頭の中でゴングが鳴り響いていた。
◇
◇
気が付くと、アイシャがカリンを叱りながら心配そうに、こちらを見ている。
なぜカリンがいるんだ??
「イテテテ」とアゴをさすりながら起き上がる。
「※☆、☆☆※○+&%ユヅキ$$※△X%」
カリンが何やら謝っているようなので、「いいよ」と言いながら頭をなでようとしたら、バッと後ろに飛び退いてファイティングポーズをとってくる。
なんなんだこいつは? やたらと警戒されているようだな。
この際カリンのことは放っておいて、アイシャの傷の治療が先だ。
俯きに寝てもらい、傷に張り付いたガーゼをナイフで切り裂いて傷口を綺麗に洗う。
カリンは隣で自分が痛そうな顔をしてのぞき込み、何か言っているが、少し静かにしてもらいたいものだ。
新しいガーゼと包帯に交換したら、俺は隣の部屋に移って椅子に座りひと息つく。
寝室では仲のいい友達同士、色々としゃべっていて楽しそうな話声が聞こえてきた。
しばらくするとカリンが俺に近付いて来て、一緒に入り口に来るように手招きする。
「やれやれ、今度はいったい何だ」
カリンについて外に出ると、家の前に大きめの木箱と手提げ鞄が置いてあった。
カリンは手提げ鞄を持ちつつ、俺に木箱を持ってくるよう身振りで伝えてくる。そのまま寝室に入り床に置くと、箱を開けてアイシャに色々と確認している。
アイシャは「ごめんね」というように、中のものを食料庫や部屋の棚に移動させてほしいと指を差す。
追加の食材や着替えなどカリンが持ってきてくれたみたいだな。なかなか気の利く奴じゃないか。
一部食材の入った木箱を食料庫に置いて寝室に戻ると、アイシャがカリンに何かお願いをしているようだった。
その後、俺を見て両手を広げてダッコのポーズをしてくる。アイシャを抱え上げると、後ろの方でカリンがビクッとして俺を睨んでくる。
なんなんだコイツは? と思いつつ、アイシャを食料庫奥の水場まで連れていった。
カリンが「シッシッ」と追い払うように手の甲を振ってくる。
俺はお邪魔なのだろう。後はカリンに任せればいいかとその場を離れ、かまどの部屋に戻り椅子に腰かける。
アイシャの怪我は順調に回復している。もう少しすれば立って歩くこともできるようになる。
こんな山の家にまで来てくれるカリンがいれば、身の回りの世話もしてくれるだろう。
元々、俺が来る前までアイシャは独りで生活していたんだから、俺が居なくても大丈夫だろう。
それに比べ言葉もろくにしゃべれん俺はどうだ? このままでいいのか? と少し落ち込んでいるとカリンが俺を呼びに来た。
水場に行き、アイシャを抱えて寝室に戻る。水浴びでもしたのか髪が濡れているな。右奥の方は洗い場になっていて体を洗えるようで、そのための手桶も置かれていたなと思い出した。
ここには生活するための物がすべて用意されているようだが、俺はそれがどのように使われるのかさえ知らない。
ベッドにアイシャを寝かせたが、落ち込んだ顔を見せてしまったか、アイシャが心配そうにしていた。いかん、いかん。怪我人に心配されてどうする。
こういう時は、体を動かしていた方がいいな。アイシャの事はカリンに任せて、俺はショートソードを持ち外で素振りでもしていよう。
「アイシャ、おはよう」
「ユヅキ※☆、☆☆※○」
俺は身を起こして大きな伸びをし、朝食の準備をしようとベッドから降りると、
「ユヅキ※☆。☆※○、☆※、△※☆☆※△X」
こちらを見て、ダッコのポーズをしてくる。抱え上げると、隣の部屋の椅子に座りたいらしい。その後も、あれこれ指差して欲しいものを伝えてくる。
なるほど今日の朝食はアイシャが作ってくれるのか。
椅子に座りながら野菜の皮をむいたり、切ったりしている。
鍋に水を張り、切った野菜と干し肉を入れて俺に渡してくる。野菜スープを作るようで、これを火に掛けてほしいらしい。
かまどに行って、いつものように火打ち棒をガンガン叩いて火を熾す。
それを見ていたアイシャは、「ワ~、すごい」というようにパチパチ拍手してくれる。
こんな金属棒は珍しいのかなと思いつつ、腕の力こぶを見せて働く男をアピールする。
テーブルの上では小さな桶に小麦粉と何かの粉を混ぜ、水を加えながら捏ねていた。
座りながらでは力が入らないようなので少し手伝うが、なかなかに難しい。水と上手く混ざらないぞ。
これはパン生地のようで、アイシャに教えてもらいながら捏ねていく。
パンを鉄鍋の底で焼いて、無発酵パンの出来上がりである。パンと野菜スープを器に入れて寝室の机に置く。アイシャもベッドの方が楽だろう。
非常食のおかゆと違って野菜スープが美味しいな。天然の味というのか調味料は塩だけのはずだが、肉や野菜の旨味がよく出ている。
パンも前世のふっくらしたパンとは違うが、焼き立てでなかなかのものだ。ふたりとも笑顔でおしゃべりしながら食事をする。
食後。包帯を取り替えることを伝えるとウンと頷いて、ベッドの上で俯きに寝てポンチョの裾をたくし上げてくれた。
シッポも横に動かして邪魔にならないようにしてくれる。
包帯を外して傷口を見ていると、入り口の開く音がして人が入ってきた。
「☆※XX! &&%$##/*~~~」
振り向くとカリンがすごい形相でこちらに向かって来る。
コークスクリューの効いた右ストレートが俺のアゴにクリーンヒットした。
「グオァッ!」
一発KOである。カンカンカンと俺の頭の中でゴングが鳴り響いていた。
◇
◇
気が付くと、アイシャがカリンを叱りながら心配そうに、こちらを見ている。
なぜカリンがいるんだ??
「イテテテ」とアゴをさすりながら起き上がる。
「※☆、☆☆※○+&%ユヅキ$$※△X%」
カリンが何やら謝っているようなので、「いいよ」と言いながら頭をなでようとしたら、バッと後ろに飛び退いてファイティングポーズをとってくる。
なんなんだこいつは? やたらと警戒されているようだな。
この際カリンのことは放っておいて、アイシャの傷の治療が先だ。
俯きに寝てもらい、傷に張り付いたガーゼをナイフで切り裂いて傷口を綺麗に洗う。
カリンは隣で自分が痛そうな顔をしてのぞき込み、何か言っているが、少し静かにしてもらいたいものだ。
新しいガーゼと包帯に交換したら、俺は隣の部屋に移って椅子に座りひと息つく。
寝室では仲のいい友達同士、色々としゃべっていて楽しそうな話声が聞こえてきた。
しばらくするとカリンが俺に近付いて来て、一緒に入り口に来るように手招きする。
「やれやれ、今度はいったい何だ」
カリンについて外に出ると、家の前に大きめの木箱と手提げ鞄が置いてあった。
カリンは手提げ鞄を持ちつつ、俺に木箱を持ってくるよう身振りで伝えてくる。そのまま寝室に入り床に置くと、箱を開けてアイシャに色々と確認している。
アイシャは「ごめんね」というように、中のものを食料庫や部屋の棚に移動させてほしいと指を差す。
追加の食材や着替えなどカリンが持ってきてくれたみたいだな。なかなか気の利く奴じゃないか。
一部食材の入った木箱を食料庫に置いて寝室に戻ると、アイシャがカリンに何かお願いをしているようだった。
その後、俺を見て両手を広げてダッコのポーズをしてくる。アイシャを抱え上げると、後ろの方でカリンがビクッとして俺を睨んでくる。
なんなんだコイツは? と思いつつ、アイシャを食料庫奥の水場まで連れていった。
カリンが「シッシッ」と追い払うように手の甲を振ってくる。
俺はお邪魔なのだろう。後はカリンに任せればいいかとその場を離れ、かまどの部屋に戻り椅子に腰かける。
アイシャの怪我は順調に回復している。もう少しすれば立って歩くこともできるようになる。
こんな山の家にまで来てくれるカリンがいれば、身の回りの世話もしてくれるだろう。
元々、俺が来る前までアイシャは独りで生活していたんだから、俺が居なくても大丈夫だろう。
それに比べ言葉もろくにしゃべれん俺はどうだ? このままでいいのか? と少し落ち込んでいるとカリンが俺を呼びに来た。
水場に行き、アイシャを抱えて寝室に戻る。水浴びでもしたのか髪が濡れているな。右奥の方は洗い場になっていて体を洗えるようで、そのための手桶も置かれていたなと思い出した。
ここには生活するための物がすべて用意されているようだが、俺はそれがどのように使われるのかさえ知らない。
ベッドにアイシャを寝かせたが、落ち込んだ顔を見せてしまったか、アイシャが心配そうにしていた。いかん、いかん。怪我人に心配されてどうする。
こういう時は、体を動かしていた方がいいな。アイシャの事はカリンに任せて、俺はショートソードを持ち外で素振りでもしていよう。
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