上 下
89 / 101
第八章 国家エスカルド

道化師再上

しおりを挟む
「つまり此処でクローンの研究が行われていた訳だな」
「いや此処には結界がある、あくまで此処は倉庫として使われていただけ現場は別の所にあるのだろう」

 と言ってバーングはその額の汗を拭った。

「……馬鹿な師匠に国の命令に背く程の度胸は無い筈だ」
「人は変わるもんだ」
「有り得ない! それは絶対だ!」
「そうは言ったって此処にこんなドーンッと証拠の品が有るのに?」
「……」
「兎に角此処を出ようクローン研究の痕跡も見つけた事だしな」

 暗い階段を登っている間もバーングは何か考え込んでいる様だった。
 そして出口から外に出るとそこにはナサルとジェイクが立っていた。二人共明らかに怒っている

「よぉ、お元気?」
「元気か? だと……お前は私が言った事を忘れたのか!?」
「此処から動くなと言って居た事か? 悪かったな忘れてた」
「……」

 ジョンを無言で威圧するナサル

「そんな事より大ニュースだ。この奥でクローン研究に関わりがある物が見つかった」

 ジョンに怒りを感じていたナサルにジェイクだったがジョンのその一言で全てが吹き飛ぶ

「な、何!? クローンだと!?」
「あぁ、奥に行ってみな」

 ジョンを退かしジェイクとナサルは奥へと急ぎ向かって行った。

「何だ。お前は行かないのか?」
「私はさっき見ただろ、何回見ても結果は変わらない……私は休む」
「俺もこれ以上厄介になる前に脱出しますかね」

 ジョンは館を出た。館のすぐそこにはマリアが待って居た。その隣にはキュベルが居る

「あ、ジョン……どうだった?」
「残念ながら誰も見つかりませんでしたよ」
「そう……」

 マリアは俯く

「そう気を落とさず、人は何時か死にますからね……」
「……な、何よそれ! 普通そんな事言う!? 不謹慎よ!」
「クククッそりゃ失敬、まぁ俺達じゃ何も出来なさそうですから捜索は騎士団に任せて俺達は館に帰りましょう」
「……そんな、友達が危険かもしれないのに家に帰ってのんびり過ごせと言うの?」
「もし今頃殺され掛けているとしても何も知らない俺達じゃ助けられませんよ、無駄に気を使うぐらいなら今は休憩して英気を養い、本当に力が必要な時に全力を発揮するのがベストだとは思いませんか? お前もそう思うだろ? キュベル?」
「マリア様、此処はジョンの言う通りだと思いますよ」
「……わかったわよ」

 マリアは納得していない様だったが仕方が無くジョンについて行く

「あら、誘って置いてなんですけど、そういえばナサルを待ってたんじゃないんですか? 俺について来て良いんですか?」
「えぇ、ナサルは忙しいんでしょ? なら私の相手をさせる訳には行かないわ」
「まぁ確かに、でも一応この事を言って置かないと後々面倒な事になりません?」
「大丈夫よ、多分……」
「ナサルには私から報告しておきますから安心して下さい」
「そりゃどうも」

 マリアの屋敷に向かうそして家路の途中に

「あ!? お前は!!」

 白い道化師の様な化粧をした女性がジョンを指差しそう叫んでいる
 顔を隠すジョン

「そんな事をしても無駄だ! お前ジョンだな!」
「久しぶりだな、お元気?」

彼女の名前はクァイケット、とあるサーカス団の団長だ。

「お元気? だと? お前の所為であの後も散々だったんだぞ!」
「ふーん、まぁそんな事はどうでも宜しいな、俺に関係無い」
「な、なにを!?」

 不安げに二人を見守るマリア

「で? 俺に何の用だ? 俺に復讐?」
「ふん、そんな気は無い」

 そう言ってジョンに何かを差し出すクァイケット
 何かの紙切れの様だ。

「このゴミを俺に捨てて来いと?」
「違うわ! これは今夜開かれる我らサーカス団のチケットだ」
「……興味なし」
「え?」
「別にサーカスなんか興味無いと言ったんだ」
「そ、そんな、楽しいぞ?」
「何故恨んでいる俺をお前のサーカス団に招待しようとするんだ? 気色悪い」
「別にお前の事は恨んでいない、お前の事を見返してやろうとしているだけだ! お前は私の事をただの可笑しな奴だと思って居るだろう!? だからステージで光り輝く私を見て私の事を見直せ!」
「……な、なんだそりゃ、お前も変な奴だな、なんで俺の周りには変人が集まるんだ?」

 彼も変人だからである
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

元英雄 これからは命大事にでいきます

銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの 魔王との激しい死闘を 終え元の世界に帰還した英雄 八雲  多くの死闘で疲弊したことで、 これからは『命大事に』を心に決め、 落ち着いた生活をしようと思う。  こちらの世界にも妖魔と言う 化物が現れなんだかんだで 戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、 とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜  八雲は寿命を伸ばすために再び 異世界へ戻る。そして、そこでは 新たな闘いが始まっていた。 八雲は運命の時の流れに翻弄され 苦悩しながらも魔王を超えた 存在と対峙する。 この話は心優しき青年が、神からのギフト 『ライフ』を使ってお助けする話です。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...