上 下
75 / 101
第八章 国家エスカルド

×盗難=真犯人

しおりを挟む
   夜中の十一時五十分、ジョンはキルルの屋敷のすぐ傍の公園の茂みに身を隠していた。勿論屋敷に忍び込む為である
   ここの屋敷の警備兵の練度は低く前のシフトが交代して完全に次のシフトの配備が終わるのに十分近い間が有るが
 
 (十分じゃ遅すぎる……本来なら三分程でお目当てのモノを頂いて退散したい所だが今回はそのお目当てのモノがキルルのとある証拠……キルルの部屋の位置は分かるが証拠の場所は分からない、この作戦はかなりアバウトで不安定な作戦何がどうなるかはハッキリと分からない、一応目標タイムを決めて置こうか、目標タイムは五分と言った所だな、それ以上は危険、十分という数値だってあくまでも平均値、上下は有る)

 ジョンは覆面を被る、服は事前に着替えてあった。時刻は十二時丁度、作戦開始、門の所の警備兵も屋敷を巡回していた兵も一旦屋敷に戻る、この屋敷では珍しい事に交代の時に全兵士が一旦屯所に戻り、その後元々屯所に居た兵士達と交代する、つまりこの屋敷は一時的に全警備兵が屯所に集まり屋敷の護りを限りなく零にしてしまう時があるのだ。

 こんな厳重に見える屋敷を襲う賊なんて居る訳が無いという傲慢から生まれてしまった隙

 そこを突かれる、一見厳重な都市に有る屋敷をそれも一人で侵入しようとする馬鹿で狂っている賊が居るなんて誰も予期していなかったのだ。
   ジョンは屋敷を囲う壁をよじ登り事前にダーゴクから入手した鍵で玄関を開け警備の兵の居ない一階廊下を走り抜け階段に到着、階段を駆け上がる、兵士が居ないと言っても使用人や此処の住民が居ないとも限らない慎重に迅速に進む、そして三階、その後はキルルの部屋に一直線、扉に耳を置き中の様子を探る中は暗い音も無し寝ているとジョンは判断し部屋の中に侵入、ジョンの読み通りキルルは小さな寝息を立てている、扉をゆっくりと閉め、部屋中を物色、何やらを探し始める
   ジョンは粗方目ぼしい物を取り部屋を立ち去る、この間二分、目標タイムまで三分、この三分で他の部屋も荒らし物を盗む、これはカモフラージュ何を盗るつもりだったか”本命”を分からなくさせる為の攪乱作戦、ジョンはその後元来た場所から戻り無事館を脱出する
 ジョンはその後何て事がなかったかの様に覆面を取り服を着替え、今日は暗闇の中、ジッとしている事にする

 次の日

 今日はマリア達が此処へ到着する日、ジョンはマリアが到着する前にキルルの部屋から物色して来た物に目を通す。物色した物と言うのはキルルの日記帳やメモ帳
 日記帳には簡単な鍵が掛けてあるがそんな物すぐに解除し中身を見る、中にはこう書いてあった。

 〇月×日
 
 今日は命令無し
 幹部の一人が風邪をひき休み、私がその穴を埋めた。その成果の所為かシルフィア様に褒められた。嬉しい

 ×月〇日

 今日も命令無し、最近はマリアの様な問題児が居ないので平和だ。
 シルフィア様も最近ようやく機嫌を治し始めた。

 ジョンは数行見て自分の予感が的中している事を確信する、日記をマリアが虐め始められた日付まで遡る

 〇月×日

 今日シルフィア様に泥を塗った者が現れた。名をエミリー
 これにシルフィア様は憤怒、私に彼女に制裁の命令を授けて下さった。
 私は部下にエミリーへの制裁を命令をした。

 その後も数行続いていたがジョンの知りたい事は全てそこに書いてあった。そうエミリーへの虐めを命じたのはファンクラブリーダーのキルルでは無くシルフィア本人、彼女は水を掛けられた時笑顔でエミリーを許す”演技”をしたが本心は怒りに満ちていた。
 しかしそれは表に出せない周りには多くの人が居るのだファンも居る怒りを爆発させることは出来ない、自分より身分も年齢も低い馬鹿な小娘が自分の服に水を掛けた。
 なのでエミリーは制裁されそれを護ろうとしたマリアやサシャも制裁されたのだ。そしてこのドス黒い中身を知っているのはキルルのみ、キルルがそのドス黒い望みを聞きそれを自分の判断かの様に部下に伝えていたのだ。
 これで彼女の淑女のイメージが保たれる上もしファンクラブのやって来た事が全てバレてしまっても全てキルルにその責を投げつける事も出来るのだ。マリアの話を聞いた時からジョンは感じていた。シルフィアの悪意を……

 シルフィア・ナナニック彼女は自分に人並み以上の良心が有ると偽り周りを騙して来た偽善の大罪人
 ”制裁”が必要、そうジョンは判断し日記を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

今日も聖女は拳をふるう

こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。 その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。 そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。 女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。 これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。

処理中です...