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第五章 神の暇潰し

戦いのルール 

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「よろしくお願いね、えっと貴方の名前は何と言うのかしら?」
「名乗る程の者じゃない」
「あらそう? 冷たいのね、私の名前はエフィー・セルフィンというの素敵な名前でしょう?」

剣を抜きエフィーに剣先を向けるナサル

「自己紹介の必要は無い」
「ふふふ、余裕が無いのね、いいわ、始めましょう」

杖を抜きナサルに杖先を向けるエフィー
ナサルは速攻で仕掛ける、前を詰め剣を振る
だが剣の刃はエフィーに届かない、エフィーが魔法で空中でフワフワと浮く水の玉を生み出し水の水圧で剣の勢いを止めたのだ。そして水流をその玉に生み出し剣がその玉から出られないようにする

「水だからって甘く見ないでね、すごく怖いのよ? フフッ」

そう言いエフィーは杖先から凄まじい勢いの水を出す。その勢いは木をも両断する、それ程の威力を持ち柔軟性も備えている、元は水、鞭の様にしなり、木を斬る
エフィーはその水の鞭をナサルに向け放つ、しかしナサルは逃げる素振りも見せない……
ナサルに水の鞭が当たろうとしたその時水の鞭がただの氷柱に変わる

「!? 温度変換!?」

そうナサルの属性はものの温度を奪い凍らせてしまう、氷結属性

「諦めろ、お前では私に勝てない」

剣を閉じ込めていた水の玉も凍る、水流も凍り意味をなさなくなる、フワフワ浮いていた水だが凍り地面に落ち砕けナサルの剣が解放される

「この距離では剣士である私の圧倒的有利それに加えお前の属性は水だ。私には届かない」

首を態々斬られたくなければ降伏しろとナサルは言う

「……驚いたわ、貴方氷結属性を持つの?」
「私はさっきの男とは違う、お前と話す気は一切ない」

エフィーが何故驚いたかと言うとそれは氷結属性が非常に珍しい属性だからである

「そう……」

水属性であり尚且つ彼女は接近戦を得意としない……絶望的な状況だが諦めない、こんな事もあろうかと水を垂らしておいたのだ。そしてその水を気が付かれない様に操作しナサルの股下を通す……彼女の作戦はこうだ。その小さな一筋の水に一気にさっきの様な凄まじい水流を与えその一筋の水を持ち上げナサルの股から頭まで切り裂く、不意打ちの一撃
しかし……

「止めて置け、お前の考えている事は分かっている、お前の裾から垂れているその水を使って私に不意打ちを仕掛けようと考えているんだろうが無駄だ。私には通用しない」

全て見破られてしまっている、それも当然ナサルは長い間ジークやローラといった嘘吐き達と付き合って来たのだ。見破れて当然

「残念ね……私の負けよ」

エフィーは杖を捨て両手を上げる
魔導士の戦いは魔法で撃ち合うだけが戦いではない情報戦も非常に重要なのだ。幾ら強力な属性でも相手に属性を知られどの程度の練度なのか知られてしまえば対策され攻略されてしまう、だからナサルはエルが自分の属性を簡単にジョンに教えた時エルを叱ったのだ。
自分の魔法属性を教える事は自分の心臓を敵に差し出すも当然
エフィーはジョンやメイヴィスと戦っていた時から自分の魔法を遺憾なく発揮していた為その情報がナサルに渡ったのでエフィーが手を上げた時ナサルが手を上げたのだ。
この様にどんな魔法にだって相性があり、弱点がある
試合開始まで自分の手は出来る限り伏せるが良し、だが出し惜しみすぎて魔法を出す前に殺されてしまえば元も子もない
”何時”切り札を出すかそれは自分の経験とセンスに頼る他なし

「また首切りは御預けかい? みんなボクのルール説明は聞いていたのかい?」
「だって神様、私達が幾ら不死だからと言って首は斬られたくは無いわ、だって物凄く痛いのだもの」

とエフィーが言う

「少しぐらい我慢しなよ」
「嫌です」

そう言いエフィーは自分の陣営に帰って行く

「で? 次は? あぁそうだ! 次はタッグね! タッグ戦!! いいねぇ、こんな事を咄嗟に思い付くなんてボクは天才だなぁ」

自惚れる神、しかしそんな自惚れる神に質問を投げかける者が現れる

「ちょっと、待って」

アーリンである

「対戦カードの事なのだけれど、私とジョンの以外は全て紙に書いて提出する事にしない? 挙手制では先に手を上げた者が不利だわ」
「それもそうか、エフィーはそれでやられたようなものだしね、いいよ、両陣営戦いに出る人間の名前を紙に書いてボクに提出してね、勿論その名前を自分の陣営の人間に漏らすなんてつまらない事しないから安心してね」

と笑顔でカランダーン陣営に話し掛ける

「あれ、信用できるのか?」
「てきとうな男なのは間違いないけどああいう時のザッラーは信用していいと思うよ、自分が楽しみたいという気持ちにはどこまでも正直な神だからね彼は
だから幾ら違法を積み重ねても君達に直接攻撃してくる事はしないでしょ? やったとしても君達を傷つけない転移魔法ぐらい、神が人間に攻撃して勝つなんて当たり前だからそんなのはつまらないからザッラーは君達に攻撃をしないんだと私は思うよ」
「……アンタの推理は信用できるのか?」
「神の推理を信用なさい、さすれば救われるよ、多分ね」
「だから多分を止めろ多分を」

タッグ戦はエルそれにローラのチーム、それに眼帯の男キザシそれにスキンヘッドのナイロンのチームに決まった。
双方迎え合い、三人は剣を抜きナイロンは杖を抜く

「挨拶は必要ないな、始めよう」
「それでいいよ」

先に動いたのは眼帯の男キザシ、キザシはジョンと戦った時と同じように素早い斬撃をローラとエルの二人に繰り出す。
しかしその素早い斬撃はデッチェの様に重い一撃ではなく威力を殺して速度に特化させた斬撃なので一撃が軽い
それなので簡単にローラに受け止められてしまう、受け止められた隙をエルに狙われ斬りかかれるキザシ
だがナイロンに妨害される、ナイロンの属性は火、火の玉をエルに発射する

「ワオ!」

一瞬驚いたエルだがそれを冷静に対処、水を生み出しそれを掛ける事で消す。負傷せず済んだエル、だが攻撃するタイミングを逃してしまう
邪魔をしたナイロンを睨むエル、そしてエルはジョンと戦った時と同じようにフラフラと揺れ始めその場からフッと消える、そして次の瞬間ナイロンの目の前に現れ斬りかかる
それで当然の様に斬られるナイロン「ウギャー」という悲鳴を上げる

「えっ? 当たっちゃった……」

今までの戦いを見ていたエルは正直この一撃は避けられると思っていた。
そのままナイロンは地に伏せ、エルは呆然としている

(あ、あれ? これは何かの作戦なの? ボクを油断させる為? いやでも起き上がらないな……)

そう、ナイロンはやられたのだ。彼は接近戦の心得が無い
幾ら強力な魔法を使えても接近戦の心得若しくは防ぐ術を持っていなくては簡単にやられてしまう
だからどんな魔法使いでも戦闘に出るなら接近戦を学ぶ、でなくては殺されてしまうからだ
しかしナイロンは肉体は鍛えていたが実は接近戦は弱かったのだ。
エルは倒れているナイロンを放ってローラの元へ急ぐ

キザシは素早い斬撃それに対しローラはそれを受け流しカウンターのチャンスを窺っている
何故キザシもローラも戦闘向きの属性では無いからお互い魔法は使う事無く剣のみで戦っている
キザシも剣の腕は一流それに珍しい刀という切れ味の良い剣を持っており少し相手に掠っただけでも傷つける事が可能
それに対しローラの剣は切れ味が悪く掠った程度では傷付ける事は出来ないだが丈夫で重いので鍔迫り合いになったら勝てるだろう
だがそうはさせないのが剣士の腕、キザシは鍔迫り合いにはならないように上手く斬り合う
がキザシの健闘も長くは続かなかった。相方は既にやられており、状況は二対一その上キザシは魔法が得意ではない、彼の属性は風だがジークの様に自在に操る事は出来ず、風を通して見えない自分の眼に変わり周りを見通す事に魔法を活用している、魔法を自分の眼として活用しそれにほぼリソースを割いてしまっているのだ。

対するローラの属性は治癒、怪我や病などを治せる属性、勿論戦闘中に使えるような属性ではないが非戦闘時のサポートとしてはかなり優秀な属性である上貴重な属性なので重宝される、本来医者や軍医等が最適な職業だがローラは兵士になり、戦う道を選んだ。
お互いの属性はこの様になっている
つまりお互い戦闘中に相手を攻撃する魔法を使う事は無いという事である、だからエルは安心して外から魔法を好きに撃てるのだ。
最初はローラをいなしエルが飛ばす素早い小さな水の弾、当たれば気絶する程の威力を持っているその弾を斬っていたがそれも長く続かずその内ローラに刀を飛ばされてしまう

「降参しなよ、君達じゃ私達には勝てないよ」

ローラがキザシの首元に剣を当てそう脅す。

「降参……? 俺はそんな事はしない、最後まで戦う」

刀を飛ばされたキザシだが彼にはまだ己の拳と足が残っている、だからまだ戦えると言ったのだ。しかしお互い剣を持ち合って互角だったのにそれの片方が拳と足のみで戦うとなれば結果は必然

剣を持つローラが勝つ
それを分かっていても彼は戦わずにはいられない、負け試合だろうが最期まで戦い抜くそれが彼のプライド

 「ふむ、やはり国のお抱え騎士と野良では力量差があるなぁ、ねぇジャック、もっと強いの居なかったの?」

今までの試合を見て不満を漏らすザッラー

「彼等だって十分強いそれにそんな人が居れば連れてきました。強い人間は強い組織に付くもの、そう易々と転がっていないのですよ逸材は」
「でも全試合負けちゃうとは思わなかったよ……」
「それは相手が悪い、相手は大国の騎士だ。そんな相手をチョイスする方が悪い」
「つまり僕のミスという事? まさか責めてるの? ジャック」
「つまり、そうなりますね」

冷たい一言をザッラーに浴びせるジャック

「まぁ、気を取り直して残りの二人に期待してみましょう」

次の試合はメイヴィス対カタリナの不死の姉妹対決
メイヴィスはカタリナを寂しげな瞳で見つめる

「久しぶりだな、カタリナ」
「……お前と話したい事なんて何もない」
「そうか、久々の再会なのに寂しい事を言うな」
「黙れ、お前には儂の気持ちは分からないだろう! 何故カーヌ様もお前なんかに力をお与えになったんだ……! 何故儂には……」
「我だって欲しくて貰った訳じゃない! こんな力捨てれるものなら直ぐにでも棄てている!」
「何だと!? 捨てると言うのか! カーヌ様の力を!! それでも貴様カーヌ様の巫女か!」
「あんな神の巫女などとうの昔に辞めている、そもそもあの神の巫女になったのも無理矢理だったじゃないか! 忘れたのか? 我はあんな奴に感謝を覚えた覚えは一度も無い」
「貴様ぁ!!」

カタリナはメイヴィスに向けて『黒弾』を放つ
メイヴィスは避ける事はせず、その黒弾を受ける、胴体に二つの穴が開く
吐血するメイヴィス、だが倒れない、ジッとカタリナを見据えるメイヴィス

「これで……満足か? 姉様よ」
「姉と呼ぶな裏切り者!」
「この身体の穴は詫びみたいなものだ姉様を長年放って置いてしまった詫び」
「詫びなど要らぬわ!」

もう一度『黒弾』を放とうとするカタリナ
だがもう一度は無い、メイヴィスの血が地を這ってカタリナを囲っており、まずすぐ後ろに立って居た木を剣を模した血で斬り落とす。

「これで姉様は魔法が使えない、貴方の魔法は闇の中限定でしか使えない」

それはメイヴィスも同じ、闇の中に居る時だけ使用可能な魔法、闇属性、闇が濃ければ濃い程威力は増す。
だがメイヴィスには血を操れる”特異体質”があるこれは場所関係無く、自分の血がある限り能力は使える
この様に条件付きで強力な魔法が使える者も居るのだ。

「降伏しろ……とは言わない、存分に惨殺させて貰うぞ、カタリナ」

カタリナは太陽に晒され、周りにはメイヴィスの血が這っている
しかしカタリナの闘志はまだ燃え尽きていない
無謀とも言える攻撃を仕掛ける、メイヴィスに向かって走り出したのだ。勿論メイヴィスには一切届かず、血で串刺しにされてしまう

「残念だよ、姉様、貴方とはこうはなりたくなかった」
「言った……だろう、姉と……呼ぶな」
「そうか、なら良し、カタリナお前の負けだ。存分に地を噛み締めるがいい!」

そう言いメイヴィスはカタリナの首を斬る
それを見てはしゃぐザッラー

「おぉ! やった! やったよ! いいねぇ、やっぱり巫女は律儀だね」


 「と言ったものの……やっぱり、負けちゃうか……まぁ相手はカーヌの最高傑作だから仕方なしだけどさ」

カタリナの頭を抱きかかえながらそんな事を言うザッラー、カタリナの頭を眺め

「ん~目覚めるまでまだ時間が掛かりそうだね」

と悠長に言う

「で? 次はお待ちかねの俺とアンタの戦いって訳か?」

そう言いジョンは前に出る、それにこたえる様にアーリンも前に出る

「戦う前にお前に渡して置くものが有る、受け取って」

そう言いアーリアは何かをジョンに向かって相手が受け取れる程の強さで投げる、それを受け取らず、避けるジョン、何かの罠かと疑ったのだ。
そしてその投げられたものはジョンを通り越し地面にドスッと言う音を放ち突き刺さる、正体はナイフ、これは最初にアーリンに出会った時ジョンがメイヴィスを攻撃しようとするエフィーを妨害する為投げつけアーリンに止められたあの時のナイフだ。
それを見てジョンは困惑する

「どういうつもりだ?」
「自分の主だろう? 大切にしなさい」

そのナイフはよく見ると綺麗に手入れをされている、アーリンが手入れをしたのだ。
彼女の言う”主”とは己を護る剣盾鎧の事を指す。決してザッラーの事では無い、彼女の様にこの世界で神と呼ばれる者を神と呼ばず別のものを神として崇拝する者も少なくない、そういう者たちにとって神に感情は不要なのだ。救いにさえなってくれればそれで良いのだ。
ザッラーは神としてはオチャラけ過ぎており、カランダーンは人間に対し無関心過ぎる殆ど人間に対して接触しなかったのだ。普通の神なら病など運ぶ風などは避けたり病原菌と共に酸素そのものを消去したりするのだがカランダーンはそういった事を殆どしておらず今回の様に裁判で決まり命令されない限り何もしなかった。喧しいのが嫌いで人の多い大都市を離れ小さな村のすぐ近くの山に住んでいた。

「何だ、お前これを主と呼んでいるのか?」
「呼んで悪いか?」
「いや全く全然」

ジョンは結局、そのナイフは拾わなかった。罠の可能性は潰せないからだ。ナイフを背にするのも恐ろしいので場所を移す。

「ふん、お前は臆病者だな」

それを見ていたアーリンが挑発を込めてそう言い、剣を取り出す。

「ガラスハートのピュアボーイで失敬」

ジョンもナイフを両手に二刀持ち構える

「来い! ジョン!」

アーリンはジョンに向かって突進をしてくる
それを一刀のナイフでアーリンの剣を止めるジョン、そして二刀目のナイフでアーリンの首を狙う、がアーリンは此処で魔法を使う
アーリンの属性は鉄属性、自分の身体の一部を鉄に変えられる魔法属性
アーリンは首を鉄にしてナイフを防ぐ

「貴方のナイフ、私が手入れをしなくても綺麗だった。貴方も主を大切に扱う人なのね」
「褒めてくれるなんて光栄至極だな、涙が出る」

そしてアーリンは足を鉄に変え剣に形状変化させジョンに向い振る
アーリンは身体を鉄に変えるだけでは無く変えた場所の形状も変化させる事が可能なのだ。
魔法は遠距離で扱えるもの程即効性を失い、近距離であれば逆に即効性を増す。
例外はあれどこのルールが基本である

(ゲッ!!? こんな事も出来るのか? こいつ!!)

ジョンはアーリンから一旦離れ、アーリンの攻撃を躱す。

(俺の唯一のアドバンテージが奪い去られたな……これじゃ接近戦でも敵うかも怪しいぜ……この距離なら震えるこの手でもナイフは届くと思うが効くとは思えないまた身体を鉄に変えられて防がれるだけそれは接近戦でも同じだろうが……鉄なら叩き切れるか? いや流石に首は厚すぎるかナイフが途中で駄目になって斬れなくなるだろう、ならファングやジークの様に不意打ちを仕掛けるか? 駄目だ……この状況で不意打ちを仕掛けられる程の装備がこちらには無い、クソ、今の俺にとってあの魔法は完璧な防御……陥落させるにはどうする……?)

此処でジョンは閃く、たった一つの突破口……ジョンの十八番

 そして作戦は決行される
ジョンはアーリンに向かって走り出す。
傍から見ればその行動は無謀に見えるだろう、だが違うジョンには作戦がある
アーリンは己の左足を剣に変えジョンに再び斬りかかるが、避けられる、次は右手を斧へ、避けられる、右足を槍へ、避けられる、最後に左手で持つ剣でジョンに斬りかかる、避けられ、剣を奪われる、そして再びジョンはアーリンと距離を取る

「!?」

ジョンは奪った剣を地面に突き刺しいやらしく笑う

「お前は剣の事を主と呼んでいたな? ならこの剣が叩き切られたらどうなる? 主が死ぬ事になるのか? 試してみようじゃないか」

アーリンが接近しようとするが……

「止まりな! それ以上近付いてきたらこの剣を見るも無惨な形に変えてやる……!」
「!? 止めて!!」
「なら降参しろ」
「ひ、卑怯者!」
「何とでも言えよ。それよりいいのか? お前の主を折るぜ?」

戦いのルールとして魔法の属性を他人に教えてはいけないがもっと根本的な部分でやってはいけない事がある、弱味を敵に握られてはいけない、という事である
これはまさに戦いの起源から有るルールの一つだろう
起源……当たり前すぎて忘れてしまう事があるのだこういうルールは
実際アーリンはルールを忘れ自分の情報をジョンに全て無料で渡してしまっていた。剣を神として崇拝しているという事をジョンに教えてしまった……それが命取りだった。
アーリンは己の剣を犠牲に出来ない
震えるアーリン
唇を噛み締め、言う

「降参します……」



「そいつは良かった。俺の首も繋がったな」

そう言いジョンは剣を放って自分の陣営に戻る
地面に突き立てられた剣を大事そうに抱き上げジョンのナイフも回収しアーリンも自分の陣営に戻る


「あぁ~あ……全敗だよ」
「残念でしたね」

カランダーンがそこで大声でザッラーに言う

「もう満足した? じゃあもう終わりね」
「ん~でもまだ君のお友達は到着しないよね? ならもっと遊ぼうよ」
「いい加減にしなよ」
「ん~次は何が良いかな? サバイバルとか?」

カランダーンの声は聞こえていない

「もういいだろう? ザッラーお遊びは御終いで」

ジャックが言う、ついに味方からもうんざりだと言う声が上がる

「えぇ……君までそんな事を言うのかい? もっと楽しい事はないのかなぁ? ボクこれが終わったら監獄生活が待ってるんだよ? せめてそれまでは楽しい思いしたいじゃないか」
「へぇ、捕まる覚悟は出来てるんだね」
「まぁね、ここまでやっておいて逃げ切れるとボクでも思っていないよ」
「……五人の人間に力を与え私の巫女ちゃんも攫おうとしたんだからね、当然だよ、でも気になるな、なんでそんな事したの? どうせなら戦争でも起こせば良かったのにその方が君は楽しめたんじゃないの?」
「君、ボクが戦闘狂か何かだと勘違いしてるんじゃないのかい?」
「え? 違うの?」
「違うよ、ボクは人を見るのが好きなだけ、戦う姿も好きだけど必死に生きようとする姿も悪くないな……よし! 決めた!」

そう言いザッラーはパチンと指を鳴らす。
その音が鳴った後その広場からザッラーとカランダーン以外が消える……

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