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第五章 神の暇潰し
最悪の三人
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クァイケット・エリミレブンはサーカス団ファントムの団長である
彼女は新たな演目を作る為。各地放浪の旅に出ている
そしてその旅の末にようやくその旅が実を結ぶ時が来たかと思われたその矢先騎士隊と名乗る者に捕えられ牢に閉じ込められる事となった。
が今朝なんと釈放される事となった。
そんな彼女は弟子二人と即刻悪い思い出しかないこの村から出て行こうとしたが旅支度の最中に顔を曇らしている子供達が眼に入った。ザラの葬式に参列し気分が沈んだ子供達であった。
彼女は生粋の曲芸師、そんな子供達を捨て置く訳にはいかない……子供達を村の広場に集めファントムの特別公演が始まる
最初は乗り気ではなかった子供達だが時が進むにつれクァイケット達に目を取られ表情にも笑顔が戻り始める
彼女達の世界一の称号は伊達では無い
散歩の帰りにそんなクァイケット達を見つけ子供達の中に居たマリアとジェシカに話し掛けるジョン
震える手を見つからないようにポケットの中に両手を入れる
「やぁ、どうも、お元気ですか、マリアお嬢様それにジェシカ」
「ジョン、ただいまそれにこんにちわ」
「こんにちわ、ジョン君」
ジェシカはマリアの従者のようにピッタリと付き添っている
「朝は大変でしたね行き成り人が死んだのなんだのって」
「えぇ……私もたまにザラの話を聞いたりしていたから……残念ね」
「ネネちゃん、大丈夫かな? 心配だな……」
「ナサルが一緒に居てくれているから大丈夫よ、心配ないわ」
「はい……」
ジェシカの顔は周りの子供達とは違い思い詰めたかの様な顔をしている
「心配性ね、ジェシカは」
「そうかな?」
「そうよ」
そんな三人の様子やクァイケットの曲芸を見て廻りの最中のネルヒムが近づいて来る、後ろにはエルとジークが着いている
「こんにちわ! 三人共これは何をしているの? 面白そうな事をしているね」
「有名なサーカス団のファントムのクァイケットが公演しているんですよ」
「クァイケット!? あの人がそうなの!?」
目を輝かすネルヒム
それを見てクァイケットは本当に有名なんだなと再確認するジョン
そんな事を再確認しているとジョンは自分がいつの間にかに人に囲まれている事に気が付く、そんな環境に居たんじゃ溜まらないと思いジョンはその場を後にしようとするがマリアに呼び止められる
「待ちなさいよ、一緒に見ましょうよ」
「それはそれは嬉しいお誘いですけど、遠慮しておきます」
「何でよ! 普通主人の命令には従うものでしょう!?」
「今は残念ながらあなたの執事じゃない、しがない掃除係ですよ」
「関係無いわよ! 貴方は私の執事なの! お父様が何を言おうがそれは変わらないわ!」
「感動的過ぎる、ちょっと待ってください今涙を拭きますから……」
と自分の胸ポケットを探りながら一滴の涙も流さす言うジョン
「私の事、馬鹿にしているでしょう!?」
「まさか、そんな訳ないでしょう? この忠実なる下僕であるこの俺がまさか、まさかマリアお嬢様を馬鹿にするなんてそんな畏れ多い……」
とジョンが言った時だった……周りの景色が変わったのは周りを取り囲む人間は消えその換わりに立ち並ぶ木々、唖然とするジョン
ジョンはエーベックから一瞬で森の中に何故か歩く事も無く移動したのだと理解する、それが理解出来てもどうやって此処まで連れて来られたのかは分からない
周りを見渡してみると分かったことがある、此処に飛ばされたのはジョンだけじゃない、という事を……
「な、何!? どうしたのよ!? 此処はどこ!?」
混乱するマリア
「お、落ち着いて! マリア! 落ち着くのよ、落ち着いて……」
混乱するジェシカ
「……」
只々唖然とするばかりのネルヒム
ジョンの周りに居たのはその三人だ。
ジョンはまず三人を落ち着かせ、状況を整理する
「マリアお嬢様、此処が何処だか分かります? 村の近くの森?」
「……違うと思うわ、だってこんな形した木、私の家の近くで見た事無いもの」
その森の木は不気味にグニャグニャと曲がっていて、葉は無く枝が無数の人間の手のように伸びている
「まぁ確かにこんな木は見た事がありませんね、まるでそうだなマリアお嬢様の手みたいだ」
「なんて失礼な事を言うの!?」
「何でこんな所に私達来ちゃったの……?」
「さぁ? 恐らく魔法が関係しているんじゃないか? こんな超常現象それ以外には考えられないからな」
「誰が何の目的でそんな事を……?」
「それが分かれば苦労しないんですけどね……マリアお嬢様が今言った通り誰かが何かの目的で俺達を此処に呼び寄せたのなら相手からこっちに接触してくる筈……」
周りを見渡すジョン、だがマリア、ジェシカ、ネルヒム以外誰も居ない、誰かが近づいて来る気配もない
「……仕方ない、周りを歩いてみましょう、何かあるかもしれない」
歩き出すジョンその後を追う三人の子供達
しかし幾ら歩いても木、木、木一向に森を出る気配も無い、川もない
「大丈夫? マリアちゃん?」
とネルヒムが言う
「へ、平気よ……何てことないわ」
明らかに疲れが見えるマリアがぜぇぜぇと言いながらそう返す。そんなマリアをネルヒムとジェシカは心配そうに見守っている
「もし必要なら肩を貸すよ、マリア」
「大丈夫だって言っているでしょう!? もう! 私の身体はそんな柔に出来ていないのだからね!」
大声を出し余計体力を消耗する
そんなに体力を消耗してもジョンにおんぶしてくれとは頼めないマリア、彼女のプライドがそれを許さないのである
「ほら見てみろネルヒム、あれが頑固が皮を被って生まれた悲しきモンスターだ」
と言ってジョンが震える指でマリアを指差す。
「そんな事言っちゃダメだよ……」
そんなジョンを呆れたかの様な顔で見つめる
しかし疲れているのはマリアだけでは無いジョン以外の三人の子供はどんどん歩くにつれ疲れを見せ始める
「もう無理……歩けないわよ……」
「ごめんなさい、私もです」
「はぁ……はぁ」
少女達の額に汗が流れている
これ以上進むのは無理だと判断したジョンは丁度日も暮れて来たので今日は此処で野宿をすることに決める
「こ、ここで今日は眠るの?」
「えぇ、そうしましょう、全員で焚き火をする為の木を集めましょう」
本来なら此処は役割分担をする場面だが彼女達に単独行動をさせる訳にも行かないので全員で行動をする
まずは焚き火に必要な木を集める事それに出来れば食料と水も確保もしたい、だがそう上手くもいかず食料と水は見つからなかった。
夜が来る前に火を起こす。
「へぇ~火おこし上手なのね、慣れているの?」
「昔はよくこうして森の中を練り歩いていたもんでしてね」
「エーベックに来る前は何をしていたんですか?」
「狩人ですよ、日々動物を追って追って生きて来たんです」
「狩人って森の中で過ごしたりするんですか? 家とかは無いんですか?」
「家はありますけど帰る事は少なかったですね」
「何で帰らなかったのよ? 家が嫌いなの?」
「森の中で鳥のさえずりや美しい花に囲まれながら一夜を越すのもいいものですよ」
「綺麗だとかさえずりだとかは貴方の口から出ると何か不自然に感じるわね」
「そ、そんな事言うのは失礼だよ! マリアちゃん!」
「俺の純粋な心が傷付きましたね」
「嘘おっしゃい」
そう呑気に話しているジョンだが懸念があった。
この火の煙を見つけて誰かがやって来るかもしれない……善意ある人間がやって来れば良いが問題は敵意、悪意を持っている人間が近づいて来た時だ。もしそうなって戦闘にでもなったら不利なのは非戦闘員を三人抱えているこちら……だが焚き火をしないで身体を凍らすのはもっと不味い
最上の警戒をする必要がジョンにはあった。
「明日は何があるか分からない、早く寝て明日に備えて下さい」
とジョンは三人に寝るよう催促をする
だがなかなか寝付けない三人。自分の置かれた状況やこれからに不安を募らせてしまい眠るに眠れないのだ。
ジェシカは普段からナサルに抱かれていないと悪夢を思い出し眠る事が出来ずにいた。勿論こんな状況では眠る事も出来る筈がない
だからジョンに寄っていく
「ジョン君、だっこして下さい、そうじゃないと眠れなくて……」
「御免蒙る」
ジョンも手の震えが止まっていなかった。今抱っこなんて事をすれば心臓発作でも起こして死んでしまいそうなので断る、そしてジェシカはそう一言、言われただけで此処まで絶望的な顔を出来るのか、と言いたくなる程の顔をしていた。目には涙が
「で、でも私そうじゃないと眠れない、一人で眠るとお父さんを思い出すの……だからお願い! お願いします!」
「無理――」
「ジョン! そこまでジェシカに言わせて置いてまさか断る気では無いでしょうね!?」
マリアがジョンに食って掛かる
「幾らマリアお嬢様の命令でもこれは聞けませんね」
(死んじまうかもしれんしな)
「ジェシカを抱いて眠るだけじゃない!」
「俺は火の見張りをしなきゃなりませんから、出来るだけ身動きが取れなくなる体制は避けたい、抱っこなんてしてたら咄嗟に行動出来ないでしょう? だから無理なんです。ジェシカ、マリアお嬢様に抱いて貰うんじゃ駄目なのか?」
「だめ……大きな身体でぎゅーとしてくれないと眠れないの……」
「うわ……気持ち悪……」
申し訳なさそうにそう言うジェシカだったがジョンのその一言に傷ついたからか遂には泣き出してしまう
だがジョンは一切譲らない
そんな二人に痺れを切らしたマリアとネルヒム
「何してるの!!? いい大人がなんでそんな事も出来ないのよ!」
「ジェシカちゃんが可哀そうだよ……一緒に寝てあげよ? ね?」
(あ、これは不味い……やばい!)
「ちょっま、待って下さいよ、これはあんた達の命を救う事にも繋がるんですよ?」
「いいわよ、私が火の番をするわ!」
(任せられるか!!)
「マリアお嬢様、これから眠らずに夜明けまで起きてられますか? 本当にその自信があると?」
「あ、あるわよ、大丈夫よ!」
「もし一睡でもしたら誰か凍え死んでるかもしれない、それとも肉食の動物に喰われてお亡くなり? もう一度聞きますよ? 火の番、出来ますか?」
「……やっぱりジョンに任せるわ……」
「素直が一番ですよマリアお嬢様」
「で、でもジェシカちゃんも抱いてあげてください、お願いします」
そうジョンにお願いするネルヒム
「も、もし何かあっても私の事突き飛ばして貰ってもいいんです……それに私あったかいんですよ? ナサルお姉さんにもよく言われるんです。お布団要らずだって……だから、だから……」
「ひえぇー」
必死にそうアピールするジェシカ
眩暈がしてくるジョン
苛立つマリア
譲らないネルヒム
四人の夜はまだ終わらない
彼女は新たな演目を作る為。各地放浪の旅に出ている
そしてその旅の末にようやくその旅が実を結ぶ時が来たかと思われたその矢先騎士隊と名乗る者に捕えられ牢に閉じ込められる事となった。
が今朝なんと釈放される事となった。
そんな彼女は弟子二人と即刻悪い思い出しかないこの村から出て行こうとしたが旅支度の最中に顔を曇らしている子供達が眼に入った。ザラの葬式に参列し気分が沈んだ子供達であった。
彼女は生粋の曲芸師、そんな子供達を捨て置く訳にはいかない……子供達を村の広場に集めファントムの特別公演が始まる
最初は乗り気ではなかった子供達だが時が進むにつれクァイケット達に目を取られ表情にも笑顔が戻り始める
彼女達の世界一の称号は伊達では無い
散歩の帰りにそんなクァイケット達を見つけ子供達の中に居たマリアとジェシカに話し掛けるジョン
震える手を見つからないようにポケットの中に両手を入れる
「やぁ、どうも、お元気ですか、マリアお嬢様それにジェシカ」
「ジョン、ただいまそれにこんにちわ」
「こんにちわ、ジョン君」
ジェシカはマリアの従者のようにピッタリと付き添っている
「朝は大変でしたね行き成り人が死んだのなんだのって」
「えぇ……私もたまにザラの話を聞いたりしていたから……残念ね」
「ネネちゃん、大丈夫かな? 心配だな……」
「ナサルが一緒に居てくれているから大丈夫よ、心配ないわ」
「はい……」
ジェシカの顔は周りの子供達とは違い思い詰めたかの様な顔をしている
「心配性ね、ジェシカは」
「そうかな?」
「そうよ」
そんな三人の様子やクァイケットの曲芸を見て廻りの最中のネルヒムが近づいて来る、後ろにはエルとジークが着いている
「こんにちわ! 三人共これは何をしているの? 面白そうな事をしているね」
「有名なサーカス団のファントムのクァイケットが公演しているんですよ」
「クァイケット!? あの人がそうなの!?」
目を輝かすネルヒム
それを見てクァイケットは本当に有名なんだなと再確認するジョン
そんな事を再確認しているとジョンは自分がいつの間にかに人に囲まれている事に気が付く、そんな環境に居たんじゃ溜まらないと思いジョンはその場を後にしようとするがマリアに呼び止められる
「待ちなさいよ、一緒に見ましょうよ」
「それはそれは嬉しいお誘いですけど、遠慮しておきます」
「何でよ! 普通主人の命令には従うものでしょう!?」
「今は残念ながらあなたの執事じゃない、しがない掃除係ですよ」
「関係無いわよ! 貴方は私の執事なの! お父様が何を言おうがそれは変わらないわ!」
「感動的過ぎる、ちょっと待ってください今涙を拭きますから……」
と自分の胸ポケットを探りながら一滴の涙も流さす言うジョン
「私の事、馬鹿にしているでしょう!?」
「まさか、そんな訳ないでしょう? この忠実なる下僕であるこの俺がまさか、まさかマリアお嬢様を馬鹿にするなんてそんな畏れ多い……」
とジョンが言った時だった……周りの景色が変わったのは周りを取り囲む人間は消えその換わりに立ち並ぶ木々、唖然とするジョン
ジョンはエーベックから一瞬で森の中に何故か歩く事も無く移動したのだと理解する、それが理解出来てもどうやって此処まで連れて来られたのかは分からない
周りを見渡してみると分かったことがある、此処に飛ばされたのはジョンだけじゃない、という事を……
「な、何!? どうしたのよ!? 此処はどこ!?」
混乱するマリア
「お、落ち着いて! マリア! 落ち着くのよ、落ち着いて……」
混乱するジェシカ
「……」
只々唖然とするばかりのネルヒム
ジョンの周りに居たのはその三人だ。
ジョンはまず三人を落ち着かせ、状況を整理する
「マリアお嬢様、此処が何処だか分かります? 村の近くの森?」
「……違うと思うわ、だってこんな形した木、私の家の近くで見た事無いもの」
その森の木は不気味にグニャグニャと曲がっていて、葉は無く枝が無数の人間の手のように伸びている
「まぁ確かにこんな木は見た事がありませんね、まるでそうだなマリアお嬢様の手みたいだ」
「なんて失礼な事を言うの!?」
「何でこんな所に私達来ちゃったの……?」
「さぁ? 恐らく魔法が関係しているんじゃないか? こんな超常現象それ以外には考えられないからな」
「誰が何の目的でそんな事を……?」
「それが分かれば苦労しないんですけどね……マリアお嬢様が今言った通り誰かが何かの目的で俺達を此処に呼び寄せたのなら相手からこっちに接触してくる筈……」
周りを見渡すジョン、だがマリア、ジェシカ、ネルヒム以外誰も居ない、誰かが近づいて来る気配もない
「……仕方ない、周りを歩いてみましょう、何かあるかもしれない」
歩き出すジョンその後を追う三人の子供達
しかし幾ら歩いても木、木、木一向に森を出る気配も無い、川もない
「大丈夫? マリアちゃん?」
とネルヒムが言う
「へ、平気よ……何てことないわ」
明らかに疲れが見えるマリアがぜぇぜぇと言いながらそう返す。そんなマリアをネルヒムとジェシカは心配そうに見守っている
「もし必要なら肩を貸すよ、マリア」
「大丈夫だって言っているでしょう!? もう! 私の身体はそんな柔に出来ていないのだからね!」
大声を出し余計体力を消耗する
そんなに体力を消耗してもジョンにおんぶしてくれとは頼めないマリア、彼女のプライドがそれを許さないのである
「ほら見てみろネルヒム、あれが頑固が皮を被って生まれた悲しきモンスターだ」
と言ってジョンが震える指でマリアを指差す。
「そんな事言っちゃダメだよ……」
そんなジョンを呆れたかの様な顔で見つめる
しかし疲れているのはマリアだけでは無いジョン以外の三人の子供はどんどん歩くにつれ疲れを見せ始める
「もう無理……歩けないわよ……」
「ごめんなさい、私もです」
「はぁ……はぁ」
少女達の額に汗が流れている
これ以上進むのは無理だと判断したジョンは丁度日も暮れて来たので今日は此処で野宿をすることに決める
「こ、ここで今日は眠るの?」
「えぇ、そうしましょう、全員で焚き火をする為の木を集めましょう」
本来なら此処は役割分担をする場面だが彼女達に単独行動をさせる訳にも行かないので全員で行動をする
まずは焚き火に必要な木を集める事それに出来れば食料と水も確保もしたい、だがそう上手くもいかず食料と水は見つからなかった。
夜が来る前に火を起こす。
「へぇ~火おこし上手なのね、慣れているの?」
「昔はよくこうして森の中を練り歩いていたもんでしてね」
「エーベックに来る前は何をしていたんですか?」
「狩人ですよ、日々動物を追って追って生きて来たんです」
「狩人って森の中で過ごしたりするんですか? 家とかは無いんですか?」
「家はありますけど帰る事は少なかったですね」
「何で帰らなかったのよ? 家が嫌いなの?」
「森の中で鳥のさえずりや美しい花に囲まれながら一夜を越すのもいいものですよ」
「綺麗だとかさえずりだとかは貴方の口から出ると何か不自然に感じるわね」
「そ、そんな事言うのは失礼だよ! マリアちゃん!」
「俺の純粋な心が傷付きましたね」
「嘘おっしゃい」
そう呑気に話しているジョンだが懸念があった。
この火の煙を見つけて誰かがやって来るかもしれない……善意ある人間がやって来れば良いが問題は敵意、悪意を持っている人間が近づいて来た時だ。もしそうなって戦闘にでもなったら不利なのは非戦闘員を三人抱えているこちら……だが焚き火をしないで身体を凍らすのはもっと不味い
最上の警戒をする必要がジョンにはあった。
「明日は何があるか分からない、早く寝て明日に備えて下さい」
とジョンは三人に寝るよう催促をする
だがなかなか寝付けない三人。自分の置かれた状況やこれからに不安を募らせてしまい眠るに眠れないのだ。
ジェシカは普段からナサルに抱かれていないと悪夢を思い出し眠る事が出来ずにいた。勿論こんな状況では眠る事も出来る筈がない
だからジョンに寄っていく
「ジョン君、だっこして下さい、そうじゃないと眠れなくて……」
「御免蒙る」
ジョンも手の震えが止まっていなかった。今抱っこなんて事をすれば心臓発作でも起こして死んでしまいそうなので断る、そしてジェシカはそう一言、言われただけで此処まで絶望的な顔を出来るのか、と言いたくなる程の顔をしていた。目には涙が
「で、でも私そうじゃないと眠れない、一人で眠るとお父さんを思い出すの……だからお願い! お願いします!」
「無理――」
「ジョン! そこまでジェシカに言わせて置いてまさか断る気では無いでしょうね!?」
マリアがジョンに食って掛かる
「幾らマリアお嬢様の命令でもこれは聞けませんね」
(死んじまうかもしれんしな)
「ジェシカを抱いて眠るだけじゃない!」
「俺は火の見張りをしなきゃなりませんから、出来るだけ身動きが取れなくなる体制は避けたい、抱っこなんてしてたら咄嗟に行動出来ないでしょう? だから無理なんです。ジェシカ、マリアお嬢様に抱いて貰うんじゃ駄目なのか?」
「だめ……大きな身体でぎゅーとしてくれないと眠れないの……」
「うわ……気持ち悪……」
申し訳なさそうにそう言うジェシカだったがジョンのその一言に傷ついたからか遂には泣き出してしまう
だがジョンは一切譲らない
そんな二人に痺れを切らしたマリアとネルヒム
「何してるの!!? いい大人がなんでそんな事も出来ないのよ!」
「ジェシカちゃんが可哀そうだよ……一緒に寝てあげよ? ね?」
(あ、これは不味い……やばい!)
「ちょっま、待って下さいよ、これはあんた達の命を救う事にも繋がるんですよ?」
「いいわよ、私が火の番をするわ!」
(任せられるか!!)
「マリアお嬢様、これから眠らずに夜明けまで起きてられますか? 本当にその自信があると?」
「あ、あるわよ、大丈夫よ!」
「もし一睡でもしたら誰か凍え死んでるかもしれない、それとも肉食の動物に喰われてお亡くなり? もう一度聞きますよ? 火の番、出来ますか?」
「……やっぱりジョンに任せるわ……」
「素直が一番ですよマリアお嬢様」
「で、でもジェシカちゃんも抱いてあげてください、お願いします」
そうジョンにお願いするネルヒム
「も、もし何かあっても私の事突き飛ばして貰ってもいいんです……それに私あったかいんですよ? ナサルお姉さんにもよく言われるんです。お布団要らずだって……だから、だから……」
「ひえぇー」
必死にそうアピールするジェシカ
眩暈がしてくるジョン
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