中年中太り成金アロハシャツおじさんを地獄の底へ叩き落とす所から始まる異世界転移物語

トムボーイ

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第三章 盗賊の腹の中

一応の仲直り

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 ジョン達は処罰として屋敷の庭の草むしり当番に料理当番一年分を言い渡される、これでも甘い処罰、本来この程度の処罰では許される筈が無いがローラとアーロックの厚意により甘い処罰となった。
 そんな事もあり、ジョンは一時的にマリアの使用人の任を解かれ草むしり兼料理人に就職する
 只々草を抜き、籠に入れる、その部分が綺麗になったら次へを繰り返す。それを朝から昼までずっとやっている
 
「ほら、こっちは終わったぜ、ナサル先輩」
「なら次は……」
「まだ、あるのかよ」
「ふふ、そうだな、もう昼だ休憩にしよう、ジョン! 休憩にしよう!」

遠くの方で作業していたジョンにそう呼びかけるナサル、それにジョンも気が付き二人の元に合流し、調理場まで行き自分の分のスープにパンを取り客間にて食事を取る
食事は黙々と行われる、三人の中の気まずさはまだ取れていない

「暗いな、折角三人で食事してるんだ。もう少し盛り上がって行こうぜ?」

とジョンが空気も読まずそう言う

「どうするんだ?」
「楽しい楽しいお喋りさ、例えば昨日の話題なんてどうだ?」
「何処が楽しいんだよ……」
「いい加減この空気にもウンザリだしなハッキリさせよう」
「何をハッキリさせるんだ?」
「俺とアンタ等は敵か味方かという事だよ」

三人の中に冷たい空気が流れる

「何を言っている?」
「今朝から殺気出しといて良く言うぜ、俺を敵視してるだろお前等、仲直りしようとするフリはしなくて良い、下手な演技を見せられるこっちの身にもなれよ」
「別に……私はそんなつもり等――」
「無かったと言いたいのか? 嘘を付くなよ」

ファングはそんな事を言うジョンに苛立ちを覚え

「じゃあ俺達はなんて言えばいいんだ? お前が憎いから殺させてくれとでも言えばいいのか?」
「そうしたければそう言ってくれても構わない、俺を殺れると思うならそうしてくれよ」
「……」
「お得意のそんなつもりは無い、か? まぁ、それでもいい、だがこのまま放って置いたら俺達の清い精神に悪影響だ。だからハッキリさせようと言っている
俺を殺すのかそれとも共存の道を歩むか、共存を選ぶなら二度と俺に対して殺気なんて放つなよ」
「……分かった。それについては謝る、確かに君には憎しみに似たものを抱いていたかもしれない、だが今日までだもう気にしない」
「俺もそうする」
「じゃあ、誓いのキスとハグをしよう」

とジョンは両腕を広げ二人を誘うがそれは無視される

「仲直りにはほど遠いな」
「仲直りしたって野郎とキスとハグは御免だぜ……」

その頃屋敷の訓練場ではジェシカそれにマリアとエルが楽しく談話していた。

「へぇ~それで? 貴方は池の中って訳?」
「そうなんだ、その時お父さんが助けてくれたんだけど……」

その時今まで楽しそうだった空気が行き成り重くなる、ジェシカがお父さんというワードを出してしまったからである
それを察してエルが

「父さんを通さん! な~んちゃって、アッハハ!」

余計悪くなる空気に血の気が引くエル

「え、え~と……お父さんがおーと! お産した!? ……なーんちゃって」

マリアがそれに拍車を掛ける、涙目になるマリア
そんな二人を見て、思わず笑みが零れるジェシカ

「ご、ごめんなさい、気を使わせてしまったみたいで……でも嬉しい私の為に言ってくれたんですよね?」
「ま、まぁ、大した力にはなれませんでしたけど」
「もっと語学を勉強しなくちゃいけないわね……」

そして三人はまた笑う

一方その頃ジョン達は雑草抜きを再開していた。

 「お前は良い奴だな、こんなに簡単に抜けてくれたんだから、こいつを見てくれよ、こいつを抜くのにどれくらいの時間を掛けたと思う?」

とジョンは日が傾くまで雑草抜きをさせられた影響か雑草と会話をし始める

「あいつどうしちまったんです?」
「さ、さぁ?」

困惑気味のファングとナサル

「お前はロサキント、お前はタロウ、お前は……ジャッボット」

とジョンが雑草達に名前を付けていると
マリア、ジェシカ、エルの三人がジョンに近付き話し掛けて来た

「やぁやぁ、先生、雑草抜き励んでますかな?」
「あら、その姿似合ってるわよ」
「……こんばんわ」
「待ってて下さい、こいつはマードック、モルス、カシオペア……」

ちょっとからかってやろうジョンに話掛けた三人だがそんなジョンの様子を見てどんどん不安になって行く

「大丈夫ですか? 先生?」
「……まさか、途中で毒キノコでも食べてないでしょうね?」
「なんです? その病人を見るかのような目は」
「似た様なものじゃない」
「何です? 三人でからかいに来たんですか?」
「そうよ! 貴方の惨めな姿を見てやろうと思って来たのよ!」
「性格悪いですね」
「貴方に言われたくないわよ!」

そんなこんなで夕食時になり、今日の勤務は終了する
夕食を終え部屋に戻るジョン
そして刀身が飛び出る様に改造されている発射ナイフが発射しなくなった為修理していると扉にノックが……
主はジェシカとナサル、二人は手を繋いでいた。

「で? 何の御用?」
「君に話しがある」
「その二人って事は話題の内容も大凡見当が付く」
「失礼するぞ」
「いやん、勝手に入らないで」
「気持ち悪い声を出すんじゃない」

ジョンは椅子にナサルとジェシカがベットに二人並んで座る、ジェシカはナサルの腕にしがみ付いている

「随分仲良くなったみたいだな」
「あ、あぁ」
「そいつは良かった。で? その子どうするんだ? 屋敷から追い出すって事にはならないんだろ?」
「私が面倒を見るという事で決まった」
「金は?」
「問題無い私が全て出す」
「ふぅん、で? 話ってのは?」
「昨日ジョン、君がジェシカに話した事だ」
「何だ、お前昨日の事話したのか?」

気まずそうに頷くジェシカ

「君はジェシカに復讐なんてすべきじゃないと言ったのか?」
「その事も話したのか? 全く……お喋りだな」
「私が話すように強要してしまったんだ。彼女は悪くない」
「弁解は良い、それに俺はそんな事を言った覚えは無い、殺したら後悔する事になるかもしれないぞと言っただけだ。止めた覚えは無い」
「しかし――」
「何だ? 何が言いたい? 俺が善人だと言いたいのか? よく分かったな、その通りだ。これで良いか?」
「何故そんな捻くれた言い方をするんだ!」
「お前が事実を捻じ曲げてるからだ。俺はジェシカを止めた覚えは無い、唯、お勧めはしないと言っただけだ」
「……でも私を昨日勇気付けてくれた……」

と小さな声でジョンに言う

「俺が? お前を? それはお前の勘違いだ。お前が勝手に勇気を持っただけだ。お前がやったんだ俺は関係無い」
「ナサル、分かったな、お前がどんな回答を期待してたか知らんが俺はそれに答える気は無いぞ」
「そうか……分かった。失礼したな」

と言い、ナサルとジェシカは部屋を出て行った。ジェシカはジョンに小さく手を振る
そしてナサルの顔は何処かスッキリした様な顔をしていた。そんな顔をしていたナサルが気に入らなく頭を掻くジョン

「何が分かったんだかな……」


 私はジェシカを部屋に残し、ローラに夕食前ローラの部屋に一人で来るように言われていたのでローラの部屋に向かう、何の用なのだろうか? 盗賊の件は済んだはずだが……
私はドアノブを回し、ローラの部屋に入る

「やぁ、ナサル、遅かったね? 何してたの?」

とローラが私に不気味な微笑みを向けながら話し掛けて来る、ローラ……昔の彼女はこんな表情をする女性では無かった。こんな嘘の表情をするような女性では無かったのだ。彼女も戦争で変わってしまった。あの日から心の底から笑っている姿を見た事が無い

「済まない、私用があった」
「ふーん、私との約束よりも大事な事があるんだ」

相変わらずふざけた事を言う人だ。

「ジョン君の事でしょ? 知ってるよ」

大方、最初から知っているのに意地悪で聞いたのだろう

「そうだ、ジョンと話していた」
「へぇ~どんな話?」
「関係が無いだろう?」
「私に言えないの? ナサル、最近様子がおかしいよ、ジョン君の所為?」

ローラがいつもの笑みを消し真剣な眼差しで私を見る

「ジョンの所為じゃない、私の個人の問題だ。首を突っ込まないでくれ」

ローラは私を本気で心配してくれているのは分かっているだが今は放って置いて欲しい

「酷いなぁ、昔はローラお姉ちゃんローラお姉ちゃんって私の後ろばっか追って来て私無しじゃ何も出来なかった癖に」
「む、昔の話だろう!」

私は思わず声を上げる……確かにそういう時期があったのは確かだ、どうしようもない程恥ずかしい記憶、穴があったら入りたい気分とはこの事なんだろう
顔が熱くなる

「あ~相変わらず可愛いなぁナサルは、昔とちっとも変わってない、素直で純朴な子だよね君は」

私は思わず唖然とする、な、何を行き成り言っているんだ! この人は!

「何を言ってるんですか!」
「ふふふ、で? どうなのジョン君は信用出来そう?」

全くこの人は、ジョンか……彼のあの眼を思い出す。ジェシカにフレデリックを殺させた時のあの眼を、彼は普通じゃない、それは最初から分かっていたつもりだが私の想像を越えていたファングの言った通り彼にはフレデリックと似た脅威を感じた。だが……

「問題は無い、私はそう思う」
「へぇ、何でかな?」

ジョンは確かに過激な思想を持っている、だが彼はジェシカやマリアの為に命を懸けたんだ。悪い奴じゃ……無い筈だと私は思っている

「彼は先のマリアの精神世界や盗賊との闘いでの行動を見てそう判断した。彼は問題無い」
「何処が? 盗賊の件を扇動したのはジョン君何でしょ? それにその後の事を話してくれないけどジョン君絡みで何かあったよね、彼には問題アリアリに見えるけど……」
「私達にはジョンに恩が有るだろう? それに私が信用出来ないという事か?」
「……それを言われると弱いなぁ、卑怯だよ」

とローラは溜息をつき、その後席を立ち私に向かって来る

「じゃあさ、私の事、ローラお姉ちゃんって呼んで」

は?

「は?」
「いやだからこれからローラお姉ちゃんて呼んでよ、二人きりの時でいいからさ」

な、何を血迷ったんだ!? 何を言っている!!

「そんな恥ずかしい事言えるか!」
「えぇ~じゃあジョン君は解雇ね」

う、仕返しか……ジョンには恩がある、仕方ない

「……ロ、ローラお姉ちゃん」
「なぁ~に? ナサル、困り事?」

よくも抜け抜けと……!
その後も散々ローラにからかわれ、私は疲労困憊、部屋に戻る事にした。しかし最後までローラは作り笑顔だった。
部屋に戻ると

「お帰りなさい、えっと、お母さん……」

とジェシカが迎えてくれた。お母さん?

「お母さんとは何だ?」
「だ、だってナサルさん、私の事お母さんみたいに優しくしてくれるしそれにこれからは家族なんでしょ? だから……」
「お母さんは止めてくれ、君の実の母親に悪い」
「……そうかな?」
「そうだ、君の母親はお腹を痛め必死に君を生んだんだぞ?その代わりは私には出来ない、だから私の事はナサルで良い」
「分かったよ、ナサルお姉ちゃん」

お姉ちゃんという言葉にビクッとする、さっきまでの事が頭を過り顔が熱くなる

「どうしたの? 顔が赤いよ?」
「な、何でもない、それより今日はもう寝よう、もう遅い」
「うん、そうだ。明日は私もお姉ちゃんのお手伝いするね」
「別に必要無い」
「でも……」
「いいんだ」

ジェシカの顔が曇る、こういう時もう少し気の利いた言葉を掛けれればと思う、仏頂面で淡泊な口調で話しているから相手に冷たい印象を与えてしまう
……

「明日は昼にでも一緒に散歩にでも行こう」
「うん! いいの?」
「あぁ、問題ない」

私は彼女に少しは勇気を与えられているのだろうか? それは分からない
私はジェシカと共にベッドに入る、だが不安なのかなかなか眠れなさそうなジェシカ

「大丈夫か?」
「うん」
「眠れないのか?」
「うん……」
「私が居る大丈夫だ」
「ありがとう、お姉ちゃん、でもね……眠っちゃうと見ちゃうんだ……お父さんの夢」

彼女は涙目ながらにそう私に訴えた。
私には解決方法は分からないだから精一杯、彼女を抱きしめる事しか私には出来ない、泣き声に震える身体を抱きしめ頭を撫でる……精一杯




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