中年中太り成金アロハシャツおじさんを地獄の底へ叩き落とす所から始まる異世界転移物語

トムボーイ

文字の大きさ
上 下
4 / 115
第一章 礼服の男・ジョン

面接試験

しおりを挟む
 屋敷の門の前まで来るとミラオルクが門の前に立っている騎士であろう男性に声を掛ける

「おはよう、ファング中に入ってもいいかい?」
「要件は? 幾らアンタでも何も聞かずって訳にはいかないぜ?」
「この子ここら辺に初めて来たんだが働き口に困っていてね、此処で働かせてやれないかね?」

 ファングと呼ばれた赤髪の男性がジョンをキッと睨む

「こいつが? 無理言うな、隊長が認めるとは思えねぇ」
「いいから、話してみておくれよ」
「一度アンタが言い出したら曲げねぇからな……分かった、隊長に話してみる、その間ここは任せたぜ、えぇとミランダだったか?」
「そうだよ、それで当たってる」

 ファングは門の脇の小さな扉を開き屋敷に走って行く、門は鉄格子なので鉄格子の隙間から中はよく見える

「望み薄って感じだが」
「どうにかするさ」


 暫く経ちファングが戻って来る

「隊長が会うってさ」
「さぁ行こうか」
「不安一杯だな」

 門の脇の扉から三人は入る、入ると庭がある庭には屋敷までの道が石で作ってありその両脇は芝になっている門から屋敷まで十歩程の距離

「それで? 隊長に会ってどうするんだ? 面接?」
「黙ってついて来い」

 不機嫌そうにファングが返す
 屋敷には入らず屋敷の裏に通される裏には空き地があり、等身大の人間の様な人形が三体置いてあり、空き地の中心に金髪の女性が立っている

「隊長、連れて来たぞ」
「ご苦労だったね、ファング、戻って良いよ」

 ファングはへいへいと言い戻って行く

「やぁ、君がジョン君?」
「あぁ、そうだ」
「ふ~ん、でミランダ、この子を此処で働かせたいと言うんだね?」
「そうだよ、駄目かい?」
「難しいね、私はジョン君の事何も知らないしね」
「そこをどうにか出来ないかい?」
「……分かった、少し待ってて」

 そう言って金髪の彼女が屋敷に消えて行く

「彼女が隊長?」
「そう、名をローラ・ローレライ、癖者だよ、昔も私の言う事もなかなか聞かなくてね」
「あんなのの信用を勝ち取るのは難しそうだな」
「難しいだろうね」

 ローラは昨日出会った、騎士エルとナサルを引き連れて帰って来る

「お待たせ」
「ミランダにその御弟子さん、さっき振りだね~」
「こんにちわ、二人共」
「なんだ三人でもしかしてリンチされるんじゃないだろうな」
「違うよ、試験を受けて貰おうと思って」
「試験かい?」

 ミランダが返す

「そう、その試験に合格したら、此処で働いて貰う事にするよ」
「内容は?」
「エルと模擬戦して貰って一本を取る事、そんな所でどうかな?」
「ほぉ、なるほどねぇ」
「それじゃあ準備するから二手に分かれてエルはそっちにジョンはそっち」

 ローラが二人の立ち位置を指差し教える、ジョンがその立ち位置に移動する間にミランダがジョンに耳打ちする

「ローラはアンタを試験に受けさせる気が無いよ、エルは騎士隊最年少だが剣の腕は確かだよ、少なくとも素人が敵う相手じゃない」
「残念ながらこっちも素人じゃない」
「アンタの実力、見せつけてやりな」
「了解」

 ローラがジョンとエルに木刀を配る

「魔法は禁止、頭、手、胴に一撃入れば一本とするよ、ジョン君は三本まで貰っても良しとするよ、エルは一本でも貰えば負け」

 ここでナサルは思う

 (隊長め意地悪をする、エルは王国兵士十人を同時に相手して勝った天才剣士、年齢は私達の中で一番若いが剣術のみの実力ならナンバー3には入る、彼が敵う訳がない)

「えぇ~こっちに不利じゃないですか~」
「騎士なんだから文句をいっちゃいけないよ、準備は良い?」
「僕は良いよ」

 木刀を投げ捨てるジョン

「どうしたの?」
「こんな長い得物慣れてないからな、こっちは武器は要らない」
「何言ってるのかな? それでどうやって戦うの?」
「始まってからのお楽しみ」
「なんですかそれ? もしかして僕の事舐めてます?」
「あ~あ、バレた? 大当たり、負ける気がしない」
「アッハハ、カチンと来たよ、後悔しても知らないよ」
「させてみな」

 エルは構える、ジョンは腕を組み余裕の笑み
 エルはフラフラと揺れ始める

「エル!? 本気でやるな!!」

 ナサルが止めに入ろうとするが時遅し、エルがスッとその場から消えジョンに一瞬で斬りかかる
 が躱される

「!?」

 その場に居た騎士三人が驚愕する
 エルは動揺しながらも二撃目を繰り出す。が避けられる、躱しながらジョンは思考を巡らす

 (器用だな一撃目の後隙も余り見せずすぐ二撃目を繰り出したそれにちょっとした動揺では揺れない精神力、成程”騎士”と呼ばれるだけはあるそしてこの攻撃想像していたより速いな女性の出せる速さじゃない、こっちの世界の人間は肉体の作りも違うみたいだな、これに魔法が加わるとしたら厄介だ、どんな魔法を使えるかは知らんが)

 攻撃は十二回まで続いたが全て避けられる、エルは信じられないといった表情でいつも浮かべているニヤケ顔も消え去っていたそれに額には汗まで流れている
 他の騎士二人も同様

「どうだい、あの子は?」
「どこで彼を見つけたんですか?」

 ナサルが問う

「教える気は無いよ」
「相変わらずですね、貴方は」
「どう思うナサル」

 ローラがナサルに聞く

「簡単に言うとジョンとエルの間には大きな実力差があります、エルの攻撃を全て避けたのも然ることながら、全て最小限の動きで避けすぐ後に反撃出来る姿勢まで取っているそれを十二回繰り返した。ジョンが武器を持っていたら一撃目の後直ぐエルは急所を刺されて終わっていたでしょう」
「正直驚いたよミランダ、彼はすごい実力者だ。」

 (だからこそ巫女様の近くに置くのは怖い)

「ローラ、アンタは言ったよね、勝ったら合格だと、約束は守っておくれよ」

 (厄介な人だこの人は昔から)

「でもまだ決着はついていませんよ」

 そう、まだこの試合は一本も出ていない、ジョンは避けただけ

「さぁ!! もう終わりか? 来いよ」

 ジョンは両腕を広げエルを挑発する、しかしエルの心は既に折れてしまっていた。剣士としての誇りをこの一瞬で汚され傷だらけにされた。

「ぼ、ボクの負けだよ」

 これ以上の試合の続行はルールは許しても彼女のプライドが許さない、エルはその場に居る事が耐え切れず屋敷へと走り去って行った。

「エル!?」
「はぁ、ナサル追ってあげて」
「はい」

 ナサルはエルの後を追い屋敷へと消える
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...