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最終章12 『母と娘の再会』

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 あの大決戦から、数日が経過した。

 異端審問官の本星――悪意の苗床は、
 グレンデルと、解釈の魔女プルガトリオ
 の手によって完全に破壊。

 カグラたちの星の上に待機する
 700億隻にも及ぶ、クラーマーの船団も壊滅。

 スペースデブリとしての戦艦の残骸の回収も完了。
 これにて一連の騒動に決着がつき、世界に平和が戻った。

 そして、ここはカグラたちの世界の最上位階層。
 本来の最終到たち点――アヴァロン。

 幼女女神が言っていたラスボス戦のために用意された、
 この世界の特別ステージであり、様々な物語の
 楽園の要素を取り組んだ空間。

 今、この領域に居るのは、カグラたち一行と、
 グレンデル、あとは一人の少女。
 彼女の名前は――ヘラ。

 幼女女神の容姿と瓜二つうりふたつ

 そもそも、幼女女神がヘラを模して造られ
 たので同じでもおかしくはないのだが。

 彼女自身は、グレンデルがこの空間に訪れる
 までは、寝たきり状態だったようだ。

「ヘラ。探したのよ」

「ママ?」

「そうよ、ヘラ。あなたは、物語を書いている最中に意識を失って、自分の書いた物語の世界に迷い込んじゃったのよ」

「私、迷い込んじゃってたの?」

「そう。ここは、ヘラ。確かにあなたの作った世界だけど、あなたの本来生きるべき世界ではない。それにしても、こっちの世界のあなたも寝たきりだとはおもわなかったわ。ほら、帰るよ」

 この世界は、ヘラの創世した世界。
 その目的は、生前の世界で傷ついた人間が生きる目的や、
 気力を取り戻してもらうために作られた理想郷。
 危険と隣り合わせだけれど、胸躍る冒険の溢れるあふれる世界。

 ――もともとヘラは体の弱い子供であり、
 様々な冒険物語を好んで読んでいた事も、
 この世界の成り立ちに影響を与えている。

 人は、困難や、たち成すべき目標そして
 一人ではたち成できないような壁があるからこそ、
 隣人と協力して頑張ることができる。

 それが、生きるという事の実感に
 繋がるつながるのではないかという風に考えたのだ。

 その代わり、ヘラの作った世界では、
 努力をしたら必ず報われる。

 ――ソレイユの居た世界な理不尽で、
 不条理な、努力しても絶対に幸せに
 なれないような、一切の理不尽を許さない。

 そして、仲間で協力しても乗り越えられ
 ないような理不尽な壁を設定しない。
 それが、この世界の基本理念である。

 だから――この世界は楽園。

 他の多くの世界はヘラの作った
 この世界のように優しくは無い。

 優しさは、弱さと踏みにじられ。
 努力は、報いられることはなく、
 希望は、絶望に塗りつぶされる。

 努力や優しさ希望が、報いられる
 ただそれだけの違い。

 既に幸せな人間にとっては、この世界が楽園などと
 言われてもピンとはこないかもしれない。

 だが、ソレイユのように、努力をしても
 自分の墓穴を掘る結果にしか繋がらつながらない世界。

 カグラのように、周囲の環境によって、どう努力しても
 叩き落とさたたきおとされるような世界に生きた人間。

 セレネのように、理不尽な事件に巻き込まれ、両親も
 自身も殺され、罪を押しつけられた世界の人間。

 そういった、理不尽によって心を折れた人間たちにとって、
 この世界は確かに、楽園なのであった。

「でも……ママ。私がこの世界から出て行ったら、この世界」

「大丈夫。あなたが代行者として創造した、この世界の女神がこの世界の神として統治する」

「だから、あなたは気にする事はないのよ」

「パパにも会える?」

「そうね。あなたの事を待ってるわよ」

 ヘレの居た世界では今は原因不明の
 病気に罹っかかったの寝たきりの病人として、
 グレンデルの元旦那が、意識不明の
 娘の身の回りの世話を見ているそうだ。

「カグラ。この世界は私様の娘が創世した世界だ。だからといって仮想世界のような物とは考えるなよ。この世界は、私様の元の世界も含めて残さず造物主、または誰かが創作した物語なのだから」

「その辺りの事は、ざっくりデュパンから聞いたから理解してるよ。つまり、グレンデルさんや、ヘラちゃんにも会いに行こうと思えば会いに行けるってことだろ?」

「世界は文字で出来ていル――。言葉で出来ていル――。物語で出来ていル――。この世界を含めた、全ての世界がそのように造物されている事は、デュパンさんから教えてもらいマシタ。カグラにもワタシが100回ほど説明しているので大丈夫デス」

(確かに理解が難しい話かもしれねーが。それでも100回も説明させたのか……。まぁなんだ、私様が言う立場じゃねぇがセレネもいろいろ大変だな)

「おい、カグラ。通常は異界に渡るのは漂流者ドリフターと呼ばれる、世界の禁忌の一つだからあんまり濫用らんようすんなよ。カグラ、来るときは正規の手順は踏めよな。不必要な介入は他の世界の、独自の世界観を壊すから最低限にとどめるべきだっつー話だ」

「その台詞せりふ。ボクはグレンデルにだけは言われたくないにへぇ……」

「私様は例外だ。親として迷子になった自分の子供を探しに行くのは当然だろ。それに、プルーちゃんとしたガチの約束がまだ果たせてねーから、近いうちにまたこの世界には来ることになるだろうしな。私様だけは、全て例外扱いだから大丈夫だ」

「解釈の魔女プルガトリオとの約束とは、何デスか……? また世界を揺るがすヤバい約束とかじゃ無いデスよね?」

「はん。――そりゃまあ、乙女の秘密だ」

(……乙女の秘密……超気になるにへぇ)

「まっ! またグレンデルさんも、ヘラちゃんも遊びに来てくれよ。この世界の幼女女神のサポートは俺たちがするから、心配すんな。実質的にサポートをするのはほぼセレネになると思うがな。はは。俺も護衛くらいはできるぜ」

「どうやら、グレンデルさんと、ヘラちゃんとは今生の別れという訳でも無さそうデスし、この辺りでお開きにしまショウか。ヘラちゃんもママやパパと水入らずで話したいデショウし」

「ボクは、怖いもの見たさで、グレンデルさんの元旦那さんを一度見てみたいにへ。きっとグレンデルさんみたいな化物にへぇ……」

「私様の元旦那ぁ? ただの馬鹿だ。たいした者じゃねぇぞ?」

「ママ、私のパパを悪く言わないでっ!」

「わりぃわりぃ。ヘレ、冗談っ! んじゃ、またな! あんまり感傷的な分かれ方されると戻ってきづらくなるから今日のとこはこれにてお暇おいとまさせてもらうぜぇ! すぐに帰ってきても文句言うなよー!」

 慌ただしいやり取りの後に、この世界の創造主ヘレと、
 その母親グレンデルは、幼女女神が作った門を通り、
 元の世界へ帰って行ったのであった。
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