電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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閉ざされたシンの真実:6『瓶詰めの楽園(4)』

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「ねえ、シン。この部屋は、お外の世界とは違うのよ。ここは、異世界なの」

「なるほどね」

「ほんとうはわかってないでしょ?」

「ぶっちゃけ、わからん」

「シン、この部屋はいまはどう見える? 説明してみて」

「ほこりっぽく、うす暗く、天井が低く、せまい」

「そう。今はただのせまい部屋よ。でも、このランタンの灯を消すとね」

「わっ、……!」

「いまは、どう見えるかしら?」

「宇宙の中心。星々がきらめく大パノラマ。……あまりに幻想的だ!」

「そう、ここが宇宙の中心。真実の世界、本物の現実なのよ」

「アリア! 君は……本当に……凄い!」

「アリアの目は、暗闇にお星さまを映しだすことができるの」

「世界一綺麗だ。神様からの贈りものだ!」

「えへへ、ありがと。あかりをともすそれだけしか、できないんだけどね」

「だからこそ、いいんだよ。人を不幸にする力よりよほど意味がある。軽く見積もって、クロノのユニークスキル〈雷術〉の1億倍の価値がある」

「唯一の友達のクロノさんのこと、悪く言っちゃだめよ」

「まあ、善処する。でも、……クロノはバカだからなぁ」

「あとね、さっきのは魔眼力よ。お外で言ったら石を投げられちゃうわ」

「馬鹿げてる。教会も、ギルドも、村の連中も、先史時代の馬鹿な蛮族の迷信を信じるなんて。おろかだ」

「この世界はふたりだけの閉じた世界。でも、この世界の広さは無限。でも同時に有限。だってほら、手をのばせば天井に触れちゃうでしょ」

「それは、なんというか……残念だ」

「大丈夫よ。アリアとシンが信じる限りは無限なんだから」

「アリアたち、まるで原初の世界の神様みたいね」

「はは、神様か。規模がでかすぎて想像できない」

「何をするのも自由よ。だってこの世界にはアリアとシンしかいないから」

「ふたりだけの世界」

「そうよ。ふたりだけの世界」

「いつかクロノを呼んでこの光景見せびらかして、自慢してマウント取りたい」

「そんな日がくるといいわね」

「絶対にくるさ!」

◇◇◇

「ねえ、シン。アリア魔法が使えるようになったのよ」

「ファイアボールとか?」

「違うわ。本当の〈魔法〉。奇跡を起こす力よ」

「まるで神様だ。クロノの雷術とは、まるで格が違う」

「論より証拠。これから魔法をかけるわ」

「うん」

「今からシンは勇者よ、神様に選ばれた」

「え? 何も起こらないよ。これが魔法?」

「うん。この部屋では、ね。でも、魔法は信じてくれないととけちゃうの」

「僕はアリアを信じてるから大丈夫だね!」

「ふふっ。じゃあ練習ね。シン、あなたの本当の姿は?」

「僕はシン、勇者だ。……って、やっぱ、恥ずかしい」

「まだまだねっ。いっしょに魔法を練習しましょっ」

◇◇◇

「うーん。そのおとぎ話の主人公。ご都合主義じゃないか? いかにもクロノが考えそうな、低俗で幼稚な物語だ」

「もう。シンって、本当にダメね。おとぎ話の世界ってそういうものなのよ?」

「そうなの? 昔の人は、幼稚で、無邪気だったんだね」

「シンは、おとぎ話には興味ない?」

「いやまあ、知りたい。そして、クロノに知識マウントを取りたい!」

「いいわ。アリアがたーっくさん、本を読んであげるんだからっ」

「でも、おとぎ話の世界って、けっこうデタラメだね」

「ちがうわ。おとぎ話の世界が本当なの」

「まるでウソだ」

「本当よ。だってこの超天才のアリアが言ってるんですもの」

「なるほど。あした、クロノにも教えてやらなきゃっ」

「シン、だめよ?」

「ぐぬぬ……、せっかくマウント取れるチャンスだったのに、残念だ」

「はいはい」

◇◇◇

「シンってクロノさんのことばかりね。シンは、男の子が好きなのかしら?」

「はっ! ? ありえない! クロノは決闘友達! ただの親友だ!」

「へぇー? 友達ね」

「なっ、なんだよアリア? 僕が友達がいたら、変かっ? !」

「ううん。ただ、クロノさんに嫉妬しただけよ」

「なっ、何でだよ? ! ……まるで意味が分からない。まるで意味不明だっ!」

「じゃあ、アリアにキスして」

「え、あ、……うん。こっ、……こうかな」

「シン。ふるえてるわよ?」

「これは、武者ぶるいだ」

「はいはい」
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