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閉ざされたシンの真実:5『瓶詰めの楽園(3)』
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「でね、天国の川にはくだものの蜜が流れてるのよ」
「うわっ、洗濯ものがガビガビだ……あまりに残念だ」
「でも飲めるのよ? こうやって、すくって」
「なんだか、手とかくちもとが、ベトベトしそうな川だなぁ……僕ぁ衛生面が心配だ」
「それだけじゃないのよ。ミルクの川も流れてるんだからっ!」
「まるでデタラメだ。だってさ、そんなミルク飲んだら、絶対おなかこわすよっ? !」
「シンくん?」
「あっ、はい」
「ヨシッ! でね、天国の子はみーんな処女なのよ。それで、すっごーくキレイなの!」
「あ、……あっ、そっ、そうなんだぁっ。ぼ、僕は、あんまりっ興味ないかな? クロノとかは無知なガキだから、処女厨だろうから興味あるだろうけどっ」
「えぇー? ウソばっかりぃ。ウソはだめよー?」
「うっ、ウソじゃないっ、僕はうまれてこのかた一度もウソをついたことがない、正直者だ」
「アリアのお話はウソくさくて、嫌い?」
「えーっと」
「だーめ。言って」
「しゅきです。もっと……き、……聞きたいです」
「聞こえなかったわ。もう一度」
「アリアのお話、聞きたいですっ!!」
「はい。よくできました。ほっぺにチューしてあげる」
◇◇◇
「宝石の木の果実って何なのさ? 絶対硬いヤツだ」
「シンはバカね。大丈夫なのよ。宝石でも食べられの。やわらかいのよ」
「信じられない?」
「はい。じゃぁ、お本はここでおしまいねっ! パタンっ」
「あ、……。ア、アリアさぁん? ……ちょっ、ちょっ! いま、面白い展開なのに」
「あらぁ? シン、どうしたのかしら? 宝石の果実は石なんでしょ?」
「いや、……ウソ。宝石でも……やっぱり、食べられる」
「あらまあ。もっとはっきり言ってちょうだい」
「アリア、天国についてもっと知りたいですっ!」
「チラッ。しかたないわね。特別よ?」
・・・・・・
「シン、さっきはいじわるして、ごめんね」
「僕も、宝石が食べられないって文句いってごめんね。クロノのヤツが……そう言ってたから」
「気にしないで。アリアは、シンの感想は好きよ」
「なら、なぜいじわるするのさ?」
「ただいじわるしたい気持ちだったのよ。ごめんね?」
「なんだよそりゃ。……まあ、しかたない」
「じゃあ、なかなおりのハグをしてあげるわ。ぎゅー、って」
「えっ、あ、うん。……ほっとする」
◇◇◇
「天国ってなんで処女ばっかりなの?」
「文句を言っても仕方ないわ。本にそう書いてあるのよ」
「きっと何か、深い理由や、事情があるはずだ」
「そうね。シンは、どうしてだと思うかしら?」
「えーっと。わからん」
「はい……、そうね、きっと天国には女の子しかいないのよ。深刻な男不足なのよ」
「疫病かなにかで絶滅したのかな?
「うん?」
「あーあ、ミルクの川を手ですくって飲んだりするからだよ」
「うん。そうね。そういうことよ」
「でもさ、事情はわかるけど、無理やり処女を押し付けるってはた迷惑な話じゃない? 男の人権はどこにいった?」
「天国の基本サービスだから、そこの設定は変更不可よ。まあ、美人な子だからがまんしなさい」
「でもさ、いきなり、好きになるなんて難しくないか?」
「シンは、わがままね。それじゃ、シンには特別サービスしたげる」
「えっ? 特別サービスって、なにかな?」
「そのときは、アリアがお嫁さんになってあげるわ」
「あ。そうなの。はは。うん。天国、悪くない、かな」
◇◇◇
「ミルクの流れる川、お酒の流れる川、蜜の流れる川。……飲むのが大変すぎるよ」
「きっと、きれいに飲むコツがあるのよ。いっしょにかんがえましょ?」
・・・・・・・
「なるほど、木で作ったヒシャクで飲むと。……でも、どうして僕らが天国のやつらのためにかんがえなきゃいけないのさ?」
「ばかね。アリアとシンはいずれ天国にいくのよ」
「あっ、そうか。だよね。それなら、そうなのかな」
「そうよ。天国であわててたらかっこ悪いわよ。おのぼりさんみたいで」
「そうだね。田舎モノだと馬鹿にされるのはくやしいもんね」
「いまからとっても楽しみね、天国」
◇◇◇
「アリア、この、……あらゆる果物が実る木ってなんなの?」
「文字通りよ。すべての果物がなってるのよ」
「なるほど。……うーん。なるほど」
「ほかにしりたいことはある?」
「そういえば、72人の処女がお嫁さんになるアレって何だっけ?」
「ふふ。バルハラのワルキューレたちのことかしら?」
「うん。それ。さすがに72人は、多すぎないか?」
「名前をおぼえるだけで大変ね。がんばりなさい」
「なんていうか、天国ってシュールだね?」
「なんかちょっと滑稽で、わらえるわね」
「天国にも本って、あるのかな?」
「もっちろん、あるわよ。たーっくさん。でも、シンは本読めないでしょ?」
「その、天国でもアリアが本を読んでくれないかなっ、なんてっ! ははっ」
「もう。……しょうがないわね。読んであげるわ」
「やった! なんか死ぬのが楽しみになってきた」
「まだまだ先の話よ。がんばった人へのご褒美なんだから」
◇◇◇
「アリアの目は青い宝石のようだ。きれいだ」
「ふふ。ありがと。シンの青い瞳も素敵よ」
「金色の髪もすてきだ」
「ふふ、ありがと。でも、それも同じだわね?」
「……。そうだね」
「不思議ね。まるで鏡写しだわ」
「うわっ、洗濯ものがガビガビだ……あまりに残念だ」
「でも飲めるのよ? こうやって、すくって」
「なんだか、手とかくちもとが、ベトベトしそうな川だなぁ……僕ぁ衛生面が心配だ」
「それだけじゃないのよ。ミルクの川も流れてるんだからっ!」
「まるでデタラメだ。だってさ、そんなミルク飲んだら、絶対おなかこわすよっ? !」
「シンくん?」
「あっ、はい」
「ヨシッ! でね、天国の子はみーんな処女なのよ。それで、すっごーくキレイなの!」
「あ、……あっ、そっ、そうなんだぁっ。ぼ、僕は、あんまりっ興味ないかな? クロノとかは無知なガキだから、処女厨だろうから興味あるだろうけどっ」
「えぇー? ウソばっかりぃ。ウソはだめよー?」
「うっ、ウソじゃないっ、僕はうまれてこのかた一度もウソをついたことがない、正直者だ」
「アリアのお話はウソくさくて、嫌い?」
「えーっと」
「だーめ。言って」
「しゅきです。もっと……き、……聞きたいです」
「聞こえなかったわ。もう一度」
「アリアのお話、聞きたいですっ!!」
「はい。よくできました。ほっぺにチューしてあげる」
◇◇◇
「宝石の木の果実って何なのさ? 絶対硬いヤツだ」
「シンはバカね。大丈夫なのよ。宝石でも食べられの。やわらかいのよ」
「信じられない?」
「はい。じゃぁ、お本はここでおしまいねっ! パタンっ」
「あ、……。ア、アリアさぁん? ……ちょっ、ちょっ! いま、面白い展開なのに」
「あらぁ? シン、どうしたのかしら? 宝石の果実は石なんでしょ?」
「いや、……ウソ。宝石でも……やっぱり、食べられる」
「あらまあ。もっとはっきり言ってちょうだい」
「アリア、天国についてもっと知りたいですっ!」
「チラッ。しかたないわね。特別よ?」
・・・・・・
「シン、さっきはいじわるして、ごめんね」
「僕も、宝石が食べられないって文句いってごめんね。クロノのヤツが……そう言ってたから」
「気にしないで。アリアは、シンの感想は好きよ」
「なら、なぜいじわるするのさ?」
「ただいじわるしたい気持ちだったのよ。ごめんね?」
「なんだよそりゃ。……まあ、しかたない」
「じゃあ、なかなおりのハグをしてあげるわ。ぎゅー、って」
「えっ、あ、うん。……ほっとする」
◇◇◇
「天国ってなんで処女ばっかりなの?」
「文句を言っても仕方ないわ。本にそう書いてあるのよ」
「きっと何か、深い理由や、事情があるはずだ」
「そうね。シンは、どうしてだと思うかしら?」
「えーっと。わからん」
「はい……、そうね、きっと天国には女の子しかいないのよ。深刻な男不足なのよ」
「疫病かなにかで絶滅したのかな?
「うん?」
「あーあ、ミルクの川を手ですくって飲んだりするからだよ」
「うん。そうね。そういうことよ」
「でもさ、事情はわかるけど、無理やり処女を押し付けるってはた迷惑な話じゃない? 男の人権はどこにいった?」
「天国の基本サービスだから、そこの設定は変更不可よ。まあ、美人な子だからがまんしなさい」
「でもさ、いきなり、好きになるなんて難しくないか?」
「シンは、わがままね。それじゃ、シンには特別サービスしたげる」
「えっ? 特別サービスって、なにかな?」
「そのときは、アリアがお嫁さんになってあげるわ」
「あ。そうなの。はは。うん。天国、悪くない、かな」
◇◇◇
「ミルクの流れる川、お酒の流れる川、蜜の流れる川。……飲むのが大変すぎるよ」
「きっと、きれいに飲むコツがあるのよ。いっしょにかんがえましょ?」
・・・・・・・
「なるほど、木で作ったヒシャクで飲むと。……でも、どうして僕らが天国のやつらのためにかんがえなきゃいけないのさ?」
「ばかね。アリアとシンはいずれ天国にいくのよ」
「あっ、そうか。だよね。それなら、そうなのかな」
「そうよ。天国であわててたらかっこ悪いわよ。おのぼりさんみたいで」
「そうだね。田舎モノだと馬鹿にされるのはくやしいもんね」
「いまからとっても楽しみね、天国」
◇◇◇
「アリア、この、……あらゆる果物が実る木ってなんなの?」
「文字通りよ。すべての果物がなってるのよ」
「なるほど。……うーん。なるほど」
「ほかにしりたいことはある?」
「そういえば、72人の処女がお嫁さんになるアレって何だっけ?」
「ふふ。バルハラのワルキューレたちのことかしら?」
「うん。それ。さすがに72人は、多すぎないか?」
「名前をおぼえるだけで大変ね。がんばりなさい」
「なんていうか、天国ってシュールだね?」
「なんかちょっと滑稽で、わらえるわね」
「天国にも本って、あるのかな?」
「もっちろん、あるわよ。たーっくさん。でも、シンは本読めないでしょ?」
「その、天国でもアリアが本を読んでくれないかなっ、なんてっ! ははっ」
「もう。……しょうがないわね。読んであげるわ」
「やった! なんか死ぬのが楽しみになってきた」
「まだまだ先の話よ。がんばった人へのご褒美なんだから」
◇◇◇
「アリアの目は青い宝石のようだ。きれいだ」
「ふふ。ありがと。シンの青い瞳も素敵よ」
「金色の髪もすてきだ」
「ふふ、ありがと。でも、それも同じだわね?」
「……。そうだね」
「不思議ね。まるで鏡写しだわ」
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