電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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閉ざされたシンの真実:4『瓶詰めの楽園(2)』

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「アリア、……ダメだ。これは、……よくないことなんだ」

「どうして? なんで、そんなこと言うの」

「落ちついてくれ、いっときの気の迷いだ……駄目なんだ、……許されないことだ……」

「わからない! 知りたくない」

「僕は地獄行きでいい。でも、アリアは天国にいくべきだ」

「なんでっ! どうしてっ! 別々になるのはいやよ!」

「だって、アリアは……あんなに天国を楽しみにしてたじゃないか」

「そんなものはいらないっ! 神様も天国もいらないっ! シンだけで良いっ!」

「……僕には、……価値はない……外の世界には……」

「お外のことなんて、……知らない!」

「……アリア」

「神様は、このふたりだけの世界に干渉してくるの! ? なんで! ? なんで神様は……アリアたちを祝福してくれないの? !」

「正しくないことだからだ……悪徳で、神様に対する裏切り、背徳なんだ……僕は、アリアには、せめて幸せになってほしい、ただそれだけなんだ」

「神様って何? ! 正しいって何? ! そんなの、ないじゃないっ? !」

「アリア……。僕は…………」

「なんで神様は邪魔するの? こは、ふたりだけの小さな世界なのよ? !」

「……、……」

「神様なんてだいっきらい!」

◇◇◇

「教義に背いた。僕は地獄に堕ちる。この先に救いはない」

◇◇◇

「金色のつややかな髪、青い瞳。アリアはまるでおとぎ話のお姫さまだ」

「どういたしまして」

「アリアの目は、暗闇に星々を映しだす。とても素敵な瞳だ」

「ありがと。シンはアリアの王子さまだわ」

「僕のアリアは素晴らしいのに。世界は理解しない。まるで愚かだ」

「良いのよ。シンにだけ認めてもらえれば。それで幸せなの」

「まったく。……教養のない馬鹿は……理解できない物を恐れるから」

「あら? でも、シンもお本は読めないでしょっ」

「まっ、まあ……明日、あさってあたりから、クロノに教えてもらうから?」

「えらいわ。でも、クロノさんに迷惑かけちゃだめよ?」

「無理!」

「シン?」

◇◇◇

「シンは将来なりたいものとかないの?」

「そんなこと、考えたこともないよ」

「じゃあ、勇者になって。アリアのために」

「勇者? けっこーハードル高くない?」

「だめ。絶対になってね。アリアのために」

「うーん。まあ。おっけー」

◇◇◇

「いや、魔王を倒すのは分かるとして、なんでお嫁さんをたくさん作らなきゃいけないのさ? 世界平和と関係なくない? !」

「だーめ。それじゃぁ、ぜーんぜんおもしろくないでしょ?」

「アリアは、僕が浮気してもかまわないのか?」

「うん」

「アリアさん? 僕ぁ、ショックです」

「シンは、もっと自由に想像しなさい」

「王様になってアリアを迎えに行く展開じゃダメなのか?」

「ダメよ。だって、おもしろくないでしょ、王様なんて」

「えー。そうかなあ?」

「王様は立派なイスに座ってるだけ。やっぱり、男は剣で戦わないとダメ。スリルと冒険がなければ」

「はは。アリアは冒険が好きだね」

「うん。だって、いろんな世界を見てみたいじゃない」

「大丈夫、僕が絶対にアリアをこの部屋から連れだす。クロノだって手伝ってくれるさ」

「ありがとう。でも、その気持だけで十分よ」

「シン、アリアを忘れて、本当の世界に、生きて」

◇◇◇

「アリア、いつものようにおとぎ話を聞かせてくれないか?」

「いやよ。ウソだから。ご都合主義だから。現実逃避だから」

「だって、この部屋は別の世界で、……ここだけが、真実なんだ」

「ウソつき! そんなはず、……あるわけないじゃないっ」

「アリア、信じてくれ。僕は、勇者だ。魔王を倒し、ドラゴンも倒す」

「……」

「えっと、それで、聖剣を持って、最強の仲間と冒険だ。クロノも連れていく」

「……」

「勇者になった僕は、神に選ばれ人々から尊敬され、祝福されるんだ。とても凄いんだ」

「うん。それで、お嫁さんは」

「もちろん、たくさんいる」

「かわいい?」

「えっ? う、うん。もちろん、そうだよ」

「アリアよりかわいい?」

「うん、……じゃない、いや、ちがう。今のは罠だっ」

「いいのよ。シンは、かわいい子と幸せになりなさい」

・・・・・・

「シン、なぜ泣いてるの? たのしいお話なのに」

「……だって」

「わらって。たのしい将来のお話なんだから」

「……でも、その話には、アリアが……いない」

「勇者シンの大冒険、続きを、聞かせて?」

・・・・・・

「……勇者シンは楽しく笑って幸せに過ごしました」

「そうよね。うん。そうじゃなきゃ、ウソだわ」

「……。全てをやり遂げた勇者シンは、神々の暮らす楽園に向かいました」

「あ、それは聞いたことないわ。シンのオリジナル? 聞かせて」

「勇者シンは、神々の園で美しいひとりの少女と出会います。彼女の名はアリア」

「アリア? アリアも、神々の国に行ってもいいの?」

「もちろんだよ。アリアは、神々の楽園では女神様なんだ」

「凄い。アリアは勇者より偉い?」

「そうだね。勇者よりも、ずっと偉くて。そして賢いんだ」

「それで、それで、どうなるのっ? 続きを聞かせてよ」

「マリアもいる。ほら、アリアが描いてた黒髪の、チャキチャキ娘」

「マリアちゃんもいるの?」

「もちろんだ」

「ありがとう、シン」

「勇者シンと女神アリアは永遠に幸せに暮らしました。めでたしめでたし」

「あはは。アリアも幸せにしてくれたの? ありがとう」

「だからね、何も怖いことはないし心配はいらないんだ! 僕たちは、絶対にハッピーエンドなんだよ」

シンは、本当にウソつきね。そんな、シンが好き。だから、……。
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