電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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第45話『聖女の愛』

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「あらあら。私としたことが、クロノさんを奮起させてしまいましたか。クロノさんは、アリアを認めえくれたお礼に、私の胸のなかで死ぬ栄誉を与えましょう」

「いらねぇ! 悪いが、俺が死ぬ胸は先約済みだ! これはちょっと痺れるぜッ! 雷術〈雷轟電撃〉!」

仕掛け武器のナイフを床に投げる。そして、電気を流す。致命傷を与えほどのダメージは与えられない。だが、確実にダメージを蓄積させることができる。

「がはッ! クロノさんのくせに搦め手ですか……これは、痺れますねッ。いけまえんねぇ。クロノさん、あなたは私の物ではないですかッ! 平民に高貴なる者からの求愛を拒む権利はありませんよッ! 貫かれ、死ね〈パラダイス・ロスト〉」

「……ッと、はぁ? いつそうなった? ! 思い込みの激しさは兄妹揃って似てやがる! やっぱ、シンとおまえは、姉弟だよッ!」

「では殺してでも奪い取りましょう。愛とは、勝ちとるものですからねッ!」

「やれるもんならやってみやがれ!」

「はい! では、そのお言葉に甘えて、そうさてもらいましょう! この領域の天地を反転させましょう〈リバース・ヘブン〉」

天井が床に、床が天井に。天地が逆さまに。天井に向けて、俺とセーラは落下する。

「……っと、天地がひっくり返ったとか言うけど、まさかそれをマジで体験するとは思わなかったぜッ! まっ、おまえの本音聞けたのは良かったよ!」

「仲間なら、もっと早く本音で語り合えばよかった。そう、思いますか? 〈不可視の刃〉」

ガラスのように透明なナイフ。暗器だ。どうせ、ヤバい毒とか塗ってある。

「ッ! 思わねぇさ! 事情が事情だ! シンもおまえも、俺に言うのは無理だったろうさ。それを俺が責めるっつーのはあまりに傲慢だ。人それぞれ、隠し事の一つや二つくらいあるからなッ!」

「はぁはぁ……ッッ! ですね!」

「どうした! いつものお喋りはどうした! ずいぶんと口数が減ってきてるぞ!」

「……ッ、はぁ……クロノさんのくせに、生意気ですねッ!」

「おまえの魔眼が見える未来は、数秒先が限度、そうだな!」

「はぁはぁ……ッ! 見えてますよ、私があなたを地に伏せる姿がッ!」

額から汗を流している。鉄面皮のセーラが苦しそうな顔をしている。魔眼の負担が尋常じゃないようだ。ああ、いいさ。なら、楽にしてやるよ! 

「らしくねぇなッ! おまえがバレバレのウソをつくなんて!」

「ご名答。ですが、……それが分かったところ――まさかっ――クッ! !」

「その顔。見えてしまったんだな。自分が地面に伏す、姿がッ!」

「……ッ……! ! ! !」

セーラは数秒後に起こる未来が見えてしまう。だからこそ、自分の敗北を、幻視してしまった。そうだ。俺は、次の一手で決めさせてもらう! 

「これで終いだ! 雷術〈電光石火〉!」

セーラは天を仰ぎ、目を開けたまま気絶。

「じゃあな、セーラ。おまえの弟に会いにいく!」

……。

「っと、その前に」

コイツはあまりに油断ならな過ぎる。糸で超ガンジガラメに縛り付けた。そのあと、階段を駆け上がった。
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