電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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第31話『枢機卿ってダレ?【勇者サイド】』

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「マリア、フレイのあのマヌケな顔を見たか?」

「はい。白目であわふいてましたね」

 世間ではボクは大監獄に居ることになってる。 だから親しい人には顔だすようにしている。 天井をけやぶってフレイに会いに行った。 すげーマヌケな顔して失神してたな。

「これはお礼参りって言うんだ」

「ちがいます。マリア知ってます。これはトリック オア トリートです」

「うん。そうとも言うな」

 心配させちゃあ悪い。そんなわけで知り合いに会いに行っているクロノは無視だ。

「シンさま。今日は気合のはいった服ですね。真っ白です」

「まあね。記念すべきボクの教会への凱旋の日だからねっ」

 ここは教会本部。セーラのパパ上が働いてたとこ。いまは、パパ上も、娘も獄中だけど。 教会の人間がふたりも犯罪者とは世も末だ。やれやれ。

「教会はともかく、王都の人たちの前に姿さらして大丈夫ですかね?」

「問題ない。かくれんぼ遊びはおわりだ。正々堂々いくぞ!」

 マリアの気配遮断も解除させた。やましいことがないからな。みちゆく人にに挨拶した。 

「あけろ! ボクだ、シンだ。勇者が帰ってきた!」

 返事はない。まあいいや。 ボクとマリアは教会の門をくぐり抜ける。 出迎えの男がやってくる。 甲冑をきた男だ。ご苦労!

「おむかえご苦労。ボクだ」

「……ッ! まさか……、あの、……ッ勇者シンッ!」

「そうだ。ボクだ! やったね! ボクが、帰ってきた」

「貴様ッ!! あの大監獄からどうやって逃げ出したッ!」

「ん? この二本の足で。歩いてだ」

「ふははっ。好都合。教会は貴様を探していたのでなぁ」

「だよね。だと思った。だから、来た」

「えぇい、問答無用ッ! ホーリースラッシュッ!」

「は? って、ちょっ! 聖剣カリバーン」

 ズバーン! 聖剣を振るう。力任せのフルスイングだ。 キリモミ状に吹っ飛んだ。これぞ峰打ち。  サヤはつけたまま殴ったからね。 勇者はむやみな殺傷はしないものだ。

「シンさま。首があらぬ方向にまがってます。大丈夫でしょうか?」

「うーん。みねうちだ。大丈夫、だと思う。たぶん」

 冷静に考えよう。状況分析だ。

 ボクは教会に戻ってきた。正装を着て。真っ白な勇者にふさわしい服だ。あいさつをして、門をくぐり抜ける。

 そしたら、いきなり男に襲われた。まるで意味不明だ。完全に正当防衛だ。 ボクがわるい要素、完全に、ゼロ!

「誤解をとかなきゃだな。いくぞ、マリア!」

「がってんです」

 前方からまた男だ。あわてて駆けつけている。はなせば分かるはず。 

「この男を殺ったのは、誰だ?」

「クロノです」

「シンさまです」

 ……。うーん。あれ?

「シン、おまえは生け捕りだ。この場でガキには死んでもらう」

 男は剣の柄をつかみ、前進。

「あっ、……これ、マリア、死ぬ感じですねっ」

  きらめく刃。 パシッ。ボクはむき身の刀身を片手で刃をつかむ。 つかめた。掴めて、当然。そのまま刀身を握り、砕く。 遅い。遅すぎる。 まるで完全に停止しているかのような遅さ。

「片手で、……剣を、砕いた、だと……貴様、人間じゃなっ!」

 聖剣カリバーン。横一文字。一刀両断。

「なめんな、ボクは勇者だ。ヒトの領域には、いない」

 弟子のひとりも守れず勇者は語れるものか。

「その。シンさま。ありがとう、ございます」

「ん? どうも」

「えっと。あまりよくない雰囲気です。トンズラしませんか?」

「その必要はない」

 不思議な感覚だ。妙な確信がある。ボクは正しい方行に進んでいる。ボクとマリアは階段をかけあがった。

 ここは教会本部の最上階だ。 ボクは成すべき事を成さねばならない。
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