電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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第4話『吸血姫なのじゃ』

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「おー。すげーいっぱいドロップアイテム手に入ったな」

 円卓の剣、円卓の盾、円卓の鎧。円卓の名を冠した武器の数々。

「未鑑定アイテムか。踏破者がいないというのはマジだったということだな」

 王都に帰ったらギルドに鑑定してもらうか。これだけあれば売ったら結構な金になりそうだ。

「地鳴り。つーことはそろっと転移門があらわれるということだな」

 スケルトンが囲んでいた円卓の中央から十字架がせり上がる。その十字架の中央にボロ布をまとった白髪の少女が。スケルトンが何らかの外法を使おうとしていたのだろう。

「むごいことを」

 ガリガリにやせ細っている。こんなになっても元は美しい少女だったということがわかる。ひどいことを。許せねぇな。

「せめて安らかに眠らせてあげないとだな」

 俺は十字架にはりつけにされた少女を抱えあげる。両腕にかすかに心臓の鼓動を感じる。

「まさか……この子、まだ息があるのか?!」

 ダメ元だがやってみる価値はある。この子の心臓はこのあたりか。

「雷術〈死者蘇生〉」

 心臓の鼓動が強まる。まだ、息がある。

「雷術〈魔力供給〉」

 少女にマナを流しこむ。

「かはっ……かはっ」

「しゃべれるか?」

「うむ。じゃが、わらわにはソナタが見えぬ、かろうじて声が聞こえるだけじゃ」

「だいじょうぶだ。俺が必ず王都に連れ帰り治療する」

「逃げるのじゃ……、ダークラウンズ達がこの部屋に戻ってくる前に」

「ダークラウンズ? なにものだ」

「悪神に魂を捧げることで人にはいたれぬ領域に至った、十二の王たちじゃ」

「なるほど。それは、ヤバいな。特徴を教えてくれるか?」

「漆黒の法衣をまとった十二のスケルトン。悪神に魂を捧げることでおぞましいガイコツになっておるのじゃが、その力は本物じゃ。わらわは、ヤツラに封じられたのじゃ」

「なるほど。そいつらさっき俺が倒したわ」

「なっ、……倒したじゃと?! ダークラウンズ十二体あわされば魔王にも匹敵する実力のバケモノじゃ、それを、一人で倒したと言うのじゃ?」

「倒した。跳んだりはねたり、元気なやつらだった。骨のくせに。これが戦利品だ」

 俺はアイテム袋から獲得したラウンズ装備を取りだし、見せる。瞳が白濁としている。視力がないようだ。近づいて、じっと確認していた。

「そなた、マジでラウンズをたった倒したのか!? えっ、マジで?!」

「魔獣だと思ってたけど王だったのか。倒して、まずかったりする?」

「まずいことなどあるものか! 逆じゃ、そなたは、世界を救った救世主なのじゃ!」

「はは、大げさだ。でも冗談を言う余裕はるようで少し安心したよ」

 勘違いだとは思う。それでも頭ごなしに否定するというのも大人げない。この子はまだ子供だ。

「まさか……ダークラウンズを滅ぼし、わらわの封印を解く者が現れるとは。これでわらわも安心して死ぬことができる」

「いや、死んじゃだめだろ」

「わらわは、永遠の渇きの宿命を持って生まれた吸血鬼の始祖じゃ、わらわを満たすには膨大な血が必要になるじゃろう。わらわはいやなのじゃ、じゃから封印される前も一切の血を飲んでいないのじゃな。その弱ったわらわを、ヤツラダークラウンズが……のじゃ」

「こんな女の子に12人で寄ってたかって。許せねぇな。ダークラウンズ」

「そなたは優しいお方じゃの」

 吸血鬼か、なら俺の血を分け与えるか。すこしでも空腹がおさまれば十分だ。

「俺の血を吸え。思う存分にだ。遠慮はいらない」

「命の恩人であり、救世主のそなたにそんなことはできないのじゃ。わらわの渇きは、おぬしの血を吸い尽くしても決して癒えるものではないのじゃ。さぁ、わらわを殺……して」

「とにかく、吸え!」

「はわわわわ、……のじゃ。そこまで言うなら、ちょっとだけいただくのじゃぁ~」

 八重歯がチクッと刺さる。なんとなくムズがゆい。悪いことをしている訳ではないのだが、背徳感があるな。

「うまっ!……なんと濃厚で芳醇な血じゃ……そなた、いやあるじ様は、神か。やはり神なのか?! これは……めっちゃうまなのじゃぁ~☆」

「光り輝いているな」
「これは生命の光のじゃ」

 銀髪に金目の八重歯の子。明らかに高貴な感じのオーラが凄い。さすがは、始祖吸血鬼。
 圧倒的な存在力を感じる。肌が、白い。絹のようだ。好きだ。

(ダメだろ……いかんいかん。落ち着け)

「わらわは、あるじ様なしには生きてはゆけぬからだになりそうじゃぁ!」

「はは、大げさな」

「って、視力も全盛期なみに復活しておるから、あるじ様の顔をよく見たら。顔も超タイプのイケメンなのじゃな! はわぁ~ん、しゅきなのじゃ。そこはかとなく深い闇を感じさせる、闇っぽい感じがクールの超絶イケメンなのじゃなぁ!! やったー☆」

 いやいや、さすがにそれは言いすぎだ、さすがに過大評価だ。どこかで聞いたことがある。女の子をピンチから救った男は王子様に見えるとかなんとか。

「気持ちはうれしいがおおげさだ」

「普通なものか! あるじ様よりクールなイケメンは、わらわは見たことないのじゃ! 空前絶後のカッコよさのじゃ! 見よ、その証拠にわらわの瞳にハートが浮かんでおるじゃろ」

「わ、マジじゃん。瞳にハートとか浮かぶんだな。吸血鬼すげぇな」

「あるじ様~! わらわをお妾さんのひとりに加えてほしいのじゃぁ~。あるじ様ほどの、超徳の高いイケメンはこの世界にはおるまい。ハーレムにくわえてほしーのじゃぁ☆」

「ハーレム? ないよ」

「ガーン、のじゃ。あるじ様はわらわのような卑しいものをハーレムに加えることはできない、そう申されるかっ! えぇい、そこまで言うなら奴隷でもかまわぬっ! なんなら……あるじ様のペットでもかまわぬのじゃ!」

「いや普通にペットにしたらダメだろ」

「ふんす! ふんす! のじゃ~!」

「恋にあこがれるお年頃なのは理解したけど、まだ君には早いよ。つーか、君に手をだしたら、衛兵とかに捕まっちゃうからね」

「たしかに、あるじ様はおそらく神、または超越者のひとりなのじゃろうな。1014歳のわらわなど、あるじ様にとっては童女のようなものなのじゃろう」

「ああ、14歳。俺の妹と同じくらいの歳だな」

「むむ? 違うぞ、わらわは1000と14歳じゃ」

「ご冗談を」

「論より証拠なのじゃな。すまぬ、ちとあるじ様のおでこを拝借」

 ちゅっ☆ おでこにキスされたのだが? 捕まらないだろうか。

「どうじゃ、わらわのステータス、見えてきたかえ?」

 頭にステータス情報が脳内に流れ込んでくる。おでこにちゅーする必要があるのか? 難易度高いな。ステータスは個人情報のかたまりだ。普通は開示することも、必要性もない。だからその方法を知らなかったのだが。ほう。なるほど。

「えーっと、始祖吸血鬼で、名前はルル、年齢は1014歳、処……」

「ふえぇ……、みっ、見ないでほしいのじゃぁ~! たしかにわらわは、経験豊富なイケメン、あるじ様とちがって、処女じゃ! じゃがの、あるじ様のためであれば、せーいっぱい真心をこめてご奉仕するにゃん☆、のっ、じゃぁ~!」

 やるな。にゃん、のじゃ、ダブル語尾使いか。さす吸血鬼のお姫様だな。

「おわかりいただけたじゃろうか?」
「いや、ぜんぜん」

「おかわりいただけるじゃろうか?」

「おかわりはご自由に」

 おなかがく~っと鳴いている。どうやらまだおなかがすいているようだ。

「ちゅーちゅー。はわぁぁあああ~……ヤバ、これ……規制しなければいけない、禁断の味なのじゃな。……からだがふわーとなるのじゃな。脳も、とろけるのじゃぁ~☆」

 そんなことを話しているあいだに転移門が起動。背中にルルを背負いながら転移門へ。王都への帰路につくのであった。
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