上 下
26 / 55

第26話『ねこぴょいレジェンド』

しおりを挟む
 ここは競ねこ場だ。ねこ娘たちが緑の芝生のうえを疾走ている。

「いけッ! そこだ、差せっ!」

「ねこさん、がんばってーっ!」

 手に汗にぎる熱いねこ娘同士の競い合い。少額でも身銭を切っているせいか熱が入る。

「「いっけぇー!!」」

 後続から一気に加速。次々と他のねこ娘を追い抜き、抜き去り、勝利! グレーターサムライとの戦いなみに熱い勝負であった。

 俺とステラは勝利を祝うためにハイタッチ。賭けた金額が少なかったらリターンもそれほどではないが、楽しかった。


  ◇  ◇  ◇


 ここは踊って歌ってたのしいねこぴょいが見れると評判の酒場。ねこ娘たちのレースに賭けていた人たちが集まるのでそれなりの広さの酒場だ。。

「では、勝利を祝して」

「「かんぱーいっ!!」」

 エールがキンキンに冷えてやがる。この村でもウルタールと同じように蜂蜜酒を勧められたが、やはり最初の一杯はエールだ。

「このお店、すごく活気あるね」

「うむ。随分と繁盛しているようだな」

 さすがに黄金の英雄亭ほどの広さではない。だが、村の規模を考えたら相当な大きさだ。この酒場は海産物がメインだ。

 新鮮なエビとかカニとかも出てくる。海産物は毎日、魚人が持ってきてくるらしくとても新鮮だ。料理も酒場の雰囲気にあわせてパンチが効いた物で食が進む。

 そうこうしているうちに、村の名物がはじまった。ねこぴょいだ。舞台の上で、キャットレースを競いあっていたねこ娘達がかわいらしい衣装をまとい、歌い、踊る。

「すごいね。かわいい衣装を着たねこさんが歌って踊ってるよっ」

「うむ。走って、踊って、歌う。なかなかに芸達者だな」

 走って、歌って、踊る。そんな生き方もアリだな。俺はそんなことを考えた。

「とことで、ステラ」

「なになに?」

「ねこ娘はギルドの情報にも無かったが、ステラは知っていたか?」

「うーん。私も聞いたことないねっ」

「そうか、世界は広いな」

 この世界で冒険者が必要とされている理由のひとつでもある。この世界は広く、未知の部分も大きい。それゆに冒険者にたくされた役割は大きい。

「そえにしてもこの村の男は働き者だな」

「そだね」

 この村では、男は働き、ねこ娘はねこぴょいをし、魚人は食料を持ってくる。誰一人損のないWin-Winな関係。完璧なエコシステムが成り立っている。

「どうやらねこ男はいないようだな」

「みたいね。女の子しか産まれない種族なのかなっ?」

「かもな。雪女みたいな感じかもな」

「雪女?」

「うむ。あくまでも噂だがな。雪山とかでそういうのが居るらしい」

 この村は人族だけではなく、エルフ、ドワーフ、ノーム、ポークル……。数え切れないほどの種族が共生している。

 グレーターサムライを倒せる強者のみが集っているせいか、ウルタール村の一件のような話も聞かない。

 この階層の男たちが迷宮攻略に本腰を入れたら飛躍的に攻略が加速しそうなのだが、まぁなさそうだ。

「たのしんでますにゃん?」

 *おおっと!*アッシュは背後からハグされた。ちなみにこのねこ娘は村を案内してくれた子だ。どうやら、ここで働いているようだ。

「あっ、ニャコト写本の司教さん。会いにきてくれたのかにゃんっ?」

「いや、偶然だ。それと、ナコト写本だ」

 このねこ娘。ボディータッチがすごい。ねこ娘はそういうスキンシップをする種族なのかもしれない。服越しに猫のノドのゴロゴロ音みたいなのが聞こえる。

「あっ、すみません。えっーと、ごめんなさい。いや、失礼しました」

 ねこ娘が俺の手首に巻かれたミサンガを見て詫びる。

(司教さん、さきに言ってくださいよっ!)

 ねこ娘が小声でささやく。

(なにを?)

(その手首の飾り。ポークルの女の子が大切な人に贈るものじゃないですか?)

(そのようだな。もちろん俺にとってもステラは同じように、大切な人だが)

(もー。このっこのっ! ノロケちゃってぇっ!)

 ヒジでつつかれた。

(どこまで行ってるんですか? Aですか? Bですか? まさかC!? どういう関係か教えてください!)

 なんだろう。まるで中学生女子トークみたいな流れになっている。ABCとか言われても、俺にはまったく分からないのだが。

(ステラとは同じ馬小屋でともに寝起きをする仲だ。それがどうかしたか?)

(きゃーっ!!/// 馬小屋で寝起き、このいけずっ! あやうくドロボウ猫になるとこでしたよっ!)

 二の腕に猫パンチをくらった。それなりにはやいジャブだ。女性とはいえ人パンチなのでそれなりに痛い。それにしても馬小屋はロマンチックだろうか?

(語尾がなくなっているようだが。大丈夫か?)

(あっ。にゃっはっははははは。にゃぁー☆)

 とりつくろってももう遅い。まあ誤魔化された感じはするが、どうやら語尾は種族固定ではないようだ。

「にゃっ。司教さんの彼女さんにもお酒お注ぎしますね」

「あっ……。私のっ、ジュースっ」

 ステラの飲みかけのジュースの色がエールっぽい色だったせいか勘違いをして注いでしまったようだ。

 混ざってしまったものは仕方ない。酒の飲めないステラの代わりに、俺が飲みほした。トロピカル味のエールだ。めっちゃ甘い。

「追加注文だ。一番高いジュースを2つ頼む」

 ねこ娘はグラスを2つ持って猫のようにキャッと去っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界でDP稼いでたら女神って呼ばれちゃった

まったりー
ファンタジー
主人公はゲームが大好きな35歳の女性。 ある日会社から長期の休みをもらい、いつものようにゲームをやっていた。 そう、いつものように何も食べず眠らず、そして気付かないうちに力尽きた、彼女はそれを後で知ります。 気付いたらダンジョンマスターの部屋にいてダンジョンを作るように水晶に言われやることが無いので作り始めます夢だからっと。 最初は渋々やっていました、ガチャからはちっさいモンスターや幼女しか出ないしと、しかし彼女は基本ゲームが好きなので製作ゲームと思って没頭して作ってしまいます。

妹、異世界にて最強

海鷂魚
ファンタジー
妹へ届いたのは、異世界へのチケット。 巻き込まれる兄と最強である妹の物語。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

処理中です...