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第24話『グレーターサムライ』
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ここは4階層。俺は迷宮攻略のついでの用を済ますため、サキュバスの住処に立ち寄った。
「約束の文を持ってきた」
「ご苦労。感謝します、ニンゲン」
「うむ。では」
「待ちなさい」
「なんだ」
「文のお礼に4階層に隠された秘密の部屋を教えてあげましょう」
またお礼か。このサキュバス、ずいぶんと気前が良いな。もしかしてこれは悪ニンジャの文を渡すたびに無限にお礼をもらえるパターンだろうか。
俺の好きな、とどモノ。というゲームでも、とあるNPCと会話をするたび古雑誌という換金アイテムを無限にもらえる、ありがたい裏技があった。
「秘密の部屋だと?」
「はい。ただし高い知恵を持つ者が踏み入れば、狂気に飲まれ二度と帰って来られなくなる、そんな伝承のある部屋です」
「そうか、それは残念だ」
「司教よ、知恵の能力値を教えてくれますか?」
「12だ」
「12、ですか。なら、まったく問題なさそうです。超セーフです」
サキュバスが半笑いになっている気がするのだが、気のせいだろうか。ここは変に反応した方が負けな感がある。だが、誤解は解かねばなるまい。手短に説明しよう。
「誤解があるようだ。知恵は、あえてだ。(中略)レア装備には能力値が低いほど(中略)例えばステラの(中略)筋力が低いほど(中略)だから、あえてだ」
「あえて、ですよね。私は信じていますよ。もちろん、あえてだと」
「そうか」
「くすくす。ところで司教、これが地図です。くれぐれも、あえて賢くならないように気をつけて下さい。ちなみに私の知恵は36です。なので、残念ですが踏み入ることができません。何が潜んでいるか分かりません。ご武運を祈ります。司教」
かくして俺はサキュバスから秘密の部屋の地図を手に入れた。
◇ ◇ ◇
「さっ、さっきのっ、気にしなくていいよっ」
「ふむ?」
「アッシュが賢いって分かっているからっ」
「ふむ」
褒められた。ちなみにいまの俺達のLVはこんな感じだ。ステラはLV20に到達した。
【ボーナスポイント(18)】
名前:ステラ
種族:ポークル
職業:盗賊
LV:20↑ (+3)
筋力:5
体力:35↑ (+8)
知恵:7
信仰:7
速さ:75↑ (+5)
幸運:75↑ (+5)
特殊:なし
装備:ボーパルナイフ
装備:スリング
装備:不思議なリボン
装備:ねこの指輪
装備:アミュレット
【ボーナスポイント(20)】
名前:アッシュ
種族:人間
職業:司教
LV:14↑ (+2)
筋力:38
体力:77↑ (+7)
知恵:12
信仰:88↑ (+13)
速さ:9
幸運:9
特殊:鑑定
装備:メイス
装備:バックラー
装備:ナコト写本〈呪〉
信仰88と体力77とゾロ目が2つもあって縁起が良い。今日は良いことがありそうな気がする。
「地図によると秘密の部屋はこの毒の沼地の先みたいだねっ」
「さっそくサキュバスから授かった加護の出番だな」
俺とステラは毒の沼地に踏み入る。
「すごい。本当に毒の沼地の上を歩けちゃうんだねっ」
「水面を歩く。これはなかなかに楽しいな」
湖の妖精の加護。かの偉大なアーサー王も授かったという超一級の加護だ。各国の英霊たちが聖杯をめぐり戦うゲームで、そう言っていた。
この加護との因果関係は不明だが、いまの俺にはほぼ同じことができる。水の上を歩くとかロマンだ。
加護なしで水面を歩くことができる人間は俺の知る限りは、パキの列海王くらいのものだ。
「ここが秘密の部屋か」
俺は部屋に踏み入る。
「アッシュ、あの甲冑から魔物の気配を感じるよっ」
部屋の奥に朱色のサムライ甲冑が鎮座していた。
「この邪悪な気、亡者。……かなりの手練か」
般若の面、朱色の鎧、腰にはカタナ。いかにも外国映画に登場してきそうなザ・サムライが立ちふさがる。般若の奥の瞳が怪しく光る。
「よくぞ来た強者よ。我が名はグレーターサムライ、ミプネ」
「グレーター……、サムライ」
「呵呵呵。この部屋に訪れたのは、貴様たちがはじめてよ。我はこの部屋に辿り着くことができる強者を長年待ち続けていたのだ。我が恐ろしいか。苦苦苦」
「うむ。だが、喋ったせいで怖くなくなった。無論、それを責めるつもりはないが」
「…………………………」
「すまない。いまさら黙られてももう遅い」
「GRAAAAAAA!!」
グレーターサムライが鞘からカタナを抜刀。カタナに気をまとい斬撃を放つ。展開していた障壁魔法プロテクションがサムライの剣気によって斬り裂かれる。
「カタナで気を飛ばすとは、なかなかやるな。さすがはグレーターサムライ」
どうやら腕はホンモノのようだ。侮れる相手ではない。ハードニングで強化したメイスでグレーターサムライのカタナの連撃を受ける。
「グレーターサムライ。なかなかの剣さばきだ。だが」
グレーターサムライの背後からステラのボーパルナイフによる蜂の一刺し。
「……NANIッ!? USHIROKARADATOッ!?」
アンデッドといえども不死身ではない。物理的に破壊されれば死ぬ。本当の意味で不死者と呼べる存在はヴァンパイアロードくらいのものだ。
「ONOREEEEッ!!」
「トドメだ。亡者よ。安らかに眠れ〈ディスペル〉」
「MIGOTONARIIッ!」
解呪魔法のディスペルでサムライは鎧ごと消滅した。死ぬ瞬間までキャラと威厳を守りきろうと努力したこの誇り高いラストサムライに、ある種の敬意の念を感じるのであった。
「約束の文を持ってきた」
「ご苦労。感謝します、ニンゲン」
「うむ。では」
「待ちなさい」
「なんだ」
「文のお礼に4階層に隠された秘密の部屋を教えてあげましょう」
またお礼か。このサキュバス、ずいぶんと気前が良いな。もしかしてこれは悪ニンジャの文を渡すたびに無限にお礼をもらえるパターンだろうか。
俺の好きな、とどモノ。というゲームでも、とあるNPCと会話をするたび古雑誌という換金アイテムを無限にもらえる、ありがたい裏技があった。
「秘密の部屋だと?」
「はい。ただし高い知恵を持つ者が踏み入れば、狂気に飲まれ二度と帰って来られなくなる、そんな伝承のある部屋です」
「そうか、それは残念だ」
「司教よ、知恵の能力値を教えてくれますか?」
「12だ」
「12、ですか。なら、まったく問題なさそうです。超セーフです」
サキュバスが半笑いになっている気がするのだが、気のせいだろうか。ここは変に反応した方が負けな感がある。だが、誤解は解かねばなるまい。手短に説明しよう。
「誤解があるようだ。知恵は、あえてだ。(中略)レア装備には能力値が低いほど(中略)例えばステラの(中略)筋力が低いほど(中略)だから、あえてだ」
「あえて、ですよね。私は信じていますよ。もちろん、あえてだと」
「そうか」
「くすくす。ところで司教、これが地図です。くれぐれも、あえて賢くならないように気をつけて下さい。ちなみに私の知恵は36です。なので、残念ですが踏み入ることができません。何が潜んでいるか分かりません。ご武運を祈ります。司教」
かくして俺はサキュバスから秘密の部屋の地図を手に入れた。
◇ ◇ ◇
「さっ、さっきのっ、気にしなくていいよっ」
「ふむ?」
「アッシュが賢いって分かっているからっ」
「ふむ」
褒められた。ちなみにいまの俺達のLVはこんな感じだ。ステラはLV20に到達した。
【ボーナスポイント(18)】
名前:ステラ
種族:ポークル
職業:盗賊
LV:20↑ (+3)
筋力:5
体力:35↑ (+8)
知恵:7
信仰:7
速さ:75↑ (+5)
幸運:75↑ (+5)
特殊:なし
装備:ボーパルナイフ
装備:スリング
装備:不思議なリボン
装備:ねこの指輪
装備:アミュレット
【ボーナスポイント(20)】
名前:アッシュ
種族:人間
職業:司教
LV:14↑ (+2)
筋力:38
体力:77↑ (+7)
知恵:12
信仰:88↑ (+13)
速さ:9
幸運:9
特殊:鑑定
装備:メイス
装備:バックラー
装備:ナコト写本〈呪〉
信仰88と体力77とゾロ目が2つもあって縁起が良い。今日は良いことがありそうな気がする。
「地図によると秘密の部屋はこの毒の沼地の先みたいだねっ」
「さっそくサキュバスから授かった加護の出番だな」
俺とステラは毒の沼地に踏み入る。
「すごい。本当に毒の沼地の上を歩けちゃうんだねっ」
「水面を歩く。これはなかなかに楽しいな」
湖の妖精の加護。かの偉大なアーサー王も授かったという超一級の加護だ。各国の英霊たちが聖杯をめぐり戦うゲームで、そう言っていた。
この加護との因果関係は不明だが、いまの俺にはほぼ同じことができる。水の上を歩くとかロマンだ。
加護なしで水面を歩くことができる人間は俺の知る限りは、パキの列海王くらいのものだ。
「ここが秘密の部屋か」
俺は部屋に踏み入る。
「アッシュ、あの甲冑から魔物の気配を感じるよっ」
部屋の奥に朱色のサムライ甲冑が鎮座していた。
「この邪悪な気、亡者。……かなりの手練か」
般若の面、朱色の鎧、腰にはカタナ。いかにも外国映画に登場してきそうなザ・サムライが立ちふさがる。般若の奥の瞳が怪しく光る。
「よくぞ来た強者よ。我が名はグレーターサムライ、ミプネ」
「グレーター……、サムライ」
「呵呵呵。この部屋に訪れたのは、貴様たちがはじめてよ。我はこの部屋に辿り着くことができる強者を長年待ち続けていたのだ。我が恐ろしいか。苦苦苦」
「うむ。だが、喋ったせいで怖くなくなった。無論、それを責めるつもりはないが」
「…………………………」
「すまない。いまさら黙られてももう遅い」
「GRAAAAAAA!!」
グレーターサムライが鞘からカタナを抜刀。カタナに気をまとい斬撃を放つ。展開していた障壁魔法プロテクションがサムライの剣気によって斬り裂かれる。
「カタナで気を飛ばすとは、なかなかやるな。さすがはグレーターサムライ」
どうやら腕はホンモノのようだ。侮れる相手ではない。ハードニングで強化したメイスでグレーターサムライのカタナの連撃を受ける。
「グレーターサムライ。なかなかの剣さばきだ。だが」
グレーターサムライの背後からステラのボーパルナイフによる蜂の一刺し。
「……NANIッ!? USHIROKARADATOッ!?」
アンデッドといえども不死身ではない。物理的に破壊されれば死ぬ。本当の意味で不死者と呼べる存在はヴァンパイアロードくらいのものだ。
「ONOREEEEッ!!」
「トドメだ。亡者よ。安らかに眠れ〈ディスペル〉」
「MIGOTONARIIッ!」
解呪魔法のディスペルでサムライは鎧ごと消滅した。死ぬ瞬間までキャラと威厳を守りきろうと努力したこの誇り高いラストサムライに、ある種の敬意の念を感じるのであった。
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