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第93話『最終階層:宣誓』
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『……スキルに触れる、まして殴るなんて常軌を逸しています』
「可能、不可能以前に人の行いではない。俺は、あれを到底看過できない」
『――そうね。わたしもその意見に同意するわ』
「ムー。アイツの周囲、360度取り囲むように武器を配置できるか。どうせ使い捨てる。だから武器は何でもいい。とにかく数だけ用意してくれ」
『可能よ。ユーリ。あのDV男を早く仕留めましょう』
「無論だ」
マキナを靴底で踏みつけたシン。
その周囲にあまたの武器が振り注ぐ。
シンを取り囲む武器の牢獄。
ユーリはロングソードの柄を掴みそのまま振るう。
「――邪魔しないでくれるかな。イマ、いい気分なんだよね。僕」
ユーリのロングソードを手刀で断ち切られた。
「――ならば、もう一撃」
「いひっ! 無駄無駄! そんなオモチャ一万本振るっても僕を傷つけることは不可能。僕はキミに自分から手出しをしない。キミの攻撃を全部受けてやるよ。ね? 僕は徒手空拳だけでキミの剣を全て切り伏せるから。ね? イマの僕の五体は全て聖剣なみの超キレ味って訳。凄いでしょ?……そして、僕はここから一歩も引かない。――もし一歩でも引かせたら、キミの勝ち。……一歩でも引いたら負けッ! 潔く負けを認め、僕ぁこの場で切腹するねッ! ハラキリだよッ! ハラキリッ! イケてるだろッ! 僕ぁね、その位覚悟のある男なんだよッ!こは――絶対の宣誓ッ!!……強すぎるから、ハンデ。ね?」
波打つ刃の剣の柄を掴む。
そして力任せにただ横薙ぎに振るう。
再度、シンに手刀で剣を断ち斬られる。
……だがその受けた手には血が。
「すまんな。貴様の繊細な柔肌を、俺のオモチャが傷つけてしまったようだな」
「ッ!!! シン・万物創造――神剣ケーリュケイオン」
「あきれるほど、根性がない野郎だ。早くも抜いたか――剣を」
「――うるせぇ……素手の相手に剣を振るうとか卑怯者ッ!」
シンはマキナを靴底で踏みつけたまま一歩も動かない。
聖剣でユーリの斬撃を切り払う。
「――――二十六本目。一万本まで少し、時間がかかりそうだ」
「…………キミもッ! いい加減、シツコイ野郎だな。シン・全智全能――剣神」
「まだ、一分も経っていない、が。もう疲れたのか。根性のない野郎だ」
剣神。厳密には職業《クラス》ではない。
剣技の才能を有する者が生涯を剣に捧げた末にたどり着く神域。
そう伝承に遺る。
――マキナのスキル改変で神域の職業《クラス》すら瞬時に到達可能。
「ハッ! キミの武器は全て破壊した。いい加減あきらめな? 実力の差だ。ね?」
『――あら、もう満腹かしら? おかわりよ。ポイントはまだまだあるわ』
シンの周りを無数の武器が再び取り込む。
まるで武器によって作られた、牢獄。
「……息が上がってるぜ。神剣使いの剣神さんよ。遊んでやるよ――パクリ野郎」
追加されたバスターソードの柄を掴み抜剣。
神速の剣でバターのように断ち切られる。
「神剣を持った剣神に勝てるはずないっしょッ? もうあきらめて。ね?」
「ツレないこと言うな。まだ、たった一分半だ」
――クレイモアを抜剣、叩きつける。
63本目の剣が切り払われる。
確かに今のシンは、強い。
「――おらッ」
「ムダムダ。……おっさんそういうのって何って言うか知ってる? 年寄りの死に水って言うんだよ? 勉強になった? つまり、キミに僕を倒すのはムリ。ね?」
死に水は、皮肉で言っているのではない。
単純に諺《ことわざ》を間違って覚えているだけ。
シンが唯一まともに完全に覚えた諺。
『江戸の仇を長崎で討つ』
……その唯一の諺すら常に誤用するのだが。
そもそも人の話を真面目に聞かない。
読んだ本も真面目に理解しようとしない。
雑に雰囲気で理解した気になるだけ。
「まぁ、俺に片手だけで秒殺されていた虫でも、仲間に強化してもらったスキルのおかげで少しは遊べる程度にマシになったようだな。感謝しろ――スキルの力に、な」
ユーリの挑発。
シンは歯を剥き出しにして激怒した。
「はぁッ?!! キミを圧倒しているのは僕なんですけどッ! 死ねッ!!!」
シンはいままでユーリの武器を切り払うだけだった。
……ただ単に自分の優位性を示すため。
力を誇示するため以外の理由はない。
だが、ユーリの挑発で激昂した。
自ら神速の剣を繰り出す。
行動予測済みのユーリは事前に半身を引いていた。
最小限の動きで神速の剣戟を避けた。
銃の弾丸は避けられない。
だが銃を放つ相手の事前の予測は可能。
筋肉の強張り、体の揺れ、呼吸、目線、全てヒント。
ユーリが剣神の神速に先んじたのはこの応用。
もっとも本当の剣神には通用しないだろう。
だが、シン相手には十分。
そしてシンが動いた一瞬。
スキが生じた。
ユーリはこの瞬間を狙っていた。
――地面に散らばった無数の鉄片を蹴り上げる。
そのためにあえて何十本も剣を断ち切らせた。
無数の鉄片がシンに向かって飛ぶ。
脊髄反射でシンは無意識に両腕で顔をかばう。
――腹部がガラ空きになる。
「――おらよ」
ロングソードの柄を掴み横薙ぎの一閃。
シンの腹部が横一文字に斬り裂かれた。
致命傷には至らなかった。
だが十分。なぜなら……。
「――引いたな。貴様の敗北だ。宣誓に従い、潔く腹を切れ。介錯は俺が務める」
「嫌だッ! 僕ぁ絶対にッ!! 負けてない!!………あアァあああッッッ!!! 全部……全部僕のスキルをハチャメチャにした……あのクソガキのせいだッ!!」
「最後まで見苦しい野郎だ。せめて散り際くらい潔く逝け。その横一文字は切り取り線だ。切腹するときに、使え。傷跡をなぞり自ら腹を、裂け。――黙って、死ね」
「可能、不可能以前に人の行いではない。俺は、あれを到底看過できない」
『――そうね。わたしもその意見に同意するわ』
「ムー。アイツの周囲、360度取り囲むように武器を配置できるか。どうせ使い捨てる。だから武器は何でもいい。とにかく数だけ用意してくれ」
『可能よ。ユーリ。あのDV男を早く仕留めましょう』
「無論だ」
マキナを靴底で踏みつけたシン。
その周囲にあまたの武器が振り注ぐ。
シンを取り囲む武器の牢獄。
ユーリはロングソードの柄を掴みそのまま振るう。
「――邪魔しないでくれるかな。イマ、いい気分なんだよね。僕」
ユーリのロングソードを手刀で断ち切られた。
「――ならば、もう一撃」
「いひっ! 無駄無駄! そんなオモチャ一万本振るっても僕を傷つけることは不可能。僕はキミに自分から手出しをしない。キミの攻撃を全部受けてやるよ。ね? 僕は徒手空拳だけでキミの剣を全て切り伏せるから。ね? イマの僕の五体は全て聖剣なみの超キレ味って訳。凄いでしょ?……そして、僕はここから一歩も引かない。――もし一歩でも引かせたら、キミの勝ち。……一歩でも引いたら負けッ! 潔く負けを認め、僕ぁこの場で切腹するねッ! ハラキリだよッ! ハラキリッ! イケてるだろッ! 僕ぁね、その位覚悟のある男なんだよッ!こは――絶対の宣誓ッ!!……強すぎるから、ハンデ。ね?」
波打つ刃の剣の柄を掴む。
そして力任せにただ横薙ぎに振るう。
再度、シンに手刀で剣を断ち斬られる。
……だがその受けた手には血が。
「すまんな。貴様の繊細な柔肌を、俺のオモチャが傷つけてしまったようだな」
「ッ!!! シン・万物創造――神剣ケーリュケイオン」
「あきれるほど、根性がない野郎だ。早くも抜いたか――剣を」
「――うるせぇ……素手の相手に剣を振るうとか卑怯者ッ!」
シンはマキナを靴底で踏みつけたまま一歩も動かない。
聖剣でユーリの斬撃を切り払う。
「――――二十六本目。一万本まで少し、時間がかかりそうだ」
「…………キミもッ! いい加減、シツコイ野郎だな。シン・全智全能――剣神」
「まだ、一分も経っていない、が。もう疲れたのか。根性のない野郎だ」
剣神。厳密には職業《クラス》ではない。
剣技の才能を有する者が生涯を剣に捧げた末にたどり着く神域。
そう伝承に遺る。
――マキナのスキル改変で神域の職業《クラス》すら瞬時に到達可能。
「ハッ! キミの武器は全て破壊した。いい加減あきらめな? 実力の差だ。ね?」
『――あら、もう満腹かしら? おかわりよ。ポイントはまだまだあるわ』
シンの周りを無数の武器が再び取り込む。
まるで武器によって作られた、牢獄。
「……息が上がってるぜ。神剣使いの剣神さんよ。遊んでやるよ――パクリ野郎」
追加されたバスターソードの柄を掴み抜剣。
神速の剣でバターのように断ち切られる。
「神剣を持った剣神に勝てるはずないっしょッ? もうあきらめて。ね?」
「ツレないこと言うな。まだ、たった一分半だ」
――クレイモアを抜剣、叩きつける。
63本目の剣が切り払われる。
確かに今のシンは、強い。
「――おらッ」
「ムダムダ。……おっさんそういうのって何って言うか知ってる? 年寄りの死に水って言うんだよ? 勉強になった? つまり、キミに僕を倒すのはムリ。ね?」
死に水は、皮肉で言っているのではない。
単純に諺《ことわざ》を間違って覚えているだけ。
シンが唯一まともに完全に覚えた諺。
『江戸の仇を長崎で討つ』
……その唯一の諺すら常に誤用するのだが。
そもそも人の話を真面目に聞かない。
読んだ本も真面目に理解しようとしない。
雑に雰囲気で理解した気になるだけ。
「まぁ、俺に片手だけで秒殺されていた虫でも、仲間に強化してもらったスキルのおかげで少しは遊べる程度にマシになったようだな。感謝しろ――スキルの力に、な」
ユーリの挑発。
シンは歯を剥き出しにして激怒した。
「はぁッ?!! キミを圧倒しているのは僕なんですけどッ! 死ねッ!!!」
シンはいままでユーリの武器を切り払うだけだった。
……ただ単に自分の優位性を示すため。
力を誇示するため以外の理由はない。
だが、ユーリの挑発で激昂した。
自ら神速の剣を繰り出す。
行動予測済みのユーリは事前に半身を引いていた。
最小限の動きで神速の剣戟を避けた。
銃の弾丸は避けられない。
だが銃を放つ相手の事前の予測は可能。
筋肉の強張り、体の揺れ、呼吸、目線、全てヒント。
ユーリが剣神の神速に先んじたのはこの応用。
もっとも本当の剣神には通用しないだろう。
だが、シン相手には十分。
そしてシンが動いた一瞬。
スキが生じた。
ユーリはこの瞬間を狙っていた。
――地面に散らばった無数の鉄片を蹴り上げる。
そのためにあえて何十本も剣を断ち切らせた。
無数の鉄片がシンに向かって飛ぶ。
脊髄反射でシンは無意識に両腕で顔をかばう。
――腹部がガラ空きになる。
「――おらよ」
ロングソードの柄を掴み横薙ぎの一閃。
シンの腹部が横一文字に斬り裂かれた。
致命傷には至らなかった。
だが十分。なぜなら……。
「――引いたな。貴様の敗北だ。宣誓に従い、潔く腹を切れ。介錯は俺が務める」
「嫌だッ! 僕ぁ絶対にッ!! 負けてない!!………あアァあああッッッ!!! 全部……全部僕のスキルをハチャメチャにした……あのクソガキのせいだッ!!」
「最後まで見苦しい野郎だ。せめて散り際くらい潔く逝け。その横一文字は切り取り線だ。切腹するときに、使え。傷跡をなぞり自ら腹を、裂け。――黙って、死ね」
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