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第82話『第二階層:音楽』
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シンは目を覚ます……。
ここは……さっきとは違うフロア。
第二階層、音楽室。
担当講師はエッジ。
この授業部屋《クラスルーム》の特徴は、暗闇。
手元すら見ることのできない完全な闇。
この部屋で視覚は役に立たない。
遮蔽物のないひたすら広いだけのフロア。
マルマロのフロアのような大掛かりな仕掛けもない。
……奥ゆかしいほど、ささやかな手品があるだけ。
「暗ぃ、真っ暗で、……何も見えねぇ」
遮蔽物は何もない。だから触覚に頼れない。
鼻孔《びこう》に、木酸のような独特な酸っぱいにおい。
……フロア全体から漂っている。
――頼りになるのは聴覚だけ。
どこからか声が聞こえた。
「第二階層――音、楽、才ンガ、勹ゥ」
おそらくはエッジの声。
完全なる暗闇、姿は見えない。
万物創造《エディタモード》で剣を瞬時に生成。
シンは、その声の方に向かって駆ける。
靴底にヌメリ。
……気がついたら足を取られていた。
シンは盛大に尻もちをつく。
チクリと痛みを感じた。
「いってぇッ、僕を無様な目に……クソがぁッ!」
その雄叫びへの反応はない。何も。
床は石畳に粘液をぶち撒けたような状態。
慎重に歩かないと足を取られる。
「無視か? ザッけんな! 抉り潰し殺し抜くッ!」
小動物か何かの鳴き声が聴こえた。
「 ……――キキキキキキ」
「みーつけたぁ! 先手必勝! ばいばーい!」
万物創造《エディタモード》で弓を生成。
全智全能《デバッグモード》の補正により超精度で矢が放たれる。
矢は音源の元を貫いた。
シンは拳を掲げ勝利のダンスを躍る。
「神の裁きッ! いひっ! 思い知ったぁ?」
反応はない。
そのことにシンは疑問を持たなかった。
なぜなら、音源を殺したはずだから。
死人に口なし。
「 ……――リリリリリ――…… 」
それは、小鳥の囀《さえず》るような鳴き声だった。
万物創造《エディタモード》で拳銃を生成。
全智全能《デバッグモード》の補正で弾丸が放たれる。
弾丸は音源を射殺した。
「チチチチチ――…… 」
「はぁ……? なんなんだよ……ななななんだよ」
万物創造《エディタモード》で投擲剣を生成。
全智全能《デバッグモード》の補正で正確に刺し貫く。
短剣は音源を刺殺した……はず。
「おい! おい! 答えろッ! おいッ!!!」
顔面に激痛。見えない何者かからの攻撃。
攻撃の気配は……まったくしなかった。
殺意も感じなかった。
「………痛ぇ……ザケンな!! 僕と、闘え!」
シンは、誤解をしている。
ここに居るのは生徒と教師。
最初から戦闘は行われていない。
ここは、授業教室《クラスルーム》。
シンのために行われる特別な授業。
万物創造《エディタモード》で2本のナイフを生成。
左右の手に持ち。未知の敵からの襲撃に備える。
右腕に鋭い痛み。
……血があふれ出る。
「……痛い……痛すぎてぇ……死ぬぅ」
攻撃した犯人の姿は未だに見えない。
音なき影の暗殺者。
不殺《ころさず》の暗殺者エッジ。
確かに彼の得意分野。
……だが、それにしてもこれは。
あまりに気配が無さすぎる。
「あへっ?……腸が、超、出てん……じゃん?」
また、何者かに斬られていた。
背中を斬られ、顔を斬られ。
全身を切り刻まれていた。
「……やめッ……やめろォッッ!!」
首が斬り落とされた。
シンの首が地面を転がる。
「 ……――テケリリ――…… 」
最後に聞いたナニかの鳴き声。
……そこで失血により意識を失った。
ここは……さっきとは違うフロア。
第二階層、音楽室。
担当講師はエッジ。
この授業部屋《クラスルーム》の特徴は、暗闇。
手元すら見ることのできない完全な闇。
この部屋で視覚は役に立たない。
遮蔽物のないひたすら広いだけのフロア。
マルマロのフロアのような大掛かりな仕掛けもない。
……奥ゆかしいほど、ささやかな手品があるだけ。
「暗ぃ、真っ暗で、……何も見えねぇ」
遮蔽物は何もない。だから触覚に頼れない。
鼻孔《びこう》に、木酸のような独特な酸っぱいにおい。
……フロア全体から漂っている。
――頼りになるのは聴覚だけ。
どこからか声が聞こえた。
「第二階層――音、楽、才ンガ、勹ゥ」
おそらくはエッジの声。
完全なる暗闇、姿は見えない。
万物創造《エディタモード》で剣を瞬時に生成。
シンは、その声の方に向かって駆ける。
靴底にヌメリ。
……気がついたら足を取られていた。
シンは盛大に尻もちをつく。
チクリと痛みを感じた。
「いってぇッ、僕を無様な目に……クソがぁッ!」
その雄叫びへの反応はない。何も。
床は石畳に粘液をぶち撒けたような状態。
慎重に歩かないと足を取られる。
「無視か? ザッけんな! 抉り潰し殺し抜くッ!」
小動物か何かの鳴き声が聴こえた。
「 ……――キキキキキキ」
「みーつけたぁ! 先手必勝! ばいばーい!」
万物創造《エディタモード》で弓を生成。
全智全能《デバッグモード》の補正により超精度で矢が放たれる。
矢は音源の元を貫いた。
シンは拳を掲げ勝利のダンスを躍る。
「神の裁きッ! いひっ! 思い知ったぁ?」
反応はない。
そのことにシンは疑問を持たなかった。
なぜなら、音源を殺したはずだから。
死人に口なし。
「 ……――リリリリリ――…… 」
それは、小鳥の囀《さえず》るような鳴き声だった。
万物創造《エディタモード》で拳銃を生成。
全智全能《デバッグモード》の補正で弾丸が放たれる。
弾丸は音源を射殺した。
「チチチチチ――…… 」
「はぁ……? なんなんだよ……ななななんだよ」
万物創造《エディタモード》で投擲剣を生成。
全智全能《デバッグモード》の補正で正確に刺し貫く。
短剣は音源を刺殺した……はず。
「おい! おい! 答えろッ! おいッ!!!」
顔面に激痛。見えない何者かからの攻撃。
攻撃の気配は……まったくしなかった。
殺意も感じなかった。
「………痛ぇ……ザケンな!! 僕と、闘え!」
シンは、誤解をしている。
ここに居るのは生徒と教師。
最初から戦闘は行われていない。
ここは、授業教室《クラスルーム》。
シンのために行われる特別な授業。
万物創造《エディタモード》で2本のナイフを生成。
左右の手に持ち。未知の敵からの襲撃に備える。
右腕に鋭い痛み。
……血があふれ出る。
「……痛い……痛すぎてぇ……死ぬぅ」
攻撃した犯人の姿は未だに見えない。
音なき影の暗殺者。
不殺《ころさず》の暗殺者エッジ。
確かに彼の得意分野。
……だが、それにしてもこれは。
あまりに気配が無さすぎる。
「あへっ?……腸が、超、出てん……じゃん?」
また、何者かに斬られていた。
背中を斬られ、顔を斬られ。
全身を切り刻まれていた。
「……やめッ……やめろォッッ!!」
首が斬り落とされた。
シンの首が地面を転がる。
「 ……――テケリリ――…… 」
最後に聞いたナニかの鳴き声。
……そこで失血により意識を失った。
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