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第23話『銀髪の少女』
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彼女は新しくこの村に加わった住人。
王都でスカウトした女の子だ。
身長はルナと同じくらい。
年齢はおそらくユエと同じくらいだろう。
「とてもかわいらしい子ですね」
「だろ? 冒険者以外の客もぼちぼち増えて来たしなぁ……そろっと、看板娘が必要な頃合いだと思ったんだよ。そんで、俺がスカウトしたっちゅーわけ」
銀色の髪に、ゴスロリ風の服をまとった少女。
どことなく神秘的な雰囲気を感じさせる。
彼女が着ている服は、裁縫が得意なユエが作った。
たいした材料もないのによく作れるもんだと感心する。
「へ~。やるじゃないですか! ユーリさん、王都で美少女をゲットするとは、なかなかヤりますね!」
「まぁ、俺にかかればザッとこんなもんってもんよ。どやっ!」
「ユーリさん……、ルナちゃんみたいな分かりやすいドヤ顔になってますよ」
「マジで? 俺そんな顔してるか?」
俺は、銀髪の少女に話を振ってみる。
小さくこくりと頷いていた。
「ルナちゃん、ユエちゃんも看板娘じゃないですか?」
「ルナは看板娘ってタマじゃねーだろ。それに、ユエは男だ」
「男が看板娘でも良いじゃないですか。需要ありますよ?」
「マジか? ちょっとメモしとこ」
銀色の髪の西洋人形のような少女。
その肌は、透き通るほど白い。
ユエが全身の肌が隠れる衣服を作ったのは考えあってのこと。
同情や哀れみの視線が時に人を傷つけることを知っているのだ。
ユエは、決してその意図は、言葉にはしないが。
彼女の体のあちこちに焼きごてや、肉が抉られた傷痕が残っている。
回復の泉での複数回の治療で彼女の表面的な傷は治った。
だが、深く刻まれた傷痕を治すには、至らなかった。
「はじめまして。私の名前はアルテミス。よろしくね」
「ぁ…ぅ………テ……ミス」
「テミスちゃん、それがあなたの名前?」
彼女はこくりと小さく頷く。
おそらくアルテの言葉を繰り返しただけだろう。
彼女が言葉を話すことは初めてのことだった。
しばらくは、彼女をテミスと呼ぼう。
必要があれば、自分から本当の名を語るだろう。
「テミスはな、ちょっとだけ、恥ずかしがり屋なんだ。まぁ、無口っ子キャラつー感じだな。嫌っているわけではないので、気にしないでいい」
「もちろん、わかっています。テミスちゃん、よろしくね」
「……ぅ……なの」
テミスはアルテに向かって、頭を小さく下げる。
少しずつ言葉を話そうとしているようだ。
*
俺がキャラバンを壊滅させた後の事を少し話したい。
彼女、テミスの出会いを説明するために必要だからだ。
囚われた者たちは中央ギルドで保護され、解放された。
帰る場所がある者は、家族や恋人の元へ。
帰る場所のない幼い子らは、王都の孤児院へ。
ギルドで保護されていた人々はあるべきところに帰った。
そんな中、銀色の髪の少女が、一人、取り残された。
テミスは自身の出自を話す事ができなかった。
言葉を話さなかったのである。
ギルド職員は少女は喋る事ができないのだと思っていた。
言葉での意志の疎通ができない。
だから、労働力として期待することができない。
彼女を引き取ろうとする者がいなかった最たる理由だ。
ギルドに保護されているのは今や、彼女だけ。
俺は少女に向け、言葉をかける。
「いまさ、絶賛従業員募集中なんだけど、一緒に働いてみない?」
……なんとも冴えない言葉の掛け方である。
というか、微妙にナンパっぽくも聞こえなくもない。
あまりにうさん臭すぎる。
もう少しなんか気の利いた言葉を言えたらと頭をかいた。
そんなイケてない言葉に、彼女はこくりと頷いた。
「元廃村で住み込みで働くことになるけど、それでも良いか?」
少女は、こくりと小さく頷いた。
「それなら、決まりだ。俺はユーリ。これからよろしくな」
言葉はなかった。
ただ俺の瞳をみつめ、手をまっすぐ差し伸べていた。
少女のか細い手を取り、掴み、その手を握るのであった。
王都でスカウトした女の子だ。
身長はルナと同じくらい。
年齢はおそらくユエと同じくらいだろう。
「とてもかわいらしい子ですね」
「だろ? 冒険者以外の客もぼちぼち増えて来たしなぁ……そろっと、看板娘が必要な頃合いだと思ったんだよ。そんで、俺がスカウトしたっちゅーわけ」
銀色の髪に、ゴスロリ風の服をまとった少女。
どことなく神秘的な雰囲気を感じさせる。
彼女が着ている服は、裁縫が得意なユエが作った。
たいした材料もないのによく作れるもんだと感心する。
「へ~。やるじゃないですか! ユーリさん、王都で美少女をゲットするとは、なかなかヤりますね!」
「まぁ、俺にかかればザッとこんなもんってもんよ。どやっ!」
「ユーリさん……、ルナちゃんみたいな分かりやすいドヤ顔になってますよ」
「マジで? 俺そんな顔してるか?」
俺は、銀髪の少女に話を振ってみる。
小さくこくりと頷いていた。
「ルナちゃん、ユエちゃんも看板娘じゃないですか?」
「ルナは看板娘ってタマじゃねーだろ。それに、ユエは男だ」
「男が看板娘でも良いじゃないですか。需要ありますよ?」
「マジか? ちょっとメモしとこ」
銀色の髪の西洋人形のような少女。
その肌は、透き通るほど白い。
ユエが全身の肌が隠れる衣服を作ったのは考えあってのこと。
同情や哀れみの視線が時に人を傷つけることを知っているのだ。
ユエは、決してその意図は、言葉にはしないが。
彼女の体のあちこちに焼きごてや、肉が抉られた傷痕が残っている。
回復の泉での複数回の治療で彼女の表面的な傷は治った。
だが、深く刻まれた傷痕を治すには、至らなかった。
「はじめまして。私の名前はアルテミス。よろしくね」
「ぁ…ぅ………テ……ミス」
「テミスちゃん、それがあなたの名前?」
彼女はこくりと小さく頷く。
おそらくアルテの言葉を繰り返しただけだろう。
彼女が言葉を話すことは初めてのことだった。
しばらくは、彼女をテミスと呼ぼう。
必要があれば、自分から本当の名を語るだろう。
「テミスはな、ちょっとだけ、恥ずかしがり屋なんだ。まぁ、無口っ子キャラつー感じだな。嫌っているわけではないので、気にしないでいい」
「もちろん、わかっています。テミスちゃん、よろしくね」
「……ぅ……なの」
テミスはアルテに向かって、頭を小さく下げる。
少しずつ言葉を話そうとしているようだ。
*
俺がキャラバンを壊滅させた後の事を少し話したい。
彼女、テミスの出会いを説明するために必要だからだ。
囚われた者たちは中央ギルドで保護され、解放された。
帰る場所がある者は、家族や恋人の元へ。
帰る場所のない幼い子らは、王都の孤児院へ。
ギルドで保護されていた人々はあるべきところに帰った。
そんな中、銀色の髪の少女が、一人、取り残された。
テミスは自身の出自を話す事ができなかった。
言葉を話さなかったのである。
ギルド職員は少女は喋る事ができないのだと思っていた。
言葉での意志の疎通ができない。
だから、労働力として期待することができない。
彼女を引き取ろうとする者がいなかった最たる理由だ。
ギルドに保護されているのは今や、彼女だけ。
俺は少女に向け、言葉をかける。
「いまさ、絶賛従業員募集中なんだけど、一緒に働いてみない?」
……なんとも冴えない言葉の掛け方である。
というか、微妙にナンパっぽくも聞こえなくもない。
あまりにうさん臭すぎる。
もう少しなんか気の利いた言葉を言えたらと頭をかいた。
そんなイケてない言葉に、彼女はこくりと頷いた。
「元廃村で住み込みで働くことになるけど、それでも良いか?」
少女は、こくりと小さく頷いた。
「それなら、決まりだ。俺はユーリ。これからよろしくな」
言葉はなかった。
ただ俺の瞳をみつめ、手をまっすぐ差し伸べていた。
少女のか細い手を取り、掴み、その手を握るのであった。
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