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第12話『マヨネーズよりケチャップ』
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「そうだ。ケチャップを作ろう」
まるで何かの天啓を受けた
かのようにサトシは一人呟いた。
サトシは異世界で
マヨネーズだとパクリだと
思われるのでは?
という自意識過剰かつ
とてつもなく安直な発想で
ケッチャップを作ろうと
思い立つのであった。
「トマトよしっ! 塩よしっ!
砂糖よしっ! 玉ねぎよしっ!」
現場猫のポーズを取りながら
指差し確認をするサトシ。
「旦那さまよ。今日は何の
料理を作ろうとしておるのじゃ?」
「今日、俺が作ろうとしているのは
料理じゃなくて調味料なんだ」
「ほう。香辛料のようなものかの?」
「まあそんな感じだ。この村の名産品
を作るためにケチャップという調味料
をいま作ろうとしているところだ」
「その"けちやぁつぷ"というのは
どのような調味料なのじゃ?」
「トマトと塩と砂糖と玉ねぎを
鍋にブチ込んで適当に
加熱しながら混ぜて作る調味料だ。
これは、マヨネーズなどと
くらべて非常に画期的かつ
オリジナリティーの高い調味料だ!
これはこの世界の料理文明レベルを
一段落あげるに違いない!!」
「はて?」
実際は既にケチャップや醤油を
料理チートとして扱っている
異世界転生小説はあるものの、
サトシの異世界転生ファンタジー
の知識はほとんど深夜アニメ作品
からきているので、しらなかったのである。
「……ケチャップ。そう、……あえて
異世界でマヨネーズではなく
ケチャップを作る、独創性と創造性
あふれる異端児! ひとつ上の男、
その名もサトシ――43歳。
自分自身のオリジナリティーの
高さに驚愕を禁じえないぜっ!!」
「……? 今日の旦那さまは
いつもに増して随分と
ご機嫌じゃのう。はてはて」
ときおり発症する旦那の奇行
は既に慣れっこになっている
のであった。
「ところで、妾もなにか
サトシの手伝い
できることはあるかの?」
「そうだな。もし今手が空いていたら
ミミには、この鍋のケチャップを
加熱しながらかき混ぜていて欲しい
ちょっと根気がいる作業だけど
お願いしても構わないか?」
「ミミに任せるのじゃ!」
サトシはトマトをすり潰して
塩と砂糖と細かく刻んだ
玉ねぎを混ぜたペースト状に
したボウルをミミに渡す。
ミミはズンドウ鍋に火を
付けてゆっくりと
シャモジでかき混ぜる。
「まぜまぜのじゃぁ~」
(俺の妻はかわいいな)
「ところで、この調味料は
どこの国の名産品なのじゃ?」
「俺の地元、東の最果ての国で
有名な調味料なんだ」
「おお、そういえば、
お主は世界地図にも描かれない
極東の最果ての国の出身
だったのじゃな」
(別にミミに対して俺が転生者
であることを隠してはいないし、
実際、一度は異世界転生者だって
話たけど、俺の妄想設定だと
思われたのか若干ミミの顔が
引きつってたから、
やはり無難に極東出身ということに
した方がよいのだろうなぁ。
まあ、長く結婚生活していれば
そのうち話す機会もあるだろう!)
「極東の最果ての島というのは
凄いのじゃな」
「ははっ! まあ、極東の最果ての国の
国民の9割以上が奴隷労働者という
国だけどな! そしてもちろん
俺も奴隷の出身だ!
国民の中には暗黒企業の中で社畜として
扱われて死ぬまでこき使われて
過労で死ぬ奴も多かった。
ミミが想像するようなハッピーな
国ではなかったから、あまり期待
しないようにな」
「人は働き過ぎると死ぬのじゃな……。
なにごともほどほどが一番なのじゃ」
「そうだな。よく寝て、よく食べて、
よく働いて、健康に過ごす!
これがスローライフの醍醐味で
あり、俺の理想の生活だ」
「なるほど。"すろおらいふ"とは
素晴らしいものなのじゃな。
それにしても、旦那さまは元は
奴隷じゃったのじゃな。
それは、とてもとても
苦労したのじゃな。よしよしなのじゃ」
ミミと身長差は50cmほど
あるので背伸びをしながら頭を
撫でようとする妻の要望に
応えるために、サトシはひざまずく。
「ところでサトシは、この調味料の
レシピの知識は奴隷時代に
覚えたのかの?」
「そうだ。極東の奴隷仲間の
中では人気の調味料だったから、
奴隷仲間に教えてもらって
そこで覚えたんだ」
もちろん嘘である。実際は暇つぶしに
You ○ubeで見た"絶品! 自家製
トマトケチャップの作り方"
動画で得た知識である。
基本的に、サトシの知識は
ゲーム、アニメ、漫画、You ○ube
鉄腕ダッ○ュなどで見た
うろ覚えの知識がほとんどである。
「それにしても、極東の国からは
どうやってこの大陸に
やってきたのじゃ?
海が荒れていてとても船で
行けるところではないと
聞いているのじゃが」
「船できた。めっちゃ漕いだ
腕が筋肉痛でヤバかった」
この世界はサトシの元の世界、
地球のような球体ではなく平面で
地続きの世界、つまり球体説
ではなく平面説の世界である。
「よく生きて辿りつけたのぅ。
まっ。妾の旦那さまであれば
その位のことは楽勝だったの
かもしれないのじゃが」
「土属性に不可能はない!」
「土属性は最強なのじゃぁ~!」
(っ……好きだ)
実際は海の上では土属性は
何もできないのであるが、
あくまで勢いで言った発言である。
サトシは、ミミがかき混ぜている
ずんどう鍋の中身を見る。
「おっと、そろそろ良い感じで
とろとろになってきたな。
んじゃ。それを、
このガラス瓶に入れてくれるか?」
「いれるのじゃぁ~」
ドロドロのトマトケチャップが
ガラス瓶のなかを真っ赤に満たす。
「ミミ。手伝いありがとうな。
それじゃあ、今日は鶏魔獣の肉と
卵と米を使った、オムライスを作るぞー!」
「楽しみなのじゃぁ~!」
サトシは、細切れにした鶏肉と
刻み玉ねぎを炒めたあとに
冷や飯とケチャップを混ぜ合わせ
チャチャッと炒めて更によそる。
そのあとに、鶏魔獣の卵で
作ったオムライスの上に乗せる
卵の薄焼きを作り、チキンライス
の上に乗せる。
最後の仕上げに、
赤いケチャップで"世界樹"を
意識して描いた木の絵が
黄色いオムライスを鮮やかに彩る。
(やっぱ。オムライスといったら
お絵かきだよなっ! 死ぬ前に
一度くらいはメイドさんが落書き
したオムライスを食べたかった
ものだぜっ!)
ミミは嬉しそうにすごい勢いで
スプーンを動かして口に運び続ける。
(ミミは口が小さいのに勢いよく
食べるから、よくむせるんだよな。
肉とかの固形の具材はは細かく
切るのが美味しく食べてもらう
コツなんだよな)
「気に入ってくれたか?」
「アツアツ、うまうまなのじゃぁ~」
「はは。そりゃ良かったぜ。
気にいってくれたなら
今後も作ろうかね」
「嬉しいのじゃ!」
「まぁ、正直半分以上は食材の
旨さのおかげだけどなっ!
ここで収穫できるトマトとか
玉ねぎとかマジでヤバいほど
美味いからな! さすがはミミが
くれた種から育った野菜だよ」
「移住したドワーフたちも
随分とこの町の料理を気に入って
くれているようで嬉しいのじゃ!」
「そういや、移住してきた
ドワーフのおっさん、というか
そもそもぶっちゃけ性別問わずに
全員おっさんにしか見えないの
だが……に、
ブドウを栽培できたら酒が造れるから、
検討して欲しいって希望が出てたん
だったけな。ミミはブドウの種
とかも造れるのか?」
「ドワーフは酒を最も愛する種族
じゃからの。それじゃあブドウの
種を産んでみようかの。
旦那さまに頭をナデナデして
欲しいのじゃ」
サトシはミミを抱えあげて
お姫様抱っこをした状態で
頭をナデナデする。
「うっ、産まれるのじゃぁ~!」
ポンポンッ、というコミカル
な音のあとにブドウ色の
種がミミの両手
いっぱいに産まれていた。
(そういや、ブドウの種の色って
ブドウ色だったけ? いや、まあ。
ここは異世界だからな!)
「ミミ。ありがとうな。あとで種を
植えてくる。ドワーフたちも
めっちゃ喜んでくれると思うぞ。
まぁ、お酒の作り方は分からない
から、その辺りは移住してきた
ドワーフに任せちゃおうか」
「名案なのじゃぁ~!」
ミミはオムライスが美味しかったから
随分とご機嫌だったのか普段よりも
夜が激しくサトシのHPが99999
からHP3500まで削れていたのであった。
=================
【辺境村の開拓状況】
◆住民
土属性:1名
世界樹:1名
ドワーフ:35名
ゴーレム:たくさん
◇特産品
ケチャップ ←New!
まるで何かの天啓を受けた
かのようにサトシは一人呟いた。
サトシは異世界で
マヨネーズだとパクリだと
思われるのでは?
という自意識過剰かつ
とてつもなく安直な発想で
ケッチャップを作ろうと
思い立つのであった。
「トマトよしっ! 塩よしっ!
砂糖よしっ! 玉ねぎよしっ!」
現場猫のポーズを取りながら
指差し確認をするサトシ。
「旦那さまよ。今日は何の
料理を作ろうとしておるのじゃ?」
「今日、俺が作ろうとしているのは
料理じゃなくて調味料なんだ」
「ほう。香辛料のようなものかの?」
「まあそんな感じだ。この村の名産品
を作るためにケチャップという調味料
をいま作ろうとしているところだ」
「その"けちやぁつぷ"というのは
どのような調味料なのじゃ?」
「トマトと塩と砂糖と玉ねぎを
鍋にブチ込んで適当に
加熱しながら混ぜて作る調味料だ。
これは、マヨネーズなどと
くらべて非常に画期的かつ
オリジナリティーの高い調味料だ!
これはこの世界の料理文明レベルを
一段落あげるに違いない!!」
「はて?」
実際は既にケチャップや醤油を
料理チートとして扱っている
異世界転生小説はあるものの、
サトシの異世界転生ファンタジー
の知識はほとんど深夜アニメ作品
からきているので、しらなかったのである。
「……ケチャップ。そう、……あえて
異世界でマヨネーズではなく
ケチャップを作る、独創性と創造性
あふれる異端児! ひとつ上の男、
その名もサトシ――43歳。
自分自身のオリジナリティーの
高さに驚愕を禁じえないぜっ!!」
「……? 今日の旦那さまは
いつもに増して随分と
ご機嫌じゃのう。はてはて」
ときおり発症する旦那の奇行
は既に慣れっこになっている
のであった。
「ところで、妾もなにか
サトシの手伝い
できることはあるかの?」
「そうだな。もし今手が空いていたら
ミミには、この鍋のケチャップを
加熱しながらかき混ぜていて欲しい
ちょっと根気がいる作業だけど
お願いしても構わないか?」
「ミミに任せるのじゃ!」
サトシはトマトをすり潰して
塩と砂糖と細かく刻んだ
玉ねぎを混ぜたペースト状に
したボウルをミミに渡す。
ミミはズンドウ鍋に火を
付けてゆっくりと
シャモジでかき混ぜる。
「まぜまぜのじゃぁ~」
(俺の妻はかわいいな)
「ところで、この調味料は
どこの国の名産品なのじゃ?」
「俺の地元、東の最果ての国で
有名な調味料なんだ」
「おお、そういえば、
お主は世界地図にも描かれない
極東の最果ての国の出身
だったのじゃな」
(別にミミに対して俺が転生者
であることを隠してはいないし、
実際、一度は異世界転生者だって
話たけど、俺の妄想設定だと
思われたのか若干ミミの顔が
引きつってたから、
やはり無難に極東出身ということに
した方がよいのだろうなぁ。
まあ、長く結婚生活していれば
そのうち話す機会もあるだろう!)
「極東の最果ての島というのは
凄いのじゃな」
「ははっ! まあ、極東の最果ての国の
国民の9割以上が奴隷労働者という
国だけどな! そしてもちろん
俺も奴隷の出身だ!
国民の中には暗黒企業の中で社畜として
扱われて死ぬまでこき使われて
過労で死ぬ奴も多かった。
ミミが想像するようなハッピーな
国ではなかったから、あまり期待
しないようにな」
「人は働き過ぎると死ぬのじゃな……。
なにごともほどほどが一番なのじゃ」
「そうだな。よく寝て、よく食べて、
よく働いて、健康に過ごす!
これがスローライフの醍醐味で
あり、俺の理想の生活だ」
「なるほど。"すろおらいふ"とは
素晴らしいものなのじゃな。
それにしても、旦那さまは元は
奴隷じゃったのじゃな。
それは、とてもとても
苦労したのじゃな。よしよしなのじゃ」
ミミと身長差は50cmほど
あるので背伸びをしながら頭を
撫でようとする妻の要望に
応えるために、サトシはひざまずく。
「ところでサトシは、この調味料の
レシピの知識は奴隷時代に
覚えたのかの?」
「そうだ。極東の奴隷仲間の
中では人気の調味料だったから、
奴隷仲間に教えてもらって
そこで覚えたんだ」
もちろん嘘である。実際は暇つぶしに
You ○ubeで見た"絶品! 自家製
トマトケチャップの作り方"
動画で得た知識である。
基本的に、サトシの知識は
ゲーム、アニメ、漫画、You ○ube
鉄腕ダッ○ュなどで見た
うろ覚えの知識がほとんどである。
「それにしても、極東の国からは
どうやってこの大陸に
やってきたのじゃ?
海が荒れていてとても船で
行けるところではないと
聞いているのじゃが」
「船できた。めっちゃ漕いだ
腕が筋肉痛でヤバかった」
この世界はサトシの元の世界、
地球のような球体ではなく平面で
地続きの世界、つまり球体説
ではなく平面説の世界である。
「よく生きて辿りつけたのぅ。
まっ。妾の旦那さまであれば
その位のことは楽勝だったの
かもしれないのじゃが」
「土属性に不可能はない!」
「土属性は最強なのじゃぁ~!」
(っ……好きだ)
実際は海の上では土属性は
何もできないのであるが、
あくまで勢いで言った発言である。
サトシは、ミミがかき混ぜている
ずんどう鍋の中身を見る。
「おっと、そろそろ良い感じで
とろとろになってきたな。
んじゃ。それを、
このガラス瓶に入れてくれるか?」
「いれるのじゃぁ~」
ドロドロのトマトケチャップが
ガラス瓶のなかを真っ赤に満たす。
「ミミ。手伝いありがとうな。
それじゃあ、今日は鶏魔獣の肉と
卵と米を使った、オムライスを作るぞー!」
「楽しみなのじゃぁ~!」
サトシは、細切れにした鶏肉と
刻み玉ねぎを炒めたあとに
冷や飯とケチャップを混ぜ合わせ
チャチャッと炒めて更によそる。
そのあとに、鶏魔獣の卵で
作ったオムライスの上に乗せる
卵の薄焼きを作り、チキンライス
の上に乗せる。
最後の仕上げに、
赤いケチャップで"世界樹"を
意識して描いた木の絵が
黄色いオムライスを鮮やかに彩る。
(やっぱ。オムライスといったら
お絵かきだよなっ! 死ぬ前に
一度くらいはメイドさんが落書き
したオムライスを食べたかった
ものだぜっ!)
ミミは嬉しそうにすごい勢いで
スプーンを動かして口に運び続ける。
(ミミは口が小さいのに勢いよく
食べるから、よくむせるんだよな。
肉とかの固形の具材はは細かく
切るのが美味しく食べてもらう
コツなんだよな)
「気に入ってくれたか?」
「アツアツ、うまうまなのじゃぁ~」
「はは。そりゃ良かったぜ。
気にいってくれたなら
今後も作ろうかね」
「嬉しいのじゃ!」
「まぁ、正直半分以上は食材の
旨さのおかげだけどなっ!
ここで収穫できるトマトとか
玉ねぎとかマジでヤバいほど
美味いからな! さすがはミミが
くれた種から育った野菜だよ」
「移住したドワーフたちも
随分とこの町の料理を気に入って
くれているようで嬉しいのじゃ!」
「そういや、移住してきた
ドワーフのおっさん、というか
そもそもぶっちゃけ性別問わずに
全員おっさんにしか見えないの
だが……に、
ブドウを栽培できたら酒が造れるから、
検討して欲しいって希望が出てたん
だったけな。ミミはブドウの種
とかも造れるのか?」
「ドワーフは酒を最も愛する種族
じゃからの。それじゃあブドウの
種を産んでみようかの。
旦那さまに頭をナデナデして
欲しいのじゃ」
サトシはミミを抱えあげて
お姫様抱っこをした状態で
頭をナデナデする。
「うっ、産まれるのじゃぁ~!」
ポンポンッ、というコミカル
な音のあとにブドウ色の
種がミミの両手
いっぱいに産まれていた。
(そういや、ブドウの種の色って
ブドウ色だったけ? いや、まあ。
ここは異世界だからな!)
「ミミ。ありがとうな。あとで種を
植えてくる。ドワーフたちも
めっちゃ喜んでくれると思うぞ。
まぁ、お酒の作り方は分からない
から、その辺りは移住してきた
ドワーフに任せちゃおうか」
「名案なのじゃぁ~!」
ミミはオムライスが美味しかったから
随分とご機嫌だったのか普段よりも
夜が激しくサトシのHPが99999
からHP3500まで削れていたのであった。
=================
【辺境村の開拓状況】
◆住民
土属性:1名
世界樹:1名
ドワーフ:35名
ゴーレム:たくさん
◇特産品
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