土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ

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第6話『ゴーレムって便利』

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「むぅ。いままでは水を飲んでいるだけ
 でもお腹が膨れたのに、今は逆にお腹が
 すくのじゃ。不思議なのじゃ~」

ミミのお腹が"くぅ~"っと
可愛らしい音を立てている。

「それはいままでは木だった
 からじゃないのか?
 人間になったってことは
 内蔵とかも人間と同じってことだろ? 
 人は水だけ飲んでいたら死ぬぞ」

「むぅ……。水だけだと、
 死んでしまうのじゃな。
 それは、盲点だったのじゃ」


「そうだな。水だけだと餓死しちまう。
 そうならないように、
 俺がとっておきのうまいメシを
 作ってやるぞ。期待して待ってろ!」

「うむ。サトシの手料理は
 楽しみなのじゃ。いままでは
 木だったから固形物を食べる
 のは初めての経験なのじゃが、
 今からたのしみなのじゃぁ~!」


サトシは馬車の荷台から今朝、
解体して血抜きをして塩漬けにした
イノシシの魔物の肉を、
馬車の荷台の麻袋から取り出す。

頑丈な中華鍋を焚き火の火の上に置き、
少し大きめに切ったイノシシ肉を炒める。

味付けは普段より豪勢に
塩と香辛料をふんだんに使う。


「よしっと。あとは、ちょっと
 口直しの香草を添えてっと、
 お皿にもったらできあがり、っと!」


世界樹が結婚した場合、
その結婚した相手と同じ種族に
なれるが、逆に結婚する以前は
ずっと木のままである。

つまり、ミミにとって人間になったのは
今日が初めて。固形物を食べるのが
初めてつまり慣れていない。

サトシはその辺りを配慮して、
ミミの分の焼肉は事前にナイフで
小さいサイコロ大に切り揃えて、
小さな口のミミでもフォークで刺して
食べられるように大きさを整えている。


「もきゅもきゅ。ごくん。
 肉は最高にうまいのじゃ~!!
 固形物最高なのじゃぁ~!!」

「分かる。肉って最高だよな!
 まだまだ肉はあるから遠慮せずに
 ジャンジャン食べてくれ!」

「もう肉の味を知ったら
 水しか飲めない木とかには
 戻れんのじゃぁ~!
 人、最高なのじゃぁ~!」


130cmの小柄な少女に
納まるとは思えないほどの食欲で
パクパクと肉を食べていく。
さすがは世界樹の少女である。


(ははっ。今後は多めに肉を用意
 しておいた方がよさそうだな)

ミミは途中で焦って食べたせいか
舌を火傷しそうになっていた。
サトシは、コップに水を注ぎ
ミミに差し出す。


「はは。ミミは本当に肉が好きなんだな。
 焦って食べなくても肉は逃げないから
 ゆっくり食べな。ほらおかわりだ」

「サトシ、ありがとなのじゃ!
 さすがは妾の旦那さまなのじゃ」


「ありがとさん! まっ、肉だけだと
 栄養が偏るから本当は野菜とか
 果物とかも食べられるように
 したいと思っているんだけどねぇ。
 種さえあれば育てられるんだけどな」

「ふむ。種さえあれば育てられるのじゃな?」

「おう。水源も確保してあるし
 土も十分に耕したからあとは種だけだ」

ミミは目をつぶり、
少し考えたあとにサトシに言う。

「ふむ……食物の種か。サトシよ。
 妾の頭を撫でてみてくれんかの?」

「おう? いいけど。なんで?」

「まぁ。ものは試しじゃ」

サトシはミミの銀色の
艷やかな髪を撫でる。
小ぶりな頭頂部がかわいらしい。

「うっ産まれそうなのじゃ!」


(えっ。いまので孕んだの?)


ミミの両手のひらから
ポンポンと種があらわれ、
ミミの小さい手は色とりどりの
植物の種でいっぱいになる。


「えっと……ミミさん。この種って
 俺、認知しなければダメっすか?
 いや、まぁ、覚悟はありますが」

「ふふっ。安心するのじゃ。
 これはあくまでただの植物の種なのじゃ。
 妾も赤子は"こうび"をしなければ
 孕まないから安心するのじゃ」

「よかった。さすがに、いきなり
 パパになる準備はなかったから
 安心したぜ……」


「とはいっても結婚したのじゃから
 遠からず子供を産むこともあろう。
 徐々にでいいからサトシもそういう
 意識も持っくれると嬉しいぞ」

「おう。皿洗いとゴミ捨てと風呂掃除
 だけしてイクメンを気取るような、
 似非イクメン男子にならんように頑張る」

「うむ。"いくめん"とやらは
 妾は知らぬが、その心意気
 嬉しいぞ、さすがは旦那さまじゃの」


「それで、早速大量に出してもらった
 この種、何の種なんだ?」

「黄色のがジャガイモ、
 白色のがレモン、
 紫色のがナス、
 赤色のがトマトなのじゃな」

「おお……! 凄い良い感じだ」


「ふふん。何せ、世界樹は全ての
 植物の祖でもあるからのぅ。
 もちろん、その種は超一級品
 のものじゃ。他にもいろいろ
 出せるのじゃが今日のところは
 こんなもんでいいじゃろう」


ミミは無い胸を張って、
エヘンといばっていた。


(かわいい)

「かわいい」


「旦那さまよ、脳内の声が口に
 出ておるぞ嬉しいのじゃが」


サトシは照れ隠しのために、
話を早々に切り上げて畑に向かう。


「サトシよ、どこに行くのじゃ~!」

「せっかくだから、さっきもらった
 種を植えてこようと思ってな」

「良い心がけじゃの。
 妾も畑仕事を手伝おうかの?」

「いや、今日は種植えるだけだから
 俺だけで大丈夫だぞ。ミミは、
 家でゆっくり休んでいてくれ」


「家……? はて、この平原に
 そんなものあったかのう?」

「ああ。さっき、肉料理作っている
 間にゴーレムに簡単な家を2棟ほど
 作らせておいた」

「ふえぇ……」

「はは。ゴーレムは魔力消費も少ないし
 すげー便利なんだよ。まあ内装とかは
 おいおいやっていくとして、
 とりあえず寝るだけだったら十分だぞ」


「うむ。それよりも2棟とは?
 妾たちの愛の巣と、物置小屋か?」

「いや。普通に住居用の家が2つだぞ
 手前のがミミの家、奥のが俺の家だ」

「むぅ……そうか。そう……なのじゃな
 うむぅ。妾の……旦那さまは。
 ……なのじゃなぁ……」


そう言うと、ミミは少し機嫌悪そうに
指示された手前の家に入って行った。


(オレ何かやっちゃいました?)


一人そんなことを思いながら、
魔法で耕していた畑に向かう。


「すごいな。この土、適度に湿っているし
 ふわっふわだ。種もスポスポ入っていくぞ!」


サトシは田舎の実家に暮らしていた時に
家庭菜園で野菜を育てていたときの
ノウハウを思い出しながら適当に
間隔をおきながら種を埋めていった。


(うわぁ。土いじりとか
 めっちゃ癒されるわぁ)


そんなことを考えながら
無心で種を植えていく。

「おしっと。良い感じで
 種植え終了っと!
 あとは畑のカカシと
 野営用にゴーレム
 5体くらい出して寝るか」


サトシは土からゴーレムを5体作り、
1体はカカシ代わりに畑を守るの専属、
残りは東西南北に1体ずつゴーレムを
配置して、侵入してきた魔物の討伐
用として配備した。


「ふわぁ。疲れた。井戸の水で
 軽く水浴びしたら寝るかぁ」

軽く水浴びをして、
よく手を洗ったあとに
サトシは自室の布団にもぐる。

「ゴーレムに指示して作らせた
 急ごしらえの家のベット
 だが広いし結構よく出来ている」


そんなことを考え
布団の中で今日一日の間の
あれこれ思い出していると、
小さな足音とすすり泣く声
が聞こえてくる。


「ひっくひっく。結婚一日目から
 別居婚の仮面夫婦とは……
 あんまりなのじゃぁ……
 旦那さまにとって妾は
 そんなに魅力がないのかのう?」

「す、……すまんな。俺はそんな
 つもりはなかったのだ。
 いや、むしろ俺はミミが魅力的だと思うぞ」

「それは本当かの? 信じられぬのう。
 それは行動で示して欲しいのじゃ」


(ええぃっ! 俺も男だ! 覚悟を決めろ!
 それに女を泣かせるとはダサすぎるぞ、俺っ!)


サトシは年長者としの威厳を
示すために冷静を装い、
自分の布団にミミを招き入れる。

なお、顔はポーカーフェイスを
気取っていたがサトシの心臓は
早鐘のように鳴りまくり
手汗がやばいことになっていた。


・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・


結果として、サトシは世界樹に
一方的になすがままにされ
初の夜這いを(される)経験を
積むことになったのであった。
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