ぼくのうた きみのこえ～発情期を抑えるために番になることは許されますか？～

38-3

　重ねられた唇は一度すぐに離されたが、今度は角度を変えてより深く口づけをされた。

　その口づけは一樹と最後にしたものとは違い、まるで噛みつかれるような一方的なものだった。

　忘れないようにしていた一樹との優しい最後の口づけの感触がこんな形で上書きされてしまうのが璃玖は嫌になり、一樹の胸元を軽く押して抵抗をした。

　だが、一樹は璃玖が押す力を強めれば強めるほど、より強い力で璃玖の肩を掴み、口づけは深くなる一方だった。

「やだっ……離してってば……」

　璃玖は逃れたい一心で今度は一樹から顔を背けた。

　すると、そんな璃玖の顎を一樹は手で掴んで無理やり自分に向かせると、また口づけを再開した。

「んーんっ！」

　今度は重ねるだけの口づけとは違い、一樹の舌が差し込まれる。

　まるで舌の形をなぞるようにして一樹に舌を絡めとられると、腰のあたりに走る甘い痺れを璃玖は感じ始める。

「んっ……あっ……」

　一樹の貪るような口内での舌の動きに、璃玖は次第に頭がぼーっとなっていき抵抗するのをやめてしまう。

　一樹は璃玖の腰に手を回し、璃玖の体を引き寄せようにして自分に近づけると体を密着させた。

「アッ……」

　どんどん璃玖の体の力が抜けていき、一樹の支えなしでは立っていれなくなり足がフラつき始めた。

　すると、一樹は璃玖に体重をかけるようにして、後ろに置いてあった仮眠用の簡易ベッドに璃玖を押し倒した。