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「離してくださいっ!」
一樹は隼人を追おうと、男性スタッフに掴まれた腕を振り払い走り出そうとする。
「あっ、暴れないでください! 困ります!」
だが、男性スタッフも必死に足を踏ん張らせて抵抗するため、一樹は隼人の後を追いかけることはできなかった。
「一樹っ!」
スタジオに戻ってきた伊織は一樹とスタッフとのやりとりを見つけ、慌てて駆け寄った。
「一体どうしたの?」
「実は、彼を五分ほど留めておくように頼まれまして」
「だから! 俺は急いでるんです!追いかけないと璃玖が!」
「……。とりあえず、僕が代わります。僕でも同じ時間留めておければ同じですよね? だから、彼を離してあげてもらえませんか?」
暴れる一樹の肩を掴んで、伊織は一樹を落ち着かせようとする。
「えっ、でも……」
男性スタッフは一樹と伊織の顔を見比べて困った顔をする。
「約束は守ります。そうでしょ? 一樹」
「……ああ」
一樹は暴れるのをやめて、仕方がないと諦めた様子で俯きながら頷いた。
「それじゃあ、お願いします」
一樹を制止するために全力で踏ん張っていた男性スタッフは体力も限界だったため、伊織の提案に甘え、掴んでいた一樹の腕を離し伊織に託した。
そのまま男性スタッフは二人に軽くお辞儀をして、隼人との約束がよほど嬉しいのか鼻歌交じりにスタジオから出ていったため、スタジオには一樹と伊織の二人きりになった。
「腕、離してくれよ」
「ダメだよ、約束したんだから。はぁー……。僕がいない間に一体何があったの?」
伊織は呆れ気味に一樹に問いただす。
「……。聖さんのヘアメイクアーティストって奴が、璃玖に手を出すかもしれないんだ。しかも璃玖、聖さんと一緒のホテルに泊まっているらしくて……。だから追いかけようとしたんだ」
一樹は隼人を追おうと、男性スタッフに掴まれた腕を振り払い走り出そうとする。
「あっ、暴れないでください! 困ります!」
だが、男性スタッフも必死に足を踏ん張らせて抵抗するため、一樹は隼人の後を追いかけることはできなかった。
「一樹っ!」
スタジオに戻ってきた伊織は一樹とスタッフとのやりとりを見つけ、慌てて駆け寄った。
「一体どうしたの?」
「実は、彼を五分ほど留めておくように頼まれまして」
「だから! 俺は急いでるんです!追いかけないと璃玖が!」
「……。とりあえず、僕が代わります。僕でも同じ時間留めておければ同じですよね? だから、彼を離してあげてもらえませんか?」
暴れる一樹の肩を掴んで、伊織は一樹を落ち着かせようとする。
「えっ、でも……」
男性スタッフは一樹と伊織の顔を見比べて困った顔をする。
「約束は守ります。そうでしょ? 一樹」
「……ああ」
一樹は暴れるのをやめて、仕方がないと諦めた様子で俯きながら頷いた。
「それじゃあ、お願いします」
一樹を制止するために全力で踏ん張っていた男性スタッフは体力も限界だったため、伊織の提案に甘え、掴んでいた一樹の腕を離し伊織に託した。
そのまま男性スタッフは二人に軽くお辞儀をして、隼人との約束がよほど嬉しいのか鼻歌交じりにスタジオから出ていったため、スタジオには一樹と伊織の二人きりになった。
「腕、離してくれよ」
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「……。聖さんのヘアメイクアーティストって奴が、璃玖に手を出すかもしれないんだ。しかも璃玖、聖さんと一緒のホテルに泊まっているらしくて……。だから追いかけようとしたんだ」
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