生き残りゲーム

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Episode 8 / “人殺し”投票

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生存者12人 脱落者3人

……

side Mirai

輝琉「…大事なことを、忘れていましたね。」

私達はあの後進まない箸をどうにか進め、朝食を取り各々部屋に戻った。誰も言葉を発さず、当たり前といえば当たり前だが暗い雰囲気だった。そしてなぜ私たちが今ホールに集まっているのか。それは輝琉と優徒さんに呼ばれたからである。

葉月「……用ってなんだよ」
唯葉「唯葉、もう死体とか見たくないよ」
優徒「そんなの僕だって見たくないさ……。全員揃ったか、では本題に入らせて頂く。皆を呼び出した理由はただ一つ。僕たちは大事なことを忘れている」
照「勿体ぶらないで言ってよ」
実羽「……“人殺し投票”」
渚「…あ、確かに忘れとったわ」
和輝「でも俺たちはJから何も詳しく聞いてねえよな!どうやんだよ、」
葉月「たしかに…」
優徒「ああ。“昨日までは”な……」

頭に電撃が走ったような感覚だった。

輝琉「ペア用に配られたタブレットを見てください。」

輝琉に言われた通りにタブレットを操作していくと、そこには昨日までは無かったはずの“人殺し投票”という項目があったのだ。
そして、それだけではなく。

聖汰「…なあ、あんなの昨日からあったっけ。」

聖汰が指さした先。いつもJが映し出されている大きなスクリーンにはタイマーのようなものが映し出されていて、残り1時間を意味するであろう数字がそこにはあった。

海斗「……なるほどね、残り1時間の間で、“人殺し”をつきとめて投票しろってこと…」
悠理「やだよ!誰のことも疑いたくない!!」
渚「…もしも投票せんかったらどうなるんやろうか。」
輝琉「…それは私と優徒も思ってQ&Aを漁っていたの。」
優徒「それによると……投票しなければそのペアももれなく“脱落”だそうだ」
葉月「……それでも、私も誰かに投票なんて………」
悠理「まって、見てこれ、同票だったら投票は無かったことになるって…!!」
未来「私たちは今6組…」
悠理「自分たちには投票出来ないから、それぞれが右隣のペアに投票したらいいんじゃないかな!」

そんなに上手くいくのか、と思ったが私は呑み込んだ。それぞれが考えているようだったがすぐに真澄さんが口を開いた。

唯葉「えー、でもさ。唯葉、思うんだけど。Jの言ってることが本当なら“人殺し”は第2ゲームを有利に進めてたんでしょ?」
和輝「あぁ、らしいな」
唯葉「それってさぁ、ちゃん理世とミスター田邉を見殺しにしたようなもんじゃないの?」
聖汰「ちょっと、言っていいことと悪いことが」
唯葉「何ムキになってんの?聖汰くんが“人殺し”なんじゃないの~?♡」
照「唯葉ちゃん」
唯葉「…冗談だよ。ごめんって …けど私はそう思ってるよ。“人殺し”がどういう条件を与えられてたのかは知らないけど、その情報を使えば助けられたんじゃないかなとも思うし。誰が“人殺し”か知らないしどうでもいいけど、そんなやつが私たちに今更協力すると思えない。」
照「…唯葉ちゃんの言い方に問題はあると思うけど、それは僕も同意。リスクが高すぎる。“人殺し”が裏切ったらどうするの?申し訳ないけど、俺はまだ出会って日の浅い君たちの為に命まではかけられない。」
唯葉「私たちは私たちが怪しいと思った人に投票する。…じゃあね」

真澄さんと氷河さんはその場を後にした。
私たちにも気まずい空気が流れたが、輝琉の提案で30分後にまた集まることとなり一旦解散となった。
聖汰に誰が怪しいと思うか聞いてみたが、誰も疑いたくないと言っていた。
聖汰は優しすぎる。と同時になんの躊躇いもなく皆を疑いの目で見ている自分にも嫌気が差した。

輝琉「皆来てくれて良かった……時間が無いわ、話し合いを始めましょう。」
J「30分前だよ~~ん!!みんなまだ悩んでるみたいだからJさんからスペシャルヒーーント!! 今回の“人殺し”は、宝箱の中身と位置が丸わかり☆なんだよー!」
葉月「……疑いたくないけど、+10を2回取ってる悠理っちと海斗っちは怪しいと思う」
悠理「えっ、私じゃない…!それに海斗も違うよ!私たちならポイントなんて気にしないし名乗り出てるよ…!!」
渚「まあ、悠理たちはせやろなあ」
輝琉「……それに、あの悠理の号泣が演技だともなかなか思えないわ」
唯葉「輝琉ちゃんたちも一発目で当ててて怪しいっちゃ怪しいけど~、まあそれは唯葉たちも同じだからな~。それに中身が分かるならやっぱり+は取ると思うのよね」
照「…さっきから一言も喋ってないけど、池本さんはどう思う?」
実羽「………」
照「ごめん俺、黙秘は肯定って捉えちゃうタイプなんだけど。」
実羽「……」
聖汰「…ごめん。反論しないと、俺もそうなのかなって思っちゃう」
渚「いや、池本さんは…俺らの宝箱選んだのは……あ…いや……」
実羽「……」

実羽は相変わらず黙りこくっていた。
タイマーが示す時刻は刻一刻と0に近づいて行く。
それぞれが投票していく。きっと、実羽に。
私は実羽じゃないと思う。けど、反論して疑われたくもないから、聖汰に合わせた。
我ながら薄情な人間だと思う。けれど実羽じゃなかったら脱落するのも実羽な訳じゃない。それでいいかとも思った。

渚「……」

…桜葉渚、怪しいな。なんて思った時だった。また底抜けに明るいチャイムが鳴りJがタイムリミットを告げにきた。

J「はーい皆さん!第2GAMEおつかれさん~♡」
優徒「…っ」
J「“人殺し投票”無事に終わったよ~!!いやあ最初はさ、投票したくない!とか言うから焦ったんだけど~。しっかり皆投票してくれて良かったよ♡ ……5票獲得で、池本実羽ちゃんにけってーい!」
実羽「……」

予想通りの結果だった。しかし…

J「だーけど!!残念っ!ハズレで~す!!!」

皆がざわつく。私は やっぱりな、と思った。

唯葉「…ちっ。違うならそう言いなよ。」
聖汰「…あれがカード?」

意味深に設置された机の上にはカードが12枚。逆さ吊りされた人のイラスト、“死”を意味するカードが3枚。神々しく輝く雲の上に立つ人のイラスト“神”のカードが1枚。そしてのこりは白紙だった。
私たちは時計回りに順番にカードを引いていった。私は……白紙か。

輝琉「……全員引いたわね。 私は、“神”のカードを引いたわ。」

ざわついたが、私は冷静な人が神を引いてくれてよかったなと思った。真澄さんあたりが神になった日にはその相手を殺しかねないし、悠理あたりが神を引いた日には耐えられなくて闇落ちしそうだな、と。

優徒「僕は白紙だった。」
唯葉「…唯葉も白紙。」
未来「…あ、私も白紙です」
聖汰「同じく。」
照「俺も。」
海斗「俺も白紙だったよ。」
悠理「“死”……でした。」
渚「悠理…!?! …あ、俺も、白紙やった、」
実羽「……」
葉月「………“死”」
和輝「あー……俺は白紙……ってことは…」
J「死を引いたのはイケモトミウ、ナカノユウリ、トオヤマハヅキ~!! 3人は前に出て、この4枚のカードを引くのよ!」

呼ばれた3人が恐る恐る前に出る。
遠山さんは今にも倒れそうな顔色だったし、悠理は震えていた。……実羽の表情からその心情は読み取れなかった。

海斗「悠理、俺が変わるよ、」
悠理「だめ!……大丈夫、4分の1だもん。皆で白紙引いて、何事も無かったことにしよう。」

全員、一斉にカードを引いた。
カードを見た瞬間、悠理だけが座り込んだ。
彼女の手から落ちたカードは____“死”
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