異世界でカードゲームを創りたい

赤たまねぎ

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23 お爺ちゃんの武勇伝

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 お花のことならセリーヌ博士。

 そう思った俺はその足でセリーヌさんのところに行った。幸い、ドンドールお爺ちゃんの家と近い距離にある。

「おい、アンコ。俺も行くぞ」
「え? いいの?」
「いいもなにもないだろう。俺が行きたいんだから」

 なんでも、俺が博士と慕う人がどんな人なのか気になっているようだ。

 ドンドールお爺ちゃんは戸棚からお菓子を出し、笹の葉に包む。

 手土産だ。意外と几帳面なところがあった。

「手が器用だね」
「元、冒険者だからな。鍵開けも基本スキルの一つだから、嫌でも手が器用になっちまう」

 ダンジョン内に配置していある宝箱の8割はトラップが付いている。それを外す技術だとドンドールお爺ちゃんは真剣な顔で説明してくれた。

 誰も、盗賊やってたなんて疑わないよ……。


 ◇ ◇ ◇


「いらっしゃい、アンコ」
「うん、こんにちは。博士」

 そう言って俺は頭を下げる。

 年上の方にはきっちりとした挨拶は欠かかしてはいけない。母マザリーから伝授された世渡り術だ。

 少し大げさにやる気持ちで――と言われてやってみた。反応を見る限り、セリーヌさんは少し嬉しそうだ。

 さすがタイガー亭の女将の技である。

「孫がいつもお世話になっております。こちら、つまらないものですが」

 ドンドールお爺ちゃんも続いて挨拶し、手土産の渡す。

「あら、クッキー。ありがとうございます。さすが、ドンドールさんね」
「私のことを知っているのでしょうか?」

 ドンドールお爺ちゃんは初対面、もしくは人によって一人称を変える。なんだか、今日はお爺ちゃんの意外な一面ばかり見ている気がする。

 母マザリーの処世術もドンドールお爺ちゃんから来ているのかもしれない。

 それにしても、村一番のお金持ちのセリーヌさんと元冒険者のドンドールお爺ちゃんは接点はないように思うけれど、セリーヌさんはどうしてドールお爺ちゃんのことを知っているのだろうか。

 クスクスと笑うセリーヌさんは俺とドンドールお爺ちゃんの顔を反応を見て、ようやく答えれくれた。

「あら、ごめんなさいね。笑っちゃって。ドンドールと言えば、村一番の酒飲みで有名でしたから」

 時は50年前。セリーヌさんが20代のときの話。

 そのときも、今と同じようにセリーヌさんのお家は村一番のお金持ちで、ドンドールは村一番の酒飲みだったと聞く。

 他所から来た冒険者20人を相手に一人勝ちした男として、村では大層人気を博したらしい。

「あのときは『お金はセリーヌ、酒はドンドールは村一番』とよく言われていたわ」

 なんだそれは。

 誇らしげに語るセリーヌと、恥ずかしそうにするドンドールお爺ちゃん。

 何とも言えない気持ちになってしまう。確かにお酒のお見比べで20人勝ちをするというのは凄いと思うのだけど、素直に祖父の偉業を喜べない。

 先祖の武勇伝――ではなく、先祖の黒歴史を知ってしまった気分だ。

「いやー、お恥ずかしい」

 そう、本当にお恥ずかしい。

 頬を赤くする俺とドンドールお爺ちゃんに、セリーヌはお茶に誘ってくれた。

 50年前の村のこと、もっと話したいのだろう。

 俺もドンドールお爺ちゃんがどのように村で生活していたか気になる。一緒にご馳走させてもらうことにしよう。
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