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11 ハーフエルフ
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宿屋の仕事をしながら、モンスに絵を考えている。
とはいえ、俺はモンスの嗜好をよく知らない。
せっかくお金を出して買ってくれるのだ。素晴らしい絵よりも、その人の感性にあった絵を提供したい。
そうだ、どうせなら幾つかの絵を描いて選んでもらうってのはどうだろうか?
空想が膨らんでいく。
「アンコ、これも運んで行ってくれ」
「うん。分かった」
父であるドボンの声で、俺は現実に戻った。
最近気が付いたのだが、ドボンは俺に料理を教えたいみたいだ。
ソワソワ感が伝わってくる。
まあ、前世でも簡単な料理はしていた。
アドバンテージに胡坐をかかなければ、大丈夫だろう。
「どうぞ、カニカニまぐろの焼き魚です」
中身がカニの身のような魚だ。
……茹でて食べたほうが美味しいと思うんだけど、何故か父さんは焼きに拘っている。
「ああ。ありがとう」
そう言って皿を受け取るエルフ。
エルフだ。
エルフが魚を食べている。
「ねえ、父さん」
「どうした、アンコ?」
「あの人、耳が長いよ」
「エルフだからな。耳が長いのが特徴だ」
「でも、魚食べているよ」
カニカニまぐろを美味しそうに食べている。
「ああ。カニカニまぐろは別なんだ。エルフでも美味しく食べられる」
「なんで?」
「さあな? 他の魚とは味の触感も違うから、そのおかげじゃないか」
魚じゃないから、という発想にはいかないのか?
いや、見た目が完全に魚だからな。別種の生き物だと思うわけないか。
「直接聞いてみたらいいんじゃないか?」
父さんからの提案に俺は怖気づく。
「え、いいのかな? 失礼にならない」
「お客様の機嫌次第だな。空気を読んで、談笑するのも宿屋を運営するうえで必要なスキルだ」
接客スキルというわけか。
「うん。分かった」
「ほら。これは別の客の料理だ。エルフさんへの質問は、仕事の合間合間に伺うんだぞ」
「分かった」
そう言われて、俺は料理を運んだ。
粗方、注文をさばいた後、俺は満を持してエルフに質問した。
「あの、すいまんせん」
「おや、なんだい」
優しい声だ。
これならいけるだろう。
「あの、魚、大丈夫なんですか」
「ああ。よく言われるけど。私、ハーフエルフだから。人間の血が混じっているから、お肉もOKなんだよ」
エルフじゃなく、ハーフエルフだった。
食べるものは人間と変らないらしい。
とはいえ、俺はモンスの嗜好をよく知らない。
せっかくお金を出して買ってくれるのだ。素晴らしい絵よりも、その人の感性にあった絵を提供したい。
そうだ、どうせなら幾つかの絵を描いて選んでもらうってのはどうだろうか?
空想が膨らんでいく。
「アンコ、これも運んで行ってくれ」
「うん。分かった」
父であるドボンの声で、俺は現実に戻った。
最近気が付いたのだが、ドボンは俺に料理を教えたいみたいだ。
ソワソワ感が伝わってくる。
まあ、前世でも簡単な料理はしていた。
アドバンテージに胡坐をかかなければ、大丈夫だろう。
「どうぞ、カニカニまぐろの焼き魚です」
中身がカニの身のような魚だ。
……茹でて食べたほうが美味しいと思うんだけど、何故か父さんは焼きに拘っている。
「ああ。ありがとう」
そう言って皿を受け取るエルフ。
エルフだ。
エルフが魚を食べている。
「ねえ、父さん」
「どうした、アンコ?」
「あの人、耳が長いよ」
「エルフだからな。耳が長いのが特徴だ」
「でも、魚食べているよ」
カニカニまぐろを美味しそうに食べている。
「ああ。カニカニまぐろは別なんだ。エルフでも美味しく食べられる」
「なんで?」
「さあな? 他の魚とは味の触感も違うから、そのおかげじゃないか」
魚じゃないから、という発想にはいかないのか?
いや、見た目が完全に魚だからな。別種の生き物だと思うわけないか。
「直接聞いてみたらいいんじゃないか?」
父さんからの提案に俺は怖気づく。
「え、いいのかな? 失礼にならない」
「お客様の機嫌次第だな。空気を読んで、談笑するのも宿屋を運営するうえで必要なスキルだ」
接客スキルというわけか。
「うん。分かった」
「ほら。これは別の客の料理だ。エルフさんへの質問は、仕事の合間合間に伺うんだぞ」
「分かった」
そう言われて、俺は料理を運んだ。
粗方、注文をさばいた後、俺は満を持してエルフに質問した。
「あの、すいまんせん」
「おや、なんだい」
優しい声だ。
これならいけるだろう。
「あの、魚、大丈夫なんですか」
「ああ。よく言われるけど。私、ハーフエルフだから。人間の血が混じっているから、お肉もOKなんだよ」
エルフじゃなく、ハーフエルフだった。
食べるものは人間と変らないらしい。
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