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転生する――そして、準備するまで
01 赤子に転生、そして5歳。
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超大手ゲーム会社社長である美川恵美子はパソコンの前でワキワキと指を動かしていた。全てがデジタル機器が超小型化されており、キーボードがなくなった。代わりに、ARパネルという指の神経によって操作される機器を使っている。
AI爆発という社会現象が約30年前にあった。AI技術が急上昇したことにより社会変化を指している。これにより、社会はARを前提として動くこととなった。
全てがARにより電子機器の画面が三次元へとなったのだ。
だが、これほど進んだAI社会――いや、AR社会であるが、娯楽を求める大衆はARよりもVRに興味を集めていた。
なかでもVRゲーム、それもフルダイブ型VRゲームは盛り上がりを見せていた。
そのフルダイブ型VRゲームを作っている会社の社長が、美川恵美子だった。
「やっぱり、武士道キャラを作るんだったら殺陣を勉強させるべきだったわ。存在しない架空剣術たったとしても、動きに違和感を感じるもの」
社長でありながら現場主義である美川恵美子。今日も暇な時間を見つけては試験テストをしようとしていた。
――だが、その日が出来なかった。
美川恵美子の心臓は突発的に痛みを訴え、助けを呼ぶ暇もなく死亡してしまう。
享年、42歳だった。
◇ ◇ ◇
時は2000年。
世界崩壊、ハルマゲドンが起こるか起こらないかで盛り上がったその年に、美川恵美子は黒部フネとして転生した。
目が覚めた時、何も分からなかった。
何も出来ない0歳から前世ともいえる記憶と持っていた美川恵美子は、現状を理解するまで時間はかからなかった。そのようなネタはゲーム業界の人間にとって時事そのものだからだ――と本人は思っていた。
これから黒部フネとして生きることになった美川恵美子。せっかくの二度目の人生をどうするか考える日々が続く。
そして――5歳。
黒部フネは美川恵美子と同じようにゲームを作りたいと思った。
2005年、過去に転生してしまった黒部フネがフルダイブ型VRゲームをこの世界で作ることは不可能――もし叶ったとしても黒部フネが望むスペックまでには届かないことを知っている。
だが、ゲームはVRだけではない。
黒部フネは携帯ゲーム機に目を付けた。美川恵美子として生きていた時代にはないものだった。ゲームといえばVRかARの二つに一つだったのだ。
TV越しに見た。偶々話題のゲームについてニュースになっており、そこには子どもだけではなく、大人までもが小さいゲームの機械にのめり込んでいる姿が撮影されていた。
集中して遊んでいる。ズラリと映される人、人、人。その誰もがゲームを行っている光景に、黒部フネは言い得ぬ多幸感に満ちていた。
ああ、ゲームしている。それも、楽しそう。
自分たちの世界で、ヒーローしているんだろうな――母親が楽しそうな子どもを見ているときの微笑ましい目をしていることに、黒部フネは気が付くことはなかった。
そのニュースが終わった後、黒部フネは計画を立てた。
ゲームを作る計画である。5歳の自分がゲームを作るために何が出来、そして最も効率的なやり方は何なのか?
ゲームを作る力はある。時間がかかるが、一人でも作れる。
アイデアも問題はない。未来のゲーム業界で人気競争を常に上位で争っていた経験は、この世界でもダイレクトに結果となる。
問題はプロデュース力。それがなけらば資金調達も難しく、人材・機械さえも準備することが出来ない。
プロデューサーが必要だ。若輩ものがゲームを売るために、まず名前を売らなければならない。
黒部フネはゲームプロデューサーが最も必要であり、それが計画の根幹となる理由から、自分がゲームプロデューサーになることを決める。
そのために、まず名前を売ることだ。
名前が売れている子ども・中学生・高校生――どれも、俳優と言われる人たちだった。
黒部フネには名前を売るため、俳優になる方法を選んだ。ゲームを作り売り出すためならば、他にも方法があったのかもしれない。だが、黒部フネにとって俳優になるという方法が最も近道であり、そして面白そうだった。
ゲームを作る上で、良い体験が出来るかも。
現場主義である美川恵美子は、行動しなければ気が済まない人間だった。
AI爆発という社会現象が約30年前にあった。AI技術が急上昇したことにより社会変化を指している。これにより、社会はARを前提として動くこととなった。
全てがARにより電子機器の画面が三次元へとなったのだ。
だが、これほど進んだAI社会――いや、AR社会であるが、娯楽を求める大衆はARよりもVRに興味を集めていた。
なかでもVRゲーム、それもフルダイブ型VRゲームは盛り上がりを見せていた。
そのフルダイブ型VRゲームを作っている会社の社長が、美川恵美子だった。
「やっぱり、武士道キャラを作るんだったら殺陣を勉強させるべきだったわ。存在しない架空剣術たったとしても、動きに違和感を感じるもの」
社長でありながら現場主義である美川恵美子。今日も暇な時間を見つけては試験テストをしようとしていた。
――だが、その日が出来なかった。
美川恵美子の心臓は突発的に痛みを訴え、助けを呼ぶ暇もなく死亡してしまう。
享年、42歳だった。
◇ ◇ ◇
時は2000年。
世界崩壊、ハルマゲドンが起こるか起こらないかで盛り上がったその年に、美川恵美子は黒部フネとして転生した。
目が覚めた時、何も分からなかった。
何も出来ない0歳から前世ともいえる記憶と持っていた美川恵美子は、現状を理解するまで時間はかからなかった。そのようなネタはゲーム業界の人間にとって時事そのものだからだ――と本人は思っていた。
これから黒部フネとして生きることになった美川恵美子。せっかくの二度目の人生をどうするか考える日々が続く。
そして――5歳。
黒部フネは美川恵美子と同じようにゲームを作りたいと思った。
2005年、過去に転生してしまった黒部フネがフルダイブ型VRゲームをこの世界で作ることは不可能――もし叶ったとしても黒部フネが望むスペックまでには届かないことを知っている。
だが、ゲームはVRだけではない。
黒部フネは携帯ゲーム機に目を付けた。美川恵美子として生きていた時代にはないものだった。ゲームといえばVRかARの二つに一つだったのだ。
TV越しに見た。偶々話題のゲームについてニュースになっており、そこには子どもだけではなく、大人までもが小さいゲームの機械にのめり込んでいる姿が撮影されていた。
集中して遊んでいる。ズラリと映される人、人、人。その誰もがゲームを行っている光景に、黒部フネは言い得ぬ多幸感に満ちていた。
ああ、ゲームしている。それも、楽しそう。
自分たちの世界で、ヒーローしているんだろうな――母親が楽しそうな子どもを見ているときの微笑ましい目をしていることに、黒部フネは気が付くことはなかった。
そのニュースが終わった後、黒部フネは計画を立てた。
ゲームを作る計画である。5歳の自分がゲームを作るために何が出来、そして最も効率的なやり方は何なのか?
ゲームを作る力はある。時間がかかるが、一人でも作れる。
アイデアも問題はない。未来のゲーム業界で人気競争を常に上位で争っていた経験は、この世界でもダイレクトに結果となる。
問題はプロデュース力。それがなけらば資金調達も難しく、人材・機械さえも準備することが出来ない。
プロデューサーが必要だ。若輩ものがゲームを売るために、まず名前を売らなければならない。
黒部フネはゲームプロデューサーが最も必要であり、それが計画の根幹となる理由から、自分がゲームプロデューサーになることを決める。
そのために、まず名前を売ることだ。
名前が売れている子ども・中学生・高校生――どれも、俳優と言われる人たちだった。
黒部フネには名前を売るため、俳優になる方法を選んだ。ゲームを作り売り出すためならば、他にも方法があったのかもしれない。だが、黒部フネにとって俳優になるという方法が最も近道であり、そして面白そうだった。
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