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10−2.理由
しおりを挟むアレイナやロメーヌ達と森で別れ荷馬車を見送ったのだが、最後までロメーヌからエルフの里に寄るよう念を押され、それを見たリリーちゃんの目が死ぬほど怖かった。
グレンの時のように、殴りかからないだけ少しは成長したようで何よりではありますが…。
グレンからドラゴンの里まではまだ距離があると聞いたので、日も暮れてきたので本日はこの森で一晩過ごすことにした。
相変わらず森から抜け出せない…いつになったら屋根付きの柔らかいベッドで寝れるのか、まぁ、睡眠はいらないんですけどね…気持ちの問題です。
はい…。
翌朝、ドラゴンの里は険しい山の上で徒歩は難しいと言うので、グレンが私を背に乗せ里まで運んでくれる事となった。
ドラゴンの背に乗るとかファンタジー!!!
人型からドラゴンの姿に戻ったグレン、少年ドラゴンとは言え改めて見ると見上げるほど大きい。
でっかぁ~と思わず声が出そうになるが堪えつつ、童心に返ったウキウキ気分で背中に飛び乗る。
がっ、鞍がないので不安定で飛ばされないか不安だし、ゴツゴツしていて長時間乗るとお尻が痛くなりそうだ…
「リリーは飛んでいきます」
何故かイラっとした様子のリリーちゃんにグレンもキレる
「当たり前だ!タキナ様は乗せるけど、お前なんか背に乗せるわけないだろ!!」
貫禄ある立派なドラゴンなのに話す内容はやっぱりグレン…心なしか森がザワザワしている気がする。
こんな所で殺気を出すな少年少女!!
手を叩いて2人を止める。
「ハイハイ喧嘩をしない2人とも!」
2人ともフンッと言ってそっぽを向く、子供なんだからーと、親の様な目で2人を見てしまう。
すると、リリーちゃんの背中からパサりと純白の羽が現れ
まっ…まさに天使!!!!!
心のシャッターを切りまくる。
この世界に来てからスマホが無い事に今ほど後悔したことはない。
可愛い!!!
ひとしきりリリーちゃんを愛でたところで、ふと思い出す。
「グレン、里にはドラゴンは何頭くらいいるんでしょうか?
それと、グレンのお祖父様がドラゴン最強と言っていましたが、私が話すとしたらそのお祖父様になるんでしょうか?」
昨晩も少し里の話を聞いたが詳しい前情報は必要だろう
グレンに聞くと少し考えた様子で頭をひねっている
何頭いるか思い出して数えているようだ。
「えぇーと、…70くらいです。
向かいの山脈にも里があって、そっちは50くらいだと思います。
今の里長は父上ですけど、多分…戦好きの祖父が父上押し退けて出てくると思います。」
お祖父さん戦闘好きなのか…現役なのか…不安しかないんですが…それにしても、思ったよりいるなドラゴン…
それが全部凶暴化したらどうなっちゃうの?
ドラゴンも魔石持ちの魔獣だから分裂するって事だよね…えっ…怖っ…
しかし、気になる点がある。
ドラゴンは魔石持ちだが人型になれるし会話もできる
人種にカウントされると言うことか…自称召使の言っていた
「どの種族も手を取り合って…」
という、メンバーの1人になると思う
それが凶暴化して分裂…少し考えにくい
明らかに他の魔獣とは一線を画す存在だ
人型でいれば負のエネルギーを溜めにくい…などあり得るのだろうか、顎に手を添えて考え込む
いや…今はそれよりも、目下の問題はドラゴン最強との戦闘ですよ…やはり、死ぬのでは???
何時ものようにハイになった私がどうにかしてくれる事を願おう。
「タキナ様…今更ながらですがその…本当に…本当に行くんですか?
多分、穏便には済みませんよ」
何も言わない私を心配してか、グレンが首を横に傾け私に視線をよこす。
仕方あるまい…このままではグレンの立場が危うい。
正直、他種族との交流が一切無いドラゴンにグレンの謝罪の話が耳に入るとは思えないが、聞かれたく無い話がある時に限って何処からともなく、知られたく無い人物の耳に入ってしまったりするのが世の常である。
それに、この世界で神としてやっていくなら遅かれ早かれ対当するだろう。
後回しにして凶暴化したドラゴンと話すのなんてもっと無理な話だ…会うには正解のタイミングかもしれない…
「それは覚悟の上です。
もしもの時は、撤退も視野位入れています」
心配入りませんよ!という気持ちを込めてグレンに微笑む、万が一の時は勇気ある撤退をするしかない。
「いやっ…どちらかと言うとお祖父様の方が心配…」
何やらゴニョゴニョ話すのでよく聞き取れない
「何ですか?」
「いえ!!何でもありません!!」
慌てて正面を向いたグレンが、では行きます!っと、勢いよく翼で地面を打つとフワリとした感覚と視線が急上昇する。
うわぁー!!ドラゴンの背に乗って飛行するだなんて、本当にファンタジーだ!!
内心は大興奮である。
みるみるうちに森を見下ろすほどの高度になり、後方を見れば斜め後ろをリリーちゃんが可愛らしい翼をはためかせながら付いてくる。
リリーちゃんマジ天使!!
私も飛べなくは無いが安定感がまだ心許なくて…
そんな事を考えらなが悠長にしているのも束の間、グレンが山に向かって加速始めると思わず体がのけぞりそうになる。
いかん、前向こう景色見てる場合じゃない
どちらかと言うと、しがみ付く様な格好でグレンに捕まる
思ったほど、優雅ではないなドラゴン遊覧飛行、しかも高度が高いので結構寒い
保温のシールド作ろうと試行錯誤して、やっと上手くできたよ!と思ったら山頂に着いてしまった。
イメージしていた木々が生える山とは違い岩と崖で構成された灰色の山肌、もちろん人型のドラゴンで生活しているわけではないので、集落などあるはずもなく、洞穴や大きな岩盤の影などが家ならぬ巣のようだ。
ぱっと見で5体の灰色や青みがかったドラゴンが丸くなって寝ていたり、顔を突き合わせて何やら会話をしているようだ。
どれもグレンより大きい。
グレンが高度を下げるもドラゴン達は一瞥するだけでなんの行動も起こさない。
里長の息子が帰ってきたのに?
それに、リリーちゃんは視界に入っていないのだろうか?
「到着しました。此処からは歩いて行きます。
父上達はいつも火口近くに居るので、そちらに行けば会えると思います」
火口!?山の形的にそうかなと思ったけど、火山あるんだねこの世界も!!
水蒸気が上がってないし硫黄の匂いがするわけでもない
おそらく休火山なのだろう。
そうでなければドラゴン達もこんなに優雅にしてないだろう
これだけ周りのドラゴンが無関心なら必要なさそうだが、念のためグレンから降りる前にフードを目深に被り直す。
グレンの背から飛び降りると、地面は砂利と石で少々足場が悪い
火口に向かって歩き始めて直ぐに、グレンよりも大きい赤紫色のドラゴンに呼び止められた。
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