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サンくんの俺の方が先に好きだったのに回 ○

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懐かしい夢を見た。

「兄貴がいたらこんな感じなのかもな」

それは俺がこの地に流れ着いたばかりの頃、
まだお頭が俺たちの前にいた頃の夢だ。

「……」

「…あ、ごめん。嫌だったか?」

「いや」

大人も子供も男も女も、誰も彼も信じられず、
どこか1人で生きることに酔っていた俺にお頭はたくさんの大切なことを教えてくれた。

「妹や弟が居てな、…アイツらに、そうやって呼ばれていたのが懐かしくて」

そう言って笑ってくれた瞳は優しく、
きっとこれは他愛もないやり取りだったろうに、今も俺の胸の奥にはこの光景が焼き付いている。

====

「……チッ…」

「そんな怒んなよ」

今日は週に一度のお頭に悩みや活動の報告をしても良い日だ。

この日のために橋の修繕や村の広場の建設の手伝いなんかをみんなで頑張ったのに、
褒めてもらって喜ぶどころかあの腹の立つ金髪のバカが同席して絡んでくるので不愉快で仕方がない。

「チュロス食べる?」

「死ね」

しかもなんで俺の隣に座るんだ。

(それはそれで不快だけれども)普通4人がけのテーブルなら仲のいいお頭の隣に座るだろ。

頬に焼き菓子を押し当てられ、あまりの馴れ馴れしさに本気で殺意を抱いていると、
それを見て呆れていたお頭がふいにボソ、と小声で金髪に何かを言う。

「…お前、昨日飲んだろ」

「…えっ?は?……のののののののの飲んでないけ、けけど?」

「……」

「ワワワワインなんてみ、みてもい、いいないないって」

「……」

お頭の無言の圧に屈して金髪は不自然な縦振動をしているが、
そもそも俺の鼻がいいのを差し引いてもわりと酒臭いしとっくにバレていたと思う。

「……のの飲んで、な……あー、もういいや。飲んだ、飲みました。んで???」

嘘が苦しくなったのか、追い詰められた金髪は豹変して開き直ったようにヘラヘラしはじめた。

「あ、サン知ってる?
 こないだイリアと飲みすぎて禁酒勝負しよってなってな」

「おい」

「俺もふざけて3階から落ちて全身折れたけどさ、イリアも酔ってずっとあの壺撫でゴェッ」

どうも何かお頭に不都合な暴露が起きかけたらしく、
遠方の大きい白い壺を指差す金髪の口へお頭は細長い焼き菓子を束にして口に突っ込み黙らせる。

「……はぁ……。サン、日を改めよう。
 俺はやっぱりこのバカを捨ててくる」

「あ、あぁ……?」

お頭が忌々しそうに、口からお菓子が抜けず困っているバカを引きずって消えたのでその日はお開きになった。

====

「……くっ、ふぅ……、っ、は、あ゛…♡」

だが俺は知っている。

お頭はあの金髪を邪魔だと思っている。
きっとそれは事実だが、それでもそこまで本気で金髪を嫌っているわけじゃない事を。

「……っ、あ゛っ♡…っ、っ♡」

俺はお頭が酔って醜態を晒すなんて知らなかったし、
あんなに子供っぽく、楽しそうにする人なのも初めて知った。

「っ、ぅあ♡っ、ひっ、……っはぁ…!」

俺が知らない、好きな人が誰にも見せなかった一面を、
俺より付き合いの短いあんな、軽蔑する男が知って独占している。

俺には向けられない表情、仕草、言葉。

お頭のそれを金髪が享受していることに胸が苦しくなるが、同時に喪失感へ何故か酷く興奮した。

「あ゛っ、くそ、くそ……っ♡」

俺の方が先に好きだったのに。

もしかしたら、もう少し早く何かしていれば、俺に向けられていたかもしれないそれが、
手を伸ばすのが早かっただけの金髪に掠め取られもう手に入らないのだと思うと悔しくて悲しくて、
虚しさの象徴のよう、指を絡めたそこから精を吐き出していた。

「……クソっ……」

一度冷静になればあまりのただただ罪悪感で悲しくなる。
さっきまで俺は何にあんなに興奮していたんだろうか。

これはきっと、あまり良くない状況だ。

俺はどうにかしようと決意し、身を清めると金髪に会いに行った。

====

「あぁ、うん、そう……?」

ここまでを金髪に文句として伝えると、金髪は変な顔で首をずっと傾げている。

途中「そんなイリアで抜いてんの?」「なんで俺に言うの?」なんて聞かれたが、余計なお世話だ。

「……やっぱり、お前みたいなヤツはお頭には似合わない。
さっさと別れろ」

「う、うん?」

多少見た目はいいけれど、こいつの本性を知っていれば少しも2人の関係を認める気にはなれない。

お頭のためにもこいつに身を引かせようと迫っていると、突然背後で物音がした。

誰か帰ってきたようだ。

「別にイリアと付き合ってな」

「?、レーヴェ、誰か来ているのか?」

なにか金髪が言おうとしていたが知るか。
それより間の悪いことに、扉を開き帰ってきたのはどうもお頭だ。

俺はまずいと思い咄嗟に物陰に隠れる。

「え?なんで……」

「俺がここに来ているのがバレたら毟る」

「(何を?)お、おう」

こんなところ、お頭に見つかるわけにはいかない。

お頭が部屋を後にしたら俺も急いで逃げ帰ろうと決め、身を潜めて部屋の様子を伺った。

「……?さっき、誰か来ていなかったか?」

「いや?気のせいだろ」

この間の下手な嘘で心配していたが案外うまく、金髪は真顔で誤魔化している。

つい隙間から覗くとお頭は不思議そうな顔をしている、が、やっぱりいつみても逞しくて、浅黒い肌が綺麗でかっこいい。

黙っていると少し怖いくらいの鋭い目つきもがっしりした体つきも、
改めて遠方から見ると惚れ惚れする男らしさで顔が熱くなった。

(もう少しだけ姿を見てから帰ろう……)

……後になって思えば、俺はお頭に見惚れず、うまく距離を取れたこのタイミングでさっさと逃げ帰るべきだった。

そうすればここから先、俺は悪夢のような時間を過ごさずに済んだのに。

「はぁ……、何でもいいか。程々にしてろよ」

「えっ、あ、ちょ」

(……!?)

諌める言葉に反してお頭は金髪を壁際に追いやると、前髪を掴んで乱暴にキスしている。

金髪は咄嗟に俺の方をチラリと見て、慌ててお頭の胸を押し返した。

「…なんで」

「い、いや?そっちこそなんで?珍しくない?」

キスを遮られたのが不満だったのか拗ねたようにお頭の眉間に皺が寄って、
金髪への嫉妬と殺意と同時に、また初めて知ったお頭の一面に体がかっと熱くなる。

なんで、あそこに居るのは俺じゃないんだろう。
そんな悔しさで胸が苦しかった。

「別に。たまには良いだろ、とち狂っても」

「ひどい。
……素直にレオンくんがかっこいいから♡って言えばいいのに……」

「はいはい、かわいいカワイイ」

「ちが、……もー…」

普通、俺が居ると分かっているなら、もう少し後ろめたそうにしたり、行為を止めるとか恥ずかしそうにしたりしないんだろうか。

恥も外聞もないらしいバカはさっさとその行為に流され乗っかることにしたらしく、
一度唇に軽く触れるキスをすると素直に腕を伸ばして自分からお頭の腰を抱き寄せ始めた。

「(くそ、近い!離れろ芋虫……!)っふ、……♡」

…あの、服の上からでもわかるがっちりとした腰はどんな感触なんだろう。

温度は?重たさは?

今、金髪は俺の知らないお頭の情報を当然のように知って、さらに服の中に手を滑り込ませて感触を楽しんでいるのだろう。

まっすぐな視線の先にいるのが俺じゃないのが苦しくて足を動かせず困っているのに、
まさかこれ以上をするつもりなのか2人の段々キスは深い、舌をぬるぬると絡め合うようなものになっていた。

赤く濡れた舌同士がくちゅくちゅと違う生き物のように蠢く光景は目を背けたいほど辛いが、
なぜか食い入るように見つめてしまう。

気がつけば勃ち上がった自身のそれを、無意識のうちに布越しにカリカリと掻いて刺激を与えていた。

「……俺は一応、だめだよ、って言ったからな」

「何の話だ」

湿った息遣いの後、一度金髪は頭を離し、
言い訳がましく言いながら親指でお頭の唇をつついている。

お頭がその指を噛むと手は引かれ、ゆっくりと腹部へ降りていき腹筋を撫でる、
その緩慢な動きは遠目にもわかりやすく「そういう事」をしようとしていた。

……信じられないが、あのバカはさっさと俺の存在を亡きものにして、
このままどこまでも行為をシてしまうつもりなんだろう。

(そんな、やめろ……っ、いやだ♡お、俺以外がそんな、っ♡お頭と……)

金髪の手は臍を捏ねた後、迷うことなくズボンの中へ侵入して、俺からはよく見えないがもぞもぞ布を持ち上げいたるところを弄っているようだ。

「っ、ふ……っ♡」

「もうガチガチじゃん。何?溜まった?」

一瞬お頭の息の詰まる声が聞こえ、その後金髪がしているようお頭の手も金髪のズボンの中、内腿へ手が伸びる。

これ以上は傷つくから絶対に見ない方がいい、帰れ、と頭の中でキンキンと、
警告じみた耳鳴りが響いていたが、どうしても動けなかった。

断片的に見える情報を頼りにお頭の腕と同じよう俺の腕を動かし、
自分で触れるしかない惨めさに泣きそうになのに、これまでにないほど下半身は興奮している。

「……おい」

「ん?」

段々と抱き合う2人の息が上がって、不意に唇が離れたかと思うと、金髪はお頭の上体だけを机の上に寝かすよう倒し、後ろからモゾモゾとズボンを脱がせている。

早急な動きが不満だったのか、それを睨むお頭の背中へちゅ、ちゅ、とバカは茶化すように笑いながら何度もキスを繰り返すと、ついにお頭も諦めたように前を向いてされるがままになった。

その無言の中行われたやり取りに、察していたが改めてこの行為が2人にとって慣れ親しんだものなのだと嫌でも理解してしまう。

(……もう嫌だ…、やめてくれ……♡)

金髪の白い指が赤黒く怒張したものに絡んで、ぬるぬると上下に扱くと、
カサの張ったお頭のそれは、より大きく、びくん♡と跳ねて上を向く。

大好きな憧れていた存在がこんな風に組み敷かれて、
少し悔しそうな、それでいて期待を孕んだ目をしている。

その視線を向ける相手は俺じゃない。

それが途方もないほど辛い筈なのに、手の中では抜いていた自分のものがすでに欲望の証を放ち、
まだ足りないともう一度硬さを取り戻していた。

「(あ、あんな、お頭の身体、みたことない、みたらダメなのに……♡)ふ、……ー…っ♡」

「もっと腰あげてよ」

「……っ、……」

俺がまた手を動かしていると不躾に金髪は、何度かお頭の尻を叩いて、
お頭はそれに一瞬眉を顰めたが、姿勢を立て直し少し足を開いた。

ぬる♡とハリのある尻に押し当てられている金髪のアレは、同じように勃っている俺のより二回りは大きくて、
あんなのが突っ込まれるのを想像しただけで裂けそうで俺なら恐ろしいが、
焦らすよう尻を拡げた谷間に亀頭を擦り付けられているお頭は怖がるどころか「さっさとヤれ」なんて焦れた声で言っていて、
その欲情した声は本当に彼が俺の知っているお頭なのかわからなくなってきた。

「っ、ぐ、ぁあ゛……っ!?」

「あー…、相変わらず狭いな、っ、もっと力抜いて」

ぐぷ、と金髪が身体を前に倒し腰が波のように動くと、お頭の拳が強く握られ、苦しそうに下を向いて低く鳴いている。

あんなものが挿入ったなら当然苦しいだろうに、声に反して前は萎えないまま上を向いていて、
身体を揺すられと同時にゆさゆさと揺れたモノが腹に当たって跳ね返っていた。

「……っ♡ふ、……ふー……、っ」

「大丈夫?」

ぴたりと身体をくっつけたまま金髪はお頭の耳を噛み、大きく出た胸へ優しく指を食い込ませ、むにむにと感触を楽しんでいる。

身体を震わせながらも刺激になれつつあるのか、お頭の全身から力が抜けていくのが見て取れた。

金髪も、もう慣れたと思ったのか硬そうに尖った乳首を指先で転がしながら、好き放題にぬぽぬぽと音を立てて腰を動かし始めた。

「っ、ぐ、ぁっ、っ♡ふ、~~~っ、ふー…っ♡」

「もっと声聞かせて」

乱暴に身体を揺すりながら、俯いてしまうお頭の喉元へ手を伸ばし上を向かせる。

「(……~~~っ♡♡♡や、やだ、お頭のあんな顔、見たくない、やめてくれ……っ♡)」

その赤い顔や潤んだ瞳は、俺がこれまで見てきたお頭のどの表情にも当てはまらないもので、
俺は感情がぐしゃぐしゃになり涙して手を動かすのも忘れてしまった。

「く……っお゛、っ♡っ、ぅ……あ」

金髪はお頭の片足を抱え、結合部を俺に見せつけるように足を開かせる。
そこは縁が限界まで皺なく伸ばされ、それでも窮屈そうに太い竿を咥えてピクピクと痙攣している。

(あ……♡うそだ、こんな……)

以前も少し覗いてしまった光景だったが、こんなにしっかり全てを観察したわけじゃない。

ずるずる♡と粘液でぬるついた肉棒が出入りしてはお頭の低い獣みたいなうめきが聞こえ、
触れられていないモノからとろとろと伝う白濁混じりの先走りは快感を象徴しているようだった。

「イリア、こっち向いて」

「……っ、ふ、……♡」

お頭を振り向かせ、2人とも貪るように何度も顔の角度を変えキスをしあっている。

髪を強く引かれている間も金髪の腰は絶えず動かされ、段々動きが小刻みに早いものになったかと思うと、
突然お頭の身体が跳ねてその後勢いよく精液を自分の胸にぶちまけた。

「……~~~っ、あ゛……っ♡」

少し後、力無く体が前に倒れ、ぴったりとお頭の尻へくっついていた腰が徐々に後ろへ引かれる。

キツそうな肉襞は隙間なく金髪の竿に絡みついていたらしく、最後まで肉を伸ばして亀頭をしゃぶっていたが、
抜ける瞬間ぶぽっ♡と惜しむような空気の漏れる音がした。

もう何もされていないが、赤く色づいた縁もお頭の身体も痙攣しピクピクと動いていた。

「……あっ」

日に焼けた、健康的な褐色の内腿を放たれたものが粘着質に伝い、
それを楽しそうに金髪は眺めて指でなぞっていたが急に思い出したように俺の方を見て目を丸くしている。

…まさか、俺のことを忘れていたんだろうか。

俺は惨めに2人を眺めるだけで満足するしかなかったのに、お頭どころか俺がいるのを知っていたはずのバカの眼中にすらないなんて。

「……う、……ふ、っ♡」

俺は少しだけ声を漏らしたが、それが嗚咽なのか喘ぎなのかは自分でもよくわからなかった。

====

「アンタ、俺のペン使っては変なところに置いてるだろ」

「……」

「何で風呂場に置くの?風呂場でなんか書いてんの?」

「……」

数日後、改めて俺の中でほとぼりが冷めたのでお頭に会いに行くと、
また金髪と痴話喧嘩としか言いようのない揉め方をしているらしく今日は肩を揺さぶられている。

「…悪い、次回から注意する」

「いだだだだ、なんで、ねぇなん、痛っ」

俺の前でベタベタするのが恥ずかしかったのか、お頭は自分の肩に伸びる手をものすごく強く指圧しているようで、
金髪は身体をくねらせて痛みに悶えていた。

「?、サン、どうした?」

「……いや」

試しに俺もお頭の肩に手を置いてみたが、不思議そうな顔をされるだけで、当然あんなひどい制裁はうけたりしない。

『みんなにそうする』ように、お頭は俺にも優しい。

それが嬉しいはずなのに今日は無性に悲しくて、
また帰ったら死ぬほど自分を慰めて忘れようと決意した。
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