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第4部 溺れる愛
5-3 ※
しおりを挟む最賀に求められている証だからだ。過保護な程に陽菜の守備を固めて、徹底的に蠅一匹逃さない姿勢に。それだけで、下半身が熱くなる。むず痒くて、最賀と体を重ねたくなるのた。
ぐっと陽菜の快い場所に当たると、背中を弓折にしならせて嬌声を上げた。
「ぃく、い……くっ、ぁあ、あ……ッん」
内腿を引き攣らせ、ピンと足の爪先が伸びる。火花が視界に散って頭の芯から電流が流れ込んだ。息が上手く吸えなくて、横隔膜を開く。
だが、仰け反ったことで鎖骨下へ丸まったブラジャーの撓みに気が付いた。いつの間にか晒された、桃色に芯を帯びた双丘へ這う舌に戸惑う。厚みのある舌は頂点を押し潰しながら行き来する。胸の尖端は弱い。指で弾かれるのも好きなので、反対側はやはり疎かにせず捏ねくり回す。
最賀は不器用だ、と本人は卑下するが、こういう時は器用なのだ。陽菜の体を、陽菜自身よりも理解している。陽菜が辱めを感じる体位や、少し強引に求められるのが好きなのを見破られているのは腑に落ちないが。
抽挿が再開され、同時に刺激されれば達したばかりの体は制御が難しい。連続で頂点に到達すると、顎を後屈させて腰を押し付ける。余韻が引かなくて、陽菜は啜り泣いた。唾液が口端を伝って、顎下から滴り落ちる。気持ちが良過ぎて、頭がパンクしそうだ。久し振りの快楽に加えて、刺激の強さは敏感に捉えてしまう。
肩で呼吸をして、懸命に息を整えようとする。頬を撫でた最賀は、くつくつと咽喉を震わせて笑みを滲ませた。
「上手に達したなあ、陽菜」
ネクタイが漸く解けて自由を手にした。陽菜は解放されたことで、もう行為が終わりだと感じた。現に、腰が引いており蜜口手前まで来ているからだ。
だが、覆い被さった男の行動で忽ち陽菜の予想は外れたことを知る。ギリギリまで引き抜き、最奥へ再度潜る熱杭は未だ硬結を保持していた。
「終わり、じゃ、……ひ、ぃ……ダメッ、また奥来ちゃッ」
「二週間分、たっぷり陽菜を可愛がりたいんだ。大丈夫、明日は休診だから」
本当は支配されたい。支配、したい。
この男の全てが欲しくなる。
最賀がもしも庇護欲に駆られて、陽菜を守っていたとしても。執着しているのはお互い様なのだから。
母親が死んでも、支配された名残からは逃れることは出来ない。染み付いた物は簡単には払拭されず、血と肉に根付いている。それならば、最賀に支配されたいのだ。愛に溺れるのも怖くはない。とびっきりの甘いチョコレート以上の愛は、胸焼けを起こしても摂取したい。
熱烈な情欲をぶつけられて、ぼーっと蕩けた瞳で最賀を見上げる。骨盤が開いていき、温かな水が蜜口の傍から流れていく。テーブルで背徳的な行為をして、三代欲求は何て罪深いのだろうと頭の片隅で考える。揺さぶられる中で、何方の汗か分からぬ程に熱を帯びた体で互いを求め合う。
何度目か分からぬ絶頂は、陽菜を一時的に世界から放り投げた。足を最賀の体に絡めてしがみ付かないと不安になる。肩甲骨の窪みは灘らかで、陽菜の指の腹が引っ掛かる。爪を立てないようにしたいのに、どうしても爪痕を残す。
密着した男の体から、とくとくと鼓動が伝わる。深く濃厚な口付けで、すっかり陽菜は頭と体が分離したようになった。気持ちが良すぎて溶けてしまいそうだ。
「ふ、ぁあ……すき、好き……ッ、忠さん……っ」
首筋に顔を埋めて、最賀の汗が唇に落ちた。舌が掬うと、少し塩気がある。纏う男の色香はくらくらと酔い痴れる。眦から涙が溢れて、もっと欲しいと強請ってしまう。腰を打ち付けられ、蜜液と愛潮が撹拌されて淫猥な音が室内に響く。
息遣いが艶めいて、くしゃくしゃな顔をした陽菜は臍下に力が入る。陽菜の好きな場所を念入りに擦られると嬌声を上げてしまう。気持ち良い、と声にもならぬくらい掠れて、息を呑んだ。恍惚な表情で与えられる快楽に身を委ねていると、腹の中心に熱量が集まる。ハッと我に返って、気が付く。
来る、強い波が襲って来る、と。
長い睫毛を震わせて、息を短く吐く。腹奥を穿たれると愛潮が出てしまう。癖になったら困る、と頭では思うのに最賀はさも愉しそうに陽菜を見下ろす。本人は自覚がないのか、熱っぽく獣欲を宿した双眸でその光景を見届けるのだ。
襞が畝る度に段々と呼吸が浅くなる。爆ぜる真前まで来ると、陽菜は首を左右に振って静止を求めた。このままでは、また出てしまう。愛潮は体が脱力するくらい体力をごっそりと奪うのだ。それは達した名残もあるだろうが、陽菜は羞恥心と快楽の狭間にいる。
最賀は額にキスを一度落として、何食わぬ顔で嵌入する。まるで、目の前で羞恥心で啜り泣く恋人を目に焼き付けたいと声無き態度で。
やっぱり二週間と言う重さは、一日では到底見繕えない。陽菜の儚い抵抗は散って行く。
「またッ、来ちゃうからぁ……っい、く……ッ達ちゃうぅ……ぁあ、あッ……っ」
腰を押し付けてビクビクッと体を小刻みに震わせる。膣壁が収斂して、陽菜は今日一番の甘ったるい声を出した。淫らな水音はテーブルと畳上に敷いたタオルへ盛大にして濡らす。
続いて、小さく呻った最賀は避妊具越しに吐精した。体重をかけぬよう、テーブルに重々しく手をつき配慮される。
涙で視界がぼやけ、最賀の顔は歪んで見える。強烈な快楽の捌け口は見当たらず、余韻だけが取り残された。このまま意識を手放しそうになる。
「……無理させたな。頭痛や吐き気は?」
陽菜がぼんやりしているのは、意識が虚なのに対して懸念を示した。動きを途中で止めて、幾つか質問をされたり脈拍数等諸々確認される。何処からともなく血圧計や聴診器を取り出すので、力無く腕を掴んだ。
「や、やめ……ないで下さい……」
「ん? 体、辛いんだろう?」
「……忠さんとまだ……離れたく、ないです」
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