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第3部 あの恋の続きを始める
1-3 ※
しおりを挟むそれでも、陽菜が生きる為には必要だった場所だ。
母を許すことはないだろう。だが、その中にも微かな温情は存在したのだと信じたい。それを気付かせてくれたのもまた、最賀忠や陽菜の良き友人達であるのだ。
陽菜は最賀に背伸びをして唇に触れる。首に腕を回して引き寄せると、最賀も応えた。ざらついた髭が陽菜の頬に当たろうと、お構い無しに口付けを貪り合う。
畳の香りに混じって、男の欲情した匂いが鼻を掠める。はあ、と吐く息を漏らしたら男は黒い服に手を掛けてぴたりと止める。
「……背徳感に苛まれる、行いだな」
首筋に顔を埋める癖に、男はこれから行うことに対してそんなことを口にした。
「──あ、とで咎められるのなら……謝ります、だから」
言葉は続かなかった。男との深い口付けに、陽菜は五年ぶりの愉悦を真摯に体が感じ取る。
互いの熱を刻むために貪って、その存在を確かめたくてまぐあうしかなかった。汗と、涙と、雨水と何方かの物なんて分からないほどに混ざり合って。
肌がひたり、と密接して体温を感じなければ。また死んでしまいそうだった。
強くなり過ぎたのか、と陽菜は誤解していた。
正規雇用の話は頓挫し、契約満了通告に加えて好きでもない見知らぬ男性との縁談。
そして、母の余命宣告に重なって危篤状態を電話で知らされ、それから。母を看取り、弟は生きづらい地元を離れパートナーと生活をする。
陽菜は独りになった。事実だ。未婚で、傷物で、地元では嫁に行きそびれた女と言われる。そんなことはどうだって良い。
どうだって……と、夜な夜な時折顔を覗かせる黒い影に陽菜は攻撃されるのだ。
「あ、そこ……っ、先生ぇ……っ、ふ、ぅ……」
「……陽菜、軟いな、ここ」
「先生、がっ、触るから……っ」
男しか知らない体。陽菜の胸元に顔を埋める男の張り付いたシャツを、辿々しく脱がせながら陽菜は愉悦に身を震わせる。ちゅ、く…と舌が肌を吸い付いて陽菜の頂きへ滑らせるのだ。
力加減を誤らないように、確かめながら陽菜の体を入念に探っていく。双丘は既に芯を持って、桜色に咲いて最賀の舌先で愛撫されるのを期待している。
何度も行き来をして、捏ねる動作に腰を揺らして陽菜は誘う。
「先生ぇ……っ」
「──陽菜、もう呼んでくれないのか?」
「……た、だし……さん」
陽菜は男の名を小さく呼んだ。
もう呼ぶ権利もないと思ったのに。
内腿に唇を落として徐々に足の付け根に迫るのを、陽菜は期待の熱を帯びた双眸で男の頭上から見守った。
四十デニールの黒のストッキングとショーツがずるりと下げられて、駄目だと思った。
じゅわりと熟れた果実が男を求めていることを誤魔化せない。忘れてすらない男の味を、体は痛いほど染み付いている。
男は何も臆すること無く蜜口に舌を這わせた。流れる蜜液は溢れて尻を伝うはずなのに、舐め取っているのかシーツを汚してやいない。
「そんなに、舐め……な、っぁあ、だめっ……」
切ない声で男にそう懇願するが、止める気配はない。足の間に躊躇なく顔を埋める最賀は、陽菜の体を知り尽くしている。
いや、まだ覚えているらしい。
隈無く陽菜の細部を探り当てて、一心不乱に嬲るかと思いきや、生温かい蜜液を味わっていた。絶対に甘くないのに、と陽菜は最賀の白髪が多くなった短い髪を掴んで離そうとするが無駄な抵抗だった。
「濡れてる、な……」
舌先が襞をゆっくり舐め回して、それから蜜壺へ差し込まれる。
生き物と化した舌は蹂躙して丹念に膣壁を解して行く。じわじわと蜜が溢れ出て、歓喜の涙を流しているようである。
唾液と蜜液で攪拌された後に、花開いた秘花へと唇が触れるとそのまま口の中に収める。口唇で挟み、絶え間なく円を描いて行けば陽菜は顎を上向きにしてガクガクと内腿を痙攣させた。
堰き止めていた快楽が一気に雪崩れ込んで来て、息を潜めて最賀の髪を無意識に掴んだ力が強くなる。
「あ、……ッ、達、…くっ、そこ、同時に、……したら……ぃく、きちゃう……ッ!」
電流が急に走って、足を閉じるのを忘れて絶頂へ連れて行かれると酸素が足りない。
酸素が急に渇望するくらいに減少して、息を大きく吸い込んで、吐く動作を何とか陽菜は繰り返した。胸元が上下に動いて、ぴんと上向く双丘は珊瑚色に染まっていた。
それから、最賀の指が二本侵入して、舌と指が同時に振動を起こして陽菜を隈無く貪ろうとする。
怖いくらいに気持ち良くて、この快楽を体が染み付いているのか陽菜はすっかりと従順に手解きに素直になって行った。
「……辛いか?」
「ち、がう……ッ、分かってる……くせに」
「分かっている……でも、陽菜の口から聞きたいんだ」
足を開いて腰をくねらせて強請って、嬌声を上げて淫らになる。陽菜は眉を下げて素直に曝け出す。
「きも、ちぃ……です、忠さん、ただ、……しさぁん……っ」
すると、陽菜の薄い腹がぴくぴくと波打って二度目の絶頂へ達した。絶え間ない快楽を忘れていない愉悦に、陽菜は安堵する。
まだ、覚えていたことに。
胸元を仰け反らせて、快楽の波が未だに残像しているからか、酸素が少なくて横隔膜を開き必死に取り込もうとする。
陽菜は最賀と隔たる壁をいつか壊れるのだろうか、とぼんやり頭の中で考える。
この再会は、一時的な奇跡であって、それ以上で以下でもないかもしれない。
けれども、最賀の痕跡をもう一度だけだろうと残したいのだ。
舐られながら、指が何度も膣壁を摩れば陽菜は最賀の一つ一つの動きを全て記憶していたので、くしゃくしゃな顔で快感を真正面から受け止める。
足を開かせて、羞恥心を取り払い脱がされて転がった最賀のジャケットを手繰り寄せて必死で声を殺す。
薄い造りだから外に聞こえてもおかしくない、と理性が働いたからだ。口の端から溢れた唾液がジャケットに滲んでも、微かな理性で繋ぎ止めているので後のことは全く考えられなかった。
「あ、ァアッ?! ダメですっ、そこばっか、り……ッぅ、あ……ァ、っ……!」
充血した雌芯を甘噛みされるのが、堪らなく気持ちが良いのを最賀は核心を突いてなのか、陽菜をまた高みに連れて行こうとした。
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