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第2部 空白の五年間
5-1【痛みの終着点】※
しおりを挟む「なあ、山藤は初恋ってあったか?」
「意地悪な質問……先生が、初恋って言ったら……変ですか?」
「変じゃないよ、俺が初恋……か」
真っ新なシーツの波に顔を埋めた状態で、初恋について唐突に聞かれる。陽菜は恋が初めてで、誰かと恋仲になるなど夢にも思わなかったからだ。
陽菜の初めては最賀で彩っている。
手を繋いだことも、体を繋げると心も満たされるということ、一緒に料理をすると楽しいこと。全てが最賀と共にあった。
「先生は?」
「ありがちだが、保育園の先生だなー。結婚してたけど」
陽菜はモヤモヤと胸の内が靄に包まれた気分になった。言葉を飲み込んだものの、咽喉に突っかかっている。
「う……」
「なんだ、ヤキモチか?」
「だって……先生。ちょっと変な気持ちになります」
「まあ、過去のことだ。今も未来も陽菜さんだけですよ、甲斐甲斐しくマッサージさせて下さいな」
ぐ、ぐ……と指の腹で念入りに筋肉を解していく手付きに陽菜は脹脛に差し迫られると途端に小さく声が漏れた。
「いた、そこ……っ」
あれは、最賀が日頃立ち仕事の多い陽菜の体を労って、マッサージをしてくれたのが事の発端であった。
循環器内科の医師であるものの、医師が立て続けに退職届を叩き付けたことで当直三昧なのに、こうして時間が合えば陽菜に割いてくれる。
二日前は普段通り、過酷だった。緊急手術からの当直、そして日勤と言う病院へ三十六時間以上の拘束で疲弊しているに違いない。
多忙な最賀へ申し訳無さそうにすれば、俺が会いたくて我儘言ってるだけだろうと眉を下げて言うものだから陽菜も強くは出られなかった。
それに、陽菜自身も最賀と十分だろうと共に時間を過ごせるのは、幸せだったのだ。
ショーツに借りたシャツの姿で寝転んだ陽菜を煽状的に見下ろしている最賀を知る由も無かった。
「浮腫んでるなー、特に脹脛」
「はぁ……、うー…ん、んっ…」
「あんまり下半身に来る声出さないでくれ」
「むり、です……っふぅ、う…っは、ぁ」
ほっそりと白い陽菜の脹脛は、やや浮腫んでいる。
立ち仕事が長いので、基本的には勤務明けは浮腫で足が痛かった。ハリがあって、指圧しながら肌を滑って行く間も鈍い痛みが走って悶絶する。
ぬるりと植物性のオイルが体を温めながら、陽菜の鼻腔を掠めて行く。
「あ、付け根、は大丈夫ですからっ」
最賀がゆっくりと足の付け根を念入りにゆるゆると指の腹で解してくれる。鼠蹊部のリンパを流す為の動作だが、擽ったいのと際どい場所であるからだ。腰をくねらせて、回避しようとするが背後から陽菜を咎める声がする。
「鼠蹊部はリンパあるんだぞ、血流良くしないと」
びくっと陽菜の体が震えた。足の間から鼠蹊部に腕を潜らせて、指の腹が下着を介して蠢いている。
「やめ、……は、ぁんっ、あ……」
「健全なマッサージしてるのに、気持ち良さそうだなあ」
「せんせ、いが……際どいところっ、するから……っ」
「感じられちゃあ、そう言う手つき……になるが?」
思わず吐息が漏れる。ショーツをくっと秘所ギリギリまで引かれて、媚肉に近い場所まで指が滑る。
あと数ミリで気持ちの良い所に辿り着くはずなのに、敢えて避けられる。見晴らしの良い秘裂付近を行ったり来たりと指が通る度に蜜液が分泌していく。
「可愛いお尻だなあ、もち肌で触り心地良い」
うつ伏せのまま、陽菜はショーツを上に引かれると尻の間に食い込んだ。まん丸い臀部が曝け出されて、掌で揉みしだき堪能する最賀に顔を歪める。
「下着、食い込んで、あ……っ」
「山藤はお尻小さいな、柔らかくて、掌でずっと感じていたくなる」
「そ、んな……こと……っは、ぁっ!」
「俺は好きだけどな……」
ショーツを横にずらして、指がちゅぷぷと飲み込まれて行くのを陽菜は枕に顔を突っ伏して感じとった。
指の感触は直ぐに分かる。最賀の関節は骨張っており、特徴的なのだ。
ゆるゆると指が湿潤した膣壁を掻い潜って腹側を摩ると陽菜は内腿を震わせて今にも蜜潮を出してしまいそうだった。
「先生、先生ぇ……っ、こわい」
ぐちゅぐちゅと淫靡な水音を鳴らして、陽菜は矯正を上げたが恐怖が打ち勝っていた。最賀の姿を視認しないと、どうもまだ不安が残るからだ。
「怖い、か。止めるか、辞めるか、それともどうしたい?」
「最賀先生の顔が見たい……の……」
うつ伏せの状態は、何だか一方的に快楽を得てしまいそうで嫌だった。
背中に体温を感じられるならまだしも、陽菜は最賀の体温を全身で得たかった。
「こんな顔で良いなら」
体を起こされ、口付けをされる。背を預けて、最賀は腕を上げる様促す。腋窩から手がにゅるりと入って、腋のリンパを流す。
「先生と繋がりたいのに、自分じゃなくなっちゃいそうで、変になったら……」
乳腺をやわやわと揉んで、それから膨らみに手が滑ると既にブラジャーのホックが外れているのを知る。中に手が入って直接行き来する度に双丘が段々と固くなっていく。
「可愛いことばかり言うと、後悔するぞ?」
きゅ、と摘まれて指の腹で今度は擦られて陽菜は甲高い声が出てしまう。腰骨が痺れて、身を捻る。
「白衣着てる時は凛としてるのに!」
「俺はなあ、アンタの事務服、剥ぎ取りたいなって当直中いつも反芻してるんだぞ」
「えっ……あ、うそ……」
足の付け根に沿って掌がぐぐっと足を開かせる。オイルで濡れて、てかてかと艶めいた中心部は何だか物欲しげだ。
陽菜のショーツを食い込ませて弱く引かれると、媚肉や秘芯が擦れてしまう。周りを指が撫でていくのに、肝心な場所は遠ざかる。期待と不安で心が支配される。
「チェックのベストのボタンを外して、タイトスカートから手を差し込んで弄って、組み敷いて、甘い声で啼いて達するところ何度も頭の中で想像して犯してるのに?」
陽菜は足を閉じるのをすっかり忘れていた。
もうショーツを横にずらされて、これから指が膣襞を撫で上げようとしている光景に釘付けだったからだ。
「や……っ、そ、んな……こと」
「だろう? だから、今こうやって山藤を甘やかして、求めてもらえる様に触ってる」
武骨な指がやっと狭隘に侵入して、陽菜はぽろりと涙を一筋流した。やっと最賀の肌を感じながら欲しかったものが入って来て、感涙したのである。
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